岐阜の老舗食品卸企業がECサイト立ち上げから2年で月商1千万円超え!成長の軌跡を訊く
インタビューの概要

株式会社ナカヤマ(以下、ナカヤマ)は食品卸を中心に展開する岐阜県恵那市の企業です。創業70年と老舗企業ながらも2020年にECサイトを立ち上げてから、わずか2年で月商1千万円を超え、3年目になりコロナ特需が明けた今も売上は安定的に成長しています。ITの知見を持っておらず、BtoBを中心に事業を展開していたナカヤマが、どのようにして成長を遂げたのか?同社のEC事業部である宮川さんと近藤さん、そしてナカヤマのEC事業全般を支援している株式会社チョッピーデイズの清水さんにお話を伺いました。

ECサイト立ち上げのきっかけは?

――まず、ナカヤマが2020年にECサイトを立ち上げることになったきっかけを教えていただけますか?

プロ御用達の業務用食品通販「ナカヤマフーズオンライン」
プロ御用達の業務用食品通販「ナカヤマフーズオンライン

宮川さん:ECサイトの立ち上げは、ちょうど新型コロナウイルスが流行り始めた頃でした。弊社は学校給食や飲食店への食品卸を行っている企業ですので、緊急事態宣言の影響を直接受けてしまったのです。売上が全くと言っていいほどない状態になり、社長からECサイトを立ち上げるようにと号令がかかります。

清水さん:ナカヤマさんにはコロナ以前からWebに関する全般的な支援をしており、定期的にお話をする機会がありました。実は社長の号令の裏に、ナカヤマさんのお取引先が営業停止になったことを受けて、私のほうから社長にECサイトの立ち上げをご提案しております。二つ返事で実施を決めていただき、全面的にご支援することを約束してプロジェクトがスタートすることになりました。

プロジェクトのメンバーには、ナカヤマさんからは宮川さんと近藤さんがアサインされます。お二人とも入社間もなく、ナカヤマさんに元ある業務と深く関わりを持っていませんでした。長年同じ仕事に携わっていると、新しい業務に抵抗感を示す方もいらっしゃいますが、社内業務にあまり触れていなかったお二人は良い意味でECの業務を抵抗なく吸収していったのです。

近藤さん:ただでさえ業績が良くない中、会社として卸事業にこれ以上大きな穴を開けるわけにはいきません。EC運営の経験者はおらず、誰もがゼロからのスタートであるため、既存の業務にそれほど慣れていない私と宮川に、このプロジェクトを任せるという判断に至ったと聞いています。

社内総動員!ゼロから1か月でサイトの立ち上げへ

――プロジェクトが決定したものの、社内にIT・ECの知見をほとんど持っていないナカヤマがどのようにECサイトの立ち上げを進めていったのでしょうか。

清水さん:プロジェクトが動き始めるときに社長から「売れ残っている商品の賞味期限が迫っているため、サイトの立ち上げを1か月でなんとかして欲しい」と依頼を受けました。この時点では、商品に関するリストやデータなど整理されている情報はない状況です。倉庫を見ると棚割りもされておらず、それまでの棚卸の作業は、白紙の紙とえんぴつをもって倉庫に行き在庫を数えていました。何がどこにどれくらいあるのか全員が正確に把握できていなかったのです。

近藤さん:消しゴム付きのえんぴつを持って、一つ一つ数えていましたね。

清水さん:また、営業の方によって、お取引先の企業ごとに卸値が異なるため、ECサイトを作る上で表に出せる売価の設定も必要でした。

ECサイトを作るためのカートシステムは「makeshop byGMO」を採用しました。基本機能が豊富でBtoCにもBtoBにも対応しており、商品数が豊富なナカヤマさんとの相性はピッタリでした。さらに、未経験の方が運用を行うことから、日々の運用で問題が発生することはわかっていたので、サポートが手厚いことは必要不可欠です。「makeshop byGMO」のサポート対応の良さは私が別の事業者様への支援でよくわかっていたため、安心して導入に至ることができました。

近藤さん:立ち上げ前は楽天市場などのモールに出店すると思っていましたので、そうではなく独自サイトと聞いてびっくりした覚えがあります。

――ECサイトを作る土台が決まりましたが、1か月でサイトを立ち上げるのはかなり大変なことだったのではないでしょうか。

清水さん:商品ページを作るために、写真の撮影、写真の加工、商品情報を用意することが必要です。この点は私のほうで商品情報の構成や写真の撮影、加工方法、管理方法などをマニュアル化し、実際の制作作業をナカヤマの皆様にご対応いただきました。

