マンダムのヘアビューティコスメ「LUCIDO-L」の店頭売り上げをTikTok起点で最大化させた施策を公開【セミナーレポート】
イベントの概要

2023年8月24日に、株式会社MADS主催のオンラインセミナーが開催されました。MADSでは、デジタルサイネージ広告の配信システムを提供しています。セミナーでは、そのサービスを活用した株式会社マンダムの「LUCIDO-L(ルシードエル)」の事例を紹介。TikTokでのPR投稿とデジタルサイネージ広告の両輪でキャンペーンを展開することで、ポジティブな成果が得られました。本記事では、セミナーの要点を紹介します。

【登壇者】
毛利 芽耶さん
株式会社マンダム
ブランドマーケティング二部
LUCIDO-L 宣伝担当

高橋 信也さん
株式会社MADS
CMO

キャンペーンのきっかけ

キャンペーンのきっかけ

毛利さん:今回のキャンペーンのきっかけとして、男性イメージがある「マンダム」「LUCIDO」において、女性ヘアメイクブランド「LUCIDO-L」のターゲット認知と売上を同時に策定したいという目的がありました。その上で、昨今、SNSなどデジタル起点で口コミが起きることが当たり前になっており、デジタルでのアプローチが重要だと考えたのです。

キャンペーンのきっかけ2

毛利さん:「LUCIDO-L」は20代女性をターゲットとしています。この層のユーザーが商品を選ぶ上で、興味関心をひくための重要な要素が、SNSにおける話題、トレンド感です。このことから、キャンペーンを行うにあたり、SNSでアプローチをしながら話題感を醸成したいという背景がありました。

TikTokを活用するポイント

高橋さん:「TikTok売れ」という言葉が話題になったように、TikTokでは、ユーザーの投稿をきっかけに幅広いユーザーに商品認知が広まり、商品が売れるという現象があります。

当初購入を予定していなかったが投稿をきっかけに商品・サービスの購入を行う、「興味突破」型の計画外・衝動的な購入が多くなっています。

今回のキャンペーンでは、ターゲット含有率が多いSNSを中心にPR投稿を行うことで、質感再整ヘアマスクのカテゴリ認知とインフルエンサーによる流行感・話題性の醸成を狙うため、共感型で、フォロワーに依存しない拡散性が強いTikTokを活用することになりました。

小売店舗における非計画購買の重要さ

高橋さん:TikTok活用と同時に、リアル店舗の購買強化も必要だと考えました。物販系BtoC-EC市場のEC化率は約8%とまだ低い割合である一方、ドラッグストア市場は8兆5,408億円(※1)と毎年右肩上がりです。日常的に利用する購入チャネル別の利用頻度では、1997年以降、薬局・ドラッグストアの利用頻度が伸び続けています(※2)。

※1:経済産業省「令和3年度電子商取引に関する市場調査 報告書」/日本チェーンドラッグストア協会(東京都)「2021年度版業界推計 日本のドラッグストア実態調査(速報版)」
※2:NRI「生活者1万人アンケート調査」2021

非計画購買とは

高橋さん:リアル店舗の消費者行動では、予定外の購買を行う「興味突破」型の計画外・衝動的な購入である「非計画購買」がより発生します。店頭では、「この商品いいな」「この商品見たことあるな」というきっかけで、急に購買意向が高まります。弊社の調査によると、店頭での非計画購買は50~70%にのぼるのです。

これらのことから、デジタル起点のアプローチとともに店頭認知もしっかりと獲得して、「LUCIDO-L」の店舗売上を最大化が重要だとマンダム様と合意しました。

認知→店頭の関係

リアル店舗における購買強化が必要な理由

高橋さん:店頭に並ぶ多くの商品のなかから選んでもらうためには、店頭のコミュニケーションが重要です。SNSで商品への興味関心をひき、店頭でその商品を想起させることで、優先的に商品を選んでもらえます。リアル店舗の入口にデジタルサイネージ広告を設置することで、消費者の購買意思決定の瞬間にアプローチできるのです。

今回のキャンペーンでは、TikTokの約60秒のクリエイティブをデジタルサイネージ用の15秒に再編集しました。TikTokでのクリエイター活用で商品認知・評判・話題を醸成した上で、店頭サイネージによる再認知・アテンションを行い、非計画購買・計画購買を最大化することが狙いです。

