【ベトナム越境EC手順書】 Part2:集客・プロモーション方法

はじめに

人口減少、高齢化、そして "物を持たない生き方" が流行りつつある昨今の日本では、物を売ることが難しくなってきています。一方で東南アジアなどの新興国では人口は増え、消費意欲も急速に高まっています。この状況で日本の物を海外に売るということは日本にとって喫緊の課題であるのは間違いないでしょう。しかし状況とは裏腹に、海外販売の難易度は高く、支援業者・サービスも限られています。

三菱商事や三井物産などの総合商社は海外の製品(原料)の買い付けや、日本製品の海外販売をサポートしてくれますが、総合商社と取引できるのは取引量の大きいメーカーや卸業者などほんの一握りです。

中堅中小の商社もありますが、現在どこも商社はとてつもなく忙しく、なかなか新規案件に人を回せないという状況だと聞きます(収益も相当上がっているそうです)。そうなると日本のメーカーや卸業者は自ら海外販売を手掛けなくてはならないのです。

しかし海外に販路を作るというのは時間もお金もかかります。そこで越境ECというクイックに、スモールに、リスクなしでできるという海外販売方法が2017年頃から流行り始めました。それから約5年が経過しましたが、各メーカーや卸業者にて個別に越境ECの試行錯誤がされているので知識が蓄積されていないというのが現状です。

そこで複数回に分けて「ベトナム越境EC手順書」と題してノウハウを公開していきたいと思います。Part 1では出品から配送までの大まかな流れをご説明しましたが、Part2では販売を伸ばすための集客・プロモーション方法についてご説明したいと思います。

Facebook広告経由で物が売れなくなった

Facebook広告経由で物が売れなくなった

ベトナムでFacebook利用ユーザが多いのは既に皆様ご存知かと思いますが、2022年においても引き続き一番使われているSNSはFacebookであり、ベトナム人のオンラインコミュニケーションに欠かせないものとなっています。InstagramやTikTokも流行っていますが全年齢層をカバーしているのがFacebookと言って間違いないでしょう。

そうなるとECモールやWebサイトに集客をするにはFacebook広告が良いのではないかと考えますが、確かに2015年あたりまではそれで高い効果がありました。ベトナムにもアフィリエイターのような人はいっぱいいまして、副業としてFacebook広告をかけて商品を販売するという人が後を絶たないような状況でした。というのも健康食品や化粧品を年間数億円単位で売るような人が現れ、これは稼げるということで話題になったからです。ベトナムは日本ほど産業が多くないため、会社員として働ける魅力のある仕事(給料が高くてやりがいがある)というのは少なく、なんとなく昼間は給料の安い会社員の仕事をしつつ副業で一花咲かせようとする人が多いです。

このような背景から、雑にFacebook経由で商品販売をし、模造品、不良品、消費期限切れの商品を販売する人が後を絶たずマーケット全体が信用できないものになっていきました。すると真っ当な商品であってもインプレッションは稼げるもののクリック(販売サイトへの誘導)は少なく、さらにコンバージョン(サイトでの購入)となるとクリックしたうちの0.1%程となることが大半です。つまり販売サイトに1,000人を呼び込んでようやく1個販売できるという結果です。

クリック単価(この単位で入札できます)は30円程度と日本に比べると安いのですが、1,000人に1人しか買わないのであれば、1購入に対して3万円の広告コストがかかってしまうのです。マッサージチェアなどの高額商品であれば可能かもしれませんが、高くても1万円程度の化粧品や健康食品では全く採算が合いません。コンバージョン率を上げるためにサイトを変更したり、動画を作ったり、漫画まで作ったことがありますが、それでも厳しかったです。これが2022年時点のFacebook広告の実情です。

まとめ: Facebook広告は採算が合わない。改善するも大きな効果はなし。

信頼できる売り場から商品を買う

越境ECから話が逸れてしまいますが、2021年末にホーチミンの高島屋にポップアップストアを作っていくつかの日本商品を販売しました。食品から化粧品まで約30SKUをまとめて販売しました。価格は700円から1万3,000円までと幅が広かったのですが、10日間のイベントで合計25万円の売上があったのです。(※)ポップアップストアという期間限定性と販売員を配置していたことも成功の要因ではあるのですが、1番の理由は「高島屋に置いてあるから」という信頼性だと結論づけています。

(※)2020年、ベトナムの月間平均所得は約22,000円
参照:ジェトロ「ビジネス短信」添付資料

信頼できる売り場から商品を買う

これが初めて見るWebサイトやローカルデパートではここまでうまくいきません。つまり同じ商品であっても信頼できる売り場でない限り売れないのです。越境ECにトライされるメーカーさんや卸業者さんは自前のFacebookページやLP(ランディングページ)を用意されがちですが、信頼ゼロから始めることになりますので、これでは前述の1,000人に1人が買うという勝負になってしまい、広告費が飛んでいくだけです。

