売上とハートをつかむ!恋愛流マーケティングの3つの化
この記事の執筆者

北村 宏明
合同会社コトウリ

20代でエンジニアとしてキャリアをスタートし、30代ではWebディレクターとして数々のプロジェクトを統括。近年はマーケターとして活躍の場を広げ、マーケター育成アカデミーの講師ならびにMA(マーケティングオートメーション)専任講師として、これまでに100名近い人材を育成。セミナーの開催・主催は1,500回以上、自身による登壇も500回を超える。
2023年に合同会社コトウリを起業し、上流から下流まで一貫して支援できる豊富な知見を武器に、多角的なマーケティング施策を提案・実行している。

合同会社コトウリ:https://kotouri.jp/

マーケティングの誤解

「マーケティング」と聞くと、テレビCMやネット広告など“売り方”ばかりが注目されがちです。

しかし、本来のマーケティングは、「顧客にとっての価値を最大化し、正しく届ける活動」。広告は手段の一つにすぎません。

たとえば有名な「ドリルと穴」の例え話をご存じでしょうか?

――『お客様はドリルが欲しいのではなく、“穴を開けたい”からドリルを買う』

重要なのは「なぜ買うのか?」という視点。ドリルそのものではなく、“穴を開けられる”という価値が求められているのです。

まずはこの「顧客が本当に求める価値を深掘りする」という本質をしっかりと捉えるところから、マーケティングは始まります。

マーケティングの本質:価値の最大化

広告の真の役割とティッシュ配りの例

街頭で配られるポケットティッシュにも、実は“ティッシュを届ける”だけでなく、中に挟まれた広告を通じて「コンテンツやブランドに興味を持ってもらう」という目的があります。

広告はただの露出ではなく「価値を知ってもらうための入り口」にすぎません。

最終的には、その商品やサービスがどんな価値を提供しているのかを理解してもらわなければ、人はなかなか“買う”という行動には至らないのです。

人が「動く」のは価値に共感したときだけ

大前提として、人は価値を感じないと行動しません。

どれだけ広く広告を打って認知度を高めても、商品・サービス自体の価値が伝わらなければ購買につながりにくいのです。

だからこそマーケティング活動では「顧客目線の価値創造」と「適切な認知獲得」を両立させる必要があります。

EC事業者にとっての“価値”とは?

EC(ネット通販)で考える際、次のような切り口で“価値”を整理できます。

  • ブランドの価値
    「このブランドが好き」「他にはない雰囲気がある」
  • 商材そのものの価値
    「この製品の機能がすごい」「デザイン性が高い」
  • 価格の価値
    「半額セール!」「この価格ならコスパが良い」
  • サービスの価値
    「サポートが手厚い」「配送が早い」「サブスクで常に使える」
  • 顧客体験の価値
    「サイトが見やすい」「購入後のフォローが安心」「コミュニティが楽しい」
  • 品質・安心感の価値
    「保証体制がしっかりしている」「高品質だから長く使える」

EC事業者にとっては、「自社の商品・サービスはどの価値で勝負していくのか」を明確にしなければなりません。

とにかく広告費をかけるだけではなく、顧客にとって魅力的な価値をどう届けるかを考えることが大切です。

恋愛ってマーケティング?

と、ここまで難しい話をしてきましたが、結局「マーケティングって何なのよ」をより理解する方法があります。

誰しもが一度は何らかの形で経験しているのではないでしょうか。実は、マーケティングは恋愛とよく似ています。

  • 自分(商品)を好きになってもらう努力をする
  • 相手(ターゲット)のニーズをリサーチしプレゼントを考える
  • 相手の心情を捉え好きになってもらう(ファン化)ため継続してアプローチする
  • お付き合いできた(購入が成立した)らコンバージョン獲得!その後もお付き合いを継続(ロイヤル化)

一方的に「自分はこんなに魅力的なんだ!」とアピールしても、相手が求めていない価値であれば空回り。

恋愛同様、マーケティングでも相手が求める価値に気づき、提供することが鍵になります。

恋愛もマーケティングも難しい?

