1本のRSSがすべてに配ってくれる〜ポッドキャスト配信のしくみと最短セットアップ〜

第1回では「なぜ今、ECにこそポッドキャストなのか」を整理しました。ただ、読んでみて「やってみよう!」とすると、必ずわいてくる疑問があります。録った音声は、どこにアップすればいいのか、です。

YouTubeであれば、動画をアップロードすればそれで済みます。ところがポッドキャストは、Spotifyにも出したい、Apple Podcastsにも出したい。では、それぞれに投稿するのか——と考えたところで手が止まるわけです。私のもとに届く問い合わせでも、この段階からのものが少なくありません。

結論から申し上げます。アップロードするのは、基本、1か所だけです。あとは「RSS」という仕組みが、各アプリへ自動的に運んでくれるのです。それこそが、ポッドキャストをポッドキャストたらしめている特徴なのです。

この記事の執筆者

吉田 喜彦
スタジオ・カグア!
代表

マーケター・IT講師として25年以上活動し、GMOメイクショップ、ナイル、NTTドコモなどで、EC・データ活用・人材育成に従事。『Googleアナリティクス基礎講座』(技術評論社)を出版。一方で、1999年のポッドキャスト誕生前のネットラジオ黎明期から音声コンテンツ制作に携わる。『マツコの知らない世界』テレビ出演、海外ゲーム企業の日本向けコンテンツ制作などを手がける。
2026年、音声制作スタジオ「スタジオ・カグア!」を設立。EC・マーケティングの知見と、20年以上の音声制作の経験を掛け合わせ、「"声"で顧客との信頼を築く」ポッドキャスト活用を、企業・EC事業者に提案している。 

https://studio.kagua.biz/
https://x.com/creator_enews

最初に決めるのは「音声ファイルの置き場所」

自社ECサイトにアップロードしても、ポッドキャストにはならない

まず思いつくのは、自社サイトに音声ファイルを置いてリンクを貼る方法ではないでしょうか。ところが、これだけではSpotifyにもApple Podcastsにも並びません。

SpotifyやApple Podcastsなどのポッドキャストアプリは、インターネット上に置かれた音声ファイルを自動で探して掲載しているわけではありません。各アプリは、番組名やエピソード名、音声ファイルのURLなどが書かれた「RSS」を定期的に確認し、その内容をもとに番組を表示します。

RSSとは、Webサイトの更新情報を構造化して自動配信・取得するためのデータフォーマットです。このRSSがなければ、サイト上に音声ファイルを置いても、各アプリに番組の存在を知らせることができないのです。

とはいえ、RSSをご自分で作成する必要はありません。一般的には、SpotifyやLISTENなど、ポッドキャストのホスティングサービスに音声を投稿することで、RSSを自動で生成してくれます。

置き場所とRSSをまとめて用意してくれる「ホスティングサービス」

音声ファイルの保管庫、RSSの自動生成、各アプリへの配信窓口。この3つをひとまとめにしたものが、ポッドキャストの「ホスティングサービス(以後、ホスティング)」と呼ばれるものです。ECにたとえる、複数のモールに掲載する商品情報をまとめて管理・連携する一元管理システムです。商品(音声)を登録すれば、各モール(アプリ)へ掲載するための面倒な処理は裏側で走ってくれます。

代表的なホスティングとしては、Spotifyの Spotify for Creatorsがあります。無料で音声や動画をアップロードでき、音声配信用のRSSを自動で生成してくれます。このホスティングを利用するとSpotifyには自動で掲載されます。

国内のホスティングであれば、Spotify for Creators以外にはstand.fmやLISTEN、Radiotalkなどがあります。いずれにせよ、まずは音声をアップロードし、RSSを管理する「母艦」となるべきホスティングを決める必要があるのです。

ホスティングは、サービスによって料金や保存容量、アクセス解析、収益化、動画対応などの機能に違いがあります。番組を続けるうちに、より詳しい分析がしたい、収益化したい、動画にも広げたいといった理由から、別のサービスへ移りたくなる可能性もあるでしょう。

ちなみに、ホスティングを選ぶ際に考えておきたいのが、別のホスティングへ移る際にRSSを引き継げるかという点です。引き継ぐことができないと、ホスティングを変えたあとに、今まで番組を聴いていた人に、そのまま新しいエピソードを届け続けられなくなってしまいます。

