
Podcastで毎週土曜日に配信している「あした使える"聴く"ネタ帳 | マーケターの真夜中ラジオ」
アラフォーマーケター2人が最近気になるトピックを毎週交互に取り上げ、それぞれのマーケ観で掘り下げています。ラジオの内容をコマースピックでもお伝えします。
今回は、スタートアップのための戦略マーケターTEAM株式会社エールコネクト代表の宮本が、地方の餃子屋さんのチャネル戦略をラジオリスナーと一緒に考えました。
宮本 昌尚
株式会社エールコネクト
代表取締役CEO
スタートアップのための戦略マーケターTEAM、株式会社エールコネクトの代表。
エールコネクトは、社内マーケターのように戦略から考えて、実行からPDCAを、最適なメンバーによる戦略マーケターTEAMで担い、スタートアップがマーケティングに困らないエコシステムを作る会社です。
キャリアとしては、アクセンチュア→トライバルメディアハウス→DeNA(個人間カーシェア事業Anyca(エニカ)のマーケティング部長)
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この記事の目次
チャネル戦略の重要性
チャネルを決めることで、価格設定、商品特性、プロモーション方法が大きく変わってきます。例えば、同じコーラでも自動販売機、コンビニ、スーパーで価格が異なるように、販売チャネルによって最適な価格帯は変わってくるでしょう。
また、チャネルは顧客層も決定します。高級百貨店で販売するか、ディスカウントストアで販売するかで、ターゲットとなる顧客層が全く異なってきます。
つまり、PlaceはPrice、Product、Promotionを支配するのです。
それでは、早速「淡路島の玉ねぎ餃子屋さん」をケーススタディとして、売上拡大を目指すチャネル戦略について考えていきましょう。
ケーススタディ:淡路島の玉ねぎ餃子屋さん
「淡路島の玉ねぎ餃子屋さん」に関する前提条件は以下の通りです。
前提条件
- 工場は大きいが、店舗の席数が少ない
- 売上拡大を目指している
- 淡路島の特産品である玉ねぎを使用
チャネル戦略を検討するにあたり、いくつもある選択肢の中からどのように考えますか。少しここで考えてみてください。
いろいろな考え方があると思いますが、ここからは一例として私の考え方をご紹介します。
利益を出しながら競合に勝てるチャネルを3C分析から考える
まず、ある程度利益を出しながら競合に勝つにはどのチャネルがよいのかを考えます。その際、餃子は、たくさんの競合がいるカテゴリなので3C分析の要素を取り入れます。3C分析とは、競合(Competitor)、顧客(Customer)、自社(Company)の3つの観点から市場環境を分析し、マーケティング戦略を立案するフレームワークです。本稿では、競合、顧客を合わせて「市場」と「自社」で考えていきます。
市場について
最も一般的な小売。餃子で想起される王将や味の素、そしてプライベートブランドなど大量生産・低価格なものが台頭しています。味の素の餃子は1個あたり約14円。大量の生産力とそれによるコスト削減と知名度で勝負になるので、スーパーに置いてもらうのは、なかなか厳しそうです。
続いてECはどうでしょうか。例えば、楽天市場を例にみてみましょう。楽天市場で販売されている餃子を見ると、餃子ランキング一位の商品は60個3,680円で1個61円でした。しかし、送料が1,000円程度かかるので商品は1個44円になり、スーパーより少し高いくらいです。実際に楽天市場で販売をしようとすると、販売手数料のほか、認知をとる広告費も必要になります。さらに、楽天市場では競合が全国の餃子販売店、中華屋さんになります。楽天市場に出店するのも厳しそうです。
自社について
淡路島の人口の比率で、高齢者と若者のどちらが多いかと言えば高齢者です。その淡路島で人気の餃子屋の玉ねぎ餃子はどういうものかを考えると、高齢者に馴染みのある町中華のようなお店である可能性が高い。そういった町中華の餃子屋さんの玉ねぎ餃子を発展させるためには、都会受けするものに脱却することが必要だと思います。
このような状況の中でチャネルを拡大するためには、ニッチ戦略が効きやすい場所で人気を確立し、それを次のチャネルへと繋げていくステップバイステップのアプローチが大事だと考えます。
ニッチ戦略からステップバイステップで考えるチャネル戦略
ステップ1:クラウドファンディングで話題を作る
最初のステップはクラウドファンディング(クラファン)です。クラファンは新しい商品やサービスを市場にテストするための有効な手段です。この段階では、商品そのものの魅力やストーリー性を前面に押し出し、応援消費を狙います。
リブランディングとターゲット設定
