
Aconcagua(アコンカグア)は登山リュックの直販(D2C)メーカーです。同社のアルゼンチン出身のチーフデザイナーであるダミアンセガールさんは初めて日本に訪れたとき、自然の豊かさに感動した一方で、登山に適した丈夫なリュックは価格が高く購入できませんでした。そういった経験から生まれたAconcaguaは高品質ながらお客様の声を活かした他のメーカーにはないリュックを低価格で提供しています。今回は、ブランド立ち上げの背景やお客様の声を取り入れた商品開発の方法についてお伺いします。
この記事の目次
高品質・低価格な登山リュックを作るに至った背景
――セガールさんが日本でAconcaguaという登山用リュックブランドを立ち上げた背景をお伺いできますか?
セガールさん:1996年に初めて日本に来たとき、私はバックパッカーとして世界中を旅していました。アルゼンチンに住んでいた頃に私が抱いていた日本のイメージは、テクノロジーやITが強かったです。実際は、山が多く、海に囲まれた自然いっぱいの美しさがあり、心を打たれました。
しかし、日本は山が多く、登山する人も少なくはないはずなのに、登山用の大きなリュックは高いものばかりで、当時の私は買うことができなかったのです。安いものを買ったものの、すぐに壊れてしまい、丈夫で良い素材や部品を使った値の張らないリュックを作ろうと思いました。

工場との直接交渉で価格を抑え品質を上げる
――高機能な商品であれば、価格も機能に応じて高くなるかと思います。価格を抑えて販売するために、どのような工夫をしているのでしょうか。
セガールさん:元々、有名ブランドの工場が多いベトナムでリュックの買付をしていたのですが、真贋の見極めが難しく諦めてしまいました。また、弊社の規模は小さすぎたため、ブランドの正規輸入を行うにも難しい状況でした。しかし、ちょうど同じ頃に、ベトナムでオリジナルのリュックを販売している方(Ngaさん)に出会ったのです。Ngaさんとの出会いをきっかけに、2001年頃からAconcaguaのオリジナルリュックを作ることになりました。
ジッパーやバックルのような低品質だと破損しやすい部品はYKKのベトナム工場に直接買い付けに行き、リュックを作る工場へと送っていました。工場では英語を話せる従業員が少なく、Ngaさんにデザインや色を伝えてサンプルの作成や細部の修正をしてもらっていました。
ベトナムの工場で自社生産したリュックを日本で直販していたため、他社メーカーと比較し、価格を抑えて販売できていました。デザインは今販売している登山専門のリュックとは異なりますが、小ロットで生産ができたため、色のバリエーションが豊富で多くのファンが付いていました。しかし、Ngaさんが定年を迎えて仕事を辞めたことで、ベトナムの工場で商品の生産ができなくなってしまいます。

有名メーカーの生産工場とつながるAconcagua
――海外の工場で生産し、日本で直販を行うことで中間コストを抑え、販売できていることがわかりました。Ngaさんとの取引がなくなったことで、今のAconcaguaはどういった形で生産しているのでしょうか?
セガールさん:Ngaさんと取引をしていた頃から事業拡大を考えていたため、より質の高い商品を作れる企業を探してドイツのアウトドア用品の展示会に赴きました。そこで、台湾のメーカーさんと知り合います。リュックの生地を作るところから自社で行っていて、ヨーロッパを中心にロットの大きいブランドの商品を手掛けているメーカーさんです。
展示会に来ていたそのメーカーの社長さんと私が、お互いスペイン語を話せることで話が盛り上がり、規模の小さい弊社の登山用リュックを生産してもらえることになりました。それから今でもお付き合いを続けています。
商品開発や改良の際は私が直接中国の工場に伺って、工場のデザイン担当の方とお話をします。新商品の開発や、お客様の声を取り入れて商品を改良する際に、どんなパーツを活用し、いくらのコストなら実現できるのか話を詰めていくのです。打ち合わせの後、サンプルが仕上がったら送っていただき、細かい修正点などを伝えた上、中国やバングラデシュにある生産ラインに乗せていきます。
ECモールのレビューを商品に反映
――元バックパッカーとしてのフットワークの軽さと、複数言語を操るセガールさんの力があったからこそ、Aconcaguaが愛されるリュックブランドとして10年以上続いているように思います。商品を改良する上で、お客様の声を反映させているとのことですが、どういった形で意見を取り入れているのでしょうか。
セガールさん:お客様からのレビューは楽天市場のレビュー機能から意見を吸い上げることが多いです。レビューを記入いただいたお客様には小さいバッグやサコッシュをプレゼントとしてお送りしています。レビューキャンペーンは商品ページ内には記載せず、商品にお知らせを同梱してお送りしています。この取り組みにより、実施前3~4%ほどだったレビューの記入率が15%ほどに向上しました。また、ネガティブなお声については、特に施策を行わなくともレビューやお電話でお声をいただけます。そういったお客様からの声を集めて、商品に活かすようにしています。

