
BtoB EC導入において、多くの企業が抱える共通の悩みがあります。それは「結局のところ、自社にはどのカートシステムが合っているのか?」という疑問です。
本連載ではこれまで、第1回で「BtoCとの決定的な違い」を解説し、第2回で現場の摩擦を減らす「トリアージ戦略」を、そして第3回で「Shopifyを活用した小口取引の自動化」という具体的な戦術をお伝えしてきました。
最終回となる今回は、これまでの集大成として「失敗しないBtoBカートの選び方」を解説します。結論から言えば、「どのシステムが一番優れているか」という問い自体が、実は大きな落とし穴です。重要なのは、自社の「現在地(フェーズ)」と「目的」から逆算してシステムを選ぶこと。本記事を、システム選びで迷子にならないための羅針盤としてご活用ください。
吉岡 大輝
株式会社ウキヨ
代表取締役
慶応義塾大学経済学部卒。株式会社サイバーエージェントへ新卒入社し、事業開発に携わる。
ウキヨ創業後、事業開発支援を軸にWebソリューションやDX領域を多数支援。
現在は複数の自治体で「DXパートナー」として活動しながら、BtoB領域のEC活用に注力。
事業目標や課題に対して、構築・マーケティング・事業開発まで一気通貫の伴走支援を行っている。
現場が疲弊する「BtoBカート導入・3つの失敗パターン」と回避策

システム選びを間違えると、現場の業務効率化どころか、かえって混乱を招く結果になります。まずは、BtoB EC導入でよくある3つの失敗パターンと、その回避策を見ていきましょう。
失敗① オーバースペックの罠
【よくある失敗】「将来的にあれもこれもやりたい」と要件を詰め込みすぎた結果、初期費用が数千万円に膨れ上がるパターンです。いざ導入してもシステムが複雑すぎて現場が使いこなせず、結局使い慣れたExcelやFAX管理に戻ってしまいます。
【回避策】システム導入の鉄則は「小さく産んで大きく育てる(スモールスタート)」です。最初から100点を目指さず、まずは最小限の機能でスタートし、現場の習熟度に合わせて機能を拡張していくアプローチが不可欠です。
失敗② 商慣習の軽視(BtoCカートの無理な流用)
【よくある失敗】コストを抑えるために安価なBtoC向けカートを導入した結果、BtoB特有の「企業ごとの掛け率(価格)違い」「請求書(掛け)払い」「個別見積もり」といった商慣習に対応できず、裏側で手作業の嵐が発生します。
【回避策】BtoBならではの複雑な取引条件がある場合は、BtoB特有の機能が「標準搭載」されているシステムを選ぶか、必要なカスタマイズが可能なプラットフォーム(ShopifyのBtoB機能など)を正しく選定する必要があります。
失敗③ 既存システムとの断絶(連携無視)
【よくある失敗】ECカート単体としては優秀でも、社内の基幹システム(在庫管理や会計システム)と連携できず、「Webで受注したデータを、手作業で基幹システムに打ち込み直す」という二重入力が発生してしまいます。
【回避策】システム単体で評価するのではなく、「社内の既存システムとどう連携するか(API連携や柔軟なCSVエクスポートが可能か)」を導入前に必ず確認しましょう。
自社の「現在地」を知るための3つのチェックリスト

ベンダー(開発会社)に話を聞く前に、まずは社内で以下の3つの項目をすり合わせ、自社の「現在地」を明文化しましょう。これがそのままシステム選びの判断基準になります。
- 目的の優先順位は何か? 「新規顧客を開拓し、売上を伸ばすこと」が最優先か? 「既存顧客の受注業務を効率化し、コスト(手間)を削減すること」が最優先か?
- 対象業務のトリアージ(切り分け) 第2回で解説した通り、どの顧客層(大口か小口か)の、どの業務をシステム化するのか? すべてを自動化しようとしていないか?
- 運用体制と予算のリアル 導入後、誰が(専任か兼任か)運用を回すのか? 導入の初期費用だけでなく、月額のランニングコストや保守費用はいくらまで許容できるか?
【保存版】フェーズ・目的別 BtoBカートシステムの選び方マップ

