LINEヤフー、2025年度第1四半期決算まとめ:戦略事業が牽引し売上5.7%増 AIとミニアプリ投資で成長基盤を強化

2025年8月4日に発表された2025年度第1四半期(2025年4月〜6月)の連結業績は、全社売上収益が4,896億円と前年同期比5.7%増、調整後EBITDAは1,258億円で3.4%増と、通期ガイダンスに沿った進捗となりました。PayPayを中心とする戦略事業の好調が全社業績を押し上げています。

コマース事業:ZOZO・アスクルにけん引され増収、EBITDAは一時益の反動で減益

コマース事業は売上収益2,159億円(前年同期比+3.5%)、調整後EBITDA371億円(同–10.5%)でした。ZOZOやアスクルの伸長とYahoo!ショッピングの販促施策が奏功し、サービス全体の取扱高は拡大しました。ZOZOTOWNのYahoo!店が好調で、アスクルでは日用品などの生活用品カテゴリが堅調だったほか、FY25Q1から連結対象となったBEENOSも増収要因となっています。一方で昨期計上したバリューコマースの支配喪失益がなくなったことや、Yahoo!ショッピングやフリマアプリなどにおける販促費の増加が利益を圧迫し、調整後EBITDAは減益となりました。

メディア事業:アカウント広告が成長も、販管費増で減益

メディア事業は売上収益1,772億円(同+0.6%)となり、アカウント広告の急拡大が広告収入全体を押し上げました。従量課金モデルの拡大と有償アカウント数の増加により、アカウント広告収入は前年同期比+18.3%となっています。反面、検索広告は広告需要の鈍化やパートナーサイト面の縮小で7.7%減となり、全体の伸びは限定的といえます。調整後EBITDAは652億円(同–7.4%)に減少しました。AI基盤の構築費用や広告プラットフォーム統合に向けた投資、人件費や生成AI関連費用が販管費を押し上げています。

戦略事業:PayPay連結が好調で大幅増益

戦略事業は売上収益966億円(同+22.1%)、調整後EBITDA209億円(同+264.0%)と大幅に伸長しました。主なけん引役はPayPay連結で、同サービスの登録ユーザー数は約6,981万人と前年同期比8.3%増、連結取扱高は4.5兆円(同+24.0%)、連結EBITDAは218億円(同+86.6%)に拡大しました。決済手数料やリボ残高増による金利収入が増加したほか、住宅ローンを中心としたPayPay銀行の貸出金残高が順調に伸びたことも寄与しています。

AI・新規サービスへの投資:LINEリニューアルとミニアプリ拡充

同社は中長期成長に向けた投資も加速しています。2025年7月からLINEアプリのリニューアルを段階的に開始し、下期には「ショッピング」「ウォレット」タブを追加する予定です。

ショッピングタブでは既存のLINEギフトやLINEショッピングを強化し、AIによるパーソナライズ提案を実装する予定で、ミニアプリやPayPayなど決済サービスとのシームレスな連携を図ると発表しています。ウォレットタブはミニアプリを起点にしたUI/UXへ刷新し、多様なミニアプリの掲載と決済機能の拡充を目指します。ミニアプリ数は23,550件と前年同期比55.3%増、MAUは1,473万人と48.1%増と急伸しており、今後は決済連携や広告掲載機能の提供で利用促進を狙うとのことです。

生成AI分野では2025年度4〜7月の間に14の生成AIサービスや機能をリリースし、LINE AIやYahoo! JAPANのAIアシスタントなどを提供しています。前期記事で示された「AIエージェント」構想でも、ユーザーの目的に応じてチャットや検索から購入・予約・決済まで一気通貫で支援するサービス群を構築しており、ミニアプリ連携を強化しながら2026年度以降の本格収益化を目指しています。

FY2025年の見通し

通期ガイダンスでは、売上収益を前期比9.5%増の2兆1,000億円、調整後EBITDAを5,000〜5,100億円と見込んでいます。BEENOSの連結効果やYahoo!ショッピング、クロスユース促進施策がコマース事業を押し上げる想定で、生成AIやセキュリティ対応費用(約100億円)も織り込んでいます。2025年度はAIエージェントやミニアプリ拡充への投資フェーズと位置づけられており、2026年度以降の成果が注目されるでしょう。

まとめ

第1四半期はPayPayを中心とした戦略事業が高成長を維持し、全社売上収益・調整後EBITDAともに前年同期を上回りました。一方でメディア・コマース両事業では販促費やAI基盤投資の増加が利益を圧迫しており、構造改革と効率的な成長投資が課題といえます。今後は、生成AIやLINEアプリのリニューアル、ミニアプリ・PayPay連携によるサービス強化を進めながら、FY2025のガイダンス達成を目指すようです。

あわせて読みたい

コマースピックLINE公式アカウント

コマースピックメルマガ