毛利さん:従来の企業の商品広告がメインである、サイネージのイメージとは異なるため、今まで以上に店頭で目立てるのではという期待感がありました。新しい試みでしたが、ポジティブな反応を得る結果となりました。

SNS投稿クリエイティブの二次利用で再認知とトレンドの醸成

企画内容

高橋さん:TikTokは、SNSマーケティング企業の協力も得て4つの企画を実施し、多角的なアプローチを行いました。サイネージ広告には4企画のうちの1つ、「せよさん」のクリエイティブを起用しています。クリエイティブを選ぶ際、商品の魅力をダイレクトに短尺で伝えられることを重視しました。そして、TikTokでの動画アップ後に、大手ドラッグストア3チェーンに設置された店頭サイネージで広告配信を行いました。

店頭では常に広告が流れている状態で、お客様は通りすがりに広告を目にします。そこで、「人気クリエイター推し」という文言と商品画像を固定で入れることで、せよさんを知らない方に対しても訴求でき、どこを切り取っても成立するクリエイティブを制作しました。

毛利さん:クリエイティブ制作にあたっては、商品の印象をしっかり残すことを意識しました。短時間にすべての商品機能を理解してもらうことは難しいので、簡潔に伝わり、使用感などがパッと見でわかる動画としようと考えました。

TikTokの結果

TikTokの結果

高橋さん:TikTokの合計再生数は50万回を超え、30万リーチを達成しました。4つの企画はそれぞれに異なる目的の元、作りましたが、総じて良い結果となりました。

毛利さん:異なるジャンルのクリエイターさんをアサインしたことが良かったです。クリエイターさんごとの個性や普段の投稿を生かして動画を作っていただいたことで、PRっぽさがなく、共感性のあるクリエイティブを作れたことが、良い結果が出た理由のひとつかと思います。

ドラッグストアサイネージの結果

ドラッグストアサイネージの結果

高橋さん:ドラッグストアサイネージは、売上リフト・ブランド認知ともに大きな効果を得られました。

ドラッグストアサイネージの結果2

高橋さん: TikTokとサイネージの両方に接触した消費者の購入度スコアは約90%で、思った以上に高い数字になっています。

毛利さん:狙い通り、デジタル起点から店頭への購入導線が作れた結果だと考えています。SNS上での接触だけでなく、来店時にもう一度サイネージで見ることは、忘却防止と商品購入の後押しになったのではないでしょうか。

高橋さん:特に消費財領域においては、「この商品いいな」と思っていたとしても、店頭に来て「やっぱりこっちもいいかも」と他商品を購入してしまうことが多くあります。今回の結果から、店頭でのサイネージ広告配信により、本来であれば類似商品を買ったかもしれない人が広告認知の元で、「LUCIDO-L」のヘアマスクを選んだという確信を持てました。

サイネージが商品特性の理解を促進

ドラッグストアサイネージの結果3

高橋さん:サイネージ広告認知者の上昇スコアランキングでは、「酸熱トリートメント」の認知がもっとも上がっています。こういった新しいジャンルの言葉の認知が上がったことは、新商品の初期の土台作りとして、ポジティブな結果です。その上で、商品機能・特徴の理解については、他のコミュニケーションを含めて継続的に進める必要があると思います。

また、「美容サロンに置いている」というイメージ認知が高いのは、酸熱トリートメントという言葉自体が美容サロンをと紐づいていたからだとも考えます。それが、自宅でも酸熱トリートメントが行えるセルフケア商品でもあるという新しい気づきにつながった可能性があります。パッケージでサロン技術発想と記載があることも影響しているのではないでしょうか。

総括

高橋さん:TikTokで認知起点を作ることは大事ですが、その場が購買環境にない場合、機会損失が生まれてしまう可能性があります。そこで、既存認知に加えて消費者が行動を起こしうる店頭認知の強化が、確実に売上(購買)に転換する上で重要なポイントといえるでしょう。

さらに今回、TikTok素材の二次編集も、良い結果になった要素ではないかと思います。日本人には特に、「みんなが使っている」「人気なんだ」というところで無条件に心が動かされてポジティブに商品を捉え、購買に移るという心理があるためです。

毛利さん:デジタル施策の一本化ではなく、店頭と連動して両輪でコミュニケーション設計をしていくことが効果や売上につながるのが、今回の大きな気づきです。今後も、「ほしい」「なんか気になる」という衝動を起こすことを、SNSを中心に行いながら、リテールメディアとかけあわせて複合的に展開していきたいです。

セミナーに関するQA

Q:店頭でのコミュニケーションに着手した理由は何ですか?

