
みなさんにとって広告とは?
マス4媒体の成長と共に拡大してきた広告産業は、より生活者に密接となるデジタルデバイス(PC・スマホ)の登場により、よりメディアとコンテンツの可能性を広げ、より多様なコミュニケーションを創出しています。
PCにしろ、スマホにしろ、スクリーンいっぱいに面を専有する広告は、認知拡大を狙いたいブランドからしたら、大金を払ってでも抑えたい「面」ですし、マネタイズを狙うメディアからしたら、多く売っていきたい「面」でもあります。一方、メディアの「コンテンツ」を目的に来訪している生活者からすると、本当に読みたい記事などのコンテンツにスムーズにたどり着けないフラストレーションが溜まる体験となっていたりもしました。
「インタースティシャル広告」と呼ばれるポップアップ型全面広告は、ユーザー体験を著しく下げる、とプラットフォーマー側からも警鐘を鳴らされることとなったのは記憶に新しいかと思います。界隈でも、公益社団法人日本アドバタイザーズ協会や、デジタルマーケティング研究機構などが、長く啓蒙活動を行っています。
一生活者として
僕自身の経験談なのですが、スマホには有料のアドブロッカーアプリをインストールしていたり、SNSタイムラインに流れる(自分にフィットしない)広告には、こまめにオプトアウトしたり、と、数年前までは広告を出稿担当する側だったとは思えない行動をとっています。マイナーな行動かもしれませんが、デジタル時代の広告に対し、より敏感になっている層は僕に限らず、一定数存在する時代になっているのではないでしょうか。
男性アラフォービジネスパーソンのスマホ面の広告(ブラウザ・アプリ問わず)は、放っておくと、(過去の検索やブラウジング行動履歴に問わず)本稿には書けないような面になることも珍しいことではないかと思います。(ブランドセーフティー、アドベリフィケーション、アドフライドなどの観点は、今回は書きませんが、広告に関わるお仕事をされている方は、チームやパートナー企業と議論したことがなければ、ぜひお話をされてみてください。)
▼参考記事
テクノロジーの進化に伴い、ターゲティング精度は、年々向上しており、僕のペルソナにフィットした広告・クリエイティブを当ててきます。
- **区在住のあなたに***
- 保険の見直しするなら***
- **歳のお肌には
- **マーケティングにお困りなら
僕のことは、僕以上に「ブラウザ」が知っている時代です。
基本的にどの広告もタップ(クリック)しないのですが、特にスキンケアジャンルは、自身に縁もないし、関心もないので、ECでの購買をしない商材です。「40代を迎えた肌に」なんて広告訴求は、目にすることはあっても、タップすることはまずありません。(仕事の縁や、報道で知ったD2C系プロダクトは、広告によらず、自ら試したりはしますが。)
ところが店頭では手にとった
この20年くらい、自身はこのジャンルに全く興味関心がなく、ブランド指名買いもしないし、最低限の機能があれば、それでよし、というスタイルでした。ところが、自身の肌になにか不調がある、というワケでもないのに、40歳を超えたあたりから、店頭の棚で目につく商品がでてきました。それが「40代の肌に」というPOP訴求のついた商品です。
スマホの広告で見かけたD2C商品とは異なる、ナショナルブランドの商品ですが、その商品は、手に取り、カゴに入れていました。
その商品をカゴに入れた僕のマインドや環境を分解してみます。
- ごく一般的なスーパー内のドラッグコーナー
- 他のスキンケア商品のラインナップも棚にはあった
- 他商品とくらべて商品が安かったわけでもなかった(と思う)
- 現在利用しているスキンケア商品に不満があるわけでもなかった
- 利用していた商品がなくなりそうだったので、買う、という目的だった
- それまで利用していた商品のブランド名も覚えていない
- 有名なナショナルブランドだから、という理由ではない(現在その商品を家で利用しはじめているが、どこのメーカーのどのブランドか、わからない)
- 店頭をきっかけに、そのブランドではない、スマホで見かけたアラフォー向けD2C商品を買おう、とは思わなかった
- 今思い返しても、ただ単に「40代の肌に」という小さな商品POPが一番の購買動機となっている
不思議なものです。
究極にパーソナライズされたスマホ面での訴求では、響かなかったメッセージが、店頭の小さな商品POPでは、購買までの行動を促しています。
バナーやパッケージの機能
今回は、僕のアラフォーメンズスキンケアの話でしたが、おそらく皆様にも思い当たる商材・商品・サービスがあるのではないでしょうか。
どれだけネット広告で訴求されても、指が動かなかったのに、実店舗では、買ってしまっている。「配送時間を待たずにその場ですぐに手に入る」「送料がかからない」などという、地味だけど、超強力な理由もあったりするかもしれません。
先日読んだ漫画「ブルーピリオド」の中に、こんなセリフがありました。
(コンビニの店内にて。美大を目指す学生らの会話)
>「ここにあるモン みーんな誰かが 考えて作ってんねんやろ?
> そしたら コンビニも 美術館みたいなモンやん」
(単行本 3巻 第9話より )
既刊12巻を一気読みした中で、僕が一番記憶に残ったセリフでした。
ブランドサイトを制作するデザイナーさん。
広告バナーのデザイナーさん。
商品パッケージのデザイナーさん。
商品棚の什器を設計するデザイナーさん。
店舗のVMD(Visual Merchandising)を担当する方。
ミクロとマクロ。
部分と全体。
皆様のプロダクト・サービスは、どこまでプランニング・デザインされているものでしょうか?「スマホ画面を飛び出して設計されているものとなっているか?」そんなポイントを探ってみるのも視野が広がるきっかけになるかもしれません。
合わせて読みたい