イミュー堀さんから学ぶ、顧客満足と身近な人の喜びを追求する働き方とは?
インタビューの概要

地域ブランドを創り育てる、全方位の支援を提供している株式会社イミュー。そこで働く堀 満希さんは、ふるさと納税運営のディレクション業務を行う傍ら、主に3~10月は毎月1週間をご実家の堀農園(長野県小布施町)に帰って、ぶどうを中心にさまざまな農作物を育てることに費やしています。育てたぶどうを知り合い限定で直売してから3年が経ち、昨年は1シーズンで150件以上販売したそうです。今回は、そんな堀さんがイミューで働くに至った経緯から、ぶどうの販売や仕事を行う上で大切にしていることを伺いました。

スムーズな問い合わせ対応のために前提確認を大事に

――イミューに転職される前もさまざまな業界を渡り歩いてきたとのことですが、専門学校を卒業後にご実家の農園を継ぐことは考えなかったのでしょうか?

堀さん:当時は全くその気がありませんでした。小学生の頃から音楽が好きで、ずっと音楽に関わる仕事をしたいと考え、専門学校に通いました。卒業後は満を持して東京で音楽の仕事ができるとワクワクしていたんです。

好きなアーティストが多数在籍する会社に新卒で入社し、所属するアーティストのファンクラブ運営の部署に配属されました。最初はファンレターやプレゼントの仕分け、ファンクラブ会員からの問い合わせ対応をはじめ、コンサート会場でのファンクラブブースの運営などをしていました。問い合わせ対応では、ファンクラブの会員から来る簡単な連絡が主ですが、ときにはアーティストへの想いが強くなり過ぎたファンからの熱烈なメッセージが来ることもあり、さまざまな対応をしていたことを覚えています。

こういったCS業務を通して、問い合わせ内容から勝手な解釈や思い込みをしないように、フラットな視点で対応していくことへの重要さを学びました。キャッチボールを1回か2回で終わらせるためにも、お客さんに前提の確認をすることが重要です。

アーティストのライブツアーに同行することも多く、ライブ本番中は会場内にお客さんの顔を見に行くのが好きでした。ライブを楽しみにして会場に来たお客さん一人ひとりの様子を眺めていると幸せな気持ちになれたんです。

スムーズな問い合わせ対応のために前提確認を大事に

顧客の数だけ異なる対応を提供

――まさに好きを仕事にしていた瞬間だったんですね。

堀さん:はい。しかし、音楽業界は土日や年末もライブ会場での仕事があったりとかなりの激務で、次第に将来を考えたり、実家では祖母の介護が大変になってきたりと、いろいろなタイミングが重なって、ペット専門のキュレーションWebメディアを運営する会社に転職しました。記事を書くこともありましたが、新たに犬向けのギフトボックスをWeb上で販売するサービスを立ち上げることになり、そこで初めてECに触れることになります。

最初は実証実験のような感じでネットショップを無料で開設できるサービスを利用して注文を単発で受けていましたが、後にサブスクサービスに移行していくこととなります。2015年頃はまだまだサブスクが今ほど流行っていなかったので、「これって本当に売れるのかな?」と懐疑的でしたが、Webメディアからの集客で、LPがなくても一定の売上がついていたんです。それから、しっかりとLPを作り、サブスクに対応できるカートの構築を行いました。

サイトのフロントページから見ると、取扱商品はペット用のギフトボックスで1種類のみを扱っているように見えるんですが、犬によって大型・中型・小型といったサイズの違いから、アレルギーやおもちゃの好みなど個別の対応が必要で、注文ごとに内容をカスタマイズしてギフトボックスを作っていました。

私はギフトボックスに入れるおやつやおもちゃの選定と発注、在庫管理や注文ごとに入れるアイテムの選定、梱包作業も担当していました。決して安価なサービスではなかったので、備考欄からいろんな要望が上がります。その気持ちに応えて、できるだけ毎月楽しんでもらえるようなセットをお届けすることを意識していました。

改めてECの仕事をしたいと思ったわけ

――顧客ごとに対応が異なるサービスの裏側を務めた経験はその後に活きそうですね。それからさらに転職を?