ホスティングを変えると、通常はRSSのURLも変わります。そのため、古いRSSを確認している各アプリを、新しいRSSへ案内する設定が必要になります。これができれば、特定のホスティングに依存せず、番組を聴いている人を引き継いだまま別のサービスへ移行できるようになるのです。実際、Appleは、フィードのURLを変更する場合の手順を公式に定めています(https://podcasters.apple.com/support/837-change-the-rss-feed-url)。

裏を返せば、これらの操作ができない状態でサービスを移ろうとすれば、購読はそこで切れ、せっかく積み上げたリスナーとの「絆」も無くなってしまいかねない、ということです。サービスを比較検討する際は、この一点だけ留意しておきましょう。

アカウントを作り、番組名・カバー画像・説明文を入れる

ホスティングが決まったら、アカウントを作成します。

番組名は、凝った造語よりも「誰の・何の番組か」がわかる言葉とブランド名の組み合わせをオススメします。第1回で触れた指名検索にも効いてきます。

カバー画像は正方形です。Apple Podcastsは3000×3000ピクセルを推奨していますので、大きめに作って下さい。ただし、スマホの一覧表示の際には親指の爪ほどの大きさになりますので、文字を詰め込むのは止めましょう。

説明文は、1行目に「誰のための番組か」を書きます。一覧画面では冒頭しか表示されません。また、番組パーソナリティ名(できればフリガナも。ポッドキャストはリスナーから愛称で呼ばれることも多いため)と、お便りフォームのURLと、SNSでの拡散用のハッシュタグを書いておきます。

余談になりますが、私がネットラジオを始めた1990年代の終わりごろは、この「番組の顔」を用意するという発想すらありませんでした。音声ファイルをサーバーに置き、掲示板でURLを告知して終わり。聴いてくださった方がどこから来られたのかもわからない。それが今は、番組名も画像も説明文も、最初の画面で一度に入力できてしまう。さらに、アナリティクスである程度のリスナー像もわかる。ずいぶん整備されてきたものだとしみじみ感じます。

ここで1つ大事なポイントがあります。ポッドキャストは、リンクをタップさせる力やインプレッションが構造的に弱い媒体です。手がふさがっている「ながら聴き」だからこそ長く付き合ってもらえる、という第1回の性質の、ちょうど裏返しになります。ゆえに、声に出して伝える戻り先、つまり耳で聞いただけでも覚えやすく、あとから検索して再び番組を見つけられるような、声に出して言いやすい/わかりやすい番組名、が大切になります。

RSSが1本あれば、SpotifyにもApple Podcastsにも並ぶ

音声をアップした瞬間に、1本のRSSが自動で書き換わる

アカウントを作成し番組設定を終えますと、番組ごとに1つのRSSのURLが発行されます。中身は、番組名やカバー画像、各エピソードの音声ファイルの置き場所が記された、機械が読むための仕様書のようなものです。

その後、各回のエピソードの音声をアップロードしますと、このRSSに新しい行が自動で追加されます。その情報を他のポッドキャスト配信先が定期的に見に来て、新着を見つけたらリスナーの端末に届けてくれる、というわけです。こちらから「出しに行く」のではなく、向こうが「取りに来る」。ここがポッドキャストの基本構造です。第1回で「フォローすれば自動で届く」と書きましたが、それを支えているのが、まさにこの仕組みなのです。誰かのアルゴリズムの都合で、今日は届いて明日は届かない、ということが起こらないのですね。

やることはURLのコピー&ペースト、配信先ごとに申請

RSSのURLが発行されたら、それを各ホスティングのフォームに設定しましょう。Apple Podcastsであれば、Apple Podcasts Connecthttps://podcastsconnect.apple.com/)にログインしてRSSのURLを貼り付け、送信します。Spotifyのほうは、ホスティングが同社であれば手続きそのものが不要です。

ただ、それぞれの配信先で審査が当然あります(余程の変な内容でなければまず大丈夫です)。たとえば、Apple Podcasts では、ガイドラインやアートワークの要件がしっかり明文化されています(https://podcasters.apple.com/support/830-review-process)。審査の日数は公式に明記がありませんが、公開日から逆算し、日程には幅を持たせておきましょう。

