
この連載コラムでは、EC事業の転換期に入ったこのタイミングで、ブランドEC事業の成長戦略を再定義し、事業を加速させるプロセスにおいて活用いただける「ブランドEC成長戦略フレームワーク」を提示しながら活用ポイントを解説していきたいと思います。第3回目となる今回は、戦略を再定義する上で最初に活用を推奨している、ECの成長戦略・戦術を整理するフレームワークの提示と解説をします。
立川 哲夫
株式会社 久(きゅう)
ブランドEC成長支援室 室長 兼 EC経営コンサルタント
リテール業界に10年従事後、15年以上にわたるECビジネス推進およびECマーケティング支援経験を持つコンサルタント。
主な経歴として、大手EC総合支援企業において、10年以上にわたり経営幹部としてEC事業コンサルティングに関わりながら、企業のブランディング・マーケティング統括を担当。執行役員として東証グロース市場への上場も経験。その後、外資系コンサルティングファームにてECビジネスの変革支援にも関わる。
5冊のECマーケティング関連書籍の執筆・編集に関わり、EC事業戦略・売上アップの法則を凝縮し、知見の普及にも貢献。その他、日経クロストレンド・月刊ネット販売・日本ネット経済新聞などの業界メディアへの寄稿実績も多数。
■久(HP)
https://www.qinc.co.jp/
バリュープロポジションをフレームワークで明確にする
今後、ブランド公式ECの成長に必要なのは、中長期視点を持ちながら、ECサイトを起点とした、「企業のブランディング」と「ファンを増やしていく戦略や施策」を連動させていくことです。
その中心となる要素が、マーケティング戦略視点で言うと「第1想起の獲得」です。つまり「〇〇〇〇と言えば、自社の公式ECサイト」という「〇〇〇〇」の骨子となる部分を決めて、社内関係者・EC運営関係者の共通認識を持っていく必要があります。
それを決めていくアプローチとして「バリュープロポジション」設定フレームワークを活用していきます。「バリュープロポジション(Value Proposition)」は、よく使われるビジネスフレームワークの一つであり、顧客に対して自社の商品やサービスがどんな価値を提供するのかを明確に示す約束や提案のことです。「なぜ顧客は公式ECサイトの商品やサービスを選ぶべきなのか」(選ばれる理由)を端的に表せます。

ブランド公式EC成長の最重要となる「ブランド指名ワード」と連動していきますので、次のフレームワーク活用しながら、公式ECサイトの「バリュープロポジション」を明確にしていきましょう。

手順として
①自社の公式ECで提供できる価値のうち、特徴的で差別化要素となる商品・価格・ブランドイメージ・実績・サービス・特典などを3つ程度ピックアップします。
例:独自製法の商品、送料無料の定期サービス、購入者限定コンテンツ、長期保証など。
②競合または類似するECサイトを選び、そのサイトが前面に打ち出している商品・価格・サービス・特典などの顧客ニーズを3つ程度抽出します。
競合の強みと弱みを把握することで、自社が埋めるべきポジションが見えます。
③自社の公式ECサイトが想定しているメイン顧客が、求めている商品価値・価格・サービス・特典などを3つ程抽出します。
①②③の内容を踏まえて、自社の公式ECで提供でき、競合他社サイトが提供できない、顧客が求める提供価値を明確にします。
そこで決まった「バリュープロポジション」が、自社の公式ECサイトが選ばれる理由となり、「〇〇〇〇と言えば」の「第一想起ワード」や検索で入力する「指名ワード」となります。また、サイト・商品ページ・SNS・WEB広告・メール・パッケージなどさまざまな場所や場面でのキャッチコピーとしても活用していきます。
バリュープロポジションでECマーケティングを効果的に行う
バリュープロポジションを活用すると、ECサイトのマーケティング戦略(広告、SNS、サイトのページ、CRM)において、効果的な施策が打てることになります。
その際、施策ごとにKPI(指名検索数、直帰率、コンバージョン率、リピート率、SNSシェア数など)の設定と実行スケジュールの作成を行い、A/Bテストや定期的な定性調査(顧客インタビューやレビュー分析)でバリュープロポジションの有効性を検証・改善していきます。
一度決めて終わりにしない点もポイントとなります。市場や競合、顧客ニーズは変化します。四半期ごとや半年ごとに評価・修正を行うことも必要です。
また、社内への共有、営業、顧客サポート、商品企画、物流など関係部署へバリュープロポジションを共有し、各タッチポイントで一貫した体験を提供できるようにします。
独自性は時間とともに模倣されるケースもあります。差別化要素として、プロセス、コミュニティ、継続的なサービス改善を組み込むと持続的優位性が高まるでしょう。
バリュープロポジションは、ブランド公式ECの成長戦略の核となる要素です。顧客にとっての唯一無二の価値を言語化し、「第一想起」を定義することで、ブランドECの認知・広告効率・LTV・リピート率の改善につながります。
新たな視点となる、機能的価値から「情緒的価値」も視点に持つ
現在のEC市場において、商品のスペックや価格といった「機能的価値」だけで差別化を維持し続けることは難易度が高まっています。また、競合となる企業による類似商品の開発・提供により、価格競争に巻き込まれるリスクがあります。
そこで、今後のブランド公式EC(自社公式EC)において、重要になるのが「情緒的価値(顧客がそのブランドを利用することで得られる感情)」の視点です。
バリュープロポジションを明確にする際、「便利だから選ぶ」という段階を超えて、「このブランドを使っている自分が好きだ」「このブランドの取組み・姿勢に共感する」という状態をいかに作れるかも検討してみましょう。
このような情緒的なつながりは、Amazonや楽天市場といった巨大プラットフォームでは対応しきれない面が多く、ブランド公式ECならではの「継続的に選ばれる理由」となります。そのことも念頭において、本設定シートを用いて、現状の強みと市場のズレを明確にし、施策の優先順位付けと実行に役立ててください。
■久(HP)
https://www.qinc.co.jp
あわせて読みたい
















