ペットの延命を願う!!ECで国内初の専門機器販売拡大を狙う日本バイオテクノファーマ
日本バイオテクノファーマ株式会社
代表取締役社長 篠原 直樹さん(写真左)
拝師 佳奈さん(写真左)
インタビューの概要

日本バイオテクノファーマ株式会社(以下、日本バイオテクノファーマ)は、これまでヒト用の医薬品や医療機器の分野で多くの実績を築いてきました。今回、新たに動物用デジタル聴診器を展開し、動物用医療機器の市場に参入。同時に、初のECサイトを立ち上げ、D2Cモデルで販売をスタートします。

EC運営の経験はなかったものの、社内外のリソースを活用しながら、消費者にとって使いやすいサイトを構築し、効率的な運営体制を整えていきました。今回は、どのようにしてECサイトを立ち上げ、運営体制を構築したのか、また、その中での工夫や課題について、同社の拝師(はいし)佳奈さんにお話を伺いました。

少人数かつ市場にない製品だからこそ、ECで販売

――今回、動物用医療機器市場に参入した理由を教えてください。

拝師さん:現在、予防医療が注目されていますが、今後はヒトだけでなく、動物(ペット)にも適用される医療が重要になると考えています。そのなかで、今回発売した動物用デジタル聴診器「WITHaPET」は、犬の寿命を延ばすことに通じ貢献できる製品です。

犬の死因で二番目に多いのが心臓病です。「WITHaPET」は、犬の心臓病(※)に対し、AIによる分析で症状のステージを判断し、予防と早期発見に繋がります。早期に治療を開始できれば、治療費を抑えながら、より長く元気な愛犬との時間を過ごせるようになります。

※MMVD:僧帽弁粘液腫様変性

――動物用医療機器をECで販売しようと思った理由や、その戦略について教えてください。

拝師さん:「WITHaPET」のような動物用デジタル聴診器は、日本ではまだ馴染みがないため、販売に際してしっかりとした説明が必要とされます。しかし、弊社は少人数で運営しているため、専任の営業担当を設けることが難しい状況です。

また、製品に興味を持ってもらうには、一般ユーザーにMMVDという疾患について知ってもらい、自宅で早期発見できることを啓蒙する必要があります。そこで、ECサイトを通じて広く情報を発信できる点が、販売戦略として適していると考えました。 さらに、今では多くの人がSNSから情報を得ているため、SNSをきっかけに購入を促進するには、ECサイトの存在が不可欠だというのも理由の一つです。

はじめてのECサイト立ち上げ、要はカート選び

「WITHaPET」の商品ページ

――ECサイトを作るにあたって最初に取り組んだことは何ですか?また、どのような流れで進めましたか?

拝師さん:弊社にはECに関する知識がまったくなかったため、まず、ECサイトの種類や規模ごとの特徴、それに伴う費用について調査しました。また、関連サービスの資料を請求し、面談を通じて自社のニーズだけでなく、EC業界全体についての情報も収集します。

その後、カートの選定を進めました。基準として重視したのは、ECサイト構築やHTMLの知識がなくてもある程度運営できること、十分なサポートが受けられること、そして費用が適切であることです。

最終的に導入を決めたメルカートは、セキュリティ面の実績があり、事業が拡大時した際にもシステム移行がスムーズにできること、また導入後のサポート体制が整っていることが決め手となりました。

――ECサイトを作るにあたって、特にこだわった点や苦労したことがあれば、お聞きしたいです。

拝師さん:すべてが初めての経験でしたが、特にカートの選定が最も難しかったです。どのカートを選ぶかで、今後の運営の方向性や負担が大きく変わるため、慎重に選びました。初期費用をなるべく抑えながら、ある程度の自由度があり、オリジナリティを出せること、また他のサイトと似たデザインにならない点を重視しました。

まずはメルカートを提供するエートゥジェイさんにページ構成に合わせたサイトの大枠を作成してもらいました。その後の細かな修正やコンテンツの追加は、できる範囲は自分たちで対応しますが、プロのエンジニアの技術が必要な部分は追加料金を払って対応していただいています。