セガールさん:特に具体的な使用感はお客様の体格や荷物の量によって異なります。ご意見を詳しく頂戴することで商品開発へと活かして、Aconcagua独自の使いやすい登山用リュックをお客様に提供できているのです。
例えば、ウエストベルトが短いという方もいれば長いという方もいらっしゃいます。それ以外にも多数ご意見いただくので、できるだけ意見を採用できるように試行錯誤しながら、再生産のタイミングで工場と打ち合わせを行っています。
特定の基準を持たせずに、お客様からのご意見はできるだけ商品に反映しようと努力しています。ただし、より多くのお客様にとって快適に使っていただくことが大切ですので、非常に体格が良い方や、かなり細身の方ですと、ご要望に添えない場合もあります。お客様のフィット感によって適切なサイズ感は異なりますが、できるだけ購入後にご期待とのズレを少なく使っていただけるように、ウエストベルトの最大、最小サイズを表記しています。

お客様の声を活かし進化し続けるAconcaguaの登山リュック
――商品の改良にはお客様の生の声が欠かせません。楽天市場のレビュー機能をうまく活用して、商品をどんどん良いものへと進化させているのですね。最後にAconcaguaの今後のお話についてお伺いできますか?
セガールさん:先日アウトドア業界で有名なライターの方にAconcaguaのリュックを背負っていただきました。専門的な方に商品の改善点を含めたレビューをしていただき、少々がっかりした点もありましたが、新しい改善点が見えました。次回の再生産のタイミングでより良い商品にできる兆しが見えたので非常に感謝しています。
元々バックパッカーの私と妻の2人で始めたブランドです。私も登山は好きですが、登山を愛する方々にもっと使っていただいて、色々な声を聞かせてもらえると嬉しいです。
インタビューを通して:顧客志向の対話を10年以上続けるAconcagua
絶えずお客様の声に耳を傾けながら、商品の改良を重ねるAconcaguaは1,000件近くあるレビューは総合評価で4.86と高い水準を保っています。レビューへの返答率も高く、お客様を大切にしている姿がサイト内からも感じられます。
また、Aconcaguaが価格を抑えている理由として、生産発注から輸入の手続き、荷受けコンテナの手配や受け取り、荷下ろしまで全ての工程を自社で行っています。外部に委託することで負担を減らせる業務を少人数で内製化することでお客様に価格で還元できていることが伺えます。
安定した品質で価格が高くないため、ボーイスカウトや山岳部など登山を愛する団体からまとまった注文を受けることも少なくありません。また、最近は香港の若い世代の間で人気が出始め、海外販売も始めています。登山用のリュックを検討している方は、登山愛好家の中で徐々に浸透しているAconcaguaのリュックを候補に入れてみてはいかがでしょうか。
■登山リュック アコンカグア
楽天市場店
https://www.rakuten.ne.jp/gold/aconcagua/
公式店
https://shop.aconcagua.jp/
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