
創業から70年の歴史を持つ老舗寝具メーカーの岩本繊維株式会社(以下、岩本繊維)は卸販売を中心に行っていましたが、2017年にECサイトを立ち上げ、直販にも取り組まれます。試行錯誤しながらも顧客と真摯に向き合うことで高いリピート率を実現し、順調に売り上げを伸ばしていきました。どのようにECの運営をされてきたか、同社の専務取締役の岩本悠資さんとネット事業部の東裕二さんに伺います。
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お客様のニーズに応え成長した岩本繊維
――岩本繊維は創業70年を迎えられたとのことですが、事業の変遷についてお話いただけないでしょうか。
岩本さん:私の祖父が戦後に輸出用の婦人ブラウスを請け負う縫製工場として創業したのが始まりです。その後、請け負いの仕事を一切やめ、白カバーなどをスーパーや量販店に卸販売していたのですが、2000年頃になると安価な海外製品が増え、価格競争の難しさから高価格商品へとシフトしました。
販路も寝具・家具の専門店に切り替えたのですが、次第に他のメーカーでは対応できなかった、一枚一枚サイズの異なる別注サイズの注文が増えていきました。別注サイズですと生産効率が下がるものの、当時の代表がこれしか生き残る道はないだろうということで別注生産を行う寝具メーカーにシフトしたのです。
――現在は卸販売だけでなく、直販もされていると思いますが、そのきっかけはなんだったのでしょうか?
岩本さん:私が2010年に岩本繊維へ入社したのですが、当時は卸売業が100%でした。しかし、寝具の卸売業は長期的な視点で考えると、今後伸びづらいと思われます。また、一般消費者の方と相対することで、より良い商品作りやサービス提供ができるのではないかと考え、直販を開始しました。
まずは楽天市場に出店し、2017年に「つくるパジャマ」というパジャマ専門のECサイトを立ち上げ、オーダーメイドパジャマの販売を始めます。その後、お客様からの布団カバーやシーツも販売して欲しいというお声から、2021年にカバー・シーツ専門のECサイト「つくるカバー」を作りました。

専門店ならではの情報発信で安心感と信頼感を提供
――「つくるパジャマ」と「つくるカバー」は別ドメインでECサイトを運営されていますが、ドメインを分けられた理由はなんでしょうか?
東さん:我々はパジャマもカバーも何でも取り扱っているお店よりも、専門店を目指していたのが理由の一つです。というのも、専門店であればプロに悩みを相談して解決できる安心感や、こだわって探したものを買える特別感が提供できます。そのほうが、お客様も買い物がしやすいのではないかと考えたのです。
また、私たちはコンテンツマーケティングにおいて、1ワード1コンテンツの考えを根本にしていることもあるため、ドメインを分けて取り組むことに決めました。
――それまで卸販売をされてきたところから直販も展開されるようになったのは苦労もあったのではないでしょうか?一般消費者の方に認知していただくために取り組んだ施策があれば教えてください。
岩本さん:卸販売と比べると直販はやることが多く、泥臭いなと感じましたね。集客に関しては、まずはリスティング広告を運用しつつ、ブログを始め、最初の1年で100本ほど記事を書きました。私自身が元々広告代理店出身でして、広告の良さはわかっているつもりですが、やはり自然検索が一番良いのかなと思っているのです。
パジャマにお金をかける一般消費者は少数ですし、さらにオーダーメイドとなると高価な商品になります。こういった商品の購入を検討される方は、細かく検索されるのではないでしょうか。ですから、リスティング広告で大きく網を広げるのではなく、「手足が長い人用のパジャマ」などニッチなキーワードで1つの記事を作り、ピンポイントで悩みを解決できるような情報を発信するようにしています。
記事にするキーワードはリスティング広告でコンバージョンしたものを調べたり、どのようなキーワードでお客様が流入しているのかを見たりしながら決めていきました。また、私自身も睡眠健康指導士という資格を取得し、正確な情報をお届けすることで、安心感や信頼感を得られるようなコンテンツを心がけています。
――コンテンツを通して、ECサイトに訪れてもらうためのきっかけを作られたのですね。次に購入していただくために工夫されたことについてお聞かせいただけないでしょうか。
東さん:実店舗がないECサイトですから、オーダーパジャマは購入のハードルが高いと思います。そこで、購入前の不安を払拭するために、購入前のサービスを充実させているのです。例えば、生地のサンプルを無料でお送りするサービスや、実際のパジャマを貸し出し、サイズをご確認いただくようなサービスを展開しています。

