
2025年6月30日、TikTokアプリ内で買い物・決済まで完結できる「TikTok Shop」が日本で正式にローンチされました。これにより、動画視聴と購買体験がシームレスにつながるコマース機能が、国内でも本格的に活用できるようになっています。
本記事では、TikTok Shopに出店を検討している事業者に向けて、アカウント登録から初期設定、アカウント連携、チーム運用体制の構築までの基本的な流れを整理しました。出店に必要な準備や注意点を事前に把握しておくことで、スムーズな立ち上げが可能になります。これからTikTok Shopを始めたい方は、最初の一歩としてご活用ください。
この記事の目次
出店の種類と要件
TikTok Shopに出店するには、「個人セラー」または「コーポレートセラー」のいずれかとして登録する必要があります。それぞれの区分で登録条件や提出書類、開設可能なショップ数が異なります。
■TikTok Shopアカウント登録URL
https://seller-jp.tiktok.com/account/register
個人セラーの要件
個人セラーは、事業の届け出をしていない個人が対象です。また、個人事業主もこの区分に含まれます。
申請時には、本人確認書類として「日本のパスポート」「運転免許証」「在留カード」のいずれかを提出する必要があります。加えて、住所証明書として「公共料金の請求書」「住民票」「銀行の取引明細書」などの提出が求められます。
個人セラーは、1つの本人確認IDにつき1店舗までの開設が可能です。
コーポレートセラーの要件
法人や国税庁に登録済みの事業者は、コーポレートセラーとして登録する必要があります。
申請時には、「登記事項証明書」または「印鑑証明書」のほか、代表者の本人確認書類と、会社の住所を証明する書類を提出します。コーポレートセラーとして登録すれば、1つの事業者登録あたり最大5店舗まで開設できます。
提出書類に関する注意点
どちらの区分でも、提出書類は有効期限内であること、記載内容が登録時の情報と完全に一致していることが求められます。画像は明瞭で、加工されていないものに限られます。
書類のファイル形式はPDF、JPEG、PNGが使用でき、ファイルサイズは5MB以内。ファイル名には記号(*や\など)を含めないよう注意が必要です。
申請後に登録内容を修正することはできません。あらかじめ必要な書類を揃え、入力情報に誤りがないかを確認したうえで登録を進めるようにしましょう。
セラーアカウントの登録方法
必要書類が揃ったら、TikTok Shopのセラーアカウント登録に進みます。アカウントはPC・モバイルのどちらからでも登録できますが、本記事では基本的にPCからの手順を前提に説明します。
登録の入口
TikTok Shopの日本版セラーセンター(https://seller-jp.tiktok.com)にアクセスし、アカウントの新規登録を行います。すでにアカウントを持っている場合は、同じURLからログインが可能です。
アカウント登録は、以下の2通りの方法から選べます。
方法1:電話番号またはメールアドレスで登録
電話番号またはメールアドレスのいずれかを使ってアカウントを作成する方法です。入力した情報に対して認証コードが送られ、そのコードと任意のパスワードを入力して登録します。
認証を通過することで、アカウントの所有者本人であることが確認され、セラーセンターの利用が可能になります。
方法2:TikTokアカウントで登録
TikTokアカウントを使って登録する方法も選択できます。この場合は、画面に表示されるQRコードをスマートフォンで読み取り、指示に従って連携操作を進めます。
どちらの方法を選んでも、同じ電話番号・メールアドレスを使って複数のTikTok Shopアカウントを登録することはできません。複数アカウントを作成する場合は、別の情報を使う必要があります。
本人確認とショップ設定
アカウントの登録が完了すると、次に行うのは本人確認とショップ情報の設定です。これはTikTok Shopを正式に利用するうえで欠かせないステップであり、審査通過後に商品を出品できるようになります。
本人確認はリアルタイムで実施
TikTok Shopでは、本人確認をオンラインでリアルタイムに行います。スマートフォンやPCのカメラを使い、登録時に提出した身分証を撮影してアップロードします。
個人セラーの場合は、運転免許証・在留カード・パスポートのいずれかが必要です。在留カードを提出する場合は、「就労制限なし」と明記されたものに限られます。また、パスポートを使用する際は、発行から3か月以内の住所証明書の提出も求められます。
コーポレートセラーの場合は、登記事項証明書または印鑑証明書に加え、代表者の身分証明書の提出が必要です。
アップロードした画像は、自動的に本人確認システムでチェックされ、問題がなければその場で「認証済み」と表示されます。認証に失敗した場合は、再度アップロードすることで再申請が可能です。
ショップ情報の入力
本人確認が完了すると、ショップの基本情報を登録します。ここでは、ショップ名・代表者名・電話番号などを入力します。
ショップ名については、将来的にブランド認定を受ける予定がある場合、命名に注意が必要です。ブランド認定後に変更する際は、認定プロセスを経て再申請する必要があります。また、ショップ名とTikTok公式アカウントの名称は一致させる必要があります。
