
小売業界におけるビジネスのDXを支援する株式会社イングリウッド(以下「イングリウッド」)は、2021年6月16日に、低糖質グルメの定額パーソナルサービス「三ツ星ファーム(https://mitsuboshifarm.jp/)」を開始しました。この新たなサービスはどのようなものなのか、なぜイングリウッドが今このサービスを始めたのか、サービスを統括している金澤裕之さんに伺いました。
この記事の目次
食のジャンルでも宅配の付加価値が評価されるようになってきた
イングリウッドが新たに開始したサービス「三ツ星ファーム」は、管理栄養士監修のもと有名店のシェフの意見を商品開発に取り入れ、栄養バランスとおいしさを兼ね備えた冷凍総菜を取り揃えており、お客様の好みやライフスタイルに合わせて組み合わせをカスタマイズし、一定の配送サイクルで届ける仕組みになっています。

食品宅配サービスは、イングリウッドがこれまで取り組んだことのない食のジャンルへの取り組みです。このジャンルに取り組みたいという考えは以前から会社にあったものだ、と金澤さんは言います。
「弊社ではこれまで、アパレルや化粧品などのジャンルを中心として、デジタルトランスフォーメーションを取り組んできました。そのなかで、今後さらに会社が成長していくためには、食品のようなより市場規模の大きいジャンルで勝負していきたいという考えがありました」
市場規模が大きい一方で、食は、他のジャンルに比べてEC化率が伸びていないジャンルでもあります。
「店頭で購入するよりも高い料金を払ってまで宅配サービスを利用するという、食のジャンルにおける宅配の付加価値を許容する文化が、これまでの日本ではあまりありませんでした。しかし、コロナ禍においてフードデリバリ―の利用が進むなど、利便性や価値を感じられるものであれば、宅配サービスにお金を払う文化が定着しつつあります」
そういった世の中の変化があったからこそ、今、イングリウッドの新たなサービスとして「三ツ星ファーム」を世に出すことにしたのです。
食への興味とEC通販の可能性が出会ったタイミングが今
金澤さん自身、昔から「食」というテーマに興味があり、このタイミングで三ツ星ファームの事業に携われるのは、どこかタイミングがハマった感じがあると言います。
「もともと新卒で入社した会社での業務が飲食フランチャイズの支援で、その頃から食に対する個人的な興味はありました。一方で、イングリウッドに入社する前の10年間ほどはBtoB卸の化粧品通販の会社を経営していたのですが、徐々にネット通販の底力を感じるようになりました」
「しかし、ネット通販は軌道に乗せるまでが大変で、事業を拡大させるのはそんなに簡単ではないことに気づきました。そんなときにご縁があり、イングリウッドに入社することになりました。通販事業の立ち上げに携わってみたいという気持ちがあったのですが、そこに以前から興味のあった食というテーマが合わさった感じです」
栄養や効率だけではない、食を楽しめるサービスでありたい
コロナ禍において、ECに参入する事業者も、ECを利用する消費者も増え続けています。食のジャンルにおいても例外ではありません。他社サービスとの差別化を考えたときに三ツ星ファームが大切にしているのが、ユーザーにどのような体験を提供できるかだと金澤さんは言います。
「“食”を考えるにあたって、栄養素的な部分はもちろんですが、美味しいものを食べているときの喜びなど、メンタルをポジティブにするような要素がとても重要だと考えています。三ツ星ファームでは、ECサイトでたくさんの華やかなメニューから商品を選んだり、疲れて帰ってきた夜に冷凍庫から「今日は何を食べようかなぁ」とチョイスしたり、そしてなにより手軽に美味しいご飯を食べているときの幸福感といった、サービスの利用を通じてユーザーが楽しさや幸せを感じる体験を提供することをもっとも大切にしています。」
豊富なメニューをカスタマイズして便利に楽しめる
楽しんで続けてもらうための工夫のひとつが、メニューのバリエーションです。サービス開始時は27種類のメニューからスタートし、今後、さらなるメニューの拡充を予定しているそうです。

