AIはEC制作をどう変えるのか「バイブコーディング × EC」で起きる構造変化

株式会社インクワイアリーの後藤です。

ここ数年、AIの進化は非常に速いスピードで進んでいます。数年単位ではなく、数か月単位で新しい技術やサービスが登場しており、業界としてもその変化を追い続けること自体が難しくなってきていると感じています。

EC業界においてもAIの影響は確実に広がり始めており、サイト制作や運営のあり方にも変化が生まれています。

先日、弊社ではコーポレートサイトを約5年ぶりにリニューアルしました。デザインや構成の刷新はもちろんですが、今回の構築では初めてClaude Codeを活用した「バイブコーディング」をベースに制作を行いました。

Web制作出身の私にとって、AIとの対話だけでコードが生成され、実装が進んでいく体験は非常に衝撃的でした。同時に、この技術がEC業界にも大きな影響を与える可能性を強く感じています。

本記事では、「バイブコーディング × EC」という視点から、AI時代にEC制作やEC運営がどのように変化していくのかを整理してみたいと思います。

この記事の執筆者

後藤 淳
株式会社インクワイアリー

福島県いわき市出身、2010年から制作会社やEC事業会社、計5社に従事。これまでにWebデザイナー・コーダーとして幅広い業種を経験。EC事業会社では制作以外にショップ運営を担当。2012年福岡県へ移住。
2015年にINQUIRYを立ち上げ独立。その後法人化、株式会社インクワイアリーを設立。
事業はECサイト案件を中心にコンセプト設計・デザイン・コーディング・コンサルティング・撮影などを行っている。

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バイブコーディングとは?

バイブコーディングとは、AIと対話しながらコードを生成する新しい開発スタイルです。

従来の開発では、詳細な仕様書を作成し、その仕様に基づいてエンジニアがコードを書いていくのが一般的でした。しかしバイブコーディングでは、AIに対して「雰囲気(vibe)」や目的を伝えながら、会話形式でコードを生成していきます。

2024〜2025年頃から

- ChatGPT
- Claude
- Cursor

といったAIツールの普及により、この開発スタイルが広く認知されるようになりました。

簡単に言えば、「仕様を細かく書くのではなく、意図を伝えることでAIがコードを生成する開発方法」です。

これにより、Web制作やシステム開発のプロセスそのものが変わり始めています。

AIによってECサイト構築のプロセスはどう変わるのか

従来のECサイト制作では、以下のような流れが一般的でした。

- 要件整理・戦略設計
- サイトマップ作成
- ワイヤーフレーム作成
- デザイン制作
- コーディング
- システム実装
- 商品登録
- テスト・チェック・修正

しかし現在は、AIの進化によってこのプロセスが大きく変わりつつあります。

例えばデザインデータ(画像)をAIに読み込ませることで、HTMLのマークアップが自動生成され、そのままCSSやJavaScriptまで実装できてしまうケースも増えています。

従来は「デザイナー → コーダー → テスト」という工程が必要でしたが、現在は「ECディレクター → AI → 修正」という形で制作が進むケースも増えてきました。

つまり、ECサイト制作における業務の重心は「作ること」から「設計すること」へと移り始めていると言えるでしょう。

バイブコーディングは単なる開発手法の変化ではなく、EC制作の役割そのものを変える可能性を持った技術だと考えています。

自社ECにおけるバイブコーディング活用の可能性

自社ECにおいては、バイブコーディングの恩恵は特に大きいと感じています。

例えば、Shopifyやmakeshopでは、商品特集ページやキャンペーンページなど、期間限定のコンテンツを制作する機会が多くあります。

弊社でも先日、限定特集ページをデザイン工程を挟まず、バイブコーディングだけで制作しました。AIとの対話をベースに、約10分程度でレスポンシブ対応のページをShopifyの固定ページ内に再現することができました。

また、蓄積型のコンテンツであるブログ記事も同様です。

今後は従来の検索エンジンだけでなく、AI検索からの流入も重要になっていくと考えられます。自社ECにとってコンテンツマーケティングの重要性はさらに高まるでしょう。

その意味でも、ページ制作の効率化はEC運営にとって大きな武器になります。

モールECではAI活用のポイントが変わる

モールECでは、コーディングの必要性が以前より大きく減少しています。

例えば楽天市場では、トップページ(Goldサーバー)が廃止され、テンプレート化が進みました。現在はRMS(管理画面)内でページ更新が可能になり、専門的なコーディング技術が不要な場面も増えています。

