
LINE株式式会社が2022年8月31日に開催した「LINE LOCAL DAY 2022」のセミナー『LINEでECモールの売上大幅UP!!「澤井珈琲」「SIROHATO」に聞く、明日から使えるLINE公式アカウント運用の秘訣』について本記事で紹介します。LINEでは2017年7月よりYahoo!ショッピング出店ストア向けにLINE公式アカウント開設受付を開始、約1年で3万以上のアカウント開設があったなかで、特に成果を出している二社が登壇しました。澤井珈琲は2018年7月から、SHIROHATOはYahoo!ショッピングでの受付前から自社サイトなどを含め2015年5月から、LINEの運用を行っています。
【登壇者】
楠木 修平さん
LINE株式会社
バーティカル事業部
副事業部長
澤井 理憲さん
株式会社澤井珈琲
常務取締役 兼 銀座店店長
森谷 真夕子さん
株式会社白鳩
WEB事業部 CRM課 課長
この記事の目次
澤井珈琲・SHIROHATOのマーケティング戦略

澤井さん:澤井珈琲は鳥取県に本社を置く珈琲店です。2016年10月に銀座店をオープンして、全国に10店舗、ネット通販では各モールに7店舗出店しています。澤井珈琲が大切にしているのは、よりお客様の身近な存在になることです。そのためにメルマガやLINEでのメッセージ配信で販促活動を行い、お客様に選ばれる努力をしています。
澤井珈琲で珈琲をご購入いただいた方には、「珈琲の香り袋」という消臭剤を同梱しています。お客様の毎日が澤井珈琲で始まり、外出時の玄関には「珈琲の香り袋」、通勤中や休憩時間にメルマガやLINEでのメッセージ配信で情報を得ていただく、そんな一日中「澤井珈琲まみれ」になってもらうことをマーケティング戦略としています。

森谷さん:SHIROHATOは、下着のECサイト運営を京都で行っており、感動するインナーライフをお客様にお届けすることを目的に、インナーウェア約1万点を販売しています。自社サイト以外には楽天市場、PayPayモールなど国内では10店舗を運営しています。

森谷さん:SNSのマーケティング戦略では、まず、Instagramでユーザーに認知していただき、Twitterでは商品やキャンペーンの拡散によるさらなる認知度アップを目指しています。LINEは主に販促ツールとして、売上を取りやすい特徴があります。そして、LINEで獲得したお客様をアプリに誘導して、いわゆるロイヤルカスタマーに育成するような戦略を立てています。
ECの課題とLINEの導入背景

澤井さん:澤井珈琲はネットに出店して20年目になります。20年前はメルマガの開封率が高かったのですが、スマートフォンが普及するなかで、開封率が下がっていました。そこで、お客様とよりコミュニケーションを取るためにLINEにチャレンジしました。
森谷さん:メルマガ配信の開封率が年々下がっていたこともあり、お客様とつながれる新たなコミュニケーションツールを探していました。LINEはお客様が気軽に使えることと、開封率・送客率ともに高く出ておりまして、新たな販促ツールとして使えると考えました。
売上を上げるためのLINE公式アカウント運用ノウハウ

友だち追加
澤井珈琲の事例

楠木さん(LINE):澤井珈琲さんは、ECサイト内にLINEの友だち追加のバナーを設置する他、LINEで配布するクーポンの割引率をメルマガより高く設定して、お客様の定着を試みる取り組みをされています。
澤井さん:メールは受信ボックスにいくらあっても気になりませんが、LINEは未読メッセージがあると気になるので必ず開いてもらえます。店舗側としては、伝えたい情報があるので配信しているわけですから、見てもらえるのは嬉しい。お客様により見ていただけるよう、メルマガでもサイト訪問でもLINEの友だち追加につながるよう、強力な施策を実施しています。

楠木さん:澤井珈琲さんは、Yahoo!ショッピング実施の「ズバトクキャンペーン」において、LINEの友だち追加がきるようにカスタマイズしていただき、3万人以上の友だち追加という高い結果を出されています。PayPayモール店と楽天市場店の合算値で、2022年7月時点で21万人以上に友だち追加をしていただいている状況です。
澤井さん:弊社にはメルマガ会員が約70万人いらっしゃるのですが、LINEはわずか4年で21万人以上という結果に大満足しています。友だちが増えて実感するのは、LINEでメッセージ配信をすることでアクセスや売上などにすごく反応があることです。反応があると、どうやってお客様を喜ばせようかわくわくします。LINEのメッセージ配信は、スタッフも楽しい取り組みです。
SHIROHATOの事例

楠木さん:SHIROHATOさんでも、サイトやメルマガにLINEの友だち追加の導線を置かれています。また、LINE VOOMという新サービスをご活用いただいています。

