ECでサブスクを始めたから売上が上がるわけではない?Shopifyマーチャントが語るサブスクの現実

コマースピック読者の皆様、はじめまして。株式会社フロアスタンダード代表の高松です。

弊社は2016年創業当初からサブスクリプションECの集客支援を行っており、現在は自社D2Cブランド「YOU TOKYO(https://shop.youtokyo.jp/)」をShopifyで運営しています。2021年5月にはShopifyサブスクアプリ「Mikawaya Subscription」をリリースし、現在多くのShopifyユーザー様にお問い合わせ、ご導入をいただいております。

今回は、私が実際にサブスクリプションEC運営を通して感じたことや、体験してわかったことをお伝えします。

サブスクリプションは甘くない

私が皆さんに1番にお伝えしたいのは「サブスクリプションは甘くない」ということです。「ECサイトを立ち上げ、サブスクリプションの機能を実装すれば売上が上がる」と思われているEC事業者様も多数いらっしゃいます。今回はYOU TOKYOの実例を元に、サブスクリプションの現実や取り組みについてお話しできればと思っています。

サブスクリプションは甘くない

サブスクリプションの現実

今現在のEC業界は、Shopifyのおかげでサブスクリプションをより安価に導入できるようになりました。以前は、サブスクリプションツール費用は高額であったため、ある程度の資本力がないと導入することができませんでした。また、事業計画をしっかり組んでグロースさせられる体制がつくれる規模感の企業じゃないと、サブスクリプションツールを導入したとしても、売上を上げていくことは困難です。 

導入ハードルが下がった現在、サブスクリプション導入後の成長戦略を考えず、安易にサブスクリプションを開始してしまう事業者がほとんどだと私は感じています。 

継続率向上のためのCRM施策

結論からお伝えしますと、皆さまの思っている以上にECのサブスクリプションの継続率は高くないです。サブスクリプション継続率を向上させるためにはCRM施策を打たなければなりません。

自社ブランド「YOU TOKYO」の例でお伝えすると、新規集客でお客様を獲得しても、「毎月一定の間隔で商品を使い続け、商品を受け取ってくれる人」はほとんどいないのが現状です。ストア側が1ヶ月間隔のサブスクリプションを設計していたとしても、「商品が合わないので1ヶ月で解約したい」や「2ヶ月使ったけどこれ以上は必要ない」というお客様のお声も多いです。3ヶ月以上継続してくれるお客様でも「商品が余っているからお届け間隔を変更したい」「ブランドや商品は好きなんだけとお金がきついから解約したい」という様々な理由で継続いただけません。

そこで、私たちは以下のCRM施策を打っています。

メルマガによるCRM施策

メルマガによるCRM施策

上記はメルマガ内容の一部です。YOU TOKYOでは最低週1回メルマガを送っています。内容はキャンペーンなどではなく、お客様に読んでいただけるようなコンテンツを考えて、メルマガを作成しています。

例えば、YOU TOKYOシャンプー&トリートメントに含まれている成分や正しいシャンプーの使い方など、他では得られないような情報を発信するように心がけています。どこにでもあるコンテンツを発信するのでは、メルマガを打つ意味がありません。

1通の内容を作成するだけでもかなり力を込めて取り組んでいますが、ここまでやってもサブスクリプションの継続率はなかなかあがらないですし、延期も起こりやすいのが現状です。

インスタライブによるCRM施策

YOU TOKYOヘアオイルのパッケージを決めるときに行われたインスタライブ

※この画像はYOU TOKYOヘアオイルのパッケージを決めるときに行われたインスタライブです。

メルマガだけでなく、インスタライブにも取り組んでいます。YOU TOKYOでは月に2回ほど公式Instagramにてインスタライブを行っています。実際にYOU TOKYOのブランドコンセプトをお話したり、メルマガだけでは伝えきれていない詳しい商品紹介も行っていたりします。インスタライブではYOU TOKYOスタッフが配信者として出ているのですが、私自身も時々参加しています。お客様のお声を直接聞けるのはライブ配信のメリットだと感じています。ただこれも短期的に継続率が上がる施策ではなく、長い目でみて継続率を上げる施策なのですぐに成果はでません。

サブスクリプションにおけるカスタマー対応、出荷対応

サブスクリプションを導入することで、お客様からの「解約したい」「間隔変更したい」というお問い合わせに対応する人件費も結構かかってきます。「解約や間隔変更はマイページ上で解決できるじゃん!」と思う方もいるかもしれないですが、実際はメールや電話でお問い合わせしてくるお客様も多くいます。

