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越境ECのハードルとは?
日本の総人口は2011年以降減少し続けています。出生児数が死亡者数を下回っており、その差は広がるばかりです。縮小していく国内市場に対し、CRMによるリピート施策やアップセル・クロスセルによる客単価アップなどの施策を企業は行うものの、一人の顧客が購入金額、消費する量には限界があります。一方、世界の人口は毎年増加しています。そのため、海外に進出しようと思っている企業は少なくないでしょう。
インターネット上でモノやサービスを売買できるECであれば、海外に販売できると思われるかもしれません。実際、GoogleアナリティクスなどでECサイトの流入をみてみると、海外からアクセスがあると思います。しかし、海外で販売するためには、ECサイトを海外向けに対応する必要があります。

言語の対応
越境ECを始めるにあたって、言語の対応は欠かせません。とはいえ、全てのページを複数の言語に翻訳するとなると、時間もお金もかかってしまいます。また、商品やコンテンツの更新頻度が遅くなるということは、それだけ施策を回せる回数も減ってしまいます。そのため、多言語化ツールなどの機械翻訳をうまく活用する必要があります。その際、テキストが入っている画像は、機械翻訳などで対応ができないため注意して下さい。機械翻訳はあくまで機械的な翻訳であるため、商品の魅力を十分に伝えられない可能性もあることは念頭に入れましょう。
また、ただ翻訳するだけではなく、その国ごとの事情を加味したローカライズも重要です。たとえば、国によっては日本と違って郵便番号がないところもあります。そのため、郵便番号の記入を必須にしない方がいいでしょう。また、郵便番号があっても日常ではほとんど使わない国もあります。そのため、住所から郵便番号を検索できるようにするなど、工夫が必要です。
通貨・決済の対応
言うまでもなく日本円だけでなく、その国の通貨に対応する必要があります。ECにおける決済手段は、海外でも日本同様にクレジットカードがよく使われています。しかし、同じクレジットカード払いでも、中にはコンビニで商品を受け取る際に決済を行う(コンビニ払い)のが一般的な国もあります。発展途上国などの国では、まだクレジットカードが普及していないところもあるでしょう。その場合、現金振り込みや代金引換の決済方法を用意する必要があります。
他にも、日本とは違って欧米ならPayPal、中国ならAlipayといった第三者支払いサービスもよく使われています。そのため、第三者支払サービスにも対応しておくといいでしょう。その国ならではの決済方法を用意することが大事です。とはいえ、全ての決済手段に対応するとなると、コストもかかってしまいますので、対象国で使用されている決済手段を調べたうえで、自社に合った決済手段を選ぶようにしましょう。
物流の対応
海外配送が国内配送と大きく違う点は、通関の手続きが必要なことです。手続きの一つにインボイスの作成が挙げられます。配送する国によっては、インボイスが不要な場合もあるので確認して下さい。インボイスは、仕入書や商業送り状とも言われており、「商品の内容」「重量」「数量」「単価」「合計金額」「配送手段」「支払い条件」「送り主」「届け先」などの項目を記載します。国によって輸出が規制されている商品もありますので、事前に確認しましょう。
また、海外配送では関税がかかることも忘れてはいけません。日本から海外に商品を発送する場合、購入者は関税を支払う必要があります。関税のことを知らないで購入する人もいるので、サイト内にその旨を明記しないと、クレームを繋がってしまう可能性があります。
他にも、海外に配送する際は、国内に比べると距離が長いのと、国によっては日本ほど丁寧に配送してくれない可能性があります。そのため、輸送中に商品が破損してしまう可能性が高いです。そのことを意識したうえで、梱包を心がけましょう。
上であげた以外にも、その国の文化や慣習、法律なども意識しなければなりません。またECサイトを作っただけでは売れません。販売国に合わせて、集客・販促、リピート施策を考える必要があります。冒頭でもお伝えしたように、越境ECはビジネスチャンスではありますが、壁が多いため、参入する企業は少ないのが現状です。そこで、ここでは越境ECのハードルを少しでも減らしてくれるECカートシステムを紹介します。
代表的な越境ECのカートシステム
Cafe24:無料で高機能のECカートシステム

日本では馴染みはないですが、海外ではよく使われているECカートシステムです。低コストでネットショップを運営できるのが特徴で、初期費用や月額費用はかからず、販売手数料もありません。Cafe24自体は無料で利用できますが、決済手数料は別途発生するため、利用する決済代行会社に確認しましょう。
無料で利用できるCafe24ですが、越境ECに対応しています。しかも追加費用などかかりません。日本語、英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、ベトナム語、スペイン語、ポルトガル語と8種類の言語に対応しています。商品情報の自動翻訳機能もあります。1つのアカウントで最大15つのショップを作成できるので、販売したい国ごとにECサイトを作ることが可能です。
集客面に関しても、FacebookやInstagram、Googleと連携しています。特にFacebookに関しては、「Facebookショップ」のグローバルパートナーに選定されているところがポイントです。
Cafe24は専用のアプリを活用して、様々な機能を追加することができます。アプリは有料のものもありますが、無料で使えるものも多いです。無料のECカートシステムにも関わらず、Cafe24は拡張性が高いと言われる理由の一つです。
日本では2018年からサービスが提供されたこともあって、導入事例はまだ少ないです。しかし、海外のサービスにも関わらず、サポートがしっかりしており、越境ECにあたってのコンサルティングやサイト構築、運営代行も行っています。コロナ禍が続いている世界情勢によるインバウンド減少など、今後越境ECへのニーズが高まることで導入事例も増えると思います。
LaunchCart:アジア向け越境EC専用のカートシステム