そして、この作業は、最初の1回のみです。2本目以降は母艦のホスティングにアップするだけで、各アプリへの投稿作業は一切発生しません。ポッドキャストはRSSのネットワークにすべて自動で送られるのです。便利ですよね。

配信先は、あとからいくらでも足せる

配信先を最初にすべて揃える必要もありません。RSSのURLは1本のまま変わりませんので、半年後に別のホスティングへ出したくなったら、そのとき同じURLを提出すればOKです。過去のエピソードもまとめて反映されます。

出すのはこの3つ。YouTubeには動画にして届ける

まず押さえるのは Spotify・Apple Podcasts・Amazon Music

各ホスティングのなかでも、最初はこの3つ(Spotify・Apple Podcasts・Amazon Music)の設定を優先させましょう。いずれも無料で設定でき、ポッドキャストの配信ができます。

ターゲットとするリスナーがどのアプリで聴いているかはわかりませんし、多くの場合、自分が使い慣れているアプリで聴きたいはずです。3つのなかでも広くおすすめできるのは、Spotifyです。ホスティングを同社にすれば設定はほぼ自動で完了します。Apple PodcastsはiPhoneに最初から入っているという足腰の強さがあります。Amazon MusicはAmazon経済圏との接点で、スマートスピーカーから再生される導線も強力です(申請は https://podcasters.amazon.com/ から)。

いずれも、やることはRSSのURLを出すだけ。作業内容は変わりません。

国内で最も聴かれている入り口は、実はYouTubeでした

最後に、ひとつ例外をお話します。それがYouTubeです。

オトナルと朝日新聞社の「第6回ポッドキャスト国内利用実態調査」(2025年12月調査、全体10,000人・ポッドキャスト利用者800人)によれば、利用者が使うポッドキャスト配信先の1位はYouTubeで37.3%。20〜30代の利用が多く、2位がSpotify、3位がradikoという結果でした。

「ポッドキャストは音声アプリで聴くもの」という前提は、日本ではすでに実態とずれ始めています。音声アプリへの掲載だけで完結させてしまうと、最も人がいる入り口を自ら閉ざしてしまうことになります。

YouTubeに出す方法は2種類——RSSで自動、または動画として投稿

YouTubeは、RSSの取り込みに対応しています。

ですので1つめの方法は、前述の配信先と同様に、公式ヘルプにしたがいRSSを設定することです。そうすることで、ポッドキャストが自動的に配信され、YouTubeアプリでも聴くことができます(https://support.google.com/youtube/answer/13525207)。リスナーは、カバー画像の静止画に音声を乗せた動画画面で視聴できる、という流れです。

一方で、このRSS連携による配信は、YouTube Musicの仕組みをベースにしているため、どうしても通常のYouTubeアプリ内の検索に弱い、という特性があります。やはり動画のほうが検索では有利になってしまうのです。

そこで、2つめの方法が、音声を動画化して、動画として投稿する方法です。

音声を動画化する方法にはいくつか方法がありますが、私は音声に連動した口パクアニメを載せて動画化するなどしています。また、静止画と音声を動画編集ソフトで作る、という簡易なもので投稿している人も少なくないようです。

いずれにせよ、YouTubeは視聴時間とサムネイルで評価が決まる場所ですので、可能であれば動画として字幕を入れたり、カット割りを増やしたりなど、手をかければかけるほど、離脱は減っていくでしょう。このあたりはまた別の回で解説します。

なお、EC事業者ならではの方法としては、商品画像を使う、という方法があります。商品を映せること、これがEC事業者の強みです。音声では説明しきれない質感やサイズ感、また商品の利用シーンなど、リスナーとショップの「絆」を深める画作りをしましょう。

まとめ——ポッドキャストのコアはRSSです

音声をアップロードするのはホスティング1か所。RSSが1つあれば、世界中のポッドキャスト配信先に届けることができる、それがポッドキャストの強みです。配信先は後からいつでも増やせます。手間がかかるのは、最初の登録時だけです。登録できそうな配信先を見つけたら、どんどん登録し、あなたの番組を世界中に広めて下さい。

次回は、「何を話すか」を設計していきます。

スタジオ・カグア!:https://studio.kagua.biz/

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