近藤さん:お取引先の飲食店などに営業できないことで、社員全体のリソースをECサイトの立ち上げに集中することができました。営業部だけでなく、ラベル部やデザイン部、化成部などさまざまな部署に協力してもらい、一丸となって商品情報の作成を行います。

宮川さん:社内の雰囲気はコロナの打撃で営業できないことによりショックを受けている方もいれば、新しい事業に取り組むことにワクワクしている方もいる印象でした。一貫して社長は高いモチベーションで社内を鼓舞してくれていたのを覚えています。

清水さん:4月末にプロジェクトが始まり、ロゴやサイトデザイン制作、サイト構築、EC運用を整え、200点ほど商品を掲載した状態で5月25日にプレオープンを迎えました。とにかく納期に間に合わないと食品がダメになってしまうので何日か徹夜をしながら作業に没頭しました。その中で、実際に手を動かすことになる社内の方が使いやすいように、ECサイトのフロントの作成からサイト立ち上げまでの運用方法まで、無駄を省いた作りにしています。

集客は用意周到にコツコツと積み上げる

開設直後はコンテンツを作りながら身近な方を顧客化

――社内一丸となって無事納期までにサイトを公開できたんですね。しかし、公開直後にすぐ売れるわけではないかと思いますが、どのように集客したのですか?

清水さん:ECサイトを立ち上げる前から集客のことは考えていました。広告やSEO対策、SNSなどできる範囲のWebマーケティング施策は一通り土台(運用フロー)を用意して、制作作業はお二人にお願いしました。そんな流れでサイト内のコンテンツをリッチにする動きが進みます。

一方で、売上が立たないと社内のモチベーションが下がりかねないため、運用の練習を兼ねてプレオープン中はナカヤマさんの社内の皆様に買っていただくようお知らせしました。そこから徐々に知り合いやグループ会社など、身近な方に購入してもらいやすいように宣伝を広げていきます。立ち上げ時はトラブルが起きやすいため、身内に購入いただくことでクレームではなく、しっかりとしたフィードバックを受けられるのです。

宮川さん:社内の多くの方にサイトを見ていただいて「商品ページに違う商品の説明が入っているよ!」とか、細かい指摘をたくさん頂き、どんどん改善を進めていきました。

近藤さん:明らかに身内ではない方から注文が入ったときは嬉しかったですね。チームのみんなで拍手しました(笑)。

清水さん:外部からの最初の注文は検索経由でした。コンテンツマーケティングはすぐに効果が出るものではありません。「この業務に何の意味があるんだろう?」と先が見えない中でも、お二人が地道に作り続けたコンテンツが検索流入を増やしていき、注文につながったのです。

メディア露出で売上急増!張り巡らされたコンテンツの網目が肝

――最初は身近な方に買ってもらいつつ、着々とコンテンツ量を増やしてアクセスを獲得できる環境を整えていったと。それから徐々に売上は伸びていったんですか?

清水さん:その後もオーガニックやSNS、広告経由などさまざまな入り口から集客を行い、着実に売上は伸びていきました。月商が1,000万円を超えたのは大手メディアサイトに商品を紹介いただいたタイミングです。一見、メディア掲載による一過性の売上向上はまぐれのように思われがちですが、取り上げていただくきっかけはコツコツとお二人が作り上げたコンテンツがあったからこそなのです。

近藤さん:メディア掲載はその1回に限らず、今も継続的に引き合いを頂いています。サイト立ち上げ時に清水さんから指示いただいたことが、当時はどんな結果になるか全くわかっていませんでしたが、積み重ねたことで結果に結びつくことがわかりました。

店舗運営の礎を築くお客様の声

――ECサイトの立ち上げから集客について伺いましたが、日々の運営で大事にされていることがあればお聞かせいただけないでしょうか。

宮川さん:日々、電話やメールなどのお客様からの問い合わせに対して、1件1件丁寧に対応するようにしています。お客様が求めている商品を取り扱っていない場合は、似たような商品をご提案するなど、定型文ではなく、その都度お客様にとって最善の提案ができるよう心がけています。

