リコマースだけではない、パーソナルページはオムニチャネル成功の基盤【リコマース・オムニチャネル総論第6回】

前回のコラムでは、「バックオフィスとストアクレジットの重要性」をお話ししました。今回は、「リコマース・オムニチャネルにおけるパーソナルページ」について解説します。

この記事の執筆者

吉村 典也
Innovation & Communication

日本の製造業を強くするためのコンサルティング会社、外資システム会社などを経て、通信販売(ダイレクトマーケティング)、Eコマースの事業運営・CRM/購買体験+購買後体験)運用・フルフィルメントサービス運用のアドバイザーとして、CS&BPOセンター(CX設計・運用からシステム設計・運用まで)の新規立上・受託までを担ってきた。

通販基幹システム・Eコマース・オムニチャネル/OMO・CRM+MAシステムのマーケティングセールスから、業務設計・運用までをコマース・小売事業会社ととも一緒にアクション&グロースしてきた。

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コマースシステムのフロント機能

コマースサイトでは顧客とのタッチポイントとコミュニケーションとして、チャットなどのウェブ接客ツールが自社サイトでは重要な役割をはたします。顧客中心主義の視点からリコマースにとっても購入体験を通じてエンゲージメントを高めてくれるサービス機能について確認していきます。

パーソナルポータル機能

顧客セグメント別にコンテンツの出し分けをすることが、自社Cookieを活用する際のポイントになってきます。既存顧客であればロイヤリティプログラムなどから預かった顧客データをもとにしたAIなどを活用したレコメンデーションは必須です。

画像:everlane
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ロイヤリティプログラムと連携したマーケティング機能

パフォーマンスマーケティング(※1)だけではなく、リテンションとコミュニティマーケティングに取り組む必要性が高まってきています。

それは、顧客がSNSでのステマ的なパフォーマンスマーケティングに気付き始めたことも背景にあります。オーガニックソーシャルを育てていくことで信頼され、安心できるコマースブランドとなることができます。これはブランドとしてAppleのように差異化できる自社施策です。

  • コミュニティ運用としてのSNSの活用
  • リファラル紹介販売(紹介した顧客、紹介された消費者への割引やポイント)
  • アンバサダー、アフィリエイト(ユニークURLを発行してそこからの売上に対してのフィーバック)

※1…特定の成果に基づいて広告主がパートナーにフィーを支払うこと

カスタマーサポート機能:使用済み商品のカスタマーサポート機能

カスタマーサポート機能では、使用済み商品に関する顧客からの買取可否などの問い合わせに対応することになります。具体的には、商品の状態や価格、配送方法などの問い合わせに対応していきます。

今は、チャットサポートがUXとしては有効です。デジタル顧客の購買時間の多くは、夜帯のリアル店舗の開店時間以外です。この時間帯にセルフサービスで解決できないことを、チャットで解決することは、メールやLINEでの対応より顧客視点では理にかなっています。AIでのボットから、有人対応チャットそしてVoiceへのスムーズなチャネル移行対応も簡単になりました。

また、返品・交換などのセルフサービス機能を活用して、買取品の発送対応を行うこともできます。その際、受付、返送ラベル発行や自宅ピックアップなどのサービスを提供することがポイントです。

フロントサイド機能としてのレコメンデーション

ブランドは商品の販売過程を通じて、ブランド資産と顧客体験のコントロールを取り戻すことがリコマースの目的でもあります。

リコマースは、再販商品をブランドのコマースプロセスに持ち込むことで、ブランドは貴重な既存顧客データ(ライフ嗜好の変化)にアクセスできるだけでなく、まったく新しい顧客ソース(新品やセール品を購入しない顧客)へアプローチできるようになります。

見方を変えれば、循環型ファッションなどの最終目標でもある生産量を増やすことなく、新たな収益源を得ることができるということでもあるのです。

ブランドが自社で展開して所有しているリコマース(再販)プログラムには、小売企業が望む「顧客体験:CX」を提供しながら、新規顧客との出会いとロイヤリティの構築という 2 つの貴重な成長ドライバーを実現できる可能性があるのです。

