
EC事業者がGoogle 広告を自社運用する場合、パフォーマンス最大化キャンペーン(以下「P-MAX」)の使用をおすすめしています。今回はEC事業者の自社運用ではP-MAXが適している理由をお伝えできればと思います。
この記事の目次
前提条件:キャンペーンタイプによって消費者の反応は変わらない
当然のことながら、キャンペーンタイプによって同じユーザーが同じ広告を見たときの反応が変わることはありません。「この広告はP-MAXだからクリックしよう」「この広告はキャンペーンタイプがディスプレイだったから買うのをやめよう」なんて判断をするユーザーは存在しないのは自明です。
さらに、同じオークション条件のときに、キャンペーンタイプによってクリック単価が変わることもありません。
あくまでキャンペーンタイプは管理側の都合に過ぎないものです。
「じゃあP-MAXじゃなくてもいいのでは?」と思われたかもしれませんが、"それでもP-MAXを使ったほうが良い"理由をこれからご説明します。
理由1:P-MAXなら人為的な失敗による損失を避けられる
EC事業者が自社運用をしているGoogle 広告のアカウントで、以下のような人為的な失敗をよく見ます。
◯予算切れを起こしていて午前中にしか広告を表示できていない
◯適していない広告をやっている/やるべき広告をやっていない
◯検索広告で伸ばそうとするなど無理がある使い方をしている
それぞれについて説明します。
予算切れを起こしていて午前中にしか広告を表示できていない
予算・ターゲティングの範囲・入札のバランスが悪いときに起こります。
例えば、1日の予算を早い時間帯に使い切ってしまっている状況です。
インターネットへの接続率が高まる夕方から夜間に広告を表示できなくなりますし、機械学習にも悪影響を与えます。
また、入札が高すぎる場合は1クリックあたりに余計な費用を払いすぎているので、同じ予算で獲得できるクリック数を損している場合もあります。
適していない広告をやっている/やるべき広告をやっていない
明らかにショッピング広告をやったほうが良いアカウントで特に理由なくやっていなかったり、検索広告が適していない商品なのに一所懸命に検索広告だけをやっていたりする状況です。
話を聞いてみても「とりあえずリスティングとリマケかなと思って」とか「ショッピングはなんか難しそうだったので」のように、理由になっていない理由しか返ってこないこともしばしばです。
広告は適材適所です。
適していない広告をどんなに最適化したところで結果はついてきません。
検索広告で伸ばそうとするなど無理がある使い方をしている
検索広告は検索されている回数以上には表示されませんし、関係がない検索をしているときに広告を表示させてもノイズとして無視されます。
それなのに、他の広告手法を利用せずに、「ちょっとでもかすっているような雰囲気がなくはない」程度の検索語句にまで広告を表示させて、なんとか検索広告だけで販売数を伸ばそうとしている場面をよく見ます。
P-MAXでは、このような人為的な失敗は起こりません。
上記した運用における人為的なミスはごく一部です。
事業者が自社運用をする場合、担当者はさまざまな業務を掛け持ちしていて、広告の運用だけに専念できるわけではないでしょう。これらの失敗をしないように学ぶのは現実的ではありません。
理由2:プロの手仕事と機械任せの運用による成果の差は割に合うほどではない
競合広告主との間に広告運用の実力の差があり、運用だけで競合を出し抜いて「自分たちが消費者にとって数少ない選択肢の1つ(場合によっては唯一)になれる」状況なら、広告運用を一所懸命にすることに意味がありました。
しかしながら現状はそうではありません。
自分たちが運用で一人負けすることはあれども、広告運用で一人勝ちできる可能性はありません。
そのため、ECの広告が成功するかどうかは、広告運用ではない部分が支配的であり、プロ中のプロが本気で運用した場合と、P-MAXに任せた場合との差はほとんどありません。
いわんや、運用のプロではないEC事業者が自社運用をした場合をや、です。
そのため、すでにGoogle 広告のプロ中のプロが在籍している場合を除いて、P-MAXに任せた場合以上の成果を狙いに行く場合、プロ中のプロを自社で雇うかプロ中のプロが運用してくれる代理店に運用を依頼するほかありません。
