【ベトナム越境EC手順書】 Part1:出品から配送

はじめに

人口減少、高齢化、そして "物を持たない生き方" が流行りつつある昨今の日本では、物を売ることが難しくなってきています。一方で東南アジアなどの新興国では人口は増え、消費意欲も急速に高まっています。この状況で日本の物を海外に売ることは日本にとって喫緊の課題であるのは間違いないでしょう。しかし状況とは裏腹に、海外販売の難易度は高く、支援業者・サービスも限られています。

三菱商事や三井物産などの総合商社は海外の製品(原料)の買い付けや、日本製品の海外販売をサポートしてくれますが、総合商社と取引できるのは取引量の大きいメーカーや卸業者などほんの一握りです。

中堅中小の商社もありますが、現在どこも商社はとてつもなく忙しく、なかなか新規案件に人を回せない(収益も相当上がっている)状況だと聞きます。そうなると日本のメーカーや卸業者は自ら海外販売を手掛けなくてはならないのです。

しかし海外に販路を作るのは時間もお金もかかります。そこで越境ECというクイックに、スモールに、リスクなしでできる海外販売方法が2017年頃から流行り始めました。それから約5年が経過しましたが、各メーカーや卸業者にて個別に越境ECの試行錯誤がされているので知識が蓄積されていないのが現状です。

そこで今回から複数回に分けて「ベトナム越境EC手順書」と題してノウハウを公開していきたいと思います。Part 1では出品から配送までの大まかな流れを追っていきます。

そもそもベトナム越境EC対応できる人材がいないという課題

ベトナムに限らず、中国でも台湾でも越境ECを始める際に最初の壁となるのは「越境EC対応できる人材がいない」ことではないでしょうか。中国・台湾の越境ECが成功した企業には中国語ネイティブの社員がいて、越境顧客からの問い合わせ対応をしていることがほとんどです。

越境ECに関して、私がよくいただくご相談の一つに「ベトナムは英語対応でも大丈夫ですか」というものがありますが、ベトナム人は英語が得意なわけではなく、原則ベトナム語で対応する必要があります。ベトナム語翻訳ツールも現在は精度が上がってきてはいますが、商品や配送に対する問い合わせにおいて翻訳ツールを使ってしまうと、ちょっとした誤字脱字から「本当に商品が届くのだろうか」という不安につながってしまうためお勧めできません。

一方、現在日本には40万人を超えるベトナム人が在住しています。これは中国人に次ぐ第2位で、増加率は中国よりもはるかに高いです。そのためあと数年もすると日本在住外国人はベトナム人が1位となることが想定されています。日本在住ベトナム人の就業資格は大きく以下の3つに分かれています。

  • 高度人材(士業、医療、教育、ITなどの専門家)
  • 技能実習生(農業や製造業などで勤務可能)
  • 大学生や専門学校生(コンビニ等でのアルバイトが可能)

最後の大学生や専門学校生をアルバイトとして採用してベトナム越境ECを推進することできます。ベトナム人が主に利用するSNSであるFacebook上には多くのアルバイト募集グループがあり、Facebook検索で「Việc làm Nhật Bản(日本の仕事)」などと検索すると見つけることができます。その他にも日本に住むベトナム人のための生活情報グループが無限に存在し、ここで「アルバイト募集、在宅可、時給〜円」と投稿すると連絡が来るようになっています。

ここでポイントとなるのは、在宅勤務で良いのであれば(例えばCRMチャット対応など)日本国内にいるベトナム人に限定する必要はなく、ベトナムにいる "日本語を話せる" ベトナム人でも十分なのです。日本であればコンビニのアルバイトでも東京なら時給1,000円以上稼ぐことができますが、ベトナム国内だと居酒屋アルバイトで時給150円程度ですので、時給250円程度でもすごく頑張って働いてくれるのです。

ちなみに当社ベトナム法人では正社員に加えて、繁忙期にはこのような学生や主婦のアルバイトにCRMやフルフィルメントを手伝ってもらっています。この仕事に応募してくれる9割以上は女性です。ベトナム人女性は男性より責任感が強い傾向にあり、ノルマが終わらなければ残業しますし、アルバイトであっても友人を連れてきてリーダーとして動いてくれる強者もいます。これまで私も何度もピンチを助けてもらっています。

まとめ:越境ECの問い合わせ対応はベトナム語ネイティブが必須。ベトナム人材はFacebookで探す。オススメは責任感の強い女性。

そもそもベトナム越境EC対応できる人材がいないという課題

ベトナムのECモールへの出品方法

数年前、ベトナムeコマースと言えばFacebookが主要なプラットフォームとなっていたのは以前の記事でもご紹介しました。しかし、現在2021年においては模造品横行等の信頼性問題もありFacebookページ経由では商品が売れなくなってしまいました。Facebook広告をかけて販売LPへ誘導する方法も流行っていましたが、今ではCPAが全く合わなくなっています。

一方、ECモールは外資の相次ぐ参入で使いやすくなり、ベトナム人の生活インフラとして定着しました。シェアの大きい順に、Lazada(中国系)、Shopee(シンガポール系)、TIKI(一部日本資本)というモールがありますが、当社ではLazadaとShopeeにショップを作って運用しています。

ベトナム人の主なECモールの使い方は「モール内検索」です。商品名やカテゴリで検索し大量に出てくる同一・類似商品の中から1円でも安いものを選んで購入します。配送料無料や、まとめ買いによる割引プロモーションをよく見ていて、最終的に最もお得な購入方法を選びます。5%・10%オフぐらいの小さなプロモーションより、1Buy Get 1 (1つ買ったらもう1つついてくる) が人気です。友人と共同購入することで実質50%オフにて購入したことになり、「得した」という喜びを感じるようです。