堀さん:その後、知人の誘いで転職し、骨盤矯正や小顔矯正を行う美容整体院で働きます。施術をした上で、複数回のコースに契約してもらう仕事だったんですが、目標を持って契約数を追う仕事にやりがいをあまり感じられず営業が向いてないとそこで知ることができました。

そのとき、今までやって来たことを振り返ってみると、音楽業界でお客さんの顔を見ていたときやECでお客さんそれぞれにサービスを提供して喜んでもらえたことが自分にとってのやりがいだと気づいたんです。そこでもう一度ECに関連する仕事をしようと思って転職しました。

――初めて向いていないと感じた仕事を通し、自分のやりたいことを見つめ直されたのですね。次の会社がイミューの前に入社していた会社でしょうか?

堀さん:そうです。その会社でイミュー代表の黒田に出会いました。最初はEC運営をしているチームのサポートとして入社したのですが、蓋を開けてみるとバックオフィス業務がパンクしている状態で、倉庫への出荷指示やCS対応に追われることになりました。ちょうど売上が伸びた人手不足の時期に入社したため、バックオフィス人員が足りておらずマーケターやデザイナーも一緒にCSをしていたんです。

コールセンターのスタッフのモチベーションを維持するために

――まずはどんなことから始めたのか覚えていますか?

堀さん:カートシステムやメール配信ツールの仕様を覚えることから始めました。電話やメールの問い合わせ対応は外部のコールセンターに依頼していましたが、コールセンターで対応いただく人数と問い合わせ数が見合っていなかったことから、一部のCS対応は社内で巻き取ったり、クレームを含むイレギュラー対応などコールセンター側で判断ができないものに対して交通整理を行なったりしていました。

ECを通して人に喜んでもらえることを期待していたものの、商品自体の特性や、CS対応に対して厳しいお声を頂くことも少なくなかったです。そんなときでも、商品の特徴をよりご理解いただき、継続的にご利用いただくために、どんなコミュニケーションを取れるか意識していました。

また、外部のコールセンターのスタッフの方々が日々の対応に疲弊することがたびたびあり、できるだけモチベーションを高く維持いただけるようにすることを大切にしていました。コールセンターは複数拠点ありましたが、大元になるセンターには毎月伺って、抱えている課題に対して一緒に向き合い、ちょっとした疑問などは直接話ができるタイミングを設けて直接コミュニケーションを取るようにしていました。

コールセンターのスタッフのモチベーションを維持するために

堀農園のぶどうを直売するようになった背景

――壮絶なバックオフィス業務の対応をされていたかと思われます。堀農園のぶどうを直売し始めたのはいつ頃からですか?

堀さん:このECの会社にいた頃に実家の農園の話をしたところ、ぶどうを買いたいと言われるようになり、個別にやり取りすることが増えていきます。今まで実家でぶどうを販売する際は、農協に卸すのがほとんどで、購入いただくお客様の顔が見えない状態だったので、やりがいを感じづらくただただ大変でした。それが直売を始めたことで、喜びの声を直接頂けるようになり、両親も嬉しいと言ってくれているのでやって良かったなと思います。

それから本腰を入れて、ぶどうの直売だけではなく、ぶどう栽培にも携わりながら働ける環境を求めて転職を決意します。イミュー以外にも、経験を活かしてEC関連のCSの会社のお話を伺うこともありましたが、年齢が30歳を超えた今、自分ができることよりも、やりたいことに近い転職ができる機会は少なくなると考えました。

地域にはまだまだ広く知られていない良いものがたくさんあるということが私自身ぶどうの直売をする中で痛感したこともあり、イミューではこの課題に向き合う会社として強く共感し、事業について黒田から説明を受けたときにとてもワクワクしたことを覚えています。また、そんなイミューだからこそ堀農園での仕事に対する理解と応援してもらえる環境の中で仕事ができるチャンスは他にないと思いました。

顧客満足度を意識した過去の経験が業務に活きる

――自分にとって大切な堀農園の仕事と、新しいチャレンジができるイミュー。入社後はどんな仕事をしたのでしょう。

堀さん:最初はWebコンテンツ(ふるさと納税の返礼品ページに掲載するバナーなど)のディレクションから始め、返礼品に同梱するパンフレットなど同梱物のデザインのディレクションを行いました。制作物の構成を考えて、どんな情報をどのようなコピーで載せるのかゼロから考えるのは初めての経験でした。実際にやってみると、自治体や事業者が伝えたいことを、制作物を見る消費者の視点で情報を整理する意識が、今までお客さんと接してきた経験からできていたんです。

――全く新しいチャレンジのようで、今までの経験がつながって活かされたんですね。他にも今までの経験が活きてきたことはありますか?