大丈夫です。この恋愛プロセス…いや、マーケティングプロセスを『3つの化』に落とし込んで考えてみましょう。

マーケティングと、恋愛と、3つの化

可視化(売れるルートを見える化する)

まずは“どこから”相手がやってくるのか、そして“なぜ”そこから来るのかを可視化(見える化)することで、効果の高い導線が浮き彫りになります。

◇恋愛例:「どんなきっかけで知り合うのか?」「友達の紹介? 職場? 趣味の集まり?」
 ‥恋愛における初回接点(出会いのルート)を検討し洗い出す作業

◇マーケティング例:「どの流入経路から売上が立っているか?」
 ‥SNS広告、検索エンジン、メルマガ、レビューサイトなど、実際に購入につながっているルートを可視化する

数値化(現状を客観的に測る)

数字で見ることで、改善すべきポイント(ボトルネック)が明確になります。
恋愛もマーケティングも、感覚だけで進めると見落としが多いもの。定量的な指標は大切です。

◇恋愛例:「LINEの返信率は? 既読スルー率は? 2人きりで会う頻度は?」
 ‥何となく好感触かどうかを数字や回数で捉えてみると、脈アリかどうかがわかりやすい(が、ここまでやるとちょっと怖い…)

◇マーケティング例:「アクセス数、CVR(購入率)、カート離脱率…」
 ‥どの段階で離脱が起きているのかを数値で把握する。例えばフォーム入力中断率なども重要

最適化(具体的な打ち手で成果を高める)

可視化と数値化を経て、最後に打ち手を講じるのが“最適化”。ここでいかにPDCAを回し、継続的に調整していけるかが成果を左右します。

◇恋愛例:「告白のタイミングを計る」「相手の好みに合わせてデートをプランニング」
 ‥相手が求める価値をリサーチし、満足度を高めるアプローチをすることで成功率が上がる

◇マーケティング例:「商品ページの見直し」「限定キャンペーン」「UI/UXの改善」
 ‥ボトルネックがわかったら、その箇所を集中的に改善することでコンバージョン率を引き上げる

ECサイトに当てはめて考えてみよう

さてここまでで「恋愛=マーケティング」が似たものであることが、なんとなく見えてきましたでしょうか。

これらの例を踏まえつつ、EC運用では以下の流れを意識してみてください。

  1. 可視化(売れるルートを分析)
    どの流入経路が多いか?GoogleアナリティクスやSNS分析ツールで把握する。
  1. 数値化(現状を数値で捉える)
    アクセス数、CVR、離脱率を測定。どのステップで顧客が離れているかを客観視する。
  1. 最適化(具体施策の実行)
    広告のコピー変更や商品ページの作り直し、価格調整やキャンペーンの実施など、ボトルネックを埋める打ち手を試す。

これはまさに、「相手(顧客)の求める価値」を探り、アプローチを続けて成功(購入)率を高める恋愛のステップと同じ。

まだデート1回目でフラッシュモブを交えた大胆な告白をしたら成功率はいかほどでしょうか?

いきなり派手な告白(広告投下)をするのではなく、段階を踏んで最適化するのがポイントです。

まとめ:価値を高め、長いお付き合いを目指す

マーケティングは恋愛と同じく、「相手が何を求めているか」を見極め、それを的確に伝え、提供する活動です。

広告やデータ分析はあくまで手段にすぎず、最終的に大切なのは相手(顧客)目線の価値をどう最大化するかという点にあります。

恋愛と同じく、“付き合ってから(購入後)も努力が必要”。

一度購入してもらったお客様に、継続的な価値を感じてもらわなければ、リピート購入やロイヤル化にはつながりません。

本記事でご紹介した「可視化・数値化・最適化」の3ステップを回しながら、自社の商品やサービスが持つ価値をどんどん磨き上げていきましょう。

そうすれば、顧客との長期的な関係構築と安定的な売上アップを同時に実現できるはずです。

合同会社コトウリ:https://kotouri.jp/

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