物流倉庫の選定基準は特殊な製品への対応、決め手は見積もりと安心感

拝師さん:まず、物流は最初から外部に委託する方針でした。実は、コロナ禍で抗原検査や抗体検査のキットを販売した際、受注件数が多くなかったので自社で発送していたのですが、その経験から、一般の方からも注文を受けた場合は自社で対応するのは難しいと感じていたのです。

今回は製品が特殊で、動物用医療機器の製造業の許可を持つ倉庫でなければ扱うことができません。そのため、医薬品製造業の許可を持ち、さらに動物用医療機器の許可も取得してくれそうな倉庫を選定しました。候補がかなり絞られた中で、対応可能な数社に見積もりを依頼し、最終的に決定したのが、「富士ロジテック」さんです。

――富士ロジテックさんは、どのようなところが決め手になりましたか?

拝師さん:富士ロジテックさんは、他社と比べて見積もりが非常にわかりやすく、リーズナブルだった点が決め手でした。物流倉庫の見積もりは各社フォーマットが異なるため、単純な比較が難しいのですが、富士ロジテックさんは薬事管理料など、パッと見てわかる部分で他社よりも圧倒的に安価でした。

また、商品を入庫して保管する料金についても、パレット単位だったり、量に応じた変動制だったりと倉庫によって異なりますが、富士ロジテックさんはそこも群を抜いてわかりやすかったです。

見積もりを依頼した後、富士ロジテックさんの担当者と薬事の担当者にお越しいただき、弊社の社長と薬事担当者と面談を行いました。そこで弊社の要望に対する対応や見積もりの詳細を丁寧に説明いただき、とても良い印象を受けたので、お願いすることを決めたのです。

富士ロジテックさんは経験豊富で、たとえば資材の準備でも対応範囲が広く、見積もり以外の部分でも柔軟に対応いただけそうでした。物流業務に限らず、外部委託では当初の見積もりになかった追加料金が発生することがありますが、その点も心配することはなかったです。

物流倉庫の対応は弊社の信用問題にもつながります。医薬品の会社として、富士ロジテックさんは実績を含めそういったところでも安心感がありました。

製品がこれから動き出すという準備段階で、「こうしたほうが良い」というアドバイスを頂けたのも良かったです。今後、製品を増やすことも考えていますが、その際もスムーズに対応できる見通しが立ちました。

富士ロジテックの葛西倉庫

物流の外部委託と合わせてOMS・WMS一体型のシステムを導入

――富士ロジテックさんに委託するまでの流れや、どのように進められたかをお教えください。

拝師さん:富士ロジテックさんに物流をお願いするうえで、OMS(受注管理システム)とWMS(倉庫管理システム)が一体となっている「ロジレス」を勧めていただき、導入しました。データの整備もサポートしていただきましたが、実際に使ってみると、システム同士が連携して非常に便利だと感じました。

今使っているメルカートの現状のプランでは、発送後の領収書発行には会員登録が必要で、未登録の方には個別対応が必要です。しかし、「ロジレス」を導入することで、会員登録をしなくても、出荷時に自動で送信されるメールから納品書と領収書をダウンロードできるようになり、業務が大幅に効率化できます。

――委託後は、どのような体制で商品の入庫、保管、発送、在庫管理などを行っていますか?

拝師さん:「WITHaPET」は韓国で製造された製品を日本仕様に変更し、直接富士ロジテックさんの倉庫に入れています。在庫が少なくなったら製造元に追加を依頼する形です。

入庫の際は、ロジレスに入庫状況を登録して、関税などに関する書類を富士ロジテックさんとやり取りします。倉庫側の在庫をロジレスでリアルタイムに見ることができ、入庫や配送がすぐに反映される点が非常に便利です。将来的に扱う製品が増えた際、在庫が減った時点でアラートが通知される機能も活用したいと考えています。

また、ロジレスでは納品書・請求書を顧客にダウンロードしてもらえるシステムになっているので、それを利用しています。

富士ロジテックさんが「ロジレス」を勧めてくださった理由は、実際に運用してみて、その便利さをより深く理解できました。

これまでにない製品を知ってもらい、必要性を感じてもらうためのマーケティング

――動物用医療機器というのはニッチな商材だと思うのですが、消費者に認知・購入していただくために、マーケティングや販促戦略など、どのように取り組まれていますか?