入力内容に誤りがあると、審査に通らなかったり、後から修正ができなかったりするため、記入時は正確さを意識しましょう。
審査と承認の流れ
すべての入力と書類提出が完了したら、TikTok側の審査が行われます。審査には通常1〜5営業日かかり、結果はセラーセンター内と登録メールアドレス宛に通知されます。
審査に通過すると、正式なセラーとしてショップの運営が可能になります。次のステップとして、商品登録や配送設定、アカウント連携などの作業に進みます。
TikTokアカウントとの連携
TikTok Shopでは、TikTokアカウントとの連携を行うことで、ショップと動画コンテンツの接点を強化することができます。連携できるアカウントには、主に「公式アカウント」と「マーケティングアカウント」の2種類があります。それぞれ役割や機能が異なるため、用途に応じて使い分けることが重要です。
公式アカウントの特徴と連携条件
公式アカウントは、ショップの顔となるTikTokアカウントです。プロフィールページに「ショップページ」が表示され、商品一覧が自動的に同期されるようになります。ユーザーからの信頼を得やすく、コンテンツを通じた購買導線として活用されます。
連携できるのは1ショップあたり1アカウントのみで、アカウント名はショップ名と一致している必要があります。連携後にショップ名を変更する場合は、アカウント名も連動して変更されます。
公式アカウントは、TikTok Shopセラーセンターから登録・管理できます。既存のTikTokアカウントを使用して連携するか、新たに組織アカウントを作成することも可能です。
組織アカウントは、会社が所有する公式アカウントとして運用でき、複数の担当者で管理できるほか、退職や異動の際にも柔軟に権限の引き継ぎが行えます。
マーケティングアカウントの活用
公式アカウントに加えて、最大5つまで連携できるのがマーケティングアカウントです。こちらは、より柔軟に販促活動を展開したい場合に活用されます。
マーケティングアカウントには、ショップページは表示されず、商品のショーケース表示が中心となります。アカウント名に制限はなく、フォロワー数の条件もありませんが、アフィリエイト機能を使う場合は1,000人以上のフォロワーが必要です。
連携は、セラーセンターから招待を送る形式で行います。TikTokアプリ側で承認すると連携が完了します。連携後は、動画やライブを活用したプロモーションにも対応可能となり、販路を広げるための有効な手段になります。
ブランド認定とショップ名の管理
TikTok Shopでは、ブランドや正規販売者であることを示すための「ブランド認定制度」が用意されています。この認定を受けることで、ショップ名に「フラッグシップ」「公式」「認定販売者」といった表示が付与され、ユーザーに対する信頼性を高めることができます。
ブランド認定の種類と必要書類
ブランド認定は、商標の保有状況や流通経路に応じて3段階に分かれています。
商標の保有者本人である場合は、「商標所有者」として申請します。この場合は、有効な商標登録証明書を提出することで認定が受けられます。
商標の保有者から販売の許可を受けた場合は、「第1レベル認定販売者」として申請します。商標所有者から発行された認可書を提出することで、認定が可能になります。
さらに、第1レベル認定販売者から再認可を受けて販売を行う場合は、「第2レベル認定販売者」として申請します。この場合は、第1・第2の双方からの認可書の提出が求められます。
いずれの認定においても、認可書の有効期限が指定されていない場合は「無期限」として登録することも可能です。
申請は、セラーセンターの「資格認定センター」から行い、承認されるとショップ名の表示に反映されます。
ショップ名の変更について
ブランド認定を受けたあとは、ショップ名に「公式」や「フラッグシップ」などの表示が付けられます。ショップ名の変更は月に1回まで可能ですが、ブランド認定を受けている場合は、変更の際に再認定の申請が必要です。
また、TikTokアカウントとショップが連携されている場合は、ショップ名の変更に伴い、アカウント名も自動で変更される点に注意が必要です。名称に一貫性が求められるため、変更を検討する際は事前に確認しておきましょう。
マイアカウント設定と通知管理
TikTok Shopの運営を開始したら、セラーセンター内の「マイアカウント」から基本情報や通知設定などの管理を行います。ここでは、アカウントの安全性確保や運営効率の向上に関わる各種設定が行えます。
アカウント情報の確認とセキュリティ設定
マイアカウントでは、ログイン用のメールアドレスや電話番号、パスワードの変更に加えて、2段階認証の設定も可能です。2段階認証を有効にすることで、第三者による不正アクセスのリスクを抑えることができます。
登録済みの信頼できるデバイスの管理や、ショップコード、業種、セラータイプ、ショップ名などの基本情報もこの画面から確認できます。
ブランドの追加や変更、商標の認証申請といった手続きも、マイアカウント内の「資格認定センター」から行います。
通知設定とメッセージの受信管理
TikTok Shopでは、運営に必要なさまざまな通知がセラーセンター経由で届きます。通知の種類は「重要」「ショップ関連」「お知らせ」に大別されており、それぞれメッセージの配信対象や停止可否が異なります。
