環境配慮商品は誰に何を伝えるべきか――消費者庁の研究から考えるECの商品訴求

「多少高くても、環境に配慮した商品を買いたい」。そう考える人が、実際にその商品を積極的に選んでいるとは限りません。価格に一定の理解があっても、買い物の場面では選ばれない。この隔たりを考える材料となる研究レポートが、2026年9月11日に消費者庁から公表されました。
テーマは「環境配慮型商品の購買促進に向けた政策ターゲットと情報提示手法の検討」。価格への考え方と購入状況を組み合わせ、購入を後押しする余地のある層を探った研究です。食品や日用品を扱うEC事業者にとっても、環境への取り組みを誰に、どのように伝えるかを見直すヒントがあります。
多少高くても買う意向がありながら購入頻度が低い層
研究を行ったのは、消費者庁新未来創造戦略本部の国際消費者政策研究センターです。分析に使った「令和6年度消費者意識基本調査」は、2024年11月1日〜17日に実施。全国の満15歳以上の日本国籍を有する人から無作為に抽出した1万人に郵送で調査票を配り、郵送とWebで5,046人から有効回答を得ています。2026年9月に新たなアンケートを取ったものではなく、既存の回答データを分析した報告です。

研究では、環境配慮商品に多少高い価格を支払う意向と、普段の購入状況の2軸で回答者を分類しました。そのうち、価格の上乗せをある程度受け入れても、購入頻度は低い層を「Last One Mile(Segment_C)」と名付けています。4区分に分類された4,907人のうち822人、約17%に当たります。
ここでいう購入頻度は、注文履歴から数えた回数ではありません。「かなり購入している」「ある程度購入している」など、本人の回答をもとにした区分です。また、価格を許容する側には「たまには購入してもよいと思う」という回答も含まれます。
それでも、価格の上乗せに否定的ではないのに、日常の選択には結び付いていない層が存在する点は押さえておきたいところ。ECで環境配慮商品が売れないとき、値下げ以外に検討できることがあるかを考える出発点になります。
購入を妨げる要因として目立つ商品の見つけにくさ

