
2023年9月20日に、株式会社ライフェックス主催のオンラインセミナー「ステマ規制はやわかり! 知らなきゃやばい景表法×UGCを生み出す施策」が開催されました。このセミナーでは、株式会社REGAL COREの田之上隼人さんより薬機法・景表法の基本と2023年10月から開始される景表法のステマ規制の解説、ラグナロク株式会社の大橋賢也さんよりUGC創出施策についての解説が行われました。本記事では、このセミナーの要点をまとめて紹介します。
【登壇者】
田之上 隼人さん
株式会社REGAL CORE
代表取締役社長
大橋 賢也さん
ラグナロク株式会社
Camecon運営事務局 Lead Sales
江森 清文さん
株式会社ライフェックス
CRM Manager
大元 由実子さん
株式会社ライフェックス
SNS Marketing Manager
この記事の目次
ステマ規制でどう変わる?薬機法・景表法で抑えるべきポイント
スピーカー:田之上 隼人さん
1.薬機法と景表法の違い、実際の摘発事例
薬機法とは

薬機法(やっきほう)とは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」のことです。一般的に「医薬品医療機器等法」や「薬機法」と略されて呼ばれています。薬機法の目的は、以下の2点。
① 医薬品等の品質、有効性及び安全性を確保すること
② 医薬品等の使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大を防止し保健衛生の向上を図ること
医薬品、医薬部外品、化粧品などを扱う事業者は薬機法に従わなければなりません。また、健康食品・サプリメント、健康・美容器具を取り扱う事業者も、薬機法に抵触しないようにする必要があります。
景品表示法とは

景品表示法は、消費者の利益を保護し、不当な景品や虚偽の表示からの被害を防止するための法律です。この法律は、商業取引での不正行為や顧客の誘引を制限し、消費者が正確な情報に基づいて選択できる環境を確保することを目的としています。
景品表示法の対象事業者は、「表示内容の決定に関与した事業者」です。自ら又は他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者だけではなく、他の者の表示内容に関する説明に基づき、その内容を定めた事業者や他の事業者にその決定を委ねた事業者も含まれます。
2.薬機法の歴史と現在と今後

薬機法は2021年8月の改正により、課徴金制度が導入されました。課徴金対象は「何人も」となっており、かなり範囲が広がっています。また、取り締まりも日々強化されています。
2023年に入ってからは、薬機法違反による炎上事例もあり、薬機法違反へのレピュテーションリスクが大きくなっています。今後、これまで以上に薬機法遵守の必要性が高まると予想されるでしょう。
3.具体的な薬機法NG・OKの切り分け方
健康食品の場合
薬機法における健康食品のルールは、「医薬品っぽいことを言うのはNG」です。具体的には、以下の2点を押さえましょう。
① 商品そのものが医薬品のように誤認させないようにする
② 商品に、医薬品のような効能効果があるという表現はNG
「① 商品そのものが医薬品のように誤認させること」については、表現として「用法用量の指定をするとNG」です(食品なら、食べたり飲んだりするタイミングは自由なはず)。
「② 医薬品のような効能効果があるという表現」とは、「病気が治る、もしくは予防するかのような表現」および「身体の機能の一般的増強や、増進を主たる目的とする効能効果」です。
化粧品の場合
薬機法における化粧品のルールは、「虚偽や誇大な広告はNG」です。たとえば、以下のようなNG表現やルールがあります。
- 効能効果範囲表から逸脱した効果を言ったらNG
- 体験談で、効能効果が出た、安全ですと言ったらNG
- お医者さんなどが商品を褒めたらNG
- 他社製品の誹謗はNG
- 「無添加」や「実感」についてのルール
他にも多くのNG表現やルールがあります。ごく一部にはなりますが、特に注意が必要な点を抜粋して紹介します。
・成分名には要注意
-特定の成分名を抜き出す場合→配合目的の明記が必要
(「ヒアルロン酸※1」、「※1保湿成分」などと表記)
-アルファベットのみの表記は原則NG
※ビタミンC→VCはNG。
→ただし、「グリチルリチン酸2K(ジカリウム)」のように、一部の元素記号は省略可能。
また、EDTA(エデト酸)など、一部の成分は略号OK。
・臨床データや実験例は出しちゃダメ
(消費者にとってはわかりづらく、逆に効能効果で誤解を与えるため)
・最上級の表現はNG
-「最高の効果」、「世界一の安全性」、「効き目No.1」→NG!
※ただし、売り上げNo.1など、効能効果や安全性以外のNo.1ならOK。その場合、適切な調査根拠(調査会社や調査期間など)を明示する必要あり。
・肌への浸透には注意
-角質層への浸透である旨を明記しないとNG
※ただし、「肌の内部まで浸透」や「肌の奥深くまで浸透」は、「※角質層まで」の注釈を入れていてもNG。
4.景表法改正
2023年10月に景品表示法が改正され、ステマ規制が追加されました。
ステマ(ステルスマーケティング)とは、「消費者に広告と明記せず高評価の口コミを装うことで、消費者を欺いて広告効果を狙うこと」。ステマは、消費者の適切な商品選択を妨げるものです。今回の景表法改正は、悪質な事業者への厳罰化と、自主的な改善を促すことを目的としています。
今回の法改正による具体的なルールで、必ず気をつけたいのが「関係性の明示」と「主体性の明示」です。
・関係性の明示
「#PR」「○○からいただきました」
・主体の明示
「商品名やブランド名、メーカー名」

