【海外ニュース】TikTok Shopの浸透、Amazonの追加料金、欧州ECの成長と課題が交錯

欧州EC市場では、ソーシャルコマースの浸透、越境物流コストの上昇、格安プラットフォームの拡大、そして購買体験上の課題が同時進行で浮かび上がっています。今回は、ドイツで利用が広がるTikTok Shop、Amazonの出店者向け追加料金など、4つのニュースから、欧州ECの現在地を整理します。

TikTok Shop、ドイツで定着が進む SNS発の販売チャネルが存在感

購入経験者は15%に到達、短期間で有力チャネルへ

TikTok Shopはドイツでの立ち上がりから約1年で、消費者の間に着実に浸透してきました。調査によると、ドイツ国内における普段オンラインで買い物をする人のうち15%が少なくとも一度はTikTok Shopで購入した経験を持っています。立ち上がり直後は認知先行の印象もありましたが、その後は購入者比率が伸びただけでなく、購入頻度と平均注文額も上昇しており、一過性の話題で終わっていないことが見て取れます。

特に印象的なのは、TikTok Shopがドイツ市場で売上規模ベースのオンライン小売ランキング15位にまで浮上している点です。ドイツは欧州の中でもEC基盤が成熟した市場の一つであり、そこでSNS由来の購買チャネルが一定のポジションを築いた意味は小さくありません。クリスマス商戦での利用も伸びたとされており、消費者の行動の中に「SNSで見つけ、そのまま買う」という流れが入り込み始めたといえそうです。

ファッション中心ながら、家電や住関連にも広がる構成

TikTok Shopというと、若年層向けファッションやコスメが主力という印象を持たれがちですが、ドイツでは売上カテゴリの裾野が広がっています。売上構成ではファッションが17%でトップを占める一方、コンピューター・家電が16%、ホーム・家庭用品が14%と続いています。衝動買いしやすい商材だけでなく、比較検討を伴うカテゴリでも利用が進んでいることは見逃せません。

また、利用者層にも特徴があります。売上の最大シェアはGeneration X、つまり1960~1979年生まれの層が占めており、一般的なイメージほど若年層偏重ではありません。女性のほうが購入頻度や1回当たりの支出でやや強い一方、総支出では男女差は大きくなく、幅広い層に利用が広がっている様子がうかがえます。SNS発の販売チャネルが、エンタメ消費ではなく日常的な買い物接点として機能し始めていることを示す動きです。

SNS発の販路を“話題化”で終わらせない運用設計が重要に

日本でもTikTokを販促に活用する企業は増えていますが、ドイツの事例から見えてくるのは、動画で話題をつくる段階から、購入完結までを一気通貫で設計する段階に進んでいることです。重要なのは、再生回数や反応数だけではなく、商品ページへの導線、ライブや投稿内での訴求、在庫や配送体制まで含めた設計です。

また、TikTok Shopを若者向けの限定的な販路と捉えると、機会を狭める可能性があります。ドイツでは中年層も売上を支えており、カテゴリも広がっています。日本企業にとっても、ファッションやコスメだけでなく、家電、生活雑貨、日用品などまで視野を広げ、既存モールや自社ECとの役割分担を整理することが重要になりそうです。

参照:TikTok Shop gains traction in Germany

Amazon、欧州出店者に物流関連の追加料金 コスト転嫁の波が強まる

FBA・MCFに1.5%上乗せ、燃料費と物流費の高騰が背景

Amazonは欧州の販売事業者に対し、燃料費と物流費の上昇を理由とした追加料金を導入すると案内しました。FBAでは4月17日から、ドイツ、英国、フランス、イタリア、スペイン、ポーランド、スウェーデン、オランダ、アイルランド、ベルギーの10か国で、配送費に対して1.5%の追加料金が上乗せされます。さらにMCF(マルチチャネルフルフィルメント)でも5月2日から、主要5か国で同様の措置が取られる予定です。

ここで押さえたいのは、追加料金が商品価格ではなく配送費に対して課される点です。Amazonによると、EU域内のFBA配送では平均で1商品あたり5ユーロセント程度の増加になるとのことです。一見すると小幅にも見えますが、利益率の低い商材や、サイズが大きく配送費の重い商品群では採算への影響は無視できません。とりわけ複数国に跨って販売しているセラーほど、じわじわと効いてくるコスト増といえるでしょう。

一時的措置でも、収益管理の厳しさは増す

Amazonは今回の追加料金について、これまで自社で吸収していたコストの一部を回収するための措置だと説明しています。また、他の大手配送事業者と比べると低い水準だとも強調しています。ただし、出店者の立場から見れば、プラットフォーム側が外部コストを出店者負担へ移し始めた動きと受け止めるのが自然でしょう。年末商戦時の一時的な料金上乗せは従来もありましたが、今回は繁忙期ではなく、地政学リスクや燃料高といった外部要因が背景にあります。

なお、米国とカナダでは3.5%の追加料金が導入される予定で、欧州より高い水準が示されています。今後の情勢次第では、欧州でも料金見直しの可能性は否定できません。出店者としては、広告費や手数料だけでなく、配送費や保管費まで含めたSKU単位の収益性を見直す必要が出てきます。これまで売れていたから残していた商品が、実は利益を圧迫していたというケースも増えそうです。

物流費上昇局面ではSKU別の採算管理が競争力を左右する

日本のEC事業者にとっても、欧州Amazonの今回の動きは参考になります。越境ECに取り組む企業はもちろん、国内中心の事業者にとっても、モール側が外部コストをどう手数料体系へ反映させるかを考える材料になります。特に物流費の上昇局面では、値上げ判断だけでなく、梱包サイズの見直し、同梱率向上、販売SKU整理など、運用面で吸収できる余地を確認することが重要です。