また、特集ページについても「コンテンツページ」という新しい機能が登場し、RMS内で完結できるようになりました。SEO面でも優位性があるため、従来のHTML制作ページを利用する機会は減少しています。

一方で、Yahoo!ショッピングではトリプルサーバーを活用した自由度の高いページ制作が可能なため、現時点ではまだバイブコーディングの活用余地が残っています。

ただしモールECでは、「SEO・商品説明・構成作成・商品登録の最適化・データ分析」など、今後は制作よりも運用領域でAI活用が進む可能性が高いと考えています。

バイブコーディングでEC運営のスピードは大きく変わる

AIによる最大の恩恵は、制作スピードの圧倒的な向上です。

従来は

企画 → デザイン → コーディング → 調整

という工程が必要でしたが、

構成 → AI生成 → 修正

という形に変化しています。

特にランディングページ(LP)はAIとの相性が非常に良い領域です。

- 商品LP
- キャンペーンページ
- 特集ページ

といったコンテンツを、これまでよりも圧倒的に短時間で制作できるようになります。

Shopify時代とAIが変える「ECサイトを制作する会社」の役割

近年、自社ECの分野ではShopifyが急速に普及しました。そこにAIによるバイブコーディングが加わることで、ECサイト制作のあり方はさらに変化しています。

かつてECサイトを制作する会社の役割は、「デザイン制作」「コーディング」「システム開発」といった制作業務が中心でした。

しかし現在は、SaaS型ECプラットフォームの普及により、ECサイトの基盤部分はすでに整備されています。さらにAIの登場によって、コード生成やページ制作の多くが自動化されつつあります。

その結果、ECサイトを制作する会社の役割は「サイトを作る会社」から「ECを成長させるパートナー」へと変化しつつあります。

また、AIの活用によって、ECサイト制作にかかる時間やコストも変化していく可能性があります。

これまでECサイト構築では、デザインやシステム開発などの制作費用に多くの予算を投下するケースが一般的でした。しかしAIの活用により制作効率が上がることで、制作にかかるコスト構造も変わっていくと考えられます。

その結果、これまで制作費に集中していた予算を

- 広告
- コンテンツマーケティング
- ブランディング
- EC運用改善

といった領域へ再配分できる可能性も広がります。

これはEC事業者にとって、売上に直結する領域へ投資を集中できるという意味でも大きなメリットになるでしょう。

ECサイトを制作する会社にとっても、単なる制作業務ではなく、EC事業全体の成長を支援するパートナーとしての役割がより重要になっていくと考えています。

ECクリエイティブは「量産と改善」の時代へ

バイブコーディングの普及により、ECクリエイティブ制作のスピードは大きく変わっています。

これまでLPや特集ページは、企画・デザイン・コーディングという工程を経る必要がありました。しかしAIを活用することで、短時間で複数のクリエイティブを制作することが可能になります。

ECの本質は「改善速度」にあります。

クリエイティブを量産し、テストを繰り返すことで売上は伸びていきます。AIは単なる制作ツールではなく、ECの改善サイクルを高速化するツールとして機能し始めています。

AI時代のECの本質

AIやバイブコーディングの進化により、ECサイト制作のハードルは確実に下がっています。しかし、ECの本質そのものが変わるわけではありません。

商品力、価格競争力、ブランドの信頼性、そして継続的な改善。これらはこれまでもECの成功を左右してきた要素です。

むしろAIによって制作のハードルが下がることで、より本質的な競争が加速していくと考えられます。

今後EC運営において重要になるのは、「どれだけ早く改善サイクルを回せるか」という点です。AIは制作を代替するツールではなく、ECの改善サイクルを高速化するための強力なパートナーと言えるでしょう。

AIの進化によってEC業界も新しいフェーズへと入っています。私たちもAI技術を積極的に取り入れながら、クライアントの商品やブランドの価値を最大限に引き出し、ECの成長を支援していきたいと考えています。

株式会社インクワイアリー
https://inquiry-inc.jp/

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