関係性の記載は、以下の表示もOKとされます。詳細は上画像も参考にしてください。
- 「○○からいただきました」など、文言での表示
- 小文字「#pr」
- ハッシュタグでない「PR」
- 主体と合体させた形「#REGALCORE_PR」など
ステマ規制では、違反した場合の課徴金はありませんが、措置命令で名前が公表され、レピュテーションの低下につながるおそれがあります。
具体的な記載の方法:X(旧Twitter)
ステマ|Twitter
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X(旧Twitter)では、本文中に「#AD」「#paidpartnership」「#sponsored」といった、関係性の明示表現が義務付けられます。わかりやすい記載が必要で、ハッシュタグを多数入れてまぎれこませることはNGです。ハッシュタグの先頭や、すべての文末などにわかりやすく記載しましょう。ツリーの場合は、最初の投稿に記載します。
具体的な記載の方法:Instagram
ステマ|Instagram

Instagramでは、Instagramの規約上、タイアップタグの設定が必要です。また、キャプションでの記載も行いましょう。「#AD」といった記載でもOKです。
具体的な記載の方法:TikTok
ステマ|TikTok

TikTokでは、基本的に本文中に関係性の明示があれば問題ありません。今後、ブランドコンテンツをONにすればキャプション欄に「プロモーション」と表示されて関係性の明示となり、本文への「#PR」などの記載は不要になります(現在は主体がないため本文にも記載推奨)。
失敗から学ぶ!!SNSの継続的なUGC創出施策と事例解説
スピーカー:大橋 賢也さん
1. UGCについてのポイントおさらい

UGCとは、ユーザーの手による各種ソーシャルメディアへの書き込みや投稿コンテンツ、それらに対する感想、レビューなどのコメントを指します。簡単にとらえるならば、UGCといえば口コミ、レビューと考えると良いでしょう。
UGCが重要な理由
① 生活者の63%が購入の前に商品のUGCをSNS上で探している
② 20-30代の53%が購買活動にUGCが影響を及ぼしたと明言
③ 生活者の32%が一般の人(身近な人)が「使用している様子」を広告で表現しているほうが購入しやすいと明言
上記データからわかる通り、ユーザーは「信頼できるデジタル上の情報」としてUGCに価値を見出しています。
UGCが注⽬されるようになった裏側
UGCが注目される裏側には、『近年の爆発的な情報量の増加と「買わせよう」という⼀⽅的なメッセージが中⼼の広告への嫌悪感』があります。近年のネット利用に慣れている消費者は、広告を飛ばし、共感性を得られる口コミ、レビューを信用する傾向にあるのです。

SNS利用の目的に関する調査(上図)でも、SNSは口コミ・レビューをチェックするツールとしてもかなり使われていることがわかります。また、別の調査では、旅行中にSNSで情報収集をしたり、写真投稿をしたりする人が多いこともわかっています。
UGCのメリット・デメリット

