問い合わせ対応時間を約70%削減!商品登録・レビュー返信にも広がる楽天市場の店舗向けAI【参加レポート】
説明会の概要

楽天グループ株式会社(以下、楽天)は、2026年7月7日に「楽天市場」におけるAI活用に関する説明会を開催しました。本記事では、説明会の内容から、特に出店店舗の業務効率化や運営改善に関わるAI活用を中心に紹介します。

出店店舗の約半数がAI機能を活用、楽天市場の店舗運営支援が拡大

楽天市場では、ユーザー向けに「楽天市場 AIコンシェルジュ」や「ディスカバリーレコメンデーション」を提供し、商品との出会いや買い物体験の向上を進めています。一方、出店店舗向けには、店舗運営システム「RMS」上で利用できるAI機能群「Rakuten AI for RMS」を提供。問い合わせ対応、商品説明文作成、画像加工、レビュー返信、データ分析など、日々の運営業務を支援する取り組みも広がっています。

楽天は、AI化を意味する造語として「AI-nization(エーアイナイゼーション)」を掲げ、グループ全体でAI活用を推進しています。楽天市場においても、顧客体験の向上と出店店舗の運営支援の両面でAIの導入が進められているとのことです。

店舗向けAI機能を毎月活用している出店店舗は、2024年12月時点の25%から2026年5月には50%へ拡大。AI活用は一部の先進的な店舗だけのものではなく、楽天市場における店舗運営の現場にも浸透し始めています。

説明会で印象的だったのは、楽天市場の主役を「個性豊かな出店店舗」と位置づけていた点です。AIは店舗の個性を置き換えるものではなく、店舗とユーザーの出会いを増やすために活用していくという考え方が示されました。

プチギフトmomo-fukuに見る、少人数店舗のAI活用

店舗向けAI機能の活用例として紹介されたのが、ギフト専門店「プチギフトmomo-fuku」の取り組みです。同店を運営する株式会社百福の木澤典子氏が登壇し、問い合わせ対応や商品登録、画像加工、レビュー返信などでの活用状況を語りました。

プチギフトmomo-fukuは、2011年1月にオープンしたギフト専門店です。現在は5名体制で運営しており、2021年4月度には月間優良ショップを受賞。店舗が講師となって売上アップを目指す勉強会「NATIONS」において、BASICリーダー店舗およびADVANCEチャレンジ店舗として参加されています。

問い合わせ対応は月67時間から20時間へ、約70%削減

同店がAI活用の効果を大きく感じているのが、問い合わせ対応です。ギフト商材では、のしの作法や配送に関する質問など、用途や地域によって細かな確認が必要になる場面が少なくありません。以前は1件あたり約10分かかっていた対応が、AIの活用によって1〜3分に短縮。月間では約67時間かかっていた問い合わせ対応時間が、約20時間まで削減できていると紹介されました。

効率化だけでなく、スタッフの心理的な負担も軽くなったといいます。敬語やマナーに不安を感じながら返信文を考える時間が減り、AIが作成した下書きをもとに、自信を持って対応できるようになったとのことです。

迅速な返信は、顧客の安心感にもつながります。同店では「すぐに返信が来た」「安心して買い物ができた」といったレビューも寄せられるようになり、問い合わせ対応の改善が購入前後の信頼形成にも関わっている様子がうかがえました。

商品数は約1,000点から1万点超へ、商品登録にもAIを活用

問い合わせ対応以外にも、商品登録や画像加工、レビュー返信などでAIを活用しています。

商品登録では、以前は商品説明文の作成を外部に発注していた時期もあったそうです。現在はAIによって商品説明文の作成を効率化できるようになり、当初約1,000点だった商品数は、1万点を超える規模に拡大したと紹介されました。

画像加工では、商品画像の背景変更機能を利用しています。他のAIツールでは、ラベルや柄、縦横比など、商品そのものの見え方が変わってしまうことがあった一方、楽天のAIツールでは商品の特徴を保ったまま加工できるため、安心して使えると評価していました。