リピート施策のキーワードは「お客様との接点作り」
――購入以前から丁寧なサービスを提供されていらっしゃいますが、購入後のお客様へのアフターフォローやコミュニケーションなどはどのように行っているのでしょうか?お客様と長くお付き合いするために取り組まれていることがあれば教えてください。
東さん:アフターフォローとしては、3年保証サービスを行っています。届いた商品のサイズが合わないことや、パジャマを使っているとほつれが出てくることもあるので、商品を送っていただき、お直ししてお送りするサービスです。
他にもお誕生日メールやレビュー依頼のメールなども送っているので、そういうタイミングでお客様との接点を持てています。
やはり、ECサイトを運営する上では、お客様との接点が重要だなと思います。「つくるパジャマ」のように、他ではやっていないサービスを提供しているお店であっても、お客様からするとどこで商品を購入したか思い出せないこともあるでしょう。しかし、普段からメールが届いているお店であれば、いざ買い物をしようとしたときにそのお店を思い出し、購入されると思うので、リマインドメールなどで接点を持つようにしています。
――2022年6月にCRMツール「アクションリンク」を導入されたとのことですが、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
岩本さん:「つくるパジャマ」を立ち上げてから5年目を迎えまして、会員数も2万人ほどになりました。これまでは購入されたことのあるお客様を対象に、手動でリマインドメールやレビュー依頼のメールを送っていたのですが、お客様の趣向やタイミングに合わせたメールを送ることが大切だなと考えたことや、手間や時間などの効率を考え、CRMツールを検討することにします。
中でもアクションリンクはレコメンドメールの精度が高いという評判を聞き、導入を決めました。また、運用スタートまでも一緒に伴走していただけるというのも大きかったですね。我々のように業務を兼任していると、最初の仕組み作りやシナリオ作りを自分達で調べながら行うのには時間がかかります。しかし、アドブレイブさんがこれまでの経験や実績をもとに作ってくださるので、導入から運用を開始するまでの流れがとてもスムーズでした。

レコメンドメールの自動化でメール経由の売り上げは3倍に
――導入以前は手動でメールを送られていたと思いますが、アクションリンクを導入して変わったことはありますか?
東さん:2022年6月中旬に導入し、1カ月半ほどですが、アクションリンクでレコメンドメールを送ったことで売り上げが3倍ほど伸びています。開封率も2〜3倍になっていますね。
その理由としては、これまでは月に3本ほどレコメンドメールを送っていたのですが、掲載するおすすめ商品はこちらでピックアップしたものを送ったり、売れている商品を案内したりしていました。
しかし、アクションリンク導入後は属性や購入履歴などに基づいた商品をおすすめしたり、セグメントされた人気商品を案内したりするなど、一人ひとりに合わせたメールを自動で送ることができるようになります。これにより、「つくるパジャマ」を覚えていただける仕組みができたのかなと思います。
――商品の質が高いことに加えて、3年保証サービスを行っているので、頻繁にリピートされることが少ないと思うのですが、実際どれくらいの方がリピートされるのですか?
東さん:購入者のうち、約35%の方がリピートしていただいています。よくあるのが、自分用で購入された方が、家族用や友人へのプレゼント用にも追加で購入されるケースです。弊社では父の日、母の日、クリスマスが3大イベントになっていまして、その時期の60〜70%の方がギフトラッピングを希望されています。
アンケートを見ていても「今回は自分のためでしたが、次回は両親のプレゼント用に購入したいです」や「知人に紹介します」というコメントも多いですね。また、毎年新しい素材を作っているため、新しい生地が出ると購入してくださるファンの方もいます。
お客様との接点を増やしながら、ニーズに寄り添った商品づくりを目指す
――レコメンドメールが一番貢献しているようですが、他にも効果が出ているものはありますか?
東さん:カゴ落ちメールが送れるようになったことですね。購入いただくまでの「もう一押し」ができるのはすごく嬉しいです。実際、カゴ落ちメールからのコンバージョン率は10%を超えています。現在はカゴ落ちメールを送ることができる対象が、アクションリンクを経由して届いたメールのリンクをクリックした方のみなので、今後は顧客IDを紐付けて、カゴ落ちメールの配信対象者を増やせるよう、アドブレイブさんとサイトの改修を進めています。
──これまで集客、リピート施策と取り組んでこられたと思いますが、今後取り組みたいことや読者にお伝えしたいことがあれば教えていただけますか?
東さん:現在、ECサイトとしては「つくるパジャマ」と「つくるカバー」がありますが、お客様からはインナーやルームウェアが欲しいという声が寄せられています。実は今まさに「つくるルームウェア」を準備中なのですが、これからもお客様のニーズに応え、衣類周りをサポートできたらいいなと思っています。
また今は国内のみですが、海外の方にもオーダーメイドパジャマやオーダーメイドカバーはニーズがあると思っているので、越境ECも視野に入れています。

インタビューを通して:お客様に寄り添う姿勢が愛され続ける秘訣
岩本繊維が70年の歴史の中で一貫しているのは、お客様の声に耳を傾けていることではないでしょうか。また、ただ声を反映するのではなく、コンテンツマーケティングにおいては定量的な考察をもとに情報発信を行ってきたことも、大きなポイントです。
こうしたお客様に寄り添った商品作りやサイト作りに取り組む岩本繊維のニーズにマッチしたアクションリンク。早速、お客様の趣向やタイミングに寄り添ったメールマーケティングで売り上げに貢献しています。
お客様との丁寧なコミュニケーションを行いたいものの、リソースや時間が取れないという事業者様は、一度アクションリンクの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
■アクションリンク
https://actionlink.jp/
■パジャマ専門店「つくるパジャマ」
https://www.tsukurupajama.jp/
■布団カバー・シーツ専門店「つくるカバー」
https://www.tsukurucover.jp/
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