
ECモールは、多くの消費者にとって日常的なショッピングの場として定着しています。一方で、数多くのショップがひしめき合うECモール内で、自社のブランドをいかに際立たせるか、頭を悩ませている事業者も多いのではないでしょうか。
本記事では、ECモールで効果的なブランディングを行い、売り上げアップに繋げるための戦略を解説します。
山本 達巳 / つきみ株式会社
静岡市出身、関西学院大学卒。地元医療系の企業で修行後、父親の経営する医療介護系企業に入社。経営とバックオフィス業務を学ぶ傍ら、留学がきっかけで以前から関心が高かった輸入品雑貨のネット販売事業を開始。令和元年に独立し、複数の海外メーカー取引きの経験を経て、自社アウトドアブランドを展開。
その後、自社ブランドを伸ばしていきたい事業者を応援したいという思いから、令和6年につきみ株式会社を設立。商品ページ作りや広告運用、SNSなどECに関係する領域を幅広く対応しつつ、商品ブランディング支援を行っている。
つきみ株式会社
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この記事の目次
ECモールのブランディングが重要な理由

ECモール活用がブランディングに与える影響
ECモールに出店することで、ブランドの認知度向上や新規顧客獲得に繋がる可能性があります。ECモールが持つ集客力や信頼性を活用できる点が大きなメリットです。
例えば、日本最大級のECモールである楽天市場では、2023年3月期の流通総額が5兆6,587億円に達しており、その巨大なプラットフォームに自社ブランドの商品を露出することで、幅広い層へのリーチが期待できます。また、ECモール自体がすでに一定の信頼を得ているため、その信頼感が自社ブランドにも波及し、安心して商品を購入してもらえる可能性が高まります。
一方で、競合との差別化が難しく、価格競争に巻き込まれやすいという側面も存在します。同じような商品を扱うショップが多数存在するため、価格以外で自社の強みを打ち出す必要があるのです。ECモールのルールや制約によって、ブランド独自の表現が制限される場合もあるため、その中でいかにブランドの世界観を表現するかが課題となります。
自社ECサイトとの比較

自社ECサイトは、デザインや機能を自由にカスタマイズできるため、ブランドの世界観を表現しやすいというメリットがあります。また、顧客データも自社で管理できるため、顧客分析に基づいたマーケティング施策を展開できます。しかし、集客にはSEO対策や広告運用など、専門的な知識や費用が必要となる場合もあります。
一方、ECモールは集客力があるため、比較的簡単に顧客を獲得できます。また、ECモールが提供する決済システムや物流システムを利用できるため、運営コストを抑えることも可能です。しかし、競合との差別化が難しく、価格競争に巻き込まれやすいというデメリットがあります。また、ECモールのルールや制約によって、自由なブランド表現が制限される場合もあるでしょう。
自社ECサイトとECモール、それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、自社のブランド戦略に最適な方法を選択することが重要です。
成功事例と失敗事例
ECモールで成功しているブランドの事例を参考に、自社のブランディング戦略に活かしましょう。例えば、あるアパレルブランドは、ECモールでターゲット層に合わせたコーディネート提案やスタイリング動画を配信し、ブランドの世界観を効果的に伝え、売り上げを大幅に伸ばしました。具体的には、インスタグラムのフォロワー数が1年間で2倍に増加し、ECモール経由の売上も30%向上しました。
また、ある食品メーカーは、ECモール限定の商品を開発し、ECモールの集客力を活かして新規顧客を獲得しました。その後、自社ECサイトへの誘導にも成功し、顧客との長期的な関係を構築しています。この施策により、新規顧客獲得数が50%増加し、リピート率も10%向上しました。
一方で、失敗事例としては、価格競争に巻き込まれて利益率が低下してしまったケースや、ECモールのルールに違反してアカウントが停止されてしまったケースなどがあります。これらの失敗事例から学び、自社が同様の失敗をしないように対策を立てておくことが大切です。
ECモールでのブランド構築戦略

ECモールと自社ECサイトの統合方法
ECモールと自社ECサイトを連携させることは、それぞれのメリットを活かし、相乗効果を生み出すための有効な戦略です。例えば、ECモールで新規顧客を獲得し、自社ECサイトに誘導することで、顧客との長期的な関係を構築できます。
具体的には、Yahoo!ショッピングであれば販売する商品の詳細ページに自社ECサイトへのリンクを設置したり、それ以外のECモールでも規約に注意しながら購入した顧客に自社ECサイトの案内を配布したりすることが考えられます。
また、オムニチャネル戦略の一環として、ECモールと自社ECサイトの在庫を連携させることも有効です。これにより、顧客はどちらのサイトでも同じ商品を購入でき、利便性が向上し、顧客満足度を高めることができます。実際に、大手アパレルブランドのGAPは、オムニチャネル戦略を導入した結果、オンライン売上を2桁成長させ、実店舗への送客数も10%増加したと報告しています。(参考:Gap Inc. 2022 Annual Report)
ブランド力向上のための施策
ECモール内でのブランド力向上には、さまざまな施策が考えられます。まず、商品ページのデザインや商品説明文を改善し、ブランドの世界観を表現することが重要です。高品質な商品画像や動画を使用し、商品の魅力を最大限に伝えましょう。具体的には、360度回転画像や着用イメージ動画などを活用することで、顧客の購買意欲を高めることができます。
また、独自のキャンペーンやイベントを実施することで、顧客の興味を引き、ブランドへのエンゲージメントを高めることができます。例えば、期間限定のセールやポイントアップキャンペーン、SNSでのプレゼント企画などを実施することで、新規顧客獲得やリピート促進に繋がります。
さらに、カスタマーレビューやSNSでの口コミを積極的に活用することも重要です。ポジティブなレビューは信頼性を高め、ネガティブなレビューは改善点を見つける機会となります。実際に、Spiegel Research Centerの調査によると、商品にレビューがある場合、レビューがない場合と比較して購入率が270%も高くなるという結果が出ています。(参考:Spiegel Research Center "How Online Reviews Influence Sales")
デザインと競合他社との差別化
ECモール内では、他のショップとの差別化が重要です。そのためには、ブランドロゴや商品画像、商品説明文などを統一し、一貫したブランドイメージを構築することが大切です。例えば、ブランドカラーやフォントを統一したり、オリジナルのキャッチコピーを作成したりすることで、顧客に強い印象を与えることができます。
また、競合他社の商品ページや価格設定を分析し、自社の強みを活かした差別化戦略を立てることも必要です。例えば、競合が扱っていないニッチな商品を取り扱ったり、独自のサービスを提供したりすることで、顧客に選ばれるショップを目指しましょう。
デザイン面での差別化も重要です。商品ページのデザインは、ブランドの世界観を表現するだけでなく、顧客の購買意欲を高める役割も果たします。プロのデザイナーに依頼したり、デザインツールを活用したりして、魅力的な商品ページを作成しましょう。
ECモール事業者の成長戦略と運営体制

