
企業や個人事業主の間で、法人取引のオンライン化が進むなか、Amazonが提供するBtoB向けサービス「Amazonビジネス」は、法人顧客への販売機会を提供しています。
Amazonビジネスでは、販売事業者が法人や個人事業主に向けて商品を販売できる仕組みが整っており、法人価格や数量割引の設定、FBA(フルフィルメント by Amazon)の活用、販売データの分析などを行うことができるのです。
本記事では、Amazonビジネスの概要や主な機能や販売事業者にとってのメリットを、まとめました。
この記事の目次
Amazonが提供するBtoBマーケットプレイス「Amazonビジネス」とは
Amazonビジネスは、Amazonが運営する事業者間取引用(BtoB)マーケットプレイスです。法人や個人事業主など、あらゆる規模の事業者が対象で、出品者は法人顧客に向けて商品を販売できます。
この仕組みにより、企業の購買担当者はAmazon上で法人向けの価格設定や数量割引が適用された商品を購入でき、販売事業者は新たな販路として法人市場にアクセスすることが可能になります。販売や配送に関する業務の一部はAmazonのシステムが担い、出品者はAmazonの与信・請求・決済・配送ネットワークを活用して取引を行えます。
Amazonの発表によると、Fortune 100企業のうち55社がAmazonビジネスを導入しており、日本国内でも、政令指定都市の90%以上が出先機関の購買に利用しているとしています。民間企業に限らず、教育機関や自治体など、幅広い法人顧客との取引を行える点が特徴です。
法人販売を支援する4つの主要機能
Amazonビジネスでは、法人や個人事業主に向けた販売を行うための機能が用意されています。出品者は、通常のAmazon出品サービスと同じ操作環境で管理しながら、法人顧客向けの条件設定や販売データの分析を行うことができます。
①法人価格・数量割引の設定
出品者は、商品ごとに法人価格を設定できます。法人価格は、一般消費者向けの販売価格とは別に、法人や個人事業主の顧客に限定して表示される特別価格です。
また、購入数量に応じて段階的に割引を設定できる数量割引機能もあり、大口購入を促進することができます。顧客側から数量割引リクエストを送信できる仕組みもあり、柔軟な価格交渉が可能です。
②FBA(フルフィルメント by Amazon)の利用
Amazonビジネスの出品でも、FBA(Fulfillment by Amazon)を利用できます。商品の保管、出荷、配送、カスタマーサービスをAmazonが代行する仕組みで、出品者は在庫をAmazonのフルフィルメントセンターに預けるだけで、法人顧客への配送業務を効率化できます。
FBAを利用することで、Amazonの最先端の配送ネットワークを活用したスピーディな出荷が可能になります。
③ダッシュボードによる販売分析
「Amazonビジネス出品プログラム」の管理画面には、法人販売専用の分析ダッシュボードが用意されています。この画面では、法人向け販売の売上状況を一目で確認できるほか、個人向け販売との比較、顧客の業界別・セグメント別の売上分析などが行えます。
売れ筋商品の把握や主力製品のプロモーション計画など、販売戦略の立案に役立つ情報を得ることができます。
④Amazonによる与信・請求・回収代行
Amazonビジネスでは、与信審査・請求書発行・代金回収をAmazonが代行します。出品者が個別に法人顧客の与信リスクを負う必要はなく、Amazonが売上代金を回収し、出品者に支払う仕組みです。これにより、初めて取引する法人顧客に対しても安心して販売を行うことができます。
Amazonビジネスを導入する販売事業者の利点
Amazonビジネスを通じて出品することで、販売事業者は法人顧客との取引を効率的に進めることができます。既存の個人向け販売と同じプラットフォーム上で法人販売を行えるため、新しい販売チャネルとして導入しやすい点も特徴です。
法人顧客への販路拡大
Amazonビジネスは、企業や自治体、教育機関などの法人顧客が利用しています。出品者は、こうした法人・団体へのアクセスを得ることで、従来リーチできなかった顧客層に商品を届けることができます。
また、Amazonビジネスの利用者には、Businessプライム会員を含む購買意欲の高い法人顧客層も多く存在します。Businessプライムは、Amazonビジネスを利用する法人向けの有料会員プランで、迅速な配送や購買分析など、ビジネス利用に特化した特典が提供されています。
販売事業者にとっては、こうした購買頻度の高い会員層にも商品を訴求できる点がメリットといえます。すでに個人向けに販売している出品者も、同じシステム環境を使って法人販売を追加できるため、導入の負担が少なく済みます。