自社の現在地が明確になったら、それに適したシステム群を選びます。BtoBカートは大きく3つの方向に分類できます。
A【新規開拓・スモールスタート型】
- 代表例: Shopify、Bカート、スマレジEC B2Bなど。低価格帯のASPサービスを含め、さまざまな選択肢が存在します。
- ターゲット: まずは小さくWeb受注を始めたい、新規リードを獲得したい、小口取引を自動化したい企業。
- 特徴: 導入スピードが早く、デザイン性やマーケティング機能に優れています。第3回でも解説した通り、スモールスタートには最適ですが、日本独自の複雑なBtoB要件にはカスタマイズやアプリ導入の工夫が必要です。
B【既存業務DX・BtoB特化ASP型】
- 代表例: アラジンEC、CO-NECT、TS-BASEなど
- ターゲット: 既存のFAX・電話受注をとにかく早くWebに移行し、業務負担を減らしたい企業。
- 特徴: BtoB特有の機能(クローズドサイト、企業別価格設定、掛け払い連携など)が最初から標準搭載されています。要件が合致すれば強力ですが、独自の特殊なカスタマイズには制限がある場合があります。
C【全社最適・フルカスタマイズ型】
- 代表例: ecbeing BtoB、 EBISUMART、 W2 BtoB、フルスクラッチなど
- ターゲット: 予算と時間をかけてでも、自社の複雑な基幹システムや独自の商慣習と完全に一体化させたい中〜大規模企業。
- 特徴: 要件に合わせて何でも作れますが、数千万円単位のコストと年単位の開発期間がかかります。
他にもBtoC向けECサイトと共存させる、越境ECも含めて検討したい、など要件に応じて、選択肢は異なります。
失敗しないための「ベンダー選定」の極意
システムの方向性が決まったら、いよいよベンダー選定です。ここで注意すべきは「何でもできます」という言葉を鵜呑みにしないこと。カスタマイズ次第では「何でもできる」は誤りではありませんが、どの程度のカスタマイズを要するのか、以後の拡張性に問題はないか、など確認すべき要点は少なくありません。
失敗を防ぐためには、自社の「絶対にやりたいこと(必須要件)」と「今回はやらなくていいこと(見送り要件)」を明確にした簡単なRFP(提案依頼書)を作成し、複数社を比較検討することが重要です。現場の営業や受注担当者も巻き込み、「本当にこのシステムで日々の業務が回るのか?」をデモ画面などで必ず確認してください。
まとめ:BtoB ECは「導入」がスタートライン
全4回にわたってお届けしてきた本連載ですが、最もお伝えしたかったのは「システムはあくまで手段に過ぎない」ということです。
BtoB EC導入の真の目的は、現場の無駄な摩擦や負担をシステムで減らし、空いた時間で「顧客との深い関係構築」や「大口取引の提案」といった、人間にしかできない付加価値の高い業務にリソースを集中させることです。
しかし、自社のフェーズを客観視し、数あるカートから最適なものを選び、社内を巻き込んでプロジェクトを進めるのは、決して簡単なことではありません。どう進めるべきかわからないと迷われる企業様も多いのが現実です。
株式会社ウキヨでは、特定のカートシステムを売り込むのではなく、お客様の事業フェーズや目的に合わせた「最適なシステム選定」から「導入後の運用構築」まで、フラットな目線で伴走支援を行っています。「自社にはどの方向性が合っているのか?」と少しでも迷われた際は、ぜひお気軽にご相談ください。
本連載が、皆様のBtoB EC推進の強力な一歩となることを願っております。最後までお読みいただき、ありがとうございました!
会社HP:https://ukiyo.co.jp/ X:https://x.com/yoshioka_ukiyo
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