楠木さん:さらに、公式キャラクター「ハトコちゃん」のLINEスタンプを作成、友だち追加するとダウンロードができる仕組みで、メルマガやSNSでも告知をされていました。

楠木さん:特徴的なのが、友だち追加をするとどういう内容が配信されるのか、最初に特典紹介ページに明記があることです。また、モールイベントに合わせてクーポンを設定するなど、友だち追加後のブロックを最小限に抑える取り組みをされています。SHIROHATOさんのLINE公式アカウント経由の売上の57%(※2022年7月実績ヤフー調べ/白鳩許諾済み)は、友だち追加後に最初に配信される「あいさつメッセージ」経由となっています。
森谷さん:あいさつメッセージ経由の売上は、新規友だち追加をされた方に配信しているクーポンの影響が大きいです。友だち追加時が一番興味を持っていただいているはずなので、早い段階で購入いただけるようにクーポンを配信しています。また、すぐにブロックされないよう、友だち追加による特典をあいさつメッセージで送っています。友だち追加によりどんなメリットがあるのか最初に提示することが、LINE公式アカウントの運用で大事です。
メッセージ配信
澤井珈琲の事例
楠木さん:澤井珈琲さんでは、メッセージ配信のポイントを3つにまとめられています。
- まずは友だちを増やす
- 友だちが増えるとサイトのアクセスが増える
- お客様からの反応があると運用も楽しくなっていく

澤井さん:メッセージ作成のポイントが、写真・画像で見せることです。LINEはコミュニケーションツールなので、何を行っているのか、何がお得なのか第一印象でわかるようにシンプルに伝えることが大切です。また、価格帯ごとにクーポンを複数用意して、買わない理由を作らないように徹底しました。
弊社は珈琲屋なので朝の注文が多い傾向があり、メッセージ配信のタイミングとして朝、コーヒーを飲むタイミングを狙っています。モールのセール時は前日や前々日にメッセージ配信を行ってお客様に購入を検討していただけるようアピールしつつ、当日に最後の一押しを行いました。LINEは、このように店舗側が好きなタイミングでメッセージを送れるのがメリットだと思います。
楠木さん:澤井珈琲さんはモールのセールが開催されるターゲットデー(日曜日)に合わせた運用をされています。平日の情報配信に加えて、セールについて案内するメッセージをターゲットデーに配信して、その日に合わせて人的リソースも確保されています。こういった取り組みの結果、売上の曜日別割合は日曜日が68%(※LINE公式アカウント経由のPayPayモール店の売上2022年7月実績ヤフー調べ/澤井珈琲許諾済み)を占めているのです。
澤井さん:ターゲットデーはありがたい施策です。モールのターゲットデーは、ユーザーの購買意欲も高いので、ほしい商品を提案することで売上につながりますし、人員配置や在庫管理を合わせやすくなります。

楠木さん:澤井珈琲さんでは、リッチメニューの応答メッセージ機能を活用したWeb接客を行われています。
澤井さん:応答メッセージ機能で、お客様に好きなコーヒーのタイプ・種類を選んでもらい、最後におすすめの珈琲を提案する双方向の情報発信ができるレコメンドを試したところ、お客様がおもしろいように次のステップに進んでくださり、離脱率も抑えられました。
SHIROHATOの事例
森谷さん:メッセージ配信のポイントは2つあります。1つは、セグメント配信です。「オーディエンス」機能を使ってセグメントを行い、効率的な配信を心がけています。特に、メッセージの開封者をしぼれる「インプレッションリターゲティング」を多用しています。
もう1つが、メッセージ配信のタイミングです。LINEは即時性のあるツールなので、商品の新着情報などはメルマガより先に配信しています。また、イベント告知については、LINEは開始直前、メルマガは購入が高まる時間帯と、媒体によりタイミングをずらしています。

森谷さん:リッチメニューは、販促メニューとデフォルトメニューを使い分け、お客様がいつ友だち追加をしても求める情報にアクセスでき、サイトに来てもらえるよう、必ず表示しています。また、ユーザーの多くがスマホを右手親指で操作することから、親指が届きやすい右上が押されやすいというデータもあり、その位置に一番クリックしてもらいたい情報を掲載しています。Web接客への活用にもチャレンジ中です。

森谷さん:自社サイトのアカウントは、ハイプライスなブランドやインポート商品などを好む、下着好きなユーザー様が多く、ブランド情報や機能などの商品詳細、新商品情報などを訴求しています。一方、モールのアカウントはお買い物上手な方が多く、イベント訴求などモールのターゲットデーに合わせた運用をしています。