「サービス開始時点でも、和洋中やエスニック、肉や魚など豊富なメニューを揃えています。間もなく総菜を20種類くらい追加する予定です。また、スイーツや低糖質パンの追加も予定しており、近いうちに50~70種類のメニューになる予定です。最終的には、常時100種類程度のメニューを用意したいと考えています」
冷凍食品の宅配サービスは、従来、シニア向けのサービスが主流でした。しかし、三ツ星ファームは、30~40代の女性をコアターゲットとしています。多様化するライフスタイルに対応できるよう、個々のニーズに合わせてメニューの組み合わせ、届く個数や頻度などを自由にカスタマイズして楽しめるのが特徴です。
「一回の注文で届く個数は、7個・14個・21個の3パターンから選択でき、二回目以降のメニューや個数変更も自由にできます。また、配送の頻度は、2週間に1回・3週間に1回・1カ月に1回から選択でき、次回配送のスキップも簡単です。定額性サービスではありますが、料金は届く個数に応じて変わり、自由度の高いサービスとなっています」
食品宅配サービスのこれまでの常識をくつがえす、おいしさの追求
食の楽しみの大きな要素である「おいしさ」の追求も、三ツ星ファームの特徴です。従来のシニア向け中心の冷凍食品では、重量を調整しやすい細かな具材で誰が食べても同じように感じられるような味になるよう、ある意味特徴のない味にすることが一般的で、それが良いものとされてきました。しかし、三ツ星ファームはその真逆の考え方です。
「例えば、三ツ星ファームのメニューでは、『ごろごろ野菜』をキーワードに、しっかりとした大きさの野菜を入れるようにしています。大きい野菜を使うと重量を調整するのが難しくなり、製造面の視点からは生産効率が大きく落ちてしまいます。それでも、ユーザーが「自分はしっかりと野菜を食べられているな」と実感できるメニューにしたいという強い思いから製造サイドにも賛同いただき実現しています。」

「また、様々なハーブをしっかり効かせたトマトソース、酢豚にパイナップルではなくマンゴーを組み合わせる、罪悪感があるくらいたっぷりのタルタルソースを添えた大きなサーモンフライなど、これまでのシニア向け冷凍惣菜製造の業界では非常識ともいえるようなレシピを多数取り入れています。」
冷凍食品の宅配サービスというと、最近では、フィットネス業界の企業の参入も目立っていますが、三ツ星ファームはそういったサービスともコンセプトが異なるものだと言います。
「三ツ星ファームの商品は低糖質ですが、あえてフィットネス系の商品ほど厳しい基準にはしていません。うちでは、糖質は一食25g以下、タンパク質は15g以上、カロリーは350kcal以下を目安にレシピ開発をしています。そもそも過度な糖質制限による身体への影響はまだまだ研究段階ですし、栄養素の厳しすぎる基準はレシピや食材の幅を狭めることにもつながります。食によるセルフケアの精神は大事なことであり、ワクワクする気持ちを持ってストレスを感じずに食を楽しむことが、セルフケアを日々継続するためにはなにより大切と考えています。」
晴れの日の贅沢でもなくトレーニングでもなく、日常の中で寄り添える価格帯
いま、様々なグルメ系やフィットネス系の食品宅配サービスが登場しています。しかし、日常使いには難しい価格帯のものが多いと言います。
「有名料理店がプロデュースしているグルメ系や肉体改造を目的にするフィットネス系の商品は価格帯が高く、日常的に継続して利用するには難しいものが多いと感じています。グルメ系の商品は食材や調理法にこだわりがあり、たしかに美味しい商品も多いのですが、1食あたり2,000円以上する商品がほとんどです。フィットネス系の商品はというと、高タンパクを目指した結果、原価の高い動物性タンパク質の食材割合が多くなり、1食あたり1,000円近い価格になってしまう傾向があります。
それに対して、三ツ星ファームでは、1食あたりの価格が500~800円台に収まるように商品やサービスを設計しています。このバランスをとることがとても難しく、食材や調理法、生産効率、資材や物流コストなど、様々な観点から最適なパーツを組み合わせてサービスを設計しないと簡単には理想の商品を形にすることができません。」