LaunchCartは、越境EC専用のカートシステムであり、国産のサービスです。特にアジアに強く、中国や台湾をはじめ、香港やマレーシア、シンガポール、タイ、ベトナムにローカライズしています。
アジアの国々では、クレジットカードやPayPalだけでは対応しきれません。LaunchCartは、中国向けの3大決済(銀聯カード、Alipay(アリペイ)、WeChat Pay(ウィーチャットペイ)はもちろん、台湾のコンビニ払いも実装しています。東南アジア各国においては、主流の銀行決済(モバイルバンキング)やCOD(代金引換決済)に対応しています。
アジアならではの特徴は決済だけではありません。日本だとお客様との連絡手段にe-mailはよく使われますが、アジアは国によってはe-mailが使われていないことも多いです。そのため、LaunchCart ではSMS/MMSの送信が可能になっています。
越境ECを行う際、サーバーの場所はECサイトの表示速度に直接関係するため、重要になってきます。特に中国に販売する際は、グレートファイアウォールのアクセス規制対象になってしまうことで有名です。
LaunchCartは、販売したい国や売上規模に合わせて、最も適切なサーバーが選択できるようになっています。中国であれば香港、台湾であれば日本、アジア圏であれば、シンガポールと最適なリージョンとマシンスペックを提供してくれます。
LaunchCartは国産であり、自社開発のため、サポート体制もバッチリな点が嬉しいのではないでしょうか。日本語専任スタッフで、チャットと通話で相談することができます。また、中国をはじめ、現地の大手企業と連携していることも、ポイントの一つです。
Shopify:拡張性があり自由度が高いカートシステム

Shopifyは2017年に日本市場に参入し、近年急速にシェアを伸ばしています。その理由としては下記が挙げられます。
1つ目は、ShopifyはAPIが公開されているため、フロントエンドとバックエンドのシステムを柔軟に連携することができ、OMOやヘッドレスコマースを実現しやすいという特徴があります。また、SNSとの連携が強いのもShopifyの魅力の一つです。
2つ目は、売上規模によるカートシステムの乗り換えが不要という点です。特にサーバーインフラは強固で、20万人が同時にアクセスしても落ちません。また、Shopify専用のアプリを活用することで、様々な機能を実装することができます。とはいえ、アプリをインストールしすぎるとサイトが重くなりますし、アプリ同士による干渉もありえます。Shopifyにはプランが4つあります。年商が上がるにつれて、実装したい機能が増えると思いますので、プランを変更することで対応していくといいでしょう。
ShopifyはグローバルECと謳っていることもあり、国内だけでなく、越境ECも標準で対応しています。言語や決済などの対応はもちろん、CDNが標準搭載されているため、どの国からアクセスしても最適なスピードでサイトを閲覧することができることが強みです。
とはいえ、ベーシックプラン(月29ドル)だと、海外ドメインや国際価格が利用できないので注意が必要です。上記の設定は、スタンダードプラン(月79ドル)から利用できます。また、Shopifyはサポートが全てオンラインのフォームのみとなっています。そのため、電話や対面でのサポートを望む場合はオススメしません。その代わり、Shopifyは、公認パートナーが存在しますので、うまく活用するといいでしょう。
最後に:海外販売の方法は様々
上記のECカートシステムは、いずれも実績があります。それぞれの特徴を踏まえたうえで、自社にあったシステムを選ぶようにしましょう。Cafe24とShopifyは、APIを公開していることと、アプリによる拡張性があるという点で似ています。両社の違いは価格と機能面、サポート体制になります。一方、LaunchCartはアジア向けの越境ECカートシステムです。特に中国と台湾での実績があります。
今回は越境ECのカートシステムについてお話しましたが、海外代理購入サービスを利用することでも、海外販売が可能です。上記は既存のECサイトに指定のタグを埋め込むだけで、海外販売対応が可能になります。ただし、ユーザビリティなどは、越境EC専用のECサイトに劣ってしまうのと、購入者に転送手数料がかかってしまうというデメリットなどもあります。転送手数料がかかっても購入したいと思われる商品を扱っているかがポイントです。また、他にも、販売国のモールに出店する方法もあります。それぞれメリット・デメリットがありますので、自社の状況を踏まえたうえで、選択するようにしましょう。
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