
前回のコラムでは、リコマースにおける「グレーディングの重要性」をお話ししました。今回は、「バックオフィスとストアクレジットの重要性」について解説します。
この記事の目次
リコマースにおけるバックオフィス機能
リコマース(再販)の機能を兼ねたECサイトを構築する際、通常のECサイトに加えて追加すべき機能があります。商品の識別、写真撮影、価格設定、注文の履行(フルフィルメント)、返品・交換の処理などの倉庫および在庫業務の管理、店内での引き取りプログラムなど。ここではバックオフィスの機能について見ていきます。
商品登録機能:使用済み商品の登録・管理機能
商品登録機能では、ブランドが返品・交換・回収して所有している過去の新品在庫などの商品の情報をリコマースプラットフォームに登録・管理します。具体的には、商品名、商品説明、商品画像、商品状態、価格、配送料などの情報を登録・入力していきます。
新品の商品との違いは、商品の品質を評価するための基準を定め、商品の状態に応じて適切な価格を設定する必要があることです。ここでは、受入れ・買取時のグレーディングのプロセスが重要になります。
在庫管理機能:リコマースでの単一SKU機能
リコマースでの単一SKU機能とは、使用済み商品の状態や価格などの情報を、1つのSKU(Stock Keeping Unit)にまとめる機能です。
単一SKU機能を導入する目的としては、
- 顧客の購入のしやすさのため
単一SKUで、個品商品の管理や在庫管理をすることになります。また、商品の検索や注文にも利用されます。顧客にとっての利便性の向上につなげるためには、元の商品情報をベースにグレーディングの情報を付加して、「ささげ」の部分の撮影だけを追加します。
顧客は商品の状態や価格などの情報を、わかりやすく把握することができます。価格設定を明確にすることで、顧客の納得感や商品状態の不安解消につなげることができるのです。
リコマースで単一SKU機能を導入する際には、グレーディングの基準を明確にすることがポイントです。グレーディングの基準が曖昧でA品・B品程度だと、顧客の混乱やクレームにつながる可能性があります。

- 在庫情報としての有効活用
単一SKUにまとめることで、商品の状態や価格などの情報を、類似カテゴリー一覧で確認することが必要になります。在庫の状況を把握し、適切な販売方法(価格とチャネルの変更)とともに、買取可否などの判断を検討しやすくなります。
注文管理機能:リコマース商品の注文・受付・発送機能
注文管理機能(OMS)では、リコマース商品の注文・受付処理・発送を行います。具体的には、注文の確認、商品の梱包、発送、配送状況の追跡、リコマース品用の返品・交換をする場合のセルフプロセスの提供などを行います。買取プロセスとしては、返品・交換と同様に商品の特定から開始されます。
アイテム特定
- 注文番号とメールアドレス=顧客ID(返品・交換の場合)
マイページから注文履歴を表示して商品を指定することもポイントです。 - 商品名、商品詳細、またはスタイル ID
コンディションレポート
- 商品はタグ付きの新品かどうか
- 商品の状態について、新品で購入した場合と異なる点があるか
などの商品状態についてのヒアリングをします。これは、通常のコマースのプロセスとの特段の差異はありませんが、利益管理が重要ですのでフルフィルメントコストの管理と、送料負担の閾値、新品との同梱の可否、店舗と倉庫・ディストリビューションセンター(DC)での分散在庫・分散出荷などの運用設計が重要になります。
決済機能:回収・買取使用済み商品の決済機能
決済機能では、購入時の支払いは通常のコマース機能と同様で問題はありません。唯一の違いは「ストアクレジット」の有無と期限管理です。
使用済み商品の買い入れ決済がポイントとなります。基本はグレーディング後の買取金額提示の上、指定先口座振込や、ストアクレジットなどへのデポジットになります。これはとても煩雑な運用で、リアル店舗のPOSではなおさらです。充分なプロセス設計をする必要があります。
- 買取倉庫までの送料の負担はどちらか(一般的には顧客)
- 買取不可の場合の商品の返品送料負担・廃棄
- 買取金額の提示と承諾、そして入金先とその振込費用負担
※ストアクレジットが双方にとってのメリットを提供することができる方法でもある
などを設計します。このプロセスは、修理サービスでも活用することができます。
ストアクレジットの活用でロイヤリティアップ

返品・交換であれば、クレジットカード決済など手段に応じての返金処理だけではなく、ストアクレジット方法を用意することで双方にとってのメリットが得られます。ブランドにとっては、顧客としての購入の機会の確保が期待できるでしょう。ストアクレジットは、リアル店舗およびオンライン購入に使用することができます。
顧客にとっての利便性
ストアクレジットと引き換えに商品を簡単に返品や下取りする方法を顧客に提供することになります。顧客にとっては、払い戻しの手間や費用を負担する必要がなくなり、返金金額の目減りを削減できるでしょう。小売店舗側は金融手数料などの削減を通じて顧客への還元をすることで、顧客と店舗の利便性を高めるためのベネフィット(特典)を設計して追加の付与をすることも可能です。
顧客ロイヤリティと顧客維持率の向上
返金などの代わりにストアクレジットを提供することで、ブランドは顧客ロイヤルティを構築し、顧客を維持できることになります。ストアクレジットを受け取った顧客は、他のブランドや、店舗を探すよりも、ブランドで買い物を続けるという意思を持っていることになります。
再購入のためには、顧客への単なるキャンペーンシナリオの配信だけではなく、ロイヤリティプログラムを通じて顧客とのエンゲージメントを高めていくことが大切です。
ブランドにとって費用対効果が高い
ストアクレジットは、現金での払い戻しを行うことなく、顧客を維持し、将来の購入を促進することができるため、ブランドにとって費用対効果の高いオプションになります。クレジットカードや現金での払い戻しでは、費用負担は誰かがして損失を被らなければなりません。
再購入と衝動買いを促す
顧客がストアクレジット(一般的には返品などの場合は期限を有します。下取りはギフトカードと同様に無期限にすることがベスト)を持っている場合、残高を使い切ろうとします。これはポイントでも同じです。
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