カスタマー対応以外では出荷対応のコストがかかってきます。サブスクリプションは毎月一定の間隔でお届けします。お客様が毎回注文をしていないのに商品が届くため、購入した認識がないお客様から「こんなの注文していない」という理由や「長期不在」などで商品をお受け取り頂けないことも多々あります。また、決済面では「決済NG」「クレジットカードの有効期限切れ」「後払いの与信上限超え」も多く発生するので、それらに対して「お金支払ってください」「受け取ってください」という連絡対応もサブスクリプションでは必要となってきます。

CRM施策、カスタマー対応、出荷対応の全てを行っても、なかなか継続されないというのがECサブスクリプションの現実です。

新規顧客の獲得の現状と課題

今までは、お客様がいるという前提でお話しましたが、ECサブスクリプションでは新規集客が1番大変です。

私はずっとこの業界にいて新規獲得やプロモーション支援を行い、広告の獲得単価の変遷を見てきて、明らかに最近サブスクリプションの顧客獲得単価(CPA)が悪くなり、新規集客が難しくなっていることを肌で感じています。

これに関しては様々な要因がありますが、下記のレギュレーションとお客様の変化が大きな要因だと考えています。

【過去】

  • 広告審査レギュレーションが緩かったため、過激な表現や広告主側のメリットが強い広告で審査が通り制約なく広告を回すことができた
  • お客様(ユーザー)も広告に見慣れておらず、初回割引や回数縛りのサブスクリプションの仕組みを理解せずに購入していた

【現在】

  • サブスクリプションの法改正により薬機法が厳しくなり、それに伴い広告審査も厳しくなった
  • お客様が広告に見慣れ、サブスクリプションへのアレルギー(抵抗)が強くなり、「サブスクリプションなら買わない。単品なら買う」といった傾向となりつつある

この様な変化によって広告で新規獲得をすることが難しくなっているのが現状です。

今までは広告費がある程度抑えられているという前提の元、「広告費を〇〇だけかけて、継続を何回続けてもらえたら広告費を回収でき△△くらいの利益がでる」という方程式ができていました。しかし、今ではその前提が崩れてしまったので、広告予算が読みづらく新規獲得が難しい状況が続いています。

その為、広告費をかけないで新規顧客の獲得をしようとするのですが、革新的な新規性の高いブランドコンセプトの商品なら話題性である程度新規顧客を獲得することもできるかもしれません。しかし、再現性を担保するのは中々難しいと思います。限られたリソースで目の前の売上を追っている規模感の企業では実現することはとても困難ではないかと思っています。

サブスクリプションを始める企業様に向けて

これまでお話ししたとおり新規顧客獲得〜継続率の向上までの体制をつくることは並大抵のことではありません。サブスクリプションを始める前に一度立ち止まって考えてみることはとても重要です。

突然ですが、初めて出会った異性に「付き合ってください」と言われても付き合わないですよね?? 一方的に好意を伝えられてもそれを判断するには、「相手を知ること」が前提だと思います。また、付き合うことができたとしても関係を維持するにはデートをしたりこまめな連絡をしたりと継続的な努力が必要です。

それと同様で、新規のお客様にいきなり「サブスクリプション商品購入してください」といったところで、「NO」というお客様は大多数だと思います。そのため、まずは「トライアル」や「単品購入」で商品を知ってもらい、その上でお客様とコミュニケーションを取り続けファンになってもらう。それから「サブスクリプションというプランもありますよ」とステップを踏み、お客様が納得した上でサブスクリプションプランを利用してもらうのがごく自然なサービス設計であり、LTVの向上には絶対欠かせないものだと思っています。

新規顧客獲得のために広告で表面だけカッコよく見せ回数縛りや、解約阻止で継続させるような売り方ではお客様はどんどん離れてしまいます。今後は「サブスクリプションを望む人にサブスクリプションを提供する」ことが重要になっていくと思います。

お伝えした内容を踏まえた上で、継続的なお客様との関係値づくりをしていく体力と覚悟のある企業様でしたら是非、サブスクリプションサービスを始めてみてはいかがでしょうか?

最後に

今回は「サブスクリプションは甘くない」という内容をお伝えしましたが「サブスクリプションモデルが自社商品には合っている!」「お客様のニーズが多いのでサブスクリプションを開始したい!」など、これからサブスクリプションをご検討されるEC事業者様に弊社のShopifyサブスクアプリ「Mikawaya Subscription」がお役に立てるかもしれません。アプリ導入のフォローはもちろんのことサブスクリプションEC体制の構築からグロース支援も行っておりますので、お困りごとやご不明点などございましたらお気軽にお問い合わせくださいませ。

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