ブランドが限定版の商品アーカイブや、ロイヤリティプログラムメンバー限定のサンプル販売などのコンセプトを実験およびテストするための場として活用できる可能性があります。

商品の特徴を踏まえたPDP(※2)ページ機能設計

リコマース商品は、新品商品とは異なる商品状態の特徴があります。
そのため、商品の状態や価格などの情報をわかりやすく表示し、顧客が安心して購入できるようにする必要があるでしょう。

商品詳細情報の基本情報は、新商品のPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)からPIM(Product Information Management:商品情報管理)、そしてコマースの商品詳細情報を活用することになります。

これに、単一SKU別の商品状態情報を付加することになります。
SKUではサイズ・色の欠落が発生するだけではなく、単一SKU別の状態と価格が違っています。
これをカタログ機能としてどう見せていくかは、SKUでのサイズ・色切れとは違ったフィルター機能やレコメンデーションのノウハウが必要です。

※2…Product Detil Page:商品詳細ページ

顧客の利便性を考慮した機能設計

リコマース商品の購入は、新品商品の購入とは異なる顧客のニーズがあります。

ある顧客は、レンタルのようにシーズン中の利用でシーズン終了間際には手放すかも知れません。別の顧客は、新商品にはまだ不安があるので、リコマース商品でトライユースをして次回以降の購入に役立てる意向かもしれません。

そして、新商品は価格面で購入することができないが、リコマース価格であれば購入ができる。しかし、P2Pでは偽物や状態の確認に不安があるのでブランドサイトから購入したいという、先のロイヤルカスタマー候補かも知れません。

そのため、注文や決済、配送条件、返品・交換条件などの機能を、顧客の購入動機と、利便性を考慮して設計できる必要があります。

返品・交換のポリシーを明確に反映できる機能

返品・交換のポリシーを明確に反映して、返品不可表示などをすることで、顧客の不安を解消することが必要です。一般的には返品は可能に設定します。しかし、ブランド在庫のリコマース商品でも瑕疵がない限り、セール品と同様に返品・交換ができないようにするかはブランドの判断になります。

買取や修理受付決済機能

D2Cで自社ドメイン専業でない場合、顧客の購入チャネルによってブランドは顧客のデータを有していません。それはECだけではなく、リアル店舗でも、卸チャネルでも同様です。これらの顧客との再接点として、買取・回収、修理サービスはとても有効で価値のあるサービスタッチポイントになります。

買取、修理での決済ポイントは、価格が商品チェックするまでは未確定ということです。グレーディングをして買取価格(修理費用)が決まります。こちらをマイページポータルで提示をして買取決済をすることになります。

まとめ:リコマースから既存のコマースを見直す

コマースを拡張するリコマースは、顧客の拡大と維持を通じて、収益性が高まります。 

しかし、このモデルを実施するには、コマースシステムの基本的な機能が「顧客中心」に商品を提供するための基本的な機能コンセプトがないとできないでしょう。

だからこそ、リコマースを実装するためには、オムニチャネルコマースシステムもバージョンアップしなければいけません。これからのコマースシステムは、アジャイルに機能を修正、追加、廃棄できるコマースシステムを選定することが大切になります。

今までは、システムはコストとして認識されていたと思いますが、システムは商品と顧客エンゲージメントをスタッフがサポートするための必要不可欠な投資です。投資からのリターンは売上・利益だけではない視点が必要になります。

肥大化するSaaSシステムの費用も問題になるからこそ、顧客体験の業務見直しを通じてシンプルを廃棄、入替をする決断が必要です。

本来のあるべきコストダウン(カット)をしたいのであれば、顧客数によって費用が変動するSaaSの場合、顧客リストを整理することが一番のコストダウンに寄与するのではないでしょうか。

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