SNS投稿の広告活用の可能性と未来
この記事の執筆者

野嶋 友博
株式会社オプト

2015年新卒でオプトへ入社。SNSを中心とした広告運用に携わり、幅広い業種のクライアントを担当した後、2021年よりEC・教育・人材業界を専門とするアカウントプランニング組織に異動し、十社十色のマーケティング施策創出に向け日々邁進中。LINEマーケティングサービスの認定講師「LINE Frontliner」資格を保持。

株式会社オプト
https://www.opt.ne.jp/

広告プラットフォームの進化を見据える

2023年7月にMeta社がリリースしたテキスト共有型のSNS「Threads(スレッズ)」は、あっという間に世界中で注目を集めました。それから約1年半が経った2025年1月末現在、「Threads内で広告のテスト配信を日本で開始予定」というアナウンスが行われています。

SNSの広告ビジネスは、まずオーガニック(=無償のユーザー向け運用)によってユーザー基盤を築き、その後に広告枠を設置して収益化を図るという流れが典型的です。たとえば今回のThreadsも、

  1. オーガニック機能(初期搭