マルチチャネル戦略
特定のECモールでの成功を足がかりに、さまざまなECモールに出店することで、さらなる成長を目指せます。国内では、楽天市場やAmazonに加えて、Yahoo!ショッピングやau PAY マーケットなどのECモールが存在します。
経済産業省の調査によると、2022年のBtoC-EC市場規模は、前年比9.91%%増の22兆7,449億円となっており、今後も成長が見込まれています。(参考:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」)
それぞれのECモールには特徴やターゲット層が異なるため、自社の商品やブランドに合ったECモールを選択することが重要です。そして、マルチチャネル戦略を成功させるためには、各ECモールの特性を理解し、それぞれに合わせた戦略を立てることが必要になってきます。
例えば、ターゲット層や販売商品、プロモーション方法などをECモールごとに最適化することで、効果的な販売戦略を展開できます。また、各ECモールのAPIを活用して在庫連携や受注管理を一元化することで、業務効率を向上させることも可能です。
統一したブランドイメージの構築方法
複数のECモールに出店する場合、どのECモールでも一貫したブランドイメージを保つことが重要です。ブランドロゴ、商品画像、商品説明文などを統一することで、消費者に安心感を与え、ブランドの信頼性を高めることができます。
ブランドイメージを統一するためには、ブランドガイドラインを作成し、社員や外部パートナーと共有することが有効です。ガイドラインには、ブランドロゴの使用ルール、カラーパレット、フォント、トーン&マナーなどを明記し、ブランドの世界観を明確に定義します。
また、定期的にブランドイメージのチェックを行い、改善点があれば修正していくことも大切です。例えば、顧客アンケートやソーシャルメディアの反応を分析し、ブランドイメージとのギャップがあれば、改善策を検討します。
一貫したブランドイメージを構築することで、顧客からの信頼感を高め、長期的な関係を築くことができます。
ECモールの競争力強化と差別化戦略

価格競争と独自性の両立方法
ECモールでは、価格競争が激化しがちですが、価格を下げるだけが競争力を高める方法ではありません。独自の商品やサービスを提供することで、価格競争に巻き込まれずに、顧客に選ばれるショップになることができます。
独自の商品開発や限定商品の販売は、他社との差別化を図る有効な手段です。例えば、自社ブランドの商品や、他社では手に入らない希少な商品を扱うことで、価格以外の価値を提供できます。また、パーソナライズされた商品提案やギフトラッピングサービスなど、顧客体験を向上させるサービスも差別化に繋がります。
価格競争と独自性を両立させるためには、ターゲット顧客のニーズを深く理解し、それに合った商品やサービスを提供することが重要です。ニッチな市場に特化したり、高品質な商品にこだわったりすることで、価格競争から脱却し、独自のポジションを確立することができます。
SNSと口コミを活用したブランド認知度向上

SNSや口コミは、ブランドの認知度向上に非常に有効な手段です。SNSで商品情報を発信したり、キャンペーンやイベント情報を告知したりすることで、多くのユーザーにブランドを知ってもらうことができます。また、顧客からのレビューや口コミは、他のユーザーの購買意欲を高める効果があります。
具体的な施策としては、InstagramやX(旧Twitter)、FacebookなどのSNSを活用して、商品紹介やキャンペーン情報を発信したり、インフルエンサーとコラボレーションしたりすることが考えられます。顧客からのレビューや口コミを収集・分析し、商品開発やサービス改善に活かすことも重要です。
まとめ
ECモールでブランドを成功させるには、ECモールと自社ECサイトを連携させ、それぞれの強みを活かすことが重要です。商品ページのデザインやキャンペーンを通じてブランドの世界観を表現し、SNSや口コミを活用して認知度を高めましょう。競合との差別化には、独自の商品やサービス、優れた顧客体験が鍵となります。これらの施策を組み合わせることで、ECモールでのブランド構築を成功させ、売上向上を目指しましょう。
次回は新規にブランドを作ることをテーマにお話しさせていただきます。
つきみ株式会社
https://tsukimi.ne.jp/
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