それでは具体的な方法について説明します。それは既に何年も運営しているECモール内ショップに委託するというやり方です。LAZADAにもSHOPEEにも例えば「JAPAN SELECT」というような日本商品を集めて販売しているECモール内ショップが数多く存在します。このようなショップでは、既にベトナムに正規輸入されている比較的安価な商品(例:専科の洗顔剤、サボリーノのフェイスマスク)が販売されています。ただ、これらの商品は多くのショップで販売されているため、1円でも安いショップで売れていくというジリ貧の戦いになっています。そのため高い利益率の取れるベトナムで流通していない日本製商品を喉から手が出るほど欲しがっているのです。

ただし、最初は売れるかどうかわからない商品を大ロットで仕入れることを嫌がるため、10個単位で仕入れたいのです。そうなるとこれが越境ECにはまってくるのです。初月は10個で売れてきたら次回は20個という具合に伸ばしていきます。この際のポイントは複数の業者を使わないことです。専売権(エクスクルーシブともいいます)を与える必要はありませんが、2ショップ以上に任せるとどちらも販売を頑張らなくなってしまうということがよくあります。

この辺りの交渉はベトナム人同士の方が良いので、Part1で説明しましたベトナム人のアルバイトを活用して交渉してもらうのがよいでしょう。販売価格はある程度要望を伝えますが、卸値に関しては基本的にショップの意見を聞くべきだと思います。例えば販売価格の6掛けでやりたいというのであればそれでやってみることが大事です。重ね重ね言いますが専売権を渡しているわけではないので、ショップからすると投資などすることはできず最初からしっかり利益を確保できないとやらないのです。掛け率がメーカーさんや卸業者さんにとって割に合わないのであれば小売販売価格を上げることになりますが、その上限は日本での価格の1.25倍が限界というのが私の見立てです。

自前のFacebookページやLPに比べ利益率は当然低くなりますが、売り場の信用を使わせてもらっているので、相応の利益シェアはするべきだと思います。

まとめ:信頼のあるECモール内ショップと連携する。可能な限り最大限の利益シェアを行う。

Buy1 Get1と日本国内で捌ききれない在庫活用

売り場が決まりましたらいよいよプロモーションを考えることになります。私はこれまで10%OFF、ノベルティプレゼント、別商品との抱き合わせ販売など、色々なプロモーションを試してきましたが、ベトナムの消費者文化に一番根付いていてわかりやすいのがBuy1 Get1です。つまり「1個買ったらもう1個ついてくる」です。50% OFFセールをしてしまうと、もうその価格が市場で認知されてしまうためお勧めできないのですが、Buy1 Get1ではあまりそういう見られ方はしません。特にメーカーさんや卸業者さんでは日本では捌ききれない在庫が発生することがあります(例:パッケージや成分のリニューアルなどが行われ、日本国内で販売できない在庫が発生)。このような商品を目玉商品にしてBuy1 Get1でプロモーションするのです。

Buy1 Get1の事例
Buy1 Get1の事例

こういった動きをすると現地側もショップ内にバナーを設置するなどして積極的に露出をしてくれるので販売が伸びやすいのです。特にショップ側は商品のよく売れるイベント日にプロモーションに協力してくれる仕入れ元がいると重宝するため、イベント日を狙ってBuy1 Get1を打診することで歯車が噛み合うようになってきます。

ベトナムの年間販売イベント

4月30日:南部解放記念日
5月13日:母の日
6月28日:家族の日
9月2日:独立記念日
10月20日:ベトナム女性の日
11月11日:独身の日
11月20日:教師の日
11月末:ブラックフライデー
12月24日:クリスマスイブ
1月末:旧正月年末
2月14日:バレンタインデー
3月8日:国際女性の日

余談ですが、独身の日を除き、ほぼ全ての年間販売イベントでのターゲットは女性です。女性が女性自身に物を買うか、男性が女性に物を買うかのどちらかになります。Buy1 Get1はかなり強力な値下げオファーですので最も購買意欲の高いタイミングで実行することで最大限のマーケティング効果を得ることができます。また、年間販売イベントでなくても毎月給料日があり、ベトナムでは毎月5日か10日であることが多いので、月初にBuy1 Get1を仕掛けるというのも非常に有効です。

まとめ: プロモーションは迷わずBuy1 Get1一択。実行するタイミングは年間販売イベントか、給料日前後。

さいごに

ベトナム越境EC手順書のPart 2では集客・プロモーション方法について説明させていただきましたが、やってみないとなかなかイメージがつきづらいと思います。そして、現地販売パートナーを見つけることにハードルがあると思われるかと思います。そういう方のために弊社は、ベトナム越境ECを一気通関で支援するサービスをご用意していますので、お問合せください。

▼ 里薬品貿易株式会社への相談はこちら
https://satoyakubou.co.jp

合わせて読みたい

コマースピックLINE公式アカウント

コマースピックメルマガ