通販ビジネスにおける先進企業のデータ分析手法
この記事の執筆者

梅田 哲平

株式会社HAT
通販支援事業部 マネージャー

東証一部上場企業(現プライム)、大手D2Cグループなど数社を経験。通販領域において、事業全体の数値管理、マーケティング施策の立案、新規獲得およびCRMの施策改善を目的としたデータ分析業務に従事。

2024年、株式会社HATに入社。現在は主にリピート通販およびD2Cの売上改善、ブランドの立ち上げ推進など、さまざまなプロジェクトに参画している。

企業HP:https://www.hat.ne.jp/
企業公式X:https://x.com/HATcorp10
個人X:https://x.com/UMEDA_MKTG

通販ビジネスにおける「データ分析」とは?

「D2C」という概念が日本でも広まって久しく、参入する企業も数年前に比べて格段に増えました。いわゆる「通販ビジネス」は、ダイレクトに顧客と繋がれるというメリットの一方で、市場の変化に迅速に対応できる仕組みが通販事業者には求められます。この加速度的な変化に対応するために必要なのがデータ分析です。

データ分析の二面性

通販ビジネスにおける「データ分析」は、大きく分けて2つの側面があります。以下で整理してみましょう。

  • 必要なデータを選別して取得、さらに加工して集計する
    分析担当は解決すべき自社の課題に対して、仮説を立て、必要なデータが社内にあるかどうかを確認し、新たに取得が必要な場合は企画・設計などを行い、データを取得して必要に応じて加工し、集計を実行します。
  • 結果(アウトプット)から示唆を得る
    分析担当は結果(アウトプット)から示唆を得て、実際には課題解決を進めるための提案を関連部署と連携することになります。もし、結果から示唆が得られない場合には、再度、企画・設計から見直すという流れになります。

データ分析の進め方(手順)

通販ビジネスにおけるデータ分析の一般的な進め方は、以下のようになります。

データ分析はやみくもに進めるのではなく、正しいプロセスで進め、業務の再現性を上げることを意識することも重要です。

データ分析の進め方(手順)

データ分析が組織の中でうまく機能しないパターン

通販ビジネスにおいて、データ分析の重要性は理解していても、実際には組織の中で機能しないケースがあります。以下で代表的なものを見てみましょう。

  • 分析担当の基礎的なビジネス構造の理解やデータ分析の知識が欠如していて機能しない
    分析業務が機能していないのは担当者が通販ビジネスの基本構造の理解ができていないだけでなく、データを扱う基本スキルが備わっていないことが原因です。

自社内に最適な人材がいない、またノウハウ・ナレッジがない場合には、外部のパートナーやサービスベンダーとうまく連携することで解決を模索するとよいでしょう。

  • 必要なデータが揃っていない、取得できていないことで機能しない
    データ分析は単なる集計ではなく、課題に対して解決策を見出すことが必要な業務です。この課題解決に際して、必要な分析のためのデータの収集、企画なども業務として担うことが必要です。必要なデータがなければ、新たに取得し、集計するという観点が必要です。
  • そもそも正しい集計ができておらず機能しない
    データ分析は安定して、正確にアウトプットすることで社内から信頼が得られます。正しい数字を社内に迅速にフィードバックすることから始めることをお勧めします。ここで改めて記載するのは、一定以上の売上がある企業でも、できてない企業が見受けられるからです。

大手企業が実践する分析項目一覧

通販ビジネスにおけるデータ分析には、目的に応じて多様な方法があります。その中から自社のビジネスモデルに最適な方法を選ぶことが通販ビジネス成功のカギです。

大手企業が実践する分析項目一覧

上記の中でもポピュラーなものを、以下で簡単に解説します。

継続状況分析(LTV分析)

LTV(Life Time Value)とは、「顧客生涯価値」のことです。顧客1人あたりの、自社商品の初回購入から解約(離脱)するまでの売上、もしくは利益を指します。つまり、1人の顧客の売上貢献度。とくにリピート型の通販では、購入金額と併せて、購入回数(継続率)が重視され、LTVの最大化のために、さまざまな軸でボトルネックを見つけるために用いられる分析です。

RFM分析

最終購入日からの経過日数(Recency)、購入頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)の3つの指標の組み合わせによる顧客分布を把握するための分析です。DM施策の発送用のセグメントに用いられることもある分析手法です。

バスケット分析

よく購入される商品同士の組み合わせを見つけるための分析です。どちらかというと単価の低い商品などで用いられる分析です。特定の商品を購入した顧客に対して、レコメンドする商品やセット販売するための組み合わせを見つけます。

購買パターン分析

たとえば、LTVから逆算して、優良顧客(ロイヤル顧客)が初回に購入した商品や優良顧客に至るまでに、どのタイミングでどの商品を購入したかといった購入導線(優良顧客までの購入ルート)を見つけるための分析。この分析結果は他の顧客を最適なルートに導くための施策などに活用されます。

引き上げ分析

トライアル商品(お試し商品)を購入した顧客が、本商品を購入する割合やタイミングを把握するための分析です。この分析結果は本商品の案内タイミングなどを最適化するために用いられます。

CPM分析

その他では、いわゆる「やずや式」として浸透している「CPM分析」などが有名です。

「CPM(Customer Portfolio Management)分析」はRFM分析を語るうえで指摘されることがある欠点をカバーする分析として知られています。

※RFM分析の欠点とは、「R」つまり、最終購入日からの経過日数が強く反映されることなどが挙げられます。

組織としてどのように分析業務と向き合うべきか

まず、データ分析を内製化するか外部に委託するかどうか、という判断ですが、できる限り社内で行うほうがメリットは大きいと考えます。通販ビジネスの組織体制の考え方の基本は、少人数のローコストオペレーションです。さらに、現在では拡大に際してテストを繰り返しながら、迅速な判断を求められます。

また、データ分析担当の組織内での役回り、ポジションでいうと、たとえば、新規顧客の獲得と既存顧客のCRMで部署が分かれているような場合では、データ分析担当は横断的な連携が必要になります。できる限り、全社的、横断的に考えるのが望ましいポジションと言えます。

データ分析における最適な人材確保や育成はどの通販企業にとっても、現在は簡単ではないのが実情です。自社商品だけでなく、通販ビジネスの構造理解、さらにはデータを読み取り、課題発見する能力、必要に応じてデータハンドリングも求められるポジションです。

一方、現在ではSQLなどの特別なスキルが不要なさまざまな分析ツールが出ています。社内のリソースを鑑み、属人化を回避する意味でも、それらのツールをうまく全体の業務に取り入れるのもよいでしょう。データ分析はあくまで手段であり、自社の目的を見据えながら広い視野で取り組むべきです。

最後に

今回は通販ビジネスにおけるデータ活用と分析について編みました。通販ビジネスにおけるデータ活用の最大の目的は、自社顧客の新規獲得、および既存顧客のLTVの最大化を実現することにあります。

さらにデータ分析は、その各手法の特性を理解し、適切に用いることでデータから得られる洞察を最大限に引き出すことができます。通販においても、他のビジネス同様に、目に見えないもの、把握できないものは改善できません。つまり、改善することと、分析はセットで考えるべきでしょう。

目的を見据えて、ぜひ上記を参考にし、効果的なデータ活用およびその分析を実現してください。

株式会社HAT
企業HP:https://www.hat.ne.jp/

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