
昨今、日本国内でもリテール企業のオウンドメディアを活用したリテールメディアが盛り上がりを見せています。その中でも購買の意思決定を行う店舗内でユーザーへ直接アプローチができ、ID情報の取得やIDの名寄せが実現できるアプリの媒体面が注目されています。
さまざまな外部のデータを掛け合わせることで、可能性を大きく広げることのできるリテールメディアとロイヤリティ形成におけるアプリ施策ポイントを解説いたします。
川村 兼一郎
株式会社DearOne
ビジネス推進部 ゼネラルマネジャー
塚田 康太
株式会社DearOne
プラットフォーム事業本部 ビジネス推進部 セールスユニット ユニットマネジャー
▼リテールメディアプラットフォーム「ARUTANA(アルタナ)」
https://www.dearone.io/arutana
リテールメディアとは
リテールメディアとは、小売企業が自社で収集・保有する購買データやチャネルを用いて、自社の小売事業への集客・販売促進に繋げたり、広告を配信したりする仕組みのことです。
米国ではウォルマートなどを筆頭にリテールメディアの活用が拡大しており、日本でも今注目度がさらに高まっています。
国内の市場規模でみても2026年には805億円規模まで拡大する*と言われており日本の広告主、広告代理店が注目し予算確保に動いています。

ではリテールメディアとはどの媒体を指すかご存じでしょうか?
例えば公式アプリやECサイト、自社ブログといったオウンドメディアと呼ばれるものや、店頭でのデジタルサイネージなどが配信先に当たります。つまりリテールが持っている顧客との接点がメディアになります。
大きく分けてデジタルサイネージなどオフラインの媒体と、公式アプリやECサイトなどのオンラインの媒体がありますが、オフラインであれば店内での視認性が高く全ての消費者の目につきやすいこと、オンラインは購入したデータと突合し配信した広告の効果検証がしやすいというメリットがあります。
リテールメディアで配信される広告案件は消費者が生活の中で使用する消費財が多くを占めています。収益でみると米国ではEC広告がけん引していますが*1、国内においてはBtoC市場におけるEC化率の中でも食品/飲料といった消費財のEC市場は3.8%となっており米国のリテールメディアとも異なる状況にあります。
国内では徒歩圏内にスーパー、コンビニ等があるため、月に2〜3回購入する必要があるような消費財については実店舗で購入される方が多いことが要因の1つとして挙げられるでしょう。

加えて日本では消費者がアプリを利用するのが日常化していることや、企業の公式アプリは売上80%を醸成する上位20%のロイヤルユーザーしかインストールしない(パレートの法則)と言われていることからも、日本のリテールメディアにおいてはアプリを中心に市場が拡大し、重要なポジションになるのではないかと考えられています。
*2
出展:経産省(令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書)
1st Party Dataの重要性
ところで、みなさま一度は「1st Party Data」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。最近では、「3rd Party Data」の収集に関する規制が加速している背景から、一段と「1st Party Data」の活用への期待が高まっています。
まず「3rd Party Data」とは第三者が提供するデータを指します。例えば国や自治体が公表しているオープンデータやデータ収集を専門とする企業から入手したデータがこれに該当します。
一方「1st Party Data」とは自社で収集して、保有している顧客データのことを指します。例えば、自社のWebサイトやアプリから収集した顧客の氏名、メールアドレス、電話番号などのデータや、店舗に来た顧客のPOSデータ、購買履歴などが「1st Party Data」に該当します。
公式アプリやECサイトを通じて取得できる「1st Party Data」には、サイト内やアプリ内での顧客の行動遷移などが蓄積され分析することが可能です。さらに公式アプリを利用するユーザーは「購買に近いロイヤルユーザー」であることが多く、ロイヤルユーザーのIDの名寄せが実現できるアプリの優位性に注目が集まっています。
リテールメディアにおいてもアプリで取得したIDとリテール企業が持つID-POSデータを突合し、実際に広告が表示され、クリックしたユーザーが対象商品を購買したのか?配信前と比較してどの程度リフトしたのか?を明確に可視化することができます。

