
正月の新聞広告は、短期的な販促というよりも、企業のスタンスや考え方が色濃く表れやすい広告枠だと感じています。
今回は、例年行っている広告出稿数の調査や全体傾向の分析とは少し視点を変え、実際に新聞を読み進める中で、個人的に印象に残った広告クリエイティブを取り上げました。
キリン、セイコー、ソーダストリーム、パルコ。いずれも、商品そのものを前面に押し出すのではなく、新年というタイミングに、どんな文脈で生活者と向き合うかが丁寧に設計されていた広告です。
なお、本記事では4つの広告に絞って紹介していますが、各新聞に掲載された広告クリエイティブ一覧は、下記よりダウンロードできます。正月広告の全体像を俯瞰したい方は、あわせてご活用ください。
この記事の目次
キリンホールディングス:「健康」を起点にした意外性

正月の新聞広告で、まず目に入ったのは、大谷翔平さんを起用したキリンホールディングスの広告でした。大谷さんの起用はやはりインパクトがあります。
一方で、キリンといえばビールのイメージが強く、「健康?」と少し意外に感じましたが、広告の下部を見ると、「免疫ケア」という機能性表示食品の紹介があります。「あ、キリンってこういう商品も扱っているんだ」と。
大谷翔平さんは「免疫ケア」推進アンバサダーとして起用されており、正月の新聞広告とあわせてTVCMも展開されています。こうして見ると、この正月広告は単体というより、年始から始まる一連の取り組みの入口として置かれていることがわかります。
▼参考
大谷翔平選手がキリンの「免疫ケア」推進アンバサダーに就任「免疫ケアを通じて、健康な人が増えてほしい」
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2025/1216_01.html
「免疫ケア」推進アンバサダー大谷翔平選手出演、新TVCM「大谷翔平の免疫ケア・新年」篇2026年1月1日より全国放映開始!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000165482.html
セイコーグループ:正月らしさを体験に変える設計

次に目に入ったのが、セイコーグループの広告でした。最初に見たキリンホールディングスの広告が、人や健康を軸にした表現だったのに対して、こちらは一転して、すごろくをモチーフにした構成になっています。
正月といえば、すごろく。このモチーフ自体はかなり王道で、セイコーといえば時計、時間というイメージとも相性がいいと感じます。
ARやスマートフォン連動の仕掛け自体は、いまでは珍しいものではありません。ただ、この広告で印象に残ったのは、すごろくのマス目に並んでいる中身でした。
紙面を読み進めていくと、そこに描かれているのは時計の話だけではありません。製造、計測、医療、データ処理、文化やアートなど、セイコーグループの事業や技術が、「進む」「進める」というすごろくの構造に沿って配置されています。
こうして見ると、この正月広告は、すごろくというわかりやすい正月のモチーフを使いながら、セイコーグループとして何をしている会社なのかを、あらためて示すものとして置かれているように感じます。
▼参考
動いて楽しい!SEIKOウゴロク
https://seiko-newyear2026.jp/
ソーダストリーム:年末年始の生活実感に寄り添う

正月の新聞広告を見ていく中で、ソーダストリームの広告も目に入りました。年末年始といえば、どうしても食べ過ぎてしまいがちです。年始の目標として「ダイエット」や「生活習慣の見直し」を立てる人も少なくありません。そうしたタイミングで、「食事の前の炭酸水で“食べ過ぎない”」というメッセージが前に出ている点が、印象に残りました。
僕自身、炭酸を飲むとけっこうお腹が膨れる感覚があります。この広告も、商品の機能を説明するというより、炭酸水をどう使うか、どんな習慣として取り入れるか。生活シーンそのものを切り取った構成に見えました。
ソーダストリームは、自宅で炭酸水を作るという体験を売ってきたブランドだと思いますが、ここでは「飲みたい瞬間に、好きなだけ」という日常の使い方が強調されています。
パルコ:セールを世界観で包む表現

続いて目に入ったのが、パルコの広告でした。紙面いっぱいに広がるビジュアルは、いわゆる正月の初売り広告とは少し違い、一瞬「これは何の広告だろう?」と立ち止まってしまいます。
実はこの広告は、パルコが年始に開催する大型セール企画「PARCO GRAND BAZAR」の一環として展開されているもの。今回は、公開20周年を迎えるアニメーション映画『パプリカ』とのコラボレーションが軸になっています。
映画の中で描かれる“夢と現実の境目が溶けていく”世界観を、そのまま広告表現に落とし込み、キャラクターたちが街を侵食していくような構図は、単なるセール告知というより、ひとつの体験の入口のようにも感じられました。
価格や割引率を前面に出すのではなく、まず世界観を提示し、そこからCM、館内演出、抽選会、ノベルティ、SNS施策へと広げていく。パルコらしい「文脈から始まるコマース」のつくり方が、正月の新聞広告にも表れています。
なお、特設サイトでは、この世界観をさらに拡張したアニメーション演出も用意されています。気になる方は一度覗いてみると面白いと思います。
▼参考
特設サイト:https://parco.jp/gb2026winter/
(公開期間:2025年12月16日〜2026年1月12日)
PARCO GRAND BAZAR公開20周年を迎える映画『パプリカ』とコラボ!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003698.000003639.html
まとめ:正月の新聞広告から感じた、企業のスタンス
今回、正月の新聞広告をいくつか眺める中で、個人的に印象に残ったのが、ここで紹介した4つの広告でした。どの広告も共通していたのは、「商品をどう売るか」より前に、新年というタイミングと、どう向き合うかを丁寧に設計している点です。
キリンは、大谷翔平さんを起点に「健康」という意外性のある切り口を提示し、セイコーは、正月らしい“すごろく”を通じて、グループとしての事業の広がりを体験させる。ソーダストリームは、年末年始の食生活という生活者の実感に寄り添い、パルコは、セールそのものをひとつの世界観として提示していました。
これら、僕が印象に残った広告に共通しているのは、新聞広告をゴールにせず、「気づき → 理解 → 次の体験」へと自然につなげている点です。正月という特別なタイミングだからこそ、企業のスタンスや考え方が、広告表現により素直に表れている。そんなことを、あらためて感じさせられました。
なお、本記事では印象に残った広告を中心に紹介しましたが、各新聞に掲載された正月広告のクリエイティブ一覧は、下記よりダウンロードできます。全体の傾向や他社の表現も含めて見たい方は、あわせてご活用ください。
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