損害をカバーするために保険・保証に加入すべき?:不正対策に関する3つの通説を検証(PART1)

不正対策の分野は過去5年間で劇的に変化し、現在も急速に進化を続けています。その結果、不正対策に関するかつての慣習は時代遅れとなりつつあるのです。業界のリーダーたちはこの変化を理解し、さらに先へと歩みを進めています。本稿では、業界リーダーたちの協力を得て、不正対策に関する通説を3部構成で検証します。

3つの中で最初に取り上げる通説は「加盟店(事業者)はあらゆる損害をカバーするために保険・保証に加入すべきだ」というものです。ECの市場での保険・保証として、代表的なものに「チャージバック保証」が挙げられます。チャージバック、返品の不正、商品未受領の不正をはじめとする多くの問題を、ベンダーが責任を負ってくれることは、魅力的に映るでしょう。しかしこの保証一辺倒の考えは、改めて見直すべきであると考えています。ここではその理由についてお話ししていきます。

理由1:経済的には通常、加盟店にとって不利になるため

チャージバック保証など、保証・保険が適しているのは、具体的に加盟店が次のような状況にある場合です。

  • 不正対策について検討したり、対策を実施する内部リソースがない。
  • 損失を一定コストとして計上したい(突発的な損失を防ぎたい)。
  • 手掛けているビジネスが不正監視プログラムの対象となっている(Visaなど)。
  • チャージバック率が、イシュア(カード発行会社)の許容範囲を上回っている。

これらに該当しない状況では、加盟店自身が不正被害の責任を持ち、保険・保証の契約には加入しないほうが良いでしょう。なぜかというと、簡単に言えば、保険料がチャージバックの費用を大きく上回るからです。そして、この差額が保険会社の利益となっています。そのため、保険・保証に加入する代わりに、不正対策ソリューションを活用してみるのも手です。

例えば、保険会社にチャージバック保証の保険料として年間1億円を支払っているケースがあるとします。一方、不正対策ソリューションを活用すればベンダーに年間1,000万円、そしてチャージバック損失として年間2,000万円を支払うという選択もできます。1億円と3,000万円では著しい差があり、皆さんのビジネスにおいて費用を大幅に節約する手段の1つとなるのではないでしょうか。

理由2:加盟店の目的と一致しない場合がある

保険・保証が付帯した不正対策ソリューションはチャージバックに責任を負うため、より多くの取引を拒否してリスクの最小化を図ろうとします。そのため、チャージバック率は抑えられるかもしれませんが、承認率も低下してしまい、顧客と収益が犠牲になってしまいます。チャージバック保証に加入するということは、カスタマーエクスペリエンスという非常に重要な側面を譲り渡すことにもなる可能性があります。

不正対策とはチャージバックを減らすことだけが目的ではありません。本質的には不正者によるビジネスへの損害を防ぐと同時に、正規ユーザーに優れたカスタマーエクスペリエンスを提供できるよう、正規と不正を正しく判定することが目的なのです。無保険・無保証の契約は、チャージバックと承認率のバランスを重視しビジネスの成果を最適化します。チャージバック保証は一般的にチャージバックのみを保証しますが、無保険・無保証の契約はチャージバック率、承認率、プラットフォームの可用性、判定スピードを保証します。

理由3:契約条件は決してシンプルではない

一般的にチャージバック保証は補償金額に上限があり、加盟店は、出荷証明、追跡番号、目検の実施などを要求される場合があります。そのため、チャージバック保証の契約に署名する前に、保証の魅力を一旦脇に置き、契約条件を理解することが大事です。

理由3:契約条件は決してシンプルではない

理由4:保険・保証は重要な問題を先送りにする

確かに、返品の不正や商品未受領の不正など規約の隙間を突く悪用に対する責任を、ベンダーに引き受けて貰えば、ひとまず安心できます。しかし、それは根本的な問題を解決するものではありません。根本的な問題は、不正を繰り返す人たちを止められないことです。不正者やポリシー悪用者は加盟店からの購入を続け、ポリシーに違反して商品を返品したり、商品の未受領を主張したりできるのです。そしてそれは、時間の経過とともに保険金額がますます高額になることを意味します。この先ある時点で、保険契約をやめて自らが責任を引き受ける無保証の契約に切り替えるとした場合、さらに大きな問題を引き継ぐことになるでしょう。

事実、不正者とポリシー悪用者は根本的に異なる存在であり、それぞれに適切な方法で対処しなければなりません。ポリシー悪用者については適切なテクノロジーを用いて容易に特定し阻止することが可能です。違反を繰り返す者に対してはリアルタイムでポリシーを調整することもできます。保険・保証は真の解決策が必要なときに、ポリシー悪用の問題を覆い隠してしまうだけなのです。

理由5:保険・保証は持続可能なビジネスモデルではない

チャージバック保証などの保険を提供するベンダーが利幅減少という課題に直面しています。たとえば、あるUS上場企業はリスクの高い業種の加盟店に対する保証を開始したため、利幅が前年比で53%から46%に低下しました。

「利幅はベンダーの問題であって、加盟店である私とは関係ありません」という指摘はもっともなことです。しかし、健全に事業を継続していくためにベンダーを必要とする方もいます。ベンダーが財務的な問題に直面した場合、利幅を維持するためにコストを削減します。つまり、顧客サービスや研究開発への投資を減らすことで、イノベーションが停滞するのです。

結論を言うと、加盟店は極めて重要な取引判定を委ねるのですから、強固な基盤を持つ市場リーダーと連携することが肝心です。

まとめ

私たちはチャージバック保証と無保証契約の長所と短所に関して皆様のご意見をお聞きしたいです。Forterは、チャージバックを保証する契約からスタートして、時間の経過とともに無保証契約に移行できる柔軟性のあるソリューションを提供できる業界で唯一のベンダーです。私たちはチャージバックを保証したいのではありません。私たちが保証したいのはお客様の成果です。

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