UGCのデメリットとして一番大きいのが、情報が正確ではない場合があることです。UGCにより間違った情報が伝わってしまう可能性があります。UGCはクオリティコントロールが難しいので、ブランドイメージを下げてしまうこともあり得ます。そういったリスクがあることを理解した上で、UGCを創出していきましょう。また、UGCを利用する場合は、ユーザーの権利への配慮も必要です。
一方で、UGCは広告への嫌悪感の逆で、親近感や共感が生まれやすいものです。UGCが自然と生まれるサイクルができれば、広告費を下げることができるかもしれません。また、たとえマイナス意見があったとしても、一概にデメリットとはいえません。それを商品やサービスの改善につなげることができれば、メリットにもなります。
2. 失敗から学ぶUGC創出施策
InstagramのUGC創出施策案

InstagramのUGC創出施策案として代表的なのが、「インフルエンサーの活用」「モニターサンプル」「ハッシュタグキャンペーン」「フォトコンテスト」の4つです。
どの施策が合うかは、商品・サービスや認知度のフェーズ、求める効果によって異なります。また、Instagramに限りませんが、各プラットフォームのアルゴリズムを考慮すること、景表法を遵守することも大切です。

Instagramのアルゴリズムを加味した弊社の見解として、各施策を簡単に比較すると、上表のようになります。各施策の特徴を押さえ、状況に合わせて実施しましょう。
予算を確保できるなら、確実性のあるインフルエンサー活用やモニターサンプリングを検討すると良いでしょう。ハッシュタグキャンペーンやフォトコンテストは、中長期的に効果を見ていくことが大切です。
UGC施策に迷っている場合、とにかく早めに動かして継続していくことを重点的に考えましょう。

また、過去にUGC施策を実施してみて上記のような結果になった場合も、本セミナーの内容を踏まえてもう一度施策内容の見直しをしていただきたいです。
1.「一度施策をしてみたが効果がなかった」場合

UGC創出は中長期的に見る必要がある施策です。一度実施して効果がなかった(薄かった)からといって、そこで終わる必要はありません。
一般的に、ユーザーは何十、何百と多くのアカウントをフォローして情報収集を行います。そのため、UGCは多ければ多いほど良いもので、積み重ねが大切です。
2.「ネガティブな印象になる口コミが広がってしまった」場合

UGC創出では、ネガティブな口コミが発生する可能性を事前に想定して、対策を立てた上で施策を実施する必要があります。また、ネガティブな口コミは、その度合いにもよりますが、対応次第で逆に根強いファンの獲得につながる可能性もあるでしょう。
3.「間違った情報が広がってしまった」場合

間違った情報が広がってしまった場合も、悲観的に捉える必要はありません。まずはその情報を広げているユーザーに対してフォローの対応を入れましょう。その対応がきっかけで、より太いファンの獲得や、口コミが良いものに変わっていくことが期待できます。
SNSは、情報発信だけでは反応があまり伸びず、ユーザーと積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。
3. 明⽇から動くためのヒント・UGC活⽤の事例
明⽇から動くためにInstagramのUGC施策で⼀番おすすめなのは、「フォトコンテスト」です。フォトコンテストのメリットは以下の通り。
- 誰でも参加しやすい
- フォトコンテスト自体に宣伝効果がある
- 写真集めができる(2次利用ができる可能性)
写真投稿は文章よりもハードルが低く、また、写真はUGCのなかで一番訴求しやすいコンテンツです。費用をかけずに始められるので、開催側のハードルも低い施策といえます。
フォトコンテストを使った継続しやすいSNS運用の流れ

フォトコンテストの実施は、投稿があった時点でUGCが創出されます。担当者の余裕があれば、お礼のリプやコメントを付け加えてシェアすることで、アルゴリズムに良い影響があり、検索での上位表示や発見タブでの表示につながりやすくなります。上図①~③の流れを作ることができれば、半永久的にUGCを創出できます。
Instagramでのフォトコン開催時における注意点
① キャンペーンの準備
- 公式ルール
- 規約と資格要件の設定(年齢や居住地の制限など)
- 賞品に適⽤される規則や規制の遵守(登録、承認)
② 投稿する写真や動画に誤ったタグ付けを促さない
③ Instagramが関与していないこととその明記
Instagramでのフォトコンテスト開催にあたっては、Instagramの規約違反にならないよう、上記の準備を徹底しましょう。規約に違反すると、最悪の場合、アカウントが凍結される可能性があります。
特に注意が必要な点を、以下に紹介します。
- 金銭や金券はガイドライン違反
- 賞品提供が『見返り』にならないように
-Instagram上の「行動」に対してプレゼントを渡すような企画は、プレゼントが現金や金券ではなくても、景品でフォローやその他の行動を「購入」するような企画だと受け取られる恐れがあるため注意!
Instagramのガイドライン以外にも、景表法への注意も必要です。
UGCを活用している企業事例

