苦情最多はインターネット広告、JARO発表の「景表法に関するヒアリング説明資料」を解説

ECサイトの広告・表示では、商品を魅力的に見せることも重要ですが、同時に法律や業界のルールに沿うことも必要です。特に注意すべき点の参考情報として、本記事では、公益社団法人日本広告審査機構(以下「JARO」)が2022年4月14日に発表した「景表法に関するヒアリング説明資料」について解説します。この資料では、2020年度~2021年度上期にJAROに寄せられた広告に関する苦情・意見についてまとめられています。

※出典元:JARO「景表法に関するヒアリング説明資料

JAROとは?

JARO(Japan Advertising Review Organization=公益社団法人日本広告審査機構)は、1974年に設立された、広告・表示に関する民間の自主規制機関です。広告主や新聞社、出版社、放送会社、広告会社や広告制作会社など、広告に関係する幅広い企業が参加しています。

JAROでは、広告に関する消費者からの意見を受け付けています。寄せられた意見のうち、適切でない広告・表示に関する意見については審査を行い、必要に応じて広告主に改善を促します。また、関係団体や行政・自治体との連携・協力、広告・表示に関するルールや最新事例を学ぶための啓蒙活動などを行っています。

JAROへの相談受付状況

「景表法に関するヒアリング説明資料」(以下「説明資料」)によると、JAROにおける2020年度の相談受付件数は15,100件。相談件数は2014年度より増加傾向にあります。そのひとつの要因として、2014年度よりオンラインによる意見受付が追加されたことが考えられます。相談内容には「照会」や「広告以外」もありますが、大半を占めるのが「苦情」です。

苦情の詳細

JAROに寄せられた意見を業種別に見ると、苦情・意見の件数が多い業種は2020年度と20201年度上期で下表のように変化しています。

2020年度2021年度上期
1デジタルコンテンツ等化粧品
2健康食品(痩身食品含む)医薬部外品
3化粧品オンラインゲーム
4携帯電話サービス携帯電話サービス
5医薬部外品健康食品(痩身食品含む)

化粧品・医薬部外品は、消費者からの苦情・意見が多い業種です。特に2021年度上期は、化粧品に関して前年比190.5%、医薬部外品に関して前年比130.8%と、苦情・意見が増加しています。化粧品や医薬部外品の広告・表示には、景表法のほかに薬機法も大きく影響するため、該当商品を扱う場合は注意しましょう。

オンラインゲーム、携帯電話サービス、健康食品に関しては前年に比べ苦情・意見の数自体は減少しています。ただ、健康食品については、ECサイトの広告・表示で問題となることの多い業種なので、2021年度上期において苦情・意見の数は減っているものの、引き続き注視したいところです。

媒体別に見ると、2020年度・2021年度上期ともに、苦情・意見が多い媒体は以下の通りです。説明資料では15位まで紹介されています。

  1. インターネット
  2. テレビ
  3. ラジオ
  4. チラシ
  5. 新聞

インターネットとテレビは、他と比べて苦情・意見の多い媒体です。インターネットはそれだけ不特定多数の人に見られているということでもあり、ECサイトも例外ではありません。2021年度上期の苦情・意見の件数の変化としては、ラジオに関してのみ、前年比124.6%と増加しています。他の媒体は前年に比べ減少しています。

年代別の苦情の傾向

2020年度、JAROに寄せられた苦情・意見を年代ごとに見ると、下表の業種・媒体の順に多くなっています。なお、説明資料では10位まで紹介されています。

【業種別】

60代以上10代・20
1健康食品(痩身食品含む)オンラインゲーム
2医薬部外品化粧品
3自動車健康食品(瘦身食品含む)
4携帯電話サービス電子書籍・ビデオ・音楽配信
5医薬品携帯電話サービス