ECでは、商品画像が購入判断に与える影響は小さくありません。見栄えを整えることは重要ですが、実物と異なる見え方になってしまえば、購入後の不満や返品につながる可能性もあります。その意味で、商品そのものを変えずに画像を加工できる点は、店舗にとって重要なポイントです。

レビュー返信でも、RMS内で完結できる点や、商品ページ情報を踏まえた返信文を作成できる点が評価されています。返信文がワンパターンになりがちな課題に対して、AIが商品内容やレビュー文脈に沿った表現を提案。より具体的なコミュニケーションにつながっているようです。

72.9%が深掘り分析、「データ分析エージェント」で意思決定支援へ

説明会では、2026年4月30日に提供開始した「データ分析エージェント」についても紹介されました。

データ分析エージェントは、AIエージェントと会話しながら楽天市場内のデータを分析できる機能です。店舗がテキストで質問すると、実際の数値、その数値をもとにした洞察、さらに深掘りすべき観点が提示されます。

データを確認できることと、改善につながる分析ができることは別です。複数の画面を行き来しながら数字を確認する必要があったり、どの観点で深掘りすればよいかわからなかったりする店舗も少なくありません。

データ分析エージェントでは、会話形式で分析を進められるため、データ活用のハードルを下げることができます。説明会では、利用店舗の72.9%がデータの深掘りを行っていることも示されました。

文章作成や画像加工といった作業支援に加え、データ分析までAIが支えるようになれば、店舗は日々の業務効率化だけでなく、課題発見や施策検討にもAIを活用しやすくなります。

AI活用を定着させるための学習支援も提供

AI機能は用意されているだけでは、十分に活用されるとは限りません。店舗側がどの業務にどう取り入れるかを理解し、自店の運営に合わせて使いこなすことが重要です。

そのため楽天では、機能提供に加えて、AI活用を学ぶ場も用意しています。オンライン講座「楽天AI大学」では、AI機能の使い方や店舗の活用事例を学べるほか、オフラインイベントや店舗同士の学びの場も設けています。

説明会では、AIに詳しい店舗だけでなく、これから活用を始める店舗に向けても、利用を促す環境づくりを進めていることが紹介されました。機能そのものの拡充に加え、店舗がAIを業務に取り入れやすくする支援も、楽天市場におけるAI活用の広がりを支える要素といえます。

説明会に参加して:AIで削減した時間を、店舗はどこに使うのか

今回の説明会で紹介された内容を見ると、楽天市場のAI活用は、ユーザー向けの買い物体験だけでなく、出店店舗の日々の業務支援にも広がっていることがわかります。

問い合わせ対応、商品登録、画像加工、レビュー返信、データ分析といった業務は、どれも店舗運営に欠かせないものです。一方で、少人数で運営する店舗にとっては、日々の作業に追われ、商品企画や販促改善、顧客理解に十分な時間を割きにくい場面もあります。

AIがすべてを自動化するわけではありません。問い合わせ回答や商品説明文、レビュー返信は、最終的には店舗が確認し、自店の方針や顧客対応に合う形へ整える必要があります。データ分析についても、AIが示した洞察をもとに、どの施策を実行するかを判断するのは店舗側です。

だからこそ重要になるのは、AIによって削減された時間を何に使うかです。商品企画、接客改善、販促施策、ページ改善、顧客理解など、店舗が本来注力すべき業務に時間を振り向けられるかどうかが、今後のAI活用の成果を左右するでしょう。

楽天市場のAI活用は、店舗の個性を置き換えるものではなく、店舗が自店の強みを発揮するための支援として広がりつつあります。AIの導入によって生まれた時間を、どのように売上向上や顧客体験の改善につなげていくか。楽天市場に限らず、EC事業者にとって今後のAI活用を考えるうえで、一つの視点になりそうです。

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