重要メッセージには、書類審査や違反警告、不服申し立てに関する通知が含まれます。ショップ関連メッセージは、注文状況やアフターセールスに関する案内です。これらはいずれも運営上必要不可欠な情報として扱われ、メインアカウントでは配信を停止することができません。
一方、「お知らせ」に分類されるメッセージは、キャンペーン情報や新機能の案内、市場レポートなどが中心です。このカテゴリについては、必要に応じて配信の登録解除が可能です。
通知の受信設定は、セラーセンターの「アカウント設定」から変更できます。複数のサブアカウントを運用している場合、それぞれのアカウントごとに通知設定を細かく管理することも可能です。
チームでの運用:アクセス権限の管理
TikTok Shopでは、1つのショップに対して複数の担当者を割り当てることができます。運営チームを構成する場合は、サブアカウント機能を活用することで、業務の分担や権限管理がしやすくなります。
サブアカウントの追加と役割の割り当て
セラーセンターの「ユーザー管理」機能から、従業員のメールアドレスを使ってサブアカウントを追加できます。ユーザーには、あらかじめ定義された役割を割り当てることができ、担当業務に応じて操作範囲を制限することが可能です。
サブアカウントの作成後は、該当のメールアドレス宛にアクティベーション用のリンクが送られます。リンクの有効期限は120時間で、期限内にアクティベートが完了すると、サブアカウントとしてログインが可能になります。
なお、権限の管理や役割の設定は、ショップ所有者アカウントのみが行えます。
権限の設計と管理のポイント
TikTok Shopでは、あらかじめ用意された複数の「デフォルトの役割」が存在します。たとえば、商品管理担当者や注文フルフィルメント担当者、マーケティング担当者、カスタマーサポート担当者など、業務ごとに最適な役割が設定されています。
各役割には、「表示のみ」や「表示と編集」といった権限の違いがあり、商品や注文、プロモーション、財務データへのアクセス範囲を細かく制御できます。
必要に応じて独自の役割を作成し、柔軟な権限設計を行うことも可能です。たとえば、特定のメニューだけにアクセスできる限定的な権限を設定することで、担当者の業務範囲に合わせた安全な運用が実現できます。
アカウントの運用を複数人で行う場合は、こうしたアクセス管理機能を活用し、業務の効率化と情報管理の両立を図ることが重要です。
成長の機会:売上向上をサポートするミッション機能
TikTok Shopでは、出店者の運営支援を目的とした「成長の機会」という仕組みが用意されています。これは、セラー向けにカスタマイズされた学習・成長プログラムで、運営スキルの向上と売上拡大を後押しするための機能です。
ミッション形式で運営スキルを強化
「成長の機会」では、各ショップのステータスや運用状況に応じて、達成目標(ミッション)が提示されます。ミッションには、たとえば「商品を一定数登録する」「動画コンテンツを定期的に投稿する」など、運営に直結する実践的な内容が含まれています。
ミッションは「利用可能」「進行中」「完了」の3つのステータスで管理されており、自分の進捗状況や優先順位が一目でわかるようになっています。各ミッションには「売上向上インデックス」が表示されており、実施の効果が数値で可視化されているのも特徴です。
達成すると特典が受け取れる
ミッションを完了すると、さまざまなリワード(特典)を受け取ることができます。たとえば、TikTok Shopの通常手数料7%が90日間3%に割引される「プラットフォーム料金割引」や、商品購入時に使用できる「商品クーポン」、広告運用に活用できる「プロモート用クレジット」などが用意されています。
特典には数量制限があるものもあり、早期にミッションを達成したセラーから順に付与されます。受け取ったリワードの一覧や残数は、セラーセンター内の「自分のリワード」からいつでも確認できます。
なお、クレジットの付与には公式TikTokアカウントとの連携が必要となります。未連携の場合は、連携を促す案内が表示され、連携完了後に受け取りが可能になります。
活用のポイント
ミッションはあくまでセラーごとにカスタマイズされており、内容や順番はショップの状況によって異なります。すべてのミッションを網羅する必要はなく、まずは自社にとって実行しやすいものから着手するのが現実的です。
運営に慣れていないセラーにとっても、ミッションに沿って進めることで自然と運用のポイントを理解できるよう設計されています。TikTok Shopの仕組みを学びながら、成果につなげていくための有効な手段といえるでしょう。
まとめ:本格運用に向けた準備はここから
TikTok Shopで販売を始めるには、出店申請や本人確認に加え、アカウント連携やチーム体制の整備といった初期設定が必要です。本記事では、そうした導入フェーズの基本ステップを整理しました。
登録や審査のプロセスにはいくつかの注意点がありますが、事前に必要書類を準備し、手順に沿って進めれば、大きな負担なく完了できます。出店後の運用を見据えて、アカウント設計や権限管理にも早めに取り組んでおくと安心です。
まずは、セラー登録と初期設定を確実に済ませることが、TikTok Shopでの販売を軌道に乗せる第一歩になります。次のステップでは、商品登録や販売準備に進んでいきましょう。
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