世代によって、苦情・意見の多い業種が大きく異なっています。これは、年代ごとに利用の多い業種が異なることを反映しているものと考えられます。

60代以上では、特に、医薬部外品や携帯電話サービスに関して、前年に比べて苦情・意見の件数が増加しています。10代・20代では、前年に比べて全体的に苦情・意見の件数が大きく増加しており、若い世代でも広告・表示への関心が高まっていることがわかります。

【媒体別】

60代以上10代・20
1テレビインターネット
2インターネットテレビ
3ラジオラジオ
4新聞屋外広告
5折込広告チラシ

いずれの年代でも、テレビ、インターネット、ラジオは大きな影響力を持っていることがわかります。60代以上では、テレビ・インターネットに関する意見・苦情が、前年に比べて増加し、10代・20代では、チラシ以外のすべてで、意見・苦情が前年に比べて増加している状況です。

コロナ禍における状況

2020年4月~2021年3月の間、JAROに寄せられた意見・苦情は、月1,000件前後で推移しています。そのなかで、特にコロナ関係の意見が多かったのが2020年4月で、全体の21.7%を占めています。次いで2020年の5月で10.4%。以降は10%を切る状態です。コロナ関係の意見は減少傾向にはあるものの、一定の割合で存在しています。

コロナ関係の意見で多い内容が、「不当な表示・効果をうたうもの」「広告時期に関するもの(時期的に不適切)」「倫理面に関するもの(不謹慎・好ましくない)」など。「不当な表示・効果」は、コロナ関係以外でも広告・表示で問題になりやすい点です。

商品・サービス別に見ると、「除菌関連商品」「行政・公共・その他啓発」「マスク」「交通レジャー」「食品(飲料、健康食品含む)」の順に意見が多くなっています。

広告・表示に関するルール

広告・表示に関するルールは、大きく次の3つに分類されます。

  1. 法律
  2. 業界ごとのルール(公正競争規約)
  3. 自主基準など

広告・表示に関する法律

広告・表示に関する主要な法律としては、以下があります。

  • 景品表示法(景表法)
  • 医薬品医療機器等法(薬機法)
  • 特定商取引法(特商法)
  • 健康増進法 など

これらの法律のうち、特にECサイトの広告・表示に大きく影響しているのが、景品表示法です。景品表示法では、次に説明する「優良誤認表示」と「有利誤認表示」が、「不当な表示」として禁止されています。

景品表示法に違反した場合、消費者庁より措置命令が出されます。措置命令では、誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずることができます。さらに、要件を満たす違反については、対象商品・サービスの売上額3%分の課徴金が賦課される場合があります。

優良誤認表示

「商品・サービスの品質、規格その他の内容」についての、以下の不当表示。

  • 実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示
  • 事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示

有利誤認表示

「商品・サービスの価格その他取引条件」についての、以下の不当表示。

  • 実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
  • 競争業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

業界ごとのルール(公正競争規約)

公正競争規約とは、公正取引委員会や消費者庁の認定を受け、事業者や事業団体が表示または景品類に関する事項について自主的に設定した業界のルールです。78団体が「表示規約67件」「景品規約37件」を定めています。

ルールを今一度見直そう

広告・表示についての消費者からの意見・苦情が多くなると、関係機関や行政のチェックが厳しくなります。説明資料で特に意見・苦情が多い業種は、今一度、関連ルールを踏まえて広告・表示を見直すことをおすすめします。

ECサイトの場合、Web広告のような広告としての制作物以外にも、ECサイトに掲載している文章などもすべて対象となります。特に景表法は、ルールに背くつもりはなくても、商品の訴求に力を入れるあまりルールを逸脱してしまうことが起こりやすいので注意が必要です。

広告・表示の作成手順に、関連ルールのチェックを入れるようにしましょう。 また、顧客の中心層が若い年代なのか、高齢の年代なのかによって、消費者にとってわかりやすい説明が異なります。自社の顧客に合わせた、わかりやすい説明を心がけましょう。

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