堀さん:自治体の方々とのコミュニケーションはCSをしていた頃にコールセンターと取っていたコミュニケーションが活きていると感じます。それ以外に楽天ふるさと納税などのポータルサイトで低評価レビューを頂いて自治体の方が戸惑っているときに、二次クレームに繋がらないよう、寄付者に寄り添った対応を提案できるのは過去の経験が大きく役立っています。

これまでの経験が堀農園での仕事に結びつく

――入社前に条件になっていた堀農園での仕事を並行できる点はいかがでしょうか。

堀さん:リモートワークができるため、ふどうの栽培が始まる3月頃から収穫期の10月末頃まで、うまく有給を組み合わせて業務を並行できています。2023年は農作業のみならず、直売するにあたって、コストを抑えた販売ができる仕組みづくりを進めました。サイトづくりは、エンジニアをしている弟に仕様を伝え、コミュニケーションを取りながら低コストで運用できるサイトが出来上がっています。

限られた方にしか販売していないのですが、堀農園ではSNSの運用もしています。私の頭の中に伝えたいイメージがあるため、姉に素材を渡して、動画を作成してもらうなど、家族一丸となって堀農園に関わりを持つようになりました。

――今までの経験が堀農園の仕事に大きく結びついていますね。

堀さん:2022年は出荷作業を撮影してアップするだけでしたが、2023年は農家でないと知らないような作業を伝えることで、愛情を持ってもらえるんじゃないかと思ってコンテンツを作成しました。こういった発想はディレクション業務をやっていなかったら思いつかなかったでしょう。

今後も身近な人に喜んでもらうことを第一に

――堀農園のほうも、さまざまなチャレンジを重ねていますが売上を拡大する予定はないのでしょうか?

堀さん:直売はあくまで知り合いだけに限定する気持ちは変わりません。私が販売するぶどうは収穫したその日のうちに発送することで、本当に新鮮な状態で食べていただけることに価値があると思っています。特に生鮮食品に関しては、受け取りができずに、配送会社側で長い時間保管されてしまうのは本意ではありません。まして、受け取られずに返送されてしまうと両親が悲しみます。そうなると、受け取る方との信頼関係はとても大事で、知り合いの方、もしくはその知り合いの方に限定して販売すると決めました。

商品の特性上、シャインマスカットは流行りものという側面から価格が安定しないこともあり、何より売上よりも人に喜んでもらえるためにやっているところが大きいため、拡大しようという気持ちはそこまでありません。売上のような数字にとらわれると、数字の奥にいるはずのお客さんの喜びが意識から抜けてしまいそうで。私がやることで人のためになると思えることをやっています。

――あくまで近い人、顔が見える人の喜びのために努める堀さんの姿勢が今回のお話を通して伺えました。最後にこれからの仕事への向き合い方についてお聞かせいただけますか。

堀さん:イミューとしては、サポートしている自治体さんと向き合うにあたり、定量的な目標や管理をする役割のメンバーもいますが、私自身は顧客目線がキーとなる領域の業務が得意だと認識しています。今までの経験を活かしながら、多くの方をサポートできる業務に向き合っていきたいと思っています。また、イミューは徐々に人が増えてきました。社員が増えると何となく誰かがやっていた社内の仕事の負担が大きくなってくるはずです。そんなとき、整備されないままではなく、社内の人が働きやすい環境づくりも積極的に行なっていければと思います。

今後も身近な人に喜んでもらうことを第一に

インタビューを通して:本質的な人の喜びにフォーカスする働き方

今まで営業畑として数字と向き合うことが多かった筆者にとって堀さんのお話は新鮮な気持ちになりました。重く課せられた数字を追うことと顧客に喜びを感じてもらうことは、真逆ではないにしろ完全に両立させることはとても難しいことといえます。数字を追うことに集中し、健全な経営から逸脱する事例は枚挙に暇がありません。企業が存続するうえで数字を追うことは必要ですが、社内全員が同じ役割を持つのではなく、異なった視点や価値観があるからこそ、さらなる発展が期待できることかと思います。

堀さん以外にもイミューで働く方にインタビューをしているので、ぜひ合わせてご覧ください。

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