また、FBA依存が強いほど、料金改定の影響を直接受けやすくなります。自社ECや他モールとの販路分散、商品特性に応じたフルフィルメント手段の使い分けといった視点も必要です。小さな上乗せでも、件数が積み上がると利益を確実に削るため、コスト管理の粒度を一段上げる必要があるでしょう。

参照:Amazon introduces transport surcharge for partners

Temu、スペインとイタリアで急拡大 南欧で存在感を強める

EUの月間利用者は1億2,970万人、半年で1,400万人増

Temuは2025年後半、EU域内で月間平均1億2,970万人の利用者を獲得しました。前半の1億1,570万人から約1,400万人増え、伸び率は12.1%となっています。前回報告期間の12.5%増に近い水準を維持しており、欧州での成長ペースが依然として高いことがわかります。活動開始からまだ3年に満たないプラットフォームが、これだけの規模に達している点はインパクトがあります。

同じ中国系プラットフォームのSheinも欧州で利用者を増やしていますが、直近の伸び率は6.9%にとどまり、Temuのほうが成長速度では上回っています。一方で、月間利用者数そのものはSheinのほうが多く、競争はなお継続中です。爆発的拡大の初期局面は過ぎたとしても、Temuが欧州各国で新規利用者を継続的に獲得していることは確かです。

スペインとイタリアで伸長、ドイツは最大市場を維持

Temuの成長が特に目立ったのが南欧です。スペインでは月間利用者が210万人増えて1,470万人となり、伸び率は17%に達しました。イタリアでも200万人増の1,490万人となり、16%増と高い伸びを示しています。ハンガリーやスロバキアなど一部の小規模市場ではさらに高い伸び率も見られましたが、ボリュームの大きさではスペインとイタリアの拡大が目立ちます。

一方で、ドイツは引き続きTemuにとって欧州最大市場です。月間利用者は2,090万人で、増加率は8.3%でした。ドイツではAmazonの支配力が強い一方、調査ではTemuを一度でも利用したことのある消費者が38%に達しており、SheinやAliExpressを上回る存在感を示しています。品質や安全性への懸念が指摘され続けるなかでも、価格訴求を武器に利用者を広げている点が特徴です。

低価格競争に巻き込まれない差別化軸の再設計が必要

Temuの拡大は、価格競争の激化だけで片づけられないテーマです。消費者が必ずしも品質面の懸念だけで購買を避けるわけではなく、価格、品揃え、アプリ体験、発見性が揃えば利用が拡大することを示しています。日本のEC事業者にとっては、単純な値下げでは対抗しにくく、商品情報の信頼性、配送品質、ブランド体験、アフターサービスなど、価格以外で選ばれる理由をどう作るかが一段と重要になります。

また、南欧で伸びている背景には、価格感度の高い市場特性だけでなく、モバイル起点の発見型購買との親和性もあると考えられます。日本市場でも、価格訴求型プラットフォームの台頭を前提に、既存事業者は「どこで勝つか」をより明確にする必要がありそうです。

参照:Temu grows rapidly in Spain and Italy

EUのオンライン購買、35.4%がトラブル経験 成熟市場でも課題は残る

最も多い不満は配送遅延、国別では5か国が50%超

EUでは、定期的にオンラインで買い物をする人の35.4%が、2025年に何らかの問題を経験したと報告されています。2023年の33.1%から上昇しており、オンライン購買の普及が進む一方で、体験上の課題も増えていることがわかります。問題を経験した割合が50%を超えたのは、マルタ、オランダ、ルクセンブルク、ハンガリー、スペインの5か国でした。EU加盟国ではないノルウェーは67%とさらに高い割合を示しています。

興味深いのは、EC成熟国ほど問題が少ないわけではない点です。むしろ利用頻度の高さや消費者の期待値の高さが、不満として表面化しやすい可能性があります。逆に、問題経験が最も少なかったのはポルトガル、ギリシャ、ラトビアでした。単純に市場が成熟すれば満足度が上がるという話ではなく、利用機会の増加とともに運用品質が問われていると考えるべきでしょう。

サイトの使いにくさや誤配送もなお大きな不満に

問題の中で最も多かったのは、予定より配送が遅いことでした。5人に1人が配送遅延を経験したとされており、物流品質が依然としてEC体験の根幹であることを示しています。次いで多かったのが、サイトやアプリが複雑、あるいはうまく機能しないといったUI・UX上の問題で12%、その次が誤配送や破損商品などで10%超でした。

同時に、EU市民の78%が2025年に何らかの商品をオンライン購入しており、EC利用そのものは着実に広がっています。東欧では近年特にオンライン購買の普及が進んでいるとされ、利用者基盤は拡大しています。市場が広がるほど、配送、サイト体験、カスタマーサポートといった基盤品質の差が、競争力に直結する局面に入っているといえるでしょう。

集客強化以上に“買いやすさ”と運用品質の改善が重要に

日本のEC事業者にとって、このニュースは非常に示唆的です。価格や集客施策に目が向きがちですが、実際には配送遅延、わかりにくいサイト設計、誤配送や破損といった基本品質が、継続購入を左右します。新規獲得コストが上がるなかでは、離脱や不満を防ぐ改善のほうが費用対効果の高いケースも少なくありません。

特にサイトの使いにくさが上位要因に入っている点は重要です。商品検索、絞り込み、配送表示、返品条件、決済までの導線など、日々見慣れている画面ほど社内では問題に気づきにくくなります。日本企業も、CVR改善だけでなく、顧客がどこで不安やストレスを感じるかを改めて棚卸しする必要があるでしょう。

参照:35% of EU online shoppers report problems

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