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リコマースの概要
リコマース(再販売)とは、一般的には、すでに消費者が使用した商品を販売するビジネスモデルです。
本コラムでは、中古品・古着という従来のモデルだけではなく、自社商品でコマースビジネスから発生する、返品・交換商品の販売、在庫品・キャリーオーバー品、そして自社顧客が保有する下取りをした商品などを、自社デジタルコマース・リアル店舗、マーケットプレイス(ピアツーピア:P2P※など)などの適切なチャネルと、最適な対象顧客に対して、最適な価格で販売することと、リコマースを定義させていただきます。
従来の新しい商品を販売するだけでは得られない顧客を、カテゴライズして、その顧客を維持し、ブランド事業としての収益を確保するモデルとしてリコマースを活用する方法について考えてみます。
※P2P:顧客間よりも強固な個人間の繋がり
ブランド供給タイプで顧客メリットを提供
最近の環境意識の高まりや、サステナブルな消費への注目の高まりを背景にして、従来型のリコマース(古着・回収販売)、メルカリのようなP2P、コメ兵などの中古ヴィンテージサプライ、などだけではなく、ブランドが自社商品の返品・交換品や、アウトレット商品などに加え、自社商品を顧客から回収して、検品・修理して、リコマース・再販売を、ブランド単独のコマースサイトやP2Pも含めたマーケットプレイスで展開するモデルを提供するケースが増えてきています。
たとえば、アメリカのノースフェイスやEUのH&Mなどをはじめとして市場規模は拡大をしています。
参考:ザ・ノース・フェイスがリニューアル (thenorthfacerenewed.com)

参考:Let's close the loop | リペア&リサイクル | H&M (hm.com)
オムニチャネル・D2Cコマース事業においても、ブランド供給タイプのリコマースを取り入れることで、新たな収益源の創出や、顧客満足度の向上などのメリットが期待できるでしょう。
今回は、このブランド供給タイプのリコマースの構築と収益化についての各ポイントについて解説していきます。
ブランド供給タイプで必要な機能
まず、ブランド供給タイプのリコマース構築に必要な機能をご紹介します。
ポイント1:商品供給と商品登録
- 回収・買取機能
返品・交換受付機能を実装するうえで、返送伝票作成機能などは外部連携がベストです。
自社でもシステム構築できますが、大手でないとメリットはありません
参考:【NB公式】ニューバランス | アパレル返品無料サービスNew Balance【公式通販】 - グレーディング機能
- 単一SKU管理機能
ポイント2:顧客とのエンゲージメントを高めるためのCLV(顧客生涯価値)施策として
- ストアクレジット機能
- 修理を受付、見積して、金額査定して決済して、納品する
- ロイヤリティプログラムとの連動
ポイント3:セールス機能
- マーケットプレイス機能
小売事業者が商品を買取するのではなく、P2Pで顧客が出品をして、別の顧客が購入するチャネルを提供します。また、リコマースに限らず自社商品のオーディエンスと関連性の高いカテゴリー商品を販売できるようにすることで顧客の利便性と収益性を向上させることができます。 - 予約販売機能
NIKEなどのロイヤリティプログラムの特典メニューでの活用としてよく知られています。予約販売の本来の目的は、顧客ニーズマッチッングとして活用することです。需要のないものを作らない、望む顧客の数だけ提供することでブランドの価値としてのエンゲージメントを上げていきます。
ポイント4:CX機能
- パーソナルポータル機能
顧客のマイページは一般的に提供されているサービスです。
・基本情報の管理
住所やメールアドレス、電話番号、決済情報などの基本情報の修正。
・購入履歴やメッセージの確認
ブランドでの購入履歴や、会員専用に送られてくるメッセージなど確認。
・会員特典情報の受け取り
会員向け(ロイヤリティプログラムの有無は別として)の特典情報やプロモーション情報の受け取りを確認。
・顧客セグメント別にコンテンツを出し分けていく機能
ログインをしなくてもシナリオメールやSNSからの訪問で顧客を特定してレコメンデーションを実施することになります。 - リファラル紹介販売
D2C ブランドをはじめとして、マーケティングコストは大幅に増加しました。Instagramなどのデジタルチャネルは、D2C ブームの初期には低価格でしたが、急激に値上がりしたのです。そのためにエンゲージメントの高い顧客との共同マーケティングが重要になってきています。紹介した顧客、紹介された消費者への割引やポイントを付与して管理するサービスが重要になります。 - インフルエンサー・アンバサダー、アフィリエイト機能
ブランドはSNSなどでコミュニティを通じて顧客と潜在顧客とコミュニケーションしているはずです。ロイヤルカスタマーやブランドや商品を愛しているインフルエンサーなどと共同マーケティングをしない理由はありません。
ASPだけではなく、自社でユニークURLを発行してそこからの売上に対してのフィーバックをすることでより確かなロイヤリティ顧客と出会うことが可能になります。
次回以降のコラムでは、こられのポイントについて個別テーマとして深掘りしていきます。
リコマースがビジネスを拡大し、異なる購入体験を提供
リコマースは顧客視点で見方を変えると、レンタルサブスクリプションコマースでもあります。これは、Appleの製品や自動車などではよく知られた購入体験です。購入をしているけど下取り価格があるので利用期間に応じたレンタルサブスクリプションで愛用していることと同義と言えます。
消費されないアパレルなどの商品は、気に入ればクローゼットなどで保管、利用してくれるでしょうが、クローゼットが一杯であれば次を購入することに躊躇いも生じます。これを顧客視点で解決することが、レンタルサブスクリプションコマースで言うところの「気に入ったら購入」でした。その逆バージョンがリコマースです。
これは、ビューティー・コスメやサプリなどの消費財のサブスクリプションコマースの購入体験に近いものでしょうか。
振り返ってみましょう。消費者にとってサブスクリプションほど、怖くて嫌いな購入体験はありません。そのため一部のスタートアップのD2Cブランドでは、「定期購入」から「継続購入」という表現に変えています。
定期購入のギミックでは、初回半額で注文をするとき、顧客は定期購入契約を実際はしているとは思っていないのですが、2回目以降の送料無料、割引(会員としているかは別です)などの特典を付与して縛り・拘束するモデルから、Amazonの継続購入パターンである、「定期おトク便」のモデルに移行していくことになると想像できます。
それは、次回注文・配送期間変更も、休止も、再開も、解約(そもそもこの概念がなくなる)も、注文・補充スキップも、数量変更も、商品追加も、顧客セルフオーダー時代になる、ならざるを得ないということになります。
これは、実質的には「都度購入」の利便性を向上した状態になります、真の継続購入顧客となるためのF2転換へのシナリオ(日本ではステップ)と、ある一定回数以上の購買時で、継続購入のメリットを再認識してもらうために、MA(マーケティングオートメーション)と、顧客のマイページでのパーソナライズとの連携によって、コンテンツと顧客のアクションプログラムとして、SNSポストでのエンゲージメントの確認と3回購入すると4回目(休止が一番増える回数に設定する)が実質無料になるとかの顧客の購買行動に添ったコミュニケーション設計などが重要なポイントになるということです。
顧客は自由で「ひとり」でいたく、必要なときに適切なコミュニケーションをして実現・解決したい。
という今の行動心理にあっています。
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