
アインホールディングス株式会社(以下、アインホールディングス)は、2025年3月18日に中長期ビジョン「Ambitious Goals 2034」を発表しました。同ビジョンでは、2034年4月期に売上高1兆円の達成を目指し、ファーマシー事業とリテール事業の両輪による成長戦略を示しています。
この記事では、発表資料に基づき、アインホールディングスの成長戦略と具体的な施策について整理します。
この記事の目次
売上1兆円、ROE15%達成に向けた道筋

アインホールディングスは、2024年4月期見込みの売上高約4,000億円から、10年後に1兆円まで引き上げる方針を掲げました。売上構成比は、ファーマシー事業で7,000億円、リテール事業・その他事業が3,000億円となる見通しです。
資本効率にも注力しており、ROE(自己資本利益率)は2030年4月期に13%、2034年4月期には15%への到達を目標としています。売上拡大と収益性向上の両立を通じて、持続的な企業価値向上を図る考えです。
ファーマシー事業:トップライン拡大と薬局運営の再構築

ファーマシー事業では、「規模と効率化で持続可能な次世代薬局の創出」を掲げています。
オーガニック出店とM&Aによる成長戦略
成長戦略の柱となるのは、既存店舗の成長に加えたオーガニック出店とM&Aの積極推進です。地域別にターゲット案件を設定しており、関東・北関東エリアでは約470案件、関西エリアでは約120案件を見込んでいます。
売上規模2億円以上の薬局を中心に、収益貢献が見込める案件を厳選し、積極的な店舗展開を推進する方針です。市場の寡占化進行や後継者不在の動きも踏まえ、柔軟に戦略を調整していく構えとなっています。
DX推進による薬局オペレーション改革
薬局運営においては、DXによる抜本的改革を推進します。公式アプリによる処方箋事前送信機能、AI薬歴支援システム、自動調剤機器の開発など、多方面からオペレーション効率を高める施策を展開します。患者サービス向上と薬剤師・医療事務スタッフの生産性向上を両立させる狙いです。
具体的な指標として、1店舗あたりの処方箋処理枚数を現在の21枚から30枚へ引き上げることを目標に掲げています。また、新卒薬剤師の採用力維持と、薬局業務の効率化施策を組み合わせることで、売上成長に対応した人材確保体制の構築を進めます。
リテール事業:ブランドシナジーと拡大戦略

リテール事業では、「洗練された価値を発信するコンセプトストアの追求」を掲げ、第二の主力事業としての成長を目指しています。
アインズ&トルペとFrancfrancの強みを融合
アインズ&トルペは、ドラッグストア市場が食品強化型にシフトするなか、ビューティケアに特化したポジションを確立しています。Francfrancは、デザイン性と機能性を両立した家具・雑貨市場において、20代〜30代女性を中心とした層から高い支持を受けています。
両ブランドは、主要都市駅ビル・商業施設内への出店が中心で、立地面でも親和性が高いことが特徴です。今後は、店舗共同開発やブランド間送客施策を拡充し、グループシナジーを本格的に発揮していきます。目標としては、売上総利益率を現在の37.6%から50%へと大幅に引き上げることを掲げています。
オーガニック出店とM&Aによる成長加速
リテール事業単体でも、積極的なオーガニック出店を計画しています。関東を中心に230件以上の出店候補案件をリストアップし、出店ペースを加速する方針です。
また、アインズ&トルペやFrancfrancと親和性の高い別業態企業とのM&Aも検討しており、単なる規模拡大ではなく、「独自ポジション強化」と「市場拡張」を同時に目指しています。人材確保においては、各ブランドのファン層を基盤とした採用戦略と、DX推進による店舗業務効率化を組み合わせ、規模拡大に耐えうる組織体制の構築を進めるとのことです。
財務・資本政策:成長投資と株主還元の両立
財務面では、成長投資と株主還元のバランスを重視しています。
営業キャッシュフローは、
- 2025年4月期から2030年4月期までの累計で約2,300億円
- 2034年4月期までの累計で約4,800億円
を創出する計画です。
この資金をもとに、出店・M&A・DX投資・財務基盤強化・株主還元に適切に配分していきます。特に株主還元については、自己株式取得や増配を積極的に実施しながら、資本効率の向上を目指していくと発表されました。
ROEは、
- 2030年4月期に13%
- 2034年4月期に15%
を目標とし、売上高純利益率・総資産回転率の維持、財務レバレッジの最適運用を通じて、持続的な企業価値向上に取り組んでいくとのことです。
まとめ
アインホールディングスの「Ambitious Goals 2034」は、ファーマシー事業とリテール事業の二軸を基盤に、持続的な成長と資本効率向上の両立を目指すビジョンです。調剤市場の高度化、ドラッグストア市場の変化、家具・雑貨市場の競争環境といった外部環境にも適応しながら、着実に次の成長ステージを築こうとしています。
今後も、出店・M&A戦略の進展、DX施策の効果、ブランド間シナジーの発揮状況などに注目しながら、アインホールディングスの歩みを追っていきたいところです。
あわせて読みたい