海外での爆発的な成功事例を受け、日本国内でも新たなECの柱として注目を集める「TikTok Shop」。
先行者利益を狙って参入する企業が増える一方で、「リソースを投じたが全く売上が立たない」「運用負荷が高すぎて継続できない」といった声も聞かれるようになりました。
TikTokは従来の検索型EC(Amazonや楽天市場など)とは全く異なるアルゴリズムとユーザー行動で動いています。そのため、既存のECの常識を持ち込むと失敗する可能性が高くなります。
本記事では、TikTok Shop運用の現場で見えてきた、企業が陥りがちな「失敗する4つの典型パターン」について解説します。
高松 悠
株式会社フロアスタンダード
代表取締役
「お客様からアンコールがもらえる商売を作る」というミッションのもと、EC事業の立ち上げからグロースまでを数多くのプロジェクトで支援。Shopify定期通販アプリ「Mikawaya」の開発会社としてブランドのLTV向上に貢献する一方、現在はTikTok Shop市場にいち早く参入。施策開始から3か月でEC売上を3倍まで向上させるなど、ショート動画コマースの最前線で成果を出し続ける。
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美容ジャンル特化型TikTokShop支援
Shopify特化型EC支援「Mikawaya」
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この記事の目次
失敗パターン①:アカウント初期段階での「ライブコマース」
TikTok Shop最大の武器は「ライブコマース」ですが、これを最初の一手として選ぶのは悪手です。
視聴者不在の配信とROIの悪化
アカウントのフォロワーが少なく、通常動画(ショート動画)の再生数も回っていない段階でライブ配信を行っても、アルゴリズム上の優遇はなく、誰も見に来ません。
実際の同時接続数が「数人〜数十人」という状態で、スタッフが1〜2時間カメラに向かって話し続けるのは、人件費と労力に見合わず、費用対効果(ROI)が著しく悪化します。
初回ブーストの罠
我々の体感ベースの話になりますが、初回のライブ配信時に限り、プラットフォーム側の仕様で一時的に露出が増え、20〜30人程度の視聴者が集まることがありました。これを見て「意外といける」と錯覚しがちですが、2回目以降はブーストがなくなり、同接が5人以下に激減するケースがいくつかのアカウントで発生しました。
どちらにせよ、まずはショート動画でファンを獲得し、一定の同接が見込めるアカウント規模になってからライブコマースへ移行するのが、遠回りのようで確実なルートです。
【補足:ライブ配信時の商品設定について】
ライブコマースを行う際、画面上に「商品リンク」をピン留めできますが、「リンクを設置しているのに、配信内でその商品を全く紹介しない」という運用には注意が必要です。
プラットフォームのポリシー違反として、意図せずアカウントの評価(再生数や露出)に影響が出る可能性もあるため、リンクを設置した商品は必ず配信内で紹介するようにしましょう。
失敗パターン②:アフィリエイト(クリエイター)への過度な依存
「商品を登録しておけば、インフルエンサーが勝手に売ってくれる」という他力本願な戦略も、TikTok Shopでは機能しません。
クリエイターは「売れている商品」しか選ばない
人気クリエイターや有力なアフィリエイターのもとには、企業からの紹介依頼(DM)が殺到しており、無名の商品がいきなり選ばれることは稀です。
彼らは成果報酬型で活動しているため、「売れる確率が高い商品」を優先的に選びます。
クリエイターは管理画面(商品マーケットプレイス)で、ランキングや具体的な販売実績数を確認しています。
- 販売実績がある商品 = 紹介すれば自分も稼げる
- 販売実績がない商品 = 紹介しても稼げない(リスク)
いくら報酬率を高く設定しても、販売実績がゼロの商品は選ばれません。まずは自社で「0→1」の売上を作ることが、アフィリエイト活用のスタートラインとなります。
失敗パターン③:ブランド公式アカウントでの運用
「公式アカウントを作れば信頼されて売れる」というのも、SNSコマース特有の落とし穴です。特に健康食品・美容カテゴリにおいては、ブランド公式アカウント(企業ロゴのアイコン)は伸び悩む傾向にあります。
「機能」で買うか、「人」で買うか
ガジェットや食べ物のように、商品の機能性やシズル感が購買決定要因になる商材であれば、ブランドアカウントでも成功の余地があります。
しかし、化粧品などは「誰が勧めているか」という「人」への信頼が重要視されます。「自分と肌質や年齢が近い人が勧めているから買う」という文脈が強いため、顔が見えない企業アカウントよりも、個人のクリエイターや、スタッフの属人性を前面に出したアカウントのほうがパフォーマンスが高くなります。
自社の商材が「機能」で売れるものなのか、「人(共感)」で売れるものなのかを見極め、アカウント設計を行う必要があります。
失敗パターン④:市場データ・成功事例の「読み違え」
「TikTokでは美容ジャンルが売上No.1」というデータがありますが、この数字の裏側を正しく理解せずに参入するのは危険です。
トップ層が数字を歪めている可能性
詳細なデータを分析すると、美容ジャンルの売上の大半は、ごく一部の「トップライバー」や著名インフルエンサーによって作られています。彼らが自身のブランドやコラボ商品を爆発的に販売し、カテゴリ全体の流通総額(GMV)を引き上げているのが実情です。
トップ層を除いた「一般のセラー」だけで見ると、美容ジャンルは競合過多のレッドオーシャンであり、多くのブランドが苦戦を強いられています。「市場規模が大きい=自分たちも売れる」と短絡的に捉えず、その内訳(誰が売っているのか)まで分析した上で参入戦略を練る必要があります。
結論:近道はない。「自社アカウントの育成」が最優先
TikTok Shopは、Amazonや楽天市場のような「棚に置けば売れる」プラットフォームとは異なり、動画クリエイティブと運用力がダイレクトに売上に直結します。
失敗しないための唯一の解は、以下のステップを地道に踏むことです。
- アフィリエイトやライブに頼らず、まずは自社でショート動画を投稿し続ける。
- 自力で販売実績(0→1)を作る。
- 実績が出来て初めて、クリエイター(アフィリエイター)が参画してくれる。
- フォロワー基盤ができて初めて、ライブコマースが機能する。
「誰かに売ってもらう」という発想を捨て、まずは自社のアセット(アカウント力・動画制作力)を磨くこと。これこそが、TikTok Shop攻略の第一歩と言えるでしょう。
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