さらに、1st Party Dataを活用することで、3rd Party Dataの収集に関する規制を受けずに「最適なユーザーに最適な広告配信」をすることが可能になります。
公式アプリのリテールメディア活用の可能性
リテールメディアはすべてのステークホルダーにメリットのあるWin-Win-Winの構造としても注目されています。
消費者にとっては興味・関心に合う商品との適切なタイミングでの接触や快適な購買機会・体験の増大となり、リテール企業にとっては新収入源の創出・広告による販売機会の増大に繋がるでしょう。広告主にとっては購買データの活用による最適な広告出稿を行うことができます。

リテール企業の公式アプリは75%が店舗内で起動されるため*3、購買意欲の高い消費者に対して直接訴求することが可能で、高いコンバージョン率、投資対効果が見込めます。
既に広告出稿の実証実験は行われており、一般的なディスプレイ広告に対して11倍の広告クリック率*4を実現しています。
また公式アプリは媒体枠も多く、例えばバナーやポップアップ、動画広告、クーポンなど複数の打ち出し方を視野に入れて広告を作成することが可能です。
リテール企業の側面から言うと媒体枠が多い分広告収入も得やすくなるというメリットもあります。
*3 *4 DearOne調べ
活用するために大事なこと
ここまでリテールメディアについて解説してきましたが、実際に運用を始めたいと思う場合主に必要な3つのアクションポイントがあります。
① 広告主を自社で獲得する為の営業活動
② 広告を出した後にレポートを作成し、提供するためのスキルやリソース
③ 広告案件管理の問題
このように営業リソースの確保に加え、広告案件ごとにレポートを作成するスキルとリソースの確保が必要になりますが、本業と並行して対応するのは非常に難しいのではないでしょうか。
リソースを確保し1つのリテールがメーカーに営業を行なったとしても、大手コンビニですら広告宣伝費を単一で獲得するのは難しいと言われています。メーカー側は、認知度をあげることを重視しており、1つのリテールに広告宣伝費を割くよりも、多くの人へリーチできる媒体に広告を出す方が効率的だと考えるからです。
さらに多くのリテールはアドマネージャ(広告管理ツール)を導入しておらず、獲得してきた広告案件の管理方法がありません。
このようにリソースの確保と効率化を行うことがリテールメディア運用の成功には不可欠であり自社で全てを賄うのは難しいですが、特定のプラットフォームを導入することで課題を解決し、運用の効率化が見込まれます。
DearOneでは2023年11月からリテール企業の公式アプリに対して一斉に広告配信ができるリテールメディアプラットフォーム「ARUTANA(アルタナ)」というサービスの提供を始めました。
2024年5月現在、参画しているリテール企業様(調整中含む)の月間アクティブユーザー(MAU)総数は約2,200万に達しています。これは日本でスマホを持っている4人に1人が、参画企業のアプリを利用していることになり、かつそのユーザーに対し広告配信ができる計算です。この数字からも、リテールメディアが今後ますます広がりを見せる媒体であることが伝わるのではないでしょうか?
「ARUTANA(アルタナ)」を利用し自社のアプリをリテールメディアとして媒体化すると今後どのようなサイクルが起きるのか、下の図をご覧ください。

まず広告出稿による広告収益を得ることができるようになります。さらにその広告キャンペーンにより対象商品の購買数が増加します。
得られた収益を活用し、新たな施策を打ち出したり、アプリを改修・改善したりすることでアプリのMAUが向上します。
MAUの向上により広告媒体としての価値が上がり、再び広告配信を行うことでまた広告収益につながります。
このように、「ARUTANA(アルタナ)を活用することで、効率的かつ持続的な収益サイクルを構築することができます。
リテールメディアプラットフォーム「ARUTANA(アルタナ)」
https://www.dearone.io/arutana
まとめ
・リテールメディアは今注目されているが、特にアプリは店頭でのID-POSと会員データを突合することができ広告主にとっても効果検証が行いやすく魅力がある
・アプリはID情報の取得、IDの名寄せが実現でき、アプリ内での行動遷移などを含め1st Party Dataとして活用していくことができる
・収益サイクルを確立することでさらに満足度の高いアプリを提供できるようになる
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