淡路島の餃子屋が持つ「玉ねぎ餃子」というユニークな商品を、観光客や若者にアピールするためにリブランディングします。パッケージやプロモーション方法を刷新し、クラファンで新しいターゲット層にアピールします。特に、アーリーアダプター層に刺さるような新しいコンセプトやデザインを導入することが重要です。
応援消費の力を借りる
クラファンの成功の鍵は、プロジェクトの背後にあるストーリーやビジョンです。淡路島の特産品である玉ねぎを使った餃子が、地域活性化の一環として取り組まれていることを強調します。これにより、支援者は商品を購入することで地域に貢献できるという満足感を得られます。
ステップ2:無人販売・冷凍自販機での展開
次のステップは、無人販売所や冷凍自販機での販売です。この手法は、24時間販売が可能であり、場所を選ばず展開できるという利点があります。「クラウドファンディングでも人気になったあの商品」というキャッチコピーを使っていきます。
無人販売所の設置
淡路島は車移動が主流のため、車通りが多いロードサイドに無人販売所を設置します。例えば、ガソリンスタンドと提携し、給油ついでに餃子を購入できるようにするなど、買いやすい場所へ設定することが必要です。
冷凍自販機の導入
さらに、冷凍自販機を導入し、淡路島の観光スポットや主要な交通拠点に設置します。これにより、観光客にも手軽に餃子を購入してもらえる環境を整えます。また、ユニークな自販機デザインやゲーム要素を取り入れることで、関西系のテレビ番組に取り上げられる可能性を高められるでしょう。
ステップ3:ふるさと納税やお土産展開
無人販売や冷凍自販機での成功を踏まえ、次にふるさと納税やお土産への展開に進みます。このステップでは、淡路島の名物としての地位を確立し、さらなる認知度向上を狙います。ステップ2でテレビで淡路島の自販機が面白いという話題が作られていれば、お土産店や道の駅などで「話題の玉ねぎ餃子」として導入してもらえる可能性が高まります。
テレビやSNSで話題になったことを宣伝材料にし、「あの話題の餃子」を手に入れる機会を淡路島の観光地や道の駅、ふるさと納税によって提供するのです。これにより、地元だけでなく、観光客や全国の人たちにも広く認知されることを目指します。
ステップ4:関西圏のスーパーに卸す
淡路島での人気を足掛かりに、関西圏のスーパーに卸します。地域限定の特集番組などで取り上げられることで、スーパーへの導入がスムーズになるでしょう。
関西圏のスーパーとの提携
関西圏のスーパーと提携し、淡路島で話題の玉ねぎ餃子を陳列します。テレビでの露出や地域での話題性をアピールポイントにし、スーパー側にとっても魅力的な商品として認識してもらうのです。
地域限定プロモーション
「淡路島で話題の商品がこのスーパーでも買える」といった地域限定のプロモーションを展開します。これにより、地域住民の関心を引き、購買意欲を高めることができます。
ステップ5:ECでの全国展開
関西圏での成功を受けて、次はECサイトを通じた全国展開です。テレビやSNSでの話題性を活かし、全国の消費者にリーチします。
ECでの販売
自社ECサイトや大手ECプラットフォーム(例:楽天市場、Amazon)に出店し、玉ねぎ餃子を全国に向けて販売します。関西圏での成功をPRし、全国の消費者に向けて「話題の玉ねぎ餃子」をアピールします。
ステップ6:インバウンド向けお土産展開
最後のステップは、インバウンド(外国人観光客)向けのお土産展開です。淡路島の名物としての地位を確立した後、さらなる市場拡大を狙います。
外国人観光客向けのプロモーション
これまでのステップで、メディアでの話題や販売実績などを作って「淡路島名物」になれれば大手企業とのコラボレーションも打診が可能です。例えば、スクエア・エニックスと組んでゲーム要素を取り入れたお土産商品を開発し、外国人観光客にアピールします。これにより、ゲーム好きの外国人観光客に対しても訴求力を高められるでしょう。成田空港や関西国際空港など、主要な空港や観光地での販売を展開します。冷凍品の持ち帰りを考慮したパッケージや保存方法を工夫し、海外旅行者にも購入しやすい商品を提供します。
最後に
以上の6つのステップを踏むことで、淡路島で人気の玉ねぎ餃子を全国、さらには海外へと広げるチャネル戦略が完成します。ニッチ戦略を活用し、各チャネルでの成功を次のステップに繋げることで、持続的な成長と市場拡大が期待できます。地方の名産品を全国区のヒット商品にするためには、このような段階的かつ戦略的なアプローチで考えることが効果的です。
ぜひ担当するブランドや商品に置き換えて、売上拡大のためのチャネル戦略のステップを考えてみてください。
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