モールへの出品方法ですが、管理ページは、日本語はおろか英語対応も不十分ですので日本人が作業することは不可能に近いです。また携帯電話SMS(ショートメッセージ)による連絡先確認もあるため(国番号を設定する欄がなく、海外の電話番号を指定できない)、日本国内からリモート作業することもできません。

前述でお伝えしたように「ベトナムにいるベトナム人をアルバイト雇用する」という提案をしましたが、このECモールの出品作業で雇用したアルバイトが威力を発揮するのです。日本とベトナムでどのように協働作業するかですが、当社ではGoogleスプレッドシートを使っています。Slackやチャットワークを使ってやりとりしたこともありましたが、複数の依頼を同時にお願いした際の取りこぼしが多いのです。

Googleスプレッドシートでは出品商品の情報(画像、価格、商品説明文、プロモーション)を管理します。これはマーケティングの話になってしまいますが(マーケティングの詳細はまた別の回でご紹介します)、ECモールにおいて出品商品の情報が頻繁に更新される方が、ユーザーの目につきやすい仕様になっています。スピード感を持って情報を更新していくためには、リアルタイムでお互いの更新状況が見えるGoogleスプレッドシートは重宝します。

ベトナム人アルバイトとは日本語でやりとりしますが、難しいことを伝えるときはベトナム語翻訳も添えておくと正確に伝わりやすいです。私はGoogle翻訳を使っていますが、Googleスプレッドシートに関数として組み込むことができ、翻訳の手間が最小化されます。

日本語→ベトナム語翻訳関数(A1の部分は翻訳元のセル番号を指定してください)

=IF(ISBLANK(A1),"", GOOGLETRANSLATE(A1,"ja","vi"))

まとめ:ECモールはLazadaかShopeeがオススメ。商品出品は日本人には難しいのでベトナム人アルバイトを活用。

ベトナム購入者への配送方法(ベトナムECモールの配送の仕組み)

モールへの出品が完了すると数日で注文が入ります。これを私はラッキー注文と呼んでいて、特にマーケティング施策をしなくても誰かが見つけて注文してくれるのです。注文のeメールはグループメールにするか、または転送される設定をして、関係者全員に送信されるようにした方が良いでしょう。

越境ECは俊敏な対応が必要になります。ベトナムの購入者はよっぽど手に入れたい物でなければ商品の到着を長い間待てません。私の感覚ではありますが注文後4日以内に届かないとキャンセル連絡または、到着時に受け取り拒否される可能性が高まります。

ベトナムへの国際EMS発送方法の前にベトナムECモールの配送の仕組みを説明します。LazadaもShopeeも出品者は購入者に直接配送できません。注文が入ると出品者は梱包と宛名ラベル貼りを行います。その後Lazadaの巡回集荷部隊が出品者の拠点に集荷に来ます。荷物は一旦モールの運営する中継倉庫に運ばれ、地域で振り分けられたのち配送部隊が購入者に届けます。

なぜこのような仕組みになっているかというと、

  • 商品が届かない(配送状況がわからない)
  • 偽のレビューが入っている

という問題を解消するためです。

上記配送の工程は購入者がアプリ上から確認できるようになっており、配送が完了すると購入者がレビューを書き込めるようになります。

勘の良い方であればすでにお気づきかもしれませんが、ベトナムのECモールを使って越境ECを行う場合、ベトナム国内に拠点が必要なのです。そしてその拠点にある程度の在庫を事前に確保しておく必要があります。これは倉庫や事務所である必要はなく個人宅でも可能です。ベトナム人アルバイトの見つけ方を先にご紹介しましたが、配送に関してもベトナムにいる人にサポートしてもらう必要があるのです。

里薬品貿易のベトナム現地パートナー
里薬品貿易のベトナム現地パートナー

配送の流れ全体

日本の倉庫 → 国際EMS →ベトナム拠点 → モール巡回集荷 → モール中継倉庫 → モール配送部隊 → 購入者

最後に国際EMSの送り方にも触れておきます。国際EMSとは日本およびベトナムの郵便局が提携して提供する国際郵便サービスです。その他にも、FedEx、DHL、UPS、佐川急便など個人向け国際配送サービスを提供している会社は多々ありますが、圧倒的に郵便局は拠点が多く、価格も安いのでお勧めします。新型コロナウィルスの影響が少なかったのも国際EMSでした。ベトナムにとっては国のインフラでもあるので、業務を止めないように政府も一部特例を出していたと思われます。

国際EMSをベトナムに送る際の注意点:大量に送ると関税がかかる

1つの商品を100個も200個も入れて送ると一般貿易とみなされてHSコード(物の種類を定義した国際規格)に則った関税を徴収されます。関税率は20%前後ですが、商品自体の価格はベトナム税関職員が独自の方法で決めます。つまり1個3,000円の商品であってもベトナム税関職員が5,000円といえば、5,000円×20% = 1000円もかかってしまうのです。これでは越境ECビジネスとしては成り立ちません。そのため、10個〜20個に限定して送る必要があります。それでも税関職員の判断で関税がかかることはあります。

まとめ:ベトナムECモールのラストワンマイル配送はモールが行う。国際EMSを使って少量ずつベトナム拠点に送って在庫を確保しておく必要あり。

最後に

ベトナム越境EC手順書Part 1では出品から配送までの大まかな流れを説明させていただきましたが、正直この段階でも複雑でやることも多く、心折れてしまう方もいらっしゃるかと思います。そういう方のために弊社は、ベトナム越境ECを一気通関で支援するサービスをご用意していますので、お問合せください。

▼ 里薬品貿易株式会社への相談はこちら
https://satoyakubou.co.jp

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