毛利さん:消費者がSNSをきっかけに商品を購入することが増えるなか、SNS閲覧後の購入の後押しをしたいのが大きな目的でした。

Q:TikTok以外のSNSで検討されているメディアはありますか?

毛利さん:現状、X(旧Twitter)でモニターサンプリングなども行っています。今後、積極的に使っていきたいと考えています。

Q:普段のブランド認知で留意していることは何ですか?

毛利さん:消費者視点で、消費者が共感できることを意識して、好印象を抱いていただける発信を重視しています。

高橋さん:ストレートに伝えるところもあって良いのですが、企業の売りたい=消費者の買いたいではありません。すべて計算しきれるわけではありませんが、第三者から自然と話題となるような仕掛け、コミュニケーション設計が大事です。

Q:TikTokを選定した理由について詳しく伺いたいです。

高橋さん:各種SNSのなかで、TikTokはフォロワー以外にも見てもらえるチャンスがもっともあるプラットフォームだと思ったからです。その分、自然と話題になるようなコンテンツを設計しやくなっています。また、いきなり複数のSNSで実施すると効果を検証しづらい部分もあるので、まずはTikTokにフォーカスを当ててトライしました。

毛利さん:話題性・拡散性があるのがTikTokの良さで、そこを生かしたいと考えて選びました。

Q:キャスティングの際に気を付けたことや大事にしたポイントがあれば教えていただきたいです。

毛利さん:偏りなく、いろいろな方面からアサインしました。フォロワーがどのくらいクリエイターにエンゲージしているかも重要なポイントです。

高橋さん:SNSマーケティングの会社に入っていただき、何パターンか候補を出した上で、あまり偏りのないようバランスを取りました。どんなキャンペーンでも、期間と予算のなかでアロケーション的にどうするのが一番良いのかで決めるのが良いと思います。

Q:今回TikTokのみでの施策であった理由は何でしょうか?

高橋さん:バズリやすい力学の要素があること、影響力、いろいろな人に接触しやすいことを重視しました。店頭についても、TikTokのクリエイティブを使うことでどうなるかを仮説のもと検証したかったためです。

Q:資料にあったTikTok施策の再生数は再生完了数でしょうか?再生開始数(imp)でしょうか?

高橋さん:アルゴリズムにもよっていろいろなパターンがありますが、資料の数字は再生開始数(1秒以上再生)です。

Q:TikTokにて各4コンテンツを広告としても配信していましたか?

高橋さん:広告配信はしておらず、まずはPR投稿を試しました。TikTokの使い方として、PR投稿で反応が良かったものを広告としても回すこともあります。これは、いろいろな企業でトライする余地があると思っています。

Q:TikTok配信期間中、EC売上増加や、もしくはHPなどブランドのサイトへのアクセスも増えましたか?

毛利さん:具体的な売上には言及できませんが、アクセス数は増えました。

Q:各SNSの公式アカウントの運用には力を入れていますか?力を入れている場合、公式アカウントの発信内容の活用でも良いのでしょうか?

毛利さん:SNS運用には力を入れています。PR投稿を見て公式SNSを見にくる方もいるので、受け皿として必要だと考えています。

高橋さん:発信内容は、目的によると思います。たとえば某航空会社のSNS公式アカウントでは、商品・サービスではなく旅行の情報のみを届けています。まずは目的があり、補完的にSNSでコミュニケーションをとるのが良いのではないかと思います。

Q: 店頭サイネージでの番組ロール編成を教えてください。

高橋さん:今回は1分に1回です。クライアント様の目的をお聞きしながら、配信の店舗数や動画の尺、頻度は自由にプランニングできます。今回はTikTokを活用し、配信期間を限定した企画だったため、配信頻度はやや高めにしています。

Q: 店頭サイネージは元々その店舗においてあったものですか?

高橋さん:全国の大手チェーンを中心としたドラッグストアに、弊社が設置しているものです。

Q:今回店頭前サイネージに至った理由などあればお話しお聞きしたいです。

高橋さん:店頭前でも店内でも良いのですが、どこで何を伝えるために、どう表現するかということが重要です。今回は購買というインパクトのお話だったので、店頭前サイネージをご提案しました。

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