「もともと個人的に食への関心は人一倍強い方でしたが、三ツ星ファームを立ち上げるにあたり、あらためて食品宅配サービスを一通り研究しました。初めてシニア向けの商品を食べたときには衝撃を受けました。メインディッシュの魚が親指ほどの大きさしかないということが普通にあるんです。この業界のとある方から、「シニアのユーザーの多くは「生きる」ために利用する。だから安くする」というお話を聞きました。ちょっと自分の親には勧められないなと思いました。かたや、グルメ系やフィットネス系も、たしかに目的は明確にあるのですが、多くの方が日常的・継続的に利用できるサービスとしては、自分のイメージとは違うなと。
他社のサービスを研究した上で、価格をはじめ様々な要素をどの値に設定するか、それを設定するためのハードルは何かなど、それはもう色々考え尽くしました。今もまだ考えている真っ最中ですが。」
未知のジャンルの苦労と既知のジャンルでの強み
イングリウッドはEC事業の業歴が長く、デジタルトランスフォーメーションに強い会社ですが、食のサービスを立ち上げることは初めての試みで、業界の違いから苦労したことも多いと、金澤さんは言います。
「デジタルマーケティングの世界には、どちらかというと攻めるのが好きな人達が集まっています。一方で食品業界は、安全性や品質が第一に重視されるいわば保守的な業界。対極的な性格です。そのせいもあってか、結構な数の工場に相談しましたが、話すらまともに聞いてもらえないことや、お話を進めても途中で頓挫してしまうこともたくさんありました。相手からすれば、名前も知らない渋谷のIT企業が何しにやってきたんだ?という印象でしょうから無理もないと思います。ただ、これから三ツ星ファームの認知度が上がれば、協力してもらえる工場は増えていくのではないかと期待しています」
「逆に、今回の事業をきっかけに食品会社さんからD2Cの相談を受けたこともあるのですが、デジタルマーケティングにかかる費用や人手、情報に戸惑われるようです。食品業界とデジタルマーケティング業界ではスピード感や文化が水と油ほど違うので、そこを踏まえて信頼関係を築いていく必要があります」
一方で、デジタルトランスフォーメーション領域に強いイングリウッドの強みが存分に活かされているところもあります。
「商品のパッケージデザインやロゴ、ウェブサイトなどのクリエイティブにはかなり力を入れています。ここまでやっている競合他社はいないのではないかと思います。広告クリエイティブの配信ひとつ、見せ方ひとつで結果が大きく変わるデジタルマーケティングの世界で、スピード感をもってPDCAを回していけるのが弊社の強みです。これは、知見のない会社が100年やってもたどりつけない領域だと自負しています」

「また、定期通販のビジネスモデルは弊社でも知見のある分野なので、そういった情報や社内の人材を活かして、顧客対応やCRMの体制を整えています」
成長の先にはさらなるサービス展開も見据えて
今後の展開としては、着実にサービスを成長させつつ、そこからさらに新しい取り組みを積極的に進めていきたいと考えているそうです。
「初年度は50万食販売、売上4億円くらいの手堅い計画で進めています。とはいえ、アップサイドでは130万食、売上10億円くらいは目指したいところです。2~3年後には、年間400万食を販売するくらいの成長を目指しています」
「会社として初めての食というジャンルへの挑戦で、蓋を開けてみないとわからないこと、勉強になることもこれからたくさん出てくると思います。そのなかで、個人的には楽しみながらサービスの認知を広げていきたいです」
さらに、食品宅配サービスだけで終わるのではなく、関連ジャンルへとさらなる展開の可能性も考えています。
「たとえば、調理家電の販売などもあり得ますし、BtoBとしてオフィスに届けるサービスも考えられるかと思います。三ツ星ファームをきっかけに、幅広いビジネスの可能性があります。食というキーワードをもとに、弊社だからこそ役に立てる、時代にあった新たなサービスに成長させていきたいです」
取材を終えて:商品の魅力×デジタルマーケの知見という圧倒的強さ
三ツ星ファームは、食品宅配サービスというニーズ上昇中のジャンルにおいて、ただニーズに乗るだけでなく、そのジャンルの課題や競合を研究しつくしたサービスであり、商品だと感じます。ターゲットがはっきりしており、ユーザーにとって確かに魅力的だと感じられる商品と魅力的なクリエイティブ、サービスの使いやすさがそこにあります。
ECへの参入ハードルが非常に低くなっている今、金澤さんのお話にもあったように、事業を成長させていくハードルは高くなっています。どんなに魅力的な商品であっても、ただ販売しているだけで売上を上げることが難しいのが現状です。
そのハードルを越えるために、イングリウッドが持っているデジタルマーケティングに関する知見は強い武器です。実際、三ツ星ファーム立ち上げのために動くなかで、逆に食品会社から相談されたこともあったと、金澤さんのお話にもありました。
イングリウッドにとってはじめてのジャンルである食での取り組みですが、三ツ星ファームをきっかけとして、ECの事業者としても、支援会社としても、イングリウッドが対応できる範囲が広がっていくのではないでしょうか。
イングリウッドは自社ECで培った経験と実績をもとに、クライアントにDXソリューションを提供しています。今回の食品EC事業への参入からもわかるように、新しいことに果敢に挑戦し、道を切り開いたうえでクライアントを支援しています。だからこそ、机上の空論では終わらない支援をクライアントに提供できるのです。自社のビジネスのDXでお困りでしたら、イングリウッドに相談してみるのはいかがでしょうか。
株式会社イングリウッドへの相談はこちら
https://inglewood.co.jp/contact
合わせて読みたい