与信や回収業務の軽減
法人取引では、請求書発行や支払い遅延への対応など、個人向け販売にはない負担が発生します。Amazonビジネスでは、与信審査や代金回収をAmazonが代行するため、販売事業者はこれらの業務を自社で行う必要がありません。これにより、リスクを抑えながら法人販売を展開できます。
販売業務の効率化
FBA(フルフィルメント by Amazon)を活用することで、保管・出荷・配送といった業務をAmazonに任せることができます。受注後の作業負担を減らし、販売管理や商品企画など本来の業務にリソースを集中できます。
データを活用した販売戦略の立案
Amazonビジネスの分析ダッシュボードでは、売上構成や業界別の購買傾向などを可視化できます。これにより、販売事業者はデータを基にした価格設定や販促施策の検討が可能になります。定性的な感覚に頼らず、販売実績をもとにした判断ができる点も利点です。
導入企業で見られる成果と活用傾向
Amazonビジネスを導入した企業では、販路拡大や業務効率化など、共通した効果が見られます。既存の個人向け販売に加えて法人販売を開始した企業では、追加費用をかけずに新しい顧客層を獲得できたケースもあります。
また、請求や回収のプロセスをAmazonが代行する仕組みにより、与信管理や債権回収の負担を軽減できたという事例も多く見られます。さらに、Amazonの知名度や物流網を活用し、社内に常設の営業担当を置かずに販路を広げた企業もあります。
このように、Amazonビジネスは業種を問わず法人販売の仕組みづくりに活用されており、製造、商社、サービス業など多様な分野で導入が進んでいます。
出品の始め方と費用構造
Amazonビジネスへの出品は、通常のAmazon出品アカウントをベースに設定できます。
大口出品プランの登録者であれば追加費用なしで利用できます。大口出品プランでは、月額登録料4,900円(税込)に加え、商品が販売された際にカテゴリーごとの販売手数料が発生します。
Amazonビジネスでの販売もこの料金体系に含まれており、別途の登録料や利用料は不要です。小口出品プランではAmazonビジネスの出品機能を利用できません。
法人販売向けの特別な契約や審査が必要なわけではなく、既存の出品者も追加設定によって利用を開始できます。以下は、Amazonビジネスで法人向け販売を始めるまでの一般的な流れです。
Amazonビジネス出品プログラムに登録
まず、出品者アカウントでAmazonビジネス出品プログラムに登録します。Amazonビジネスの法人顧客に対して商品が表示されるようになり、法人向け販売機能を利用できるようになります。
法人価格・数量割引を設定
対象となる商品に法人価格や数量割引を設定します。この価格設定により、法人顧客がログイン時に特別価格を確認できるようになります。数量割引リクエストを受け取る場合は、出品者側で承認・調整が可能です。
FBA(フルフィルメント by Amazon)の登録・利用
在庫管理や配送を効率化する場合は、FBAの利用を検討します。商品をAmazonのフルフィルメントセンターに納品しておくことで、受注後の発送や請求処理をAmazonが代行します。法人顧客への納品対応にも適しています。
商品情報の最適化
法人顧客に向けて商品の仕様や利用イメージを明確に記載します。詳細な製品情報を提供することで、購買担当者の比較検討を支援し、受注機会の拡大につながります。必要に応じて、スポンサープロダクトなどの広告機能を活用し、露出を高めることも可能です。
ダッシュボードで販売実績を確認
販売開始後は、Amazonビジネス出品プログラムのダッシュボードで売上状況を確認します。法人販売と個人販売の比較や、業界別・顧客層別のデータ分析を通じて、販売戦略を見直すことができます。
まとめ:法人販売を広げる仕組みとしてのAmazonビジネス
Amazonビジネスは、販売事業者が法人や個人事業主に向けて効率的に販売を行える仕組みを備えた、BtoB向けのマーケットプレイスです。法人価格や数量割引の設定、FBAによる配送代行、与信・回収業務の自動化など、法人取引特有の課題をカバーする機能が整っています。
出品者は、既存のAmazon出品アカウントを通じて法人販売を追加できるため、新しい販路を開拓しやすい点も特徴です。また、販売データを分析できるダッシュボードにより、顧客層や業界ごとの販売状況を把握し、今後の販売戦略に生かすことができます。
Amazonのインフラや信用を活用しながら法人市場へアクセスできるAmazonビジネスは、BtoB取引を拡大したい販売事業者にとって、有効な選択肢の一つといえるでしょう。
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