一例として、離島から冷凍食品を送ってほしいという要望がありました。その離島には、どこの配送会社も冷凍便でお届けしておらず、冷凍食品の注文を受け付けてくれるECサイトがないというのです。いろいろ調べてみると、日本郵便が冷蔵温度帯で届けるチルドゆうパックを利用して、梱包に溶けない工夫をすればいけるのではないかと思いました。

溶けない保証ができないことや着払いになるという条件であればお届けできるとお伝えしたところ、「ぜひ、お願いしたい」と取引に至りました。商品は無事に届いたようで、わざわざ写真を送ってくれるくらいお客様にとても喜んでいただけたのは印象に残っています。

近藤さん:お問い合わせは対応して終わりではなく、しっかりと振り返りも行っています。清水さんを交えて週次で会議を行い、お問い合わせに対してより良い返信を指導していただいています。特集などの企画のアイディアやページの修正、運用の見直しなどのブラッシュアップなど、お客様の声は日々の運営に活かせるところが多いです。

清水さん:お客様がわざわざお問い合わせするくらいです。そこには何かしらニーズが必ずあります。なるべくPDCAを回しやすいように、いつ・どんなお問い合わせがきたのかを管理しています。いずれ、システムを導入して管理するようにしていきますが、問い合わせが多くないはじめのうちは、すぐに実施できることを考えたらスプレッドシートで十分です。

創業70年の老舗企業がECサイトの立ち上げに成功した理由とは?

――主となる事業を持つIT・ECの経験がない企業が、短期間で成果を上げることは簡単なことではないはずです。今回のプロジェクトが実りを結んだ要因を教えていただけますか?

宮川さん:良きパートナーを見つけられたことが最も大きな理由です。立ち上げ時には清水さんは本当に毎日遅くまで、ときには徹夜されてまでご支援いただきましたし、今も継続してご支援していただいています。また、社内の事情も踏まえたうえで歩みよっていただけるので、外部の方というよりは一緒にEC事業をやるチームの上司という感じですね。

近藤さん:だからこそ、私たちは右も左もわからない中で清水さんの言うことなら間違いないと信じて、地道にコツコツ続けられることができました。最初は大変でしたが、今は楽しく仕事をしており、EC事業で働いていることを誇りに思います。

清水さん:長くBtoBの事業を継続していた企業がEC事業を立ち上げると、既存事業の経験をベースに事業者目線で物事を考えがちです。すると、いざ情報発信を行うにしても、事業者目線かユーザー目線か自分たちでは判断がつかなくなってしまうことがあります。この状態に陥らず、ユーザー目線を持って考えられていたためナカヤマさんは実りを結んだのではないでしょうか。

今回、ナカヤマさんは良い意味で会社に染まっていない2人の担当者をつけていただき、先入観を持たない状態でユーザー目線のサイトやコンテンツを作り上げることができました。ECサイトを作ることで売上を伸ばせる企業はたくさんありますが、既存の商品やサービスをECにフィットさせるのは一筋縄では行きません。

ECサイトの全体で95%のショップが売上ゼロといわれています。施策や改善方法はネットや書籍などにありますが、それを真似てもうまくいかずに困っている方は多いかと思います。私の経験が企業様のお役立てられることがあるかもしれませんので、お困りの方はご連絡いただきたいです。

インタビューを通して:EC事業の立ち上げは良き伴走者と

コロナ禍に勢いで始めたECサイトが伸び悩み、今となっては化石化している企業も一定数いるのではないかと思います。さまざまなサービスが登場し、ネットショップが開設しやすくなったことで数は激増しました。今はITの知見を持たない企業が思いつきでショップを作っても、簡単に売上を作ることが難しい時代になっています。

ナカヤマさんのEC担当を務める宮川さんと近藤さんは、完全未経験の状態から、今となっては日頃の受発注・お問い合わせ対応や特集・企画・メルマガ・SNSなどの更新、メーカーとの交渉などECに関する業務を幅広く対応できるようになりました。清水さんと週次行われる会議にはお二人に加えて社長も参加して、お話をしているとのことです。

EC事業を新規で立ち上げる上で、良きパートナーと協業することと社長が本気で向き合うことは欠かせない点だと思います。自社のEC事業に課題を感じている事業者の方は清水さんにまずは相談をしてみてはいかがでしょうか。

株式会社チョッピーデイズ:https://choppydays.com/
清水さんが執筆したコラム:https://www.commercepick.com/archives/author/shimizu_daisuke

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