
本連載では、アプリ開発からデータドリブンマーケティング全体支援まで行うDearOneの各領域のスペシャリストが、担当者目線で顧客データを活用したマーケティングに役立つ情報を発信します。
全5回の連載を通して、ユーザーの行動分析に基づく施策実行の重要性に焦点を当て、1st Party Data(企業が独自に保有する顧客データ)の活用を通じて、企業と顧客の心地よいマーケティングコミュニケーションを実現する、いわゆる「グロースマーケティング」戦略の進め方のヒントをお届けします。
今後のマーケティングにおいて不可欠な要素として、①会員データの蓄積と会員との接点、②会員軸でのデータ分析による会員理解、③会員理解に基づく個別コミュニケーションが挙げられます。
第1回目はこれらを実現するためのプロセスごとの課題やアプローチ方法をご紹介します。
河野 恭久
株式会社DearOne 代表取締役社長
人材ビジネススタートアップにて営業、経営事業企画に従事したのち東証一部上場を果たす。その後、2011年に現DearOneを共同創業、スマホアプリ開発サービスModuleAppsを立ち上げ2015年1月より現職。
アプリビジネスを軌道に乗せ、第2の柱であるグロースマーケティング事業を展開。最先端の海外MarTechツールを啓蒙し現在は日本におけるリテールメディアの変革のため新規事業に邁進中。モットーは「WOWを創る」
お問い合わせはこちら:https://www.dearone.io/contact/
アプリでユーザー行動情報を「ためる」
サービスと顧客の育成には、顧客=会員理解を深め、会員のロイヤル化に向け、個別コミュニケーションを活性化することが必要になってきます。まずその一歩目として「①会員データの蓄積と会員との接点」の設計が大切です。
ここでいう接点の中で今一番重要と言われているのが「アプリ」です。EC・コマースの分野でもDX化の進展に伴い、ECサイトのアプリ化が進んでいます。
インストールしてもらいスマホにアプリロゴがある時点で、ブランド想起をしてもらいやすくなり、またいつでもプッシュ通知などで繋がれて個人を特定できる「アプリ」は、個人ごとの行動をデータとして収集でき、カスタマージャーニーやユーザーのインサイトを知る上で大変重要なツールです。

また、株式会社DearOneが行った調査によると「LINEとアプリのどちらかがなくなるとしたらどちらを残してほしいか?」という質問について約半数がアプリと回答しました。
アプリのメリットとして「アプリのほうが使い勝手が良く、親しみやすくて安心感もある」「アプリであればスマートフォンのトップ画面からすぐにアクセスできる」などが挙げられているなど、アプリが消費者にとって重要なものであることがわかります。
データを「整える」
ではアプリで集めたデータをどうしたらいいのでしょうか?
それが「②会員軸でのデータ分析による会員理解」です。アプリで収集したデータを会員理解に活用すると、効果的な施策、例えば個人ごとの先行指標の発見やUI改善の参考になるようなデータが取得できるようになります。
ただしこのようにデータから欲しい情報を導き出し、顧客に関するあらゆるデータをユーザー軸で整理していくためには、データ活用の基盤を整備していくことが必要不可欠です。
現状ここに着手できている企業は多くはありません。ただ、ここに手をつけないでいるとせっかくデータはあるのに、倉庫に眠っているといったように非常に限定的な使い方になってしまい、すでにこの領域に着手している競合と比べたときにロイヤルカスタマーの育成などで劣後してしまう可能性があります。
これからのマーケティング戦略における仮説を立てる上でデータを基軸にするのであれば、ユーザーの行動分析、データレイクの構築、顧客データプラットフォーム(CDP)の設計などデータを整えるための環境整備の優先順位をあげて取り組んでいきましょう。
データを「分析する」
現在の多くの企業ではデータの抽出、分析、企画する部署がすべて異なり、部門間での調整などが必要になるため、PDCAのスピードが課題になっています。データ基盤が正しく整備されると、社内の誰でも、簡単にいろいろなデータを見ることができます。
そこから購入に結びついたユーザー行動を見つけだすことで、データをもとにマーケティング施策を立案できるようになります。
私たちはこの購入に結びついたユーザー行動、すなわち良い結果に影響を与える可能性のある指標を「先行指標」と呼んでいます。
一般的に、データ分析を行う際にはユーザー数など結果の指標が注目されがちですが、ここで言っているのはその結果を導く1つ前の段階でのユーザーの行動です。
例えば、お気に入り登録やクーポンの閲覧など、ユーザーが特定の行動をとることで、良い結果がもたらされるかどうかの関連性を見つけることが先行指標のポイントの一つです。
下記図のように疑問が生まれたときも、ユーザーの行動から結論を導き出すことができ、それを踏まえた具体的な施策の実施によりロイヤルカスタマーの育成を進めることができます。

ユーザーの属性だけでは多種多様な趣味嗜好を識別することが難しくなってきた、とお悩みでしたら分析の第一歩として、これまで貯めてきたデータを分析し、顧客をユーザー行動ベースで理解することから始めてみましょう。
顧客をユーザー行動ベースで理解することができれば、データを元に施策シナリオの設計やUI・UX改善を行い、One to Oneマーケティングを実践し、心地よい顧客体験を実現していくことが可能になります。

データを「つかう」
最後に、マーケティングにデータを活用しないと大きく3つの弊害が生じます。
1つめは、過去に実施したマーケティング施策の焼き直しや、上司の思いつきの施策が多くなるといった施策が場当たり的になることです。これでは施策の成果はもちろん、現場のモチベーションも落ちる一方です。
2つめは、データが整っていないことで、誰に何を送るのかなどの情報を整理するのに膨大な時間がかかるなどの業務効率の悪化です。ここに時間がかかってしまうと担当者は「もういいや…」、となり結局データを使うことを諦め二度と使わなくなってしまいます。
3つめは、再現性に乏しく施策の効果検証が行えないということです。
勘と経験だけに頼らず、データをもとにマーケティング施策を立案し、実行と検証を繰り返して精度を高めていくことで心地よい顧客体験の実現に繋がっていきます。
この心地よい顧客体験の実現こそがマーケティングにおいて不可欠な要素としてあげた「③会員理解に基づく個別コミュニケーション」です。
こういったことが起きないよう積極的なデータ活用を意識してマーケティングを進めていきましょう。
まとめ
DX時代において新規顧客獲得よりも顧客のロイヤルカスタマー化=ファン化が重要視されるなか、日本企業の「顧客との関係構築」視点でのマーケティング活動にはまだ課題があると言えます。
アプリで言えば、新規アプリを公開したら終わりではなく、アプリを利用するユーザーの行動を分析・理解し、継続率(リテンションレート)を上げることが大切です。
新規獲得した顧客のリテンション向上のためには、顧客の行動を知り、データに基づき個々にアプローチしていくことが重要です。
次回はまずはデータをためるという観点で重要になってくる、すでに多くの企業で導入されているものの次の一手が見えづらいコマース領域におけるアプリ、最近話題のリテールメディアの最新の動向、先行事例などについてご紹介いたします。
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