ナイトケアビューティーブランド「YOLU」のサイネージプロモーション解説!
イベントの概要

2022年12月7日、株式会社マイクロアドデジタルサイネージ(現:株式会社MADS)主催にて、ナイトケアビューティーブランド「YOLU」におけるサイネージプロモーション導入に関するウェビナーが開催されました。 同社では、全国の各種施設・店舗のサイネージ・タブレットを一元管理して広告を配信できるプラットフォームを提供しており、ウェビナーでは、そのプラットフォームを利用した株式会社Ⅰ−neの事例が紹介されました。

株式会社Ⅰ−neでは、話題のヘアケアブランドの「YOLU」を展開しており、新商品発売に合わせ、全国のドラッグストアサイネージにも広告を配信しました。本記事では、このウェビナーの要点を紹介します。

【登壇者】
中村 文香さん
株式会社Ⅰ−neマーケティング本部 ブランドマネジメント部
ブランドプロモーション課

工藤 裕貴さん
株式会社マイクロアドデジタルサイネージ(現:株式会社MADS)
CXデザイン部 部長

大ヒット商品YOLUのマーケティング戦略とは!?

大ヒット商品YOLUのマーケティング戦略とは!?

中村さん:YOLUは、睡眠中の髪に着目して開発されたブランドです。そのマーケティングにおいては、「夜」をテーマにコンセプト、ネーミング、パッケージ、商品使用感の一貫性を大切にしています。

「YOLU」というブランド名のつづりに「L」を使っているのは、ラテン語で月を意味する「LUNA」に由来しています。商品パッケージは、ひと目で夜を想起できる幻想的な世界観となるようこだわりました。店頭での広告やSNSでの発信でも、そういった世界観を印象づけられるよう工夫しています。

YOLUがお客様に提供する価値は、「翌朝感動するような髪の仕上がり」です。ナイトキャップ発想で、睡眠中の乾燥や摩擦ダメージを防ぐ、ナイトキャップ処方となっています。

YOLUの狙ったカテゴリ

中村さん:YOLUのマーケティング戦略の一つは、「ナイトケア」のカテゴリで、認知から想起までの市場シェアを獲得するというものです。現時点ではこの戦略がうまくいき、ブランドローンチから約1年で累計販売数は1,000万を突破しています。

ターゲット

中村さん:YOLUは、「夜の間にヘアケアができる」ことによって、時間の有効活用にベネフィットを感じられる方々をターゲットとしています。具体的には、日々忙しく過ごしつつも美容(髪)への意識が高く、効率的にしっかりとヘアケアできる商品を探している方と相性の良いと想定しています。

どう顧客に伝えたか(ヘアマスク編)

中村さん:2022年9月に発売したジェルヘアマスクのプロモーション動画は、「効率的にヘアケアができる」こと、そして「高品質」であることを大きな軸にしています。この2軸が「たった10秒」「集中補修」「ぷるツヤ髪」という言葉に表れています。また、途中に夜空のシーンをはさみ、コンセプトの一貫性にもこだわりました。

YOLUのSNS戦略

YOLUのSNS戦略

中村さん:YOLUのSNS戦略は、「広告」と「インフルエンサー投稿」が大きな2軸です。広告では、世界観や商品の特徴を伝え、認知を高めます。ただ、それだけでは一方通行になってしまうので、インフルエンサーという第三者の立ち位置からの投稿で、共感や納得感を得ることで、購買につなげる戦略を取っています。

そのなかで、商品に満足いただいたお客様から「サロンを超えた」という発信があり、バズ投稿として広がっていきました。お客様にご満足いただいていることが嬉しいですし、実績につながっています。

SNSに加えてドラッグストアサイネージへ広告出稿した狙い

リアル店舗における購買強化の理由

中村さん:SNSは商品を認知していただくプロモーション媒体として重要ですが、一方でオフラインもおさえるべき購入チャネルです。また、オフラインは非計画購買が発生しやすいという特徴があります。

SNSに加えてドラッグストアサイネージへ広告出稿した狙い

中村さん:日本の物販系BtoC-EC市場のEC化率は8.7%というデータもあり、リアル店舗には依然として販売チャネルとしてのパワーがあります。そのなかでも、ヘアケア商材はドラッグストアで購入する方が多いのではないでしょうか。ドラッグストア市場は規模がとても大きく、日常の購入チャネルとして利用頻度が伸びつづけており、重要な販売チャネルと考えています。

工藤さん:ドラッグストア市場は、各リテール業態のなかでも、2000年以降、伸びつづけている市場です。ドラッグストアというと、昔は主に薬を扱うというイメージでしたが、食品、ヘアケア商材など時代とともに扱う商品ジャンルや点数が増えてきました。そういったいろいろな日常生活に関連するものを買うためにドラッグストアに気軽に行くという消費者心理もあり、今後も伸びる市場ではないかと思います。

リアル店舗における購買強化の理由

中村さん:プロモーションのプランニングは、認知→興味→要求→検討という各段階を経て購入に至る「ジャーニー型消費行動」(上図左)をベースに設計されることが多いのですが、必ずしもお客様がそういった段階を踏むとは限りません。ある商品・サービスに対し潜在的に期待しているメッセージに触れた瞬間、認知と同時に購入にまで至る「パルス型消費行動」(上図右)も多いと考えています。