その背景を考えるうえで、元の基本調査にある「購入しなかった理由」も参考になります。環境配慮商品を「あまり購入していない」などと回答した2,149人に理由を尋ねたところ、最も多かったのは「どの商品が環境に配慮されているかわからないから」で55.0%。価格への不満は30.2%、本当に環境に配慮しているか疑わしいという回答は27.0%でした。複数回答のため、これらの理由は重なり得ます。
この2,149人は、先ほどの822人に限定した集計ではありません。ただ、購入頻度が低い人全体では、商品を識別できないことや説明への疑いも、価格と並ぶ検討課題として挙がっています。
一方、環境配慮商品を購入している2,825人に、商品を知ったきっかけを聞くと、パッケージの記載が76.6%で最多でした。「店頭ポップや通販サイトの商品紹介等」は30.8%。ECだけの効果を切り出した数字ではありませんが、商品に接する場所での説明が認知のきっかけになっていることはわかります。
ここからEC運営に引き寄せて考えると、企業のサステナビリティページに取り組みをまとめるだけでは、個々の商品を比較している人に届かない可能性があります。商品画像や説明欄で、その商品が何に配慮しているのかを判断できるようにする。その接点の見直しから始められそうです。
購入頻度が異なる2つの層は何を見て商品を選ぶのか
研究レポートは、価格を許容する側の人を、購入頻度が高い層と低い層に分け、普段の買い物で気にする項目を比較しています。日用品の結果を抜粋すると、次のようになります。
日用品を買うときに気にする項目 | 購入頻度が高い層 | 購入頻度が低い層 |
|---|---|---|
価格・維持費 | 86.0% | 85.0% |
品質・機能 | 81.9% | 78.3% |
原材料・素材 | 47.7% | 31.3% |
生産地・製造国 | 43.8% | 32.0% |
環境への負荷 | 36.6% | 15.9% |
両層とも価格の上乗せをある程度許容する人。高い層は2,217人、低い層は822人。食料品以外の日用品についての複数回答で、年齢などを調整する前の単純比較。設問は、環境配慮商品に限らない普段の購入基準を尋ねている。
価格・維持費を気にする割合は両層で近く、いずれも8割台。対して、環境への負荷では20.7ポイント、原材料・素材では16.4ポイントの差があります。食品でも、環境負荷を気にする割合は購入頻度が高い層で27.8%、低い層で13.7%でした。
環境配慮商品を積極的に選ぶ人は、普段の買い物でも素材や環境負荷に目を向ける傾向があると読めます。ただし、この比較で情報の見せ方と購入の因果関係が証明されたわけではありません。売り場に応用する際には、購入頻度が低い層も強く気にしている価格や品質を入口に、素材や環境面の特徴をどう伝えるかが検討点になります。
商品ページで試したい説明の組み立て方
ここからは、調査結果を踏まえたEC運営上の考察です。改善の方向として考えられるのは、環境への配慮を、購入時に使える具体的な情報にすること。例えば、次のような見直しが候補になります。
どこに環境への配慮があるのかを示す
「環境にやさしい」という説明に加え、配慮している対象を明確にします。容器に再生素材を使っているのか、詰め替えによって包装材を減らせるのか、使用時の電力を抑えられるのか。対象がわかれば、消費者は他の商品との違いを比較しやすくなります。
認証や環境ラベルがある商品なら、マークとともに、その意味や適用される範囲を短く添える方法もあります。容器への取り組みを商品の中身全体の評価と混同させないなど、説明の範囲をそろえることも、信頼できる情報にするための工夫です。
使い勝手や費用と一緒に説明する
日用品では、購入頻度が低い層でも品質・機能を気にする人が78.3%いました。環境面の説明を増やすときも、使い心地や容量、使用回数など、元から重視されている情報を十分に伝える必要があります。
例えば詰め替え商品なら、対応する本体容器、1袋で詰め替えられる回数、保管方法をわかりやすく示す。そのうえで、同じ量を本体付きで買う場合との包装材の違いを、確認できるデータで説明する方法が考えられます。購入者が日常の使い方を想像できる状態に、環境面の価値を重ねる構成です。
1回当たりの費用に利点があるなら、総額と使用回数を併記して比較しやすくする。反対に、費用が高くなる商品なら、その差と、素材や製造上の特徴を合わせて説明することになります。価格への一定の許容を、そのまま無条件の購入意向と捉えないことが大切です。
比較できる根拠を近くに置く
環境配慮商品を購入しなかった理由には、説明への疑いも挙がっていました。そこで、削減率を示す場合は、何と比べ、どの範囲を計算した数字なのかも一緒に掲載する。素材の使用割合なら、対象となる部位や確認資料にたどれるようにする。こうした情報があると、読み手は主張の中身を確かめられます。
商品ページの冒頭では取り組みの要点を短く伝え、詳しく知りたい人には説明や根拠へのリンクを用意する形でもよいでしょう。すべての情報を一度に読ませる必要はありません。まず違いが伝わり、必要に応じて裏付けまで確認できる順番を考えたいところです。
環境訴求を加えた後の購入行動まで確かめる
今回の研究は、既存のアンケートから購入状況と意識の関連を調べたもので、商品ページの変更によって売上が増えると実証したものではありません。また、研究者個人の見解をまとめたレポートであり、消費者庁の公式見解を示すものでもありません。
EC事業者が活用するなら、まず対象商品を絞り、価格や主要な販促条件をできるだけそろえながら、説明の有無や順序を比較する方法が考えられます。説明へのクリックだけでなく、カート投入や購入まで変化があるかを追い、素材や環境面についての問い合わせ内容も確認する。そこで得た反応を、次の修正につなげます。
環境に配慮した商品を用意した後にも、消費者がその違いに気付き、意味を理解し、価格や使い勝手と合わせて選ぶまでの過程があります。今回の調査をきっかけに、自社の商品ページではその判断に必要な情報がそろっているか、購入者の目線で見直してみてはいかがでしょうか。
参照資料
消費者庁 国際消費者政策研究センター「環境配慮型商品の購買促進に向けた政策ターゲットと情報提示手法の検討」本文(2026年9月)
消費者庁「令和6年度消費者意識基本調査」調査の概要
消費者庁「令和6年度消費者意識基本調査」調査結果の概要
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