上画像は弊社運営のアカウントです。投稿内容は、テーマごとに募集した一般ユーザーの投稿紹介が中心となっています。写真を紹介したユーザー様に喜んでいただき、弊社としては撮影の手間を省き、継続的な写真投稿につながっています。
質疑応答
Q:Instagramで、アカウントの状態によってはタイアップ設定ができない場合があります。その場合、PR表記だけで良いでしょうか?
田之上さん:PR表記のみでも、関係性が明示されていれば問題ありません。
Q:景表法の対象は事業者ですが、事業者から案件を受けるインフルエンサー側にはどのようなリスクがあるでしょうか?
田之上さん:広告主からの修正依頼を放置した結果として広告主が措置命令を受けることになった場合、広告主から民事上の損害賠償請求を受ける可能性があります。
Q:インフルエンサー活用において発信内容を指定しない場合、薬機法や景表法について広告代理店として事前に伝えるべきことや必要な対応はあるでしょうか?
田之上さん:ルールを詳細にわかりやすく伝えることが重要です。事前にガイドラインやネガティブリストを作成しておくことをおすすめします。ステマ規制についても、ただ「関係性の明示をお願いします」と伝えるだけでなく、どのように表現すれば良いのか、具体的に伝えましょう。事前に投稿内容を確認するなどの対策も必要です。
Q:旅行関係のWebサイトを運営しており、インフルエンサーに旅行に行ってもらい、SNSや特集ページに感想を投稿してもらっています。ステマ規制は過去の投稿も対象になるとのことですが、これまでの投稿は削除したほうが良いのでしょうか?また今後、表示が必要な文言はありますか?
田之上さん:過去ページは削除の必要はありませんが、現在の情報に即した修正は必要です。また、旅行関係の広告については、景表法とは別に「旅行広告・取引条件説明書面ガイドライン」というものがあります。こういった業界ごとのルールにも従う必要があります。
Q:ECサイトで、注文品に加えて別の商品を無料プレゼントとして同梱して投稿を促す場合、ステマ規制の対象となりますか?
田之上さん:商品をプレゼントするという関係性が生じるので、ステマに当たる可能性があり、関係性の明示が必要です。
Q:UGC創出のために、金銭なし・商品提供ありで投稿を依頼した場合、PR表記は必要でしょうか?
田之上さん:ステマ規制の指摘対象となり得ます。PR表記が望ましいです。
大橋さん:投稿のために商品やサービスの購入が必要な場合は注意が必要です。
Q:Instagramで化粧品のフォトコンテストを開催した事例はありますか?
大橋さん:たとえば、化粧品を使った人物の写真を募るコンテストや、デザインのおしゃれさがわかる写真を募るコンテストなどがよく見られます。
Q:キャンペーンに参加してもらった場合、投稿内容の著作権はどうなるでしょうか?
大橋さん:著作権はあくまでも投稿者のものです。それらを使用する場合、事前に投稿者の許諾を得る必要があります。
セミナーに参加してみて
今回のセミナーで紹介された、薬機法・景表法に関する基本知識と、法改正に伴う新たなルールは、EC事業者が必ず押さえておきたい情報です。不明点がある場合、具体的な例を知りたい場合などは、今回の登壇者のような専門家に相談してみましょう。
ECのマーケティングにおいて、UGCの活用に取り組む事業者は増えていますが、その際、従来の薬機法・景表法のルールはもちろんのこと、2023年10月から開始されるステマ規制は特に注意が必要な点といえます。関連するルールを十分に確認した上で、効果的に施策に取り組みましょう。
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