店頭サイネージ広告は、そういったパルス型消費行動のきっかけになります。リアル店舗の店頭での購入決定率は一般的に50%以上といわれ、パルス型消費行動が多いと考えられます。また、すでに商品・サービスを認知している方に対しても、リマインドのために店頭サイネージ広告は有効です。

工藤さん:リアル店舗では、店舗に来てはじめて何を買うか決める非計画購買が半分以上ということですよね。さらに、昨今は消費者が受け取る情報量が非常に増えており、認知した瞬間購入したいと思ってもらう、認知から購入までのスピード感がより重要になっています。今回、YOLUのサイネージ広告をドラッグストア入り口で展開したのも、そのスピード感を狙ってのことでした。

ドラッグストアサイネージへ広告出稿した狙い

中村さん:ドラッグストアサイネージへの広告出稿は、SNSだけでなくリアル店舗でのリマインドを合わせて行うことで、購入意向や売上の向上につながるのではないかという仮説に基づいています。効果検証は出稿前・出稿後と、広告との接触・非接触の大きく2軸で、売上を含む各ファネルのリフト率を検証しました。

工藤さん:リアル店舗の店頭における購買心理は5つに分類できます(上図)。今回のYOLUのサイネージ広告の効果は、「想起購買」にあたると考えています。想起購買とは、その場で何かを知ったり、思い出したりしたことがきっかけとなり購入につながる消費行動です。

ドラッグサイネージの広告効果

ドラックサイネージ広告の出稿プラン

工藤さん:今回のYOLUのサイネージ広告は、全国のドラッグストア約1,000店舗において、約1カ月間出稿しました。想定リーチ数は約80万人、広告の表示回数は全店舗合計で約700万インプレッションです。

クリエイティブは9:16の縦型で、SNS広告で使用していた動画と、商品画像が映った静止画を組み合わせた6秒尺の素材です。SNSで広く認知を得ている動画により再訴求を行うとともに、大きな商品画像により店舗に入ってきたお客様に商品を一瞬で訴求することを狙っています。

設置場所は店舗入り口の買い物カゴが積まれている場所の真上、お客様の目線よりも少し上の位置を狙い、画像・動画に加えて音声も流し、来店したお客様への訴求を行いました。

サイネージ広告認知者の態度変容

工藤さん:全体の効果検証では、広告を認知した消費者の態度変容と売上の変化を分析しました。ここから共有するデータはマイクロアドデジタルサイネージ側で取ったアンケート結果です。

まず、態度変容について、商品に対する認知は、広告出稿前に比べると広告出稿後は+55.8%となりました。また、商品の購入意向について、YOLUはもともと高い傾向にあったのですが、そこからさらに+13%となりました。

中村さん:認知リフトはあるだろうと想定していましたが、購入意向がここまで上がるとは想定しておらず、明確な広告効果だといえます。購入につながるには、複数接点でコミュニケーションを取ることが大事だと考えており、そのなかで店頭チャネルでのアプローチも重要だと、今回の結果から思いました。

工藤さん:店頭、SNSなどさまざまな場所で、消費者が複数回コンテンツや広告に接触する機会を作ることが大事だと考えられますね。

売上への影響

工藤さん:売上への影響については、サイネージ広告を実施していない店舗でもSNSプロモーションなどの影響で売上が上がっていたのですが、サイネージ広告を実施した店舗ではさらに+12.5%のPI値*のアップとなりました。

*PI値:金額PI(Purchase Index)値=売上金額/レジ通過客数×1,000

中村さん:SNSを中心としたプロモーションも売上に影響していますが、サイネージ広告を実施することでさらなるリフト効果がありました。店頭でリマインドすることが、商品の選択率のアップにも有効なのかもしれません。

工藤さん:今回サイネージ広告を実施したのは、新商品として発売されたヘアマスク商品で、もともとSNSを中心にインフルエンサー投稿が強化されていました。態度変容と売上効果を見る限り、SNSの施策自体がそもそもの売上アップにつながっていることがわかります。そこで、さらに詳しく、SNSとサイネージの両方を見た人について調査しました。

【購入意向】SNS広告×サイネージ広告

工藤さん:SNSとサイネージの両方を見た人について調査するにあたり、SNS広告とインフルエンサー投稿の施策を分けて考えます。これは、それぞれの施策でクリエイティブもやり方も異なるためです。

SNS広告については、そもそもSNS広告だけでもそれを見た人の購入意向が83.3%と非常に高い結果が出ました。これは、SNS広告とサイネージ広告の両方を見た人と同じスコアです。同時に、サイネージ広告だけを見た人の購入意向も、いずれも見ていない人が60.0%であるのに対し81.8%と十分にアップしています。

【購入意向】インフルエンサー投稿×サイネージ広告

工藤さん:インフルエンサー投稿とサイネージ広告の両方を見た人の購入意向は、94.7%ともっとも高いスコアとなりました。インフルエンサー投稿のみ見た人の購入意向は85.7%なので、サイネージ広告を実施することでさらなる購入意向のリフト効果をもたらせることがわかりました。