ところで、正確な数字を検討してはいませんが、P-MAXとプロの運用の差は、クリック単価・コンバージョン率で20%程度が関の山だと思います。
仮にP-MAXで毎月以下のような配信をしているとします。
・広告費:30万円
・クリック数:1,000件
・クリック単価:300円
・コンバージョン率:10%
・コンバージョン単価:3,000円
・コンバージョン数:100件
これをプロ中のプロが運用して、クリック単価が0.8倍、コンバージョン率が1.2倍になった場合を考えます。
・広告費:30万円
・クリック数:1,250件
・クリック単価:240円
・コンバージョン率:12%
・コンバージョン単価:2,000円
・コンバージョン数:150件
仮に商品1個あたりの利益が2,000円だったとすると、利益額は20万円から45万円になります。約25万円の利益の増加です。が、これはプロ中のプロが完ぺきな運用した場合です。プロでもいつでも安定してこの成果を出せるとは限りません。さらに、何も知らない担当者がいきなり出せる成果ではありませんし、むしろ下手に運用をすることでP-MAXよりも悪くしてしまう可能性も十分にあります。
なお、このレベルの運用ができる人間を雇うのには25万円/月ではまったく足りませんし、この予算規模で請けてくれる運用代行を外に依頼してプロ中のプロの運用をしてくれることを期待するのは現実的ではありません。
広告費を3倍の90万円にしても増える利益の金額は75万円です。人件費だけで考えたらプロを雇えるかもしれませんが、従業員一人のトータルコストで考えたらマイナスくらいでしょう。運用代行に出すのもまだ現実的ではありません。
ところで、究極的には利益が増えればよいわけですし、広告運用のレベルをあげることが唯一の方法ではありません。
商品自体の改良によってコンバージョン率を2倍にできれば広告の運用は変えなくても利益額は20万円増えます。広告費以外の販管費を見直して商品1個あたりの利益額を増やしたり、プライシングの見直しによって販売個数は減っても利益を増やしたりすることもできるでしょう。そしてこれならプロを雇ったり代理店を使ったりする費用もかかりませんから丸々利益が増えます。
Google 広告の運用を改善しなくても、自社のマーケターがマーケティングできることがあります。
なので、広告運用はP-MAXに任せて、事業者はマーケティング活動に専念するほうが合理的です。
理由3:「広告の運用が原因では?」という疑いがなくなる
運用型広告を使っていると、事業全体の結果が芳しくない際に広告の運用が槍玉に挙げられがちです。
商品自体の改良をするよりも広告の運用の改善でどうにかできたほうが楽であるとか、広告の運用を担当する人と商品開発を担当する人との社内での立場の差など、さまざまな要因がありますが。特に手動運用をしていると「運用が悪いのでは?」と疑われやすくなります。
ところで、ロジカル・シンキングは立てる問いが間違っていると、途中の思考がどんなにロジカルだったとしても出てくるのは不正解です。数学の文章問題で立式を間違えているようなものです。計算ミスをしなかったとしてもその問題は不正解です。
本当は広告の運用よりももっと支配的な問題があるのに「広告の運用に問題がある」と誤った前提が設定されてしまうと、その後の議論も活動もすべて無駄なものになります。
なお、P-MAXを利用しなかったとしても、ターゲティングも入札もかなりの部分が自動化されていますので、よっぽど奇をてらった運用をしない限り、広告の運用が最大の課題になることはありません。むしろ、広告の運用でどうにもできないものを広告の運用でどうにかしようとして、人為的にセオリーからあえて離れてしまい余計に状況を悪くする事業者も少なくありません。
まとめると
P-MAXもまだまだ完ぺきではない部分はありますが、プロの運用との間の差はプロを使うことによって掛かる費用をペイするほどのものではありません。
むしろ、人為的な運用の失敗が起こる可能性もなく、「運用が悪いのでは?」とマーケット自体や商品自体から目を背ける機会を減らすことが、事業者のマーケティング・マネジメントとしては有利に働く可能性が高いため、EC事業者がGoogle 広告を自社運用する場合はP-MAXを利用することをおすすめします。
合わせて読みたい