楠木さん:SHIROHATOさんの施策で特徴的なのが、お客様に商品をカートまたはお気に入りに追加していただくタイミングと、購入していただくタイミングの二回、配信を行っていることです。
森谷さん:PayPayモールはお買い物上手なユーザーが多い印象で、事前にほしい商品をカートに追加しておいて、後日ポイント還元率が高い日曜に購入する傾向が見られます。そのため、事前にセールクーポン情報を配信しておいて、トラフィックがあがるタイミングで二回目の配信を行います。
効果
澤井珈琲の事例
【LINE公式アカウント経由の売上】
(※LINE公式アカウント経由のPayPayモール店の売上2022年7月実績ヤフー調べ/澤井珈琲許諾済み)
- 2021年11月300万円超(LINE公式アカウント開設)から2022年7月までで売上が800万円と2.3倍
- 「超PayPay祭」でLINE公式アカウント経由の売上だけで約1,500万円、月間売上ギネスを更新
【LINE公式アカウントの購入者傾向】
(※2022年4月~7月実績ヤフー調べ/澤井珈琲許諾済み)
- 直近4カ月間の一人当たりの合計購入金額は、PayPayモール店全体と比較して1.3倍
- メルマガ経由の購入者数にLINE経由の購入者数が迫る勢い
【メルマガとの比較】
(※2022年7月実績ヤフー調べ/澤井珈琲許諾済み)
- LINEの開封率はメルマガの3.3倍、クリック率は1.7倍
澤井さん:4カ月でここまで結果が出るとは思いませんでした。売上の上限値はその会社が持っているリストの上限値だと考えています。リストの上限値が20万人から50万人になれば、売上がもっと広がります。そのために、より多くのお客様に情報を届けられるようコミュニケーションツールをアップデートする必要があり、LINEはそれができるツールです。
SHIROHATOの事例
【LINE経由の売上推移】
(※2021年11月~2022年7月白鳩調べ)
- 2016年11月にアカウント開設(PayPayモール)、2021年11がつよりLINEの活用を本格化し、2022年7月に友だち数10万人突破
- 本格運用開始から9カ月で、PayPayモールにおけるLINE経由の売上割合が15%に
【LINE公式アカウントの購入者傾向】
(※2022年4月~7月実績ヤフー調べ/白鳩許諾済み)
- 直近4カ月間の一人当たりの合計購入金額は、PayPayモール店全体と比較して1.6倍
- 20~30代の購入者の増加、いずれの世代でもメルマガ経由の購入者数を上回る
【メルマガとの比較】
(※2022年7月実績LINE・ヤフー調べ/白鳩許諾済み)
- LINEの開封率はメルマガの3.7倍、クリック率は5.1倍
森谷さん:LINEユーザーはLTVが高く、PayPayモール店全体と比較して1.6倍です。PayPayモール主導の転換促進系のバナーを使ったことが、購入に至りやすかったのだと思います。LINEにより今までアプローチできていなかった若年層を多く獲得できたので、今後、LINE施策を強化するなかで、若い世代の購入数を伸ばしていきたいと考えています。
自社サイトを含めたLINE公式アカウントのなかで、PayPayモールが一番LINE経由の売上が高くなっています。イベント訴求が効果的で、PayPayモールのサイト自体の売上も伸びています。それをけん引しているのがLINEです。ZホールディングスとLINEの経営統合により、PayPayモールからLINEへとより多くの誘導機会があるので、今後も売上を伸ばしていきたいです。
今後のLINEの活用について
澤井さん:目標は、メルマガ登録者数を超える友だち70万人以上です。また、LINEを読み物として活用していきたいと考えています。澤井珈琲をこうやったら楽しめるという、想いを伝えるコミュニケーションを提供して、お客様のより身近な存在になりたいです。そうすると、珈琲屋として自分たちの仕事がもっと好きになりますし、スタッフも楽しみながら、お客様を巻き込んで新しいビジネスができるのではないかと思います。
森谷さん:今後も新しい友だちを増やしていきたいです。特に、LINE VOOMを活用して、新規との接点を強化したいと思います。また、獲得したお客様に再度来店して、リピート購入していただけるよう、つながりの強化にも取り組みたいです。顧客属性に基づいたより詳細なセグメント配信や、カゴ落ち・クーポン未使用への追い打ち配信などで、LINE経由の売上をさらに拡大させていきます。
セミナーに参加してみて
LINEとECは相性が良いというのが感じられました。とはいえ、LINEを導入したらすぐ効果が出るわけではなく、友だち追加をしてもらうための工夫や、ブロックを防ぎメッセージを受け取り続けてもらうための配信内容やタイミングの調整、LINEの機能の活用など、EC運営側の施策がより成果に反映されるツールだと思います。
メルマガの開封率低下に悩んでいるECサイトは多そうです。今回のセミナーで紹介された、澤井珈琲とSHIROHATOが行ってきた施策は、お客様とコミュニケーションを取れる新しい方法を模索している、LINEを導入したい、あるいは導入しているECサイトにとって非常に参考になるのではないでしょうか。
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