中村さん:今回の結果から、インフルエンサー投稿とサイネージ広告を両軸で行うことで、購入意向に寄与することが明らかになりました。SNS広告のクリエイティブをサイネージ広告でも配信したので、クリエイティブを変えることでSNS広告でもさらに効果を出すことができるかもしれません。今後はA/Bテストなどでブラッシュアップしていきたいです。

工藤さん:広告を配信する店舗グループを分けて、どちらが購入意向と売上に良い効果を出せるのか検証するなど、もう一歩踏み込むことでI-neさんならではの勝ちパターンが見えてくるのではないかと思います。

総括

総括

工藤さん:結果を見ると、インフルエンサー投稿とサイネージ広告の両方を認知した人が最も購入意向が高いことがわかりました。リアル店舗では、来店してから購入する商品を決める人が半数を占め、非計画購買が発生しやすいことから、そこでの広告接触は消費者の行動を変化させるのに有効と考えられます。

サイネージ広告では配信時間帯などのセグメントもできるので、今後、ターゲットとなる消費者の来店が多そうな時間帯に配信を強化するのも効果的ではないかと思います。時間帯の他にも、曜日や気象条件によるセグメントや、クリエイティブの比較検証も可能です。こういった検証をかけあわせることで、I-neさんにとってより効果的な広告の出し方も見えてくるのではないかと思います。

セミナーに関する質疑応答

質問 ①:サイネージ広告の効果検証において、サイネージ以外の要素はありますか?

工藤さん:今回はSNSを強化されていたので、サイネージ以外の要素としてSNSをかけ合わせて、弊社側でクロス分析を行いました。SNS以外にも、交通広告やテレビCMなどの相乗効果を検証することが可能です。ご要望があればぜひご相談ください。

質問 ②:マーケティング全体で見た、YOLUのヒット要因は何だと考えられていますか?

中村さん:一言でいうと「一貫性」が大きいと考えています。YOLUというブランドは、マーケティング全体でそのコンセプトを体現することを重視しています。

また、ヘアケア商材としては珍しく、便益だけでなく、オケージョンを意識した訴求を行いました。オケージョンを意識した訴求とは、時間やシーンを切り取ってそこにフォーカスすることを指します。たとえば、シャンプーはお風呂のときのものと捉えられがちですが、YOLUはそれを広げて、多くの方に夜のリラックスタイムの一部として捉えていただけているのではないかと思います。

さらに、認知拡大と購入意向向上のバランスを取り、各フェーズで最適なプロモーション施策を実施することができたと思います。初期フェーズでは熱量が高いコアターゲットと接点を持てるプロモーションを行い、ユーザー数が増えてきたらウェブCMや店頭サイネージ広告などで複数の接点を確保し、マス向けにアプローチを行いました。

質問 ③:サイネージ広告を実施したのはYOLUだけですか?

工藤さん:今回はYOLUのみで、ヘアマスク新商品発売のタイミングで行いました。

質問 ④:SNSだけを実施するのではだめなのでしょうか?

工藤さん:注目すべきは、インフルエンサー投稿とサイネージ広告のかけ合わせが最も高い購入意向のスコアを示している点です。インフルエンサー投稿を見た消費者の心理を考えると、おそらく、商品をただ再認知したというより、商品に対して改めて興味がわき、購入意向が向上するのではないかと思います。そこに購買できる場所であるドラックストアの店頭サイネージ広告で後押しすることで、購買へのリフト効果を最大化できると考えています。

また、今回はSNS広告とサイネージ広告のクリエイティブに同様の素材を使ったので、クリエイティブを変更したときにSNS広告とのかけ合わせの効果が変わるのかも検証したいところです。

セミナーに参加してみて

今回のセミナーで特に興味深いのが、オンラインの施策であるSNSとオフラインの施策であるサイネージ広告を掛け合わせたときにどのような相乗効果が表れるのかという点です。インフルエンサー投稿×サイネージ広告で高い効果が見られましたが、配信先のセグメントやクリエイティブの選択によってはまた違った効果が得られるかもしれません。

セミナーの前半にあったように、EC市場は成長している市場とはいえ、EC化率がまだまだ低いことを考えると、リアル店舗にも商品を展開するtoCブランドは、オンラインと同様にオフラインでの施策も重要です。ただ、ユーザーはオンラインとオフラインをきっぱり区別しているのではなく、双方で情報を得ながら欲しいと思ったタイミングで購入に至ります。

オンライン・オフライン双方からユーザーにアプローチして購入につなげる今回のようなサイネージ広告の施策展開は、ECサイトにもリアル店舗にも展開している事業者にとって、今後参考にすべき情報といえます。

また、サイネージ広告の効果には、YOLUがブランドコンセプトの一貫性を重視していたという点も影響していると考えられます。ユーザーがオンライン・オフラインを横断してさまざまなチャネルから情報を得る時代にあって、ブランドの世界観がしっかりと確立され統一されていることは、より重要になっていると考えられます。

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