拝師さん:今取り組んでいるのが、一般の方向けのプレス発表と、SNS広告への出稿、投稿のための動画作成などです。インフルエンサーさんの起用も考えていて、ペットの健康管理などをメインに投稿されている方を選定して、お話を進めています。また、自社のYouTubeチャンネルを立ち上げ、ご購入者様で協力いただける方に製品を使用しているところを動画に撮ってもらい、紹介していけたらと思っています。

他にも、獣医師の先生方に向けて、東京都の獣医師会の賛助会員として入会しチラシを出したり、学会での展示を行ったり、心臓専門の動物病院に向けたアプローチも進めています。

動物用のデジタル聴診器で、AI分析もできる製品というのは今までなかったものなので、こういう新しいことができると知ってもらい、必要性を感じてもらわないといけません。そのためにはSNSだけでは伝わりにくいかもしれないと感じていて、ペットのオーナーさんが集まる展示会に積極的に出ることも考えています。

――最後に、将来の展望や目標、今後の成長戦略についてお教えください。

拝師さん:「WITHaPET」を使うことで、自宅でペットの聴診ができるようになります。また、病院で獣医師の先生だけが聞いていたものを、共有できるようになります。そのことで、先生とペットオーナーさんが協力でき、より良い診療につながると考えています。聴診音を保存することもできるので、データを蓄積することで、論文発表などにもつながるのではないかと期待しています。

AI分析でMMVDのステージがわかるのはすごい技術ですが、それだけでなく、普段からペットの心拍の状態を把握できることもメリットです。動物病院の先生がおっしゃるには、病院では興奮状態になって普段の様子がわからないこともあるそうです。人も動物も、体調が悪いと心拍が上がるので、普段の心拍の状態を知っておくことで、異常を早めにキャッチして病院に連れていくことができます。 弊社は製薬会社として、「患者さんとその家族のより良い未来のために」というスローガンを掲げてきました。この実現には、健康寿命を伸ばしていくことが必要だと思っています。そのために、人はもちろん、家族同然のペットも健康で快適に暮らしていける製品を、今後ECサイトで展開していきたいです。

また「WITHaPET」の販売をきっかけに、「Well-Being」というオンラインショップを立ち上げ、ほかの製品も展開しています。たとえば「WellisAir」という空気清浄機があります。この製品は、一般的な空気清浄機より小型で、自然の浄化装置を利用した画期的な仕組みです。フィルターを使わないのでフィルター交換が不要で、定期的にカートリッジを交換するだけで済みます。ほかにも、ペット用の簡易的な尿検査などの販売も予定しています。

今後も、みなさんがペットと一緒に健康に生きていくための製品を提供していきたいです。

まとめ:ECサイトの信頼性を高める物流倉庫の大切さ

EC・D2Cに参入する事業者が増え、多種多様なECサイトが存在している今、サイトの信頼性を高めることがこれまで以上に重要になっています。

今回取材させていただいた日本バイオテクノファーマさんの場合、製薬会社であり、動物用医療機器という市場で新たな製品をきっかけにして初めてのECへの挑戦ということで、なおさらそれが当てはまるでしょう。

ECサイトの信頼性を高める要素は、ECサイトのコンテンツや問い合わせ対応、決済面などいくつかありますが、物流も重要な要素のひとつです。注文した商品が正確かつ丁寧に届くことは、ECサイトの基本であり最重要な要素でしょう。

今回の取材では、動物用医療機器の製造業の許可が必要という特別な条件を前提として、費用は抑えつつ、要望をどこまで実現できるかというやり取りが伺えました。

お話のなかで、ホームページや見積もり、面談においての物流倉庫からの説明がわかりやすく的確であることや、要望に対して柔軟に対応できること、今後の事業展開にも対応できそうなことなどが選定のポイントとなったことがわかります。また、新たなシステムの導入が必要な場合、EC事業者にとってもメリットがあることや、導入や運用に関するサポートがあることで、前向きに取り組めることもわかります。

扱う商品のジャンルは違っても、物流業務を外注したいEC事業者にとって参考になる内容なのではないでしょうか。

▼オンラインショップ「Well-Being」
https://withapet-shop.com/shop/default.aspx

▼日本バイオテクノファーマ株式会社
https://www.japanbiotechnopharma.com/

▼株式会社富士ロジテック
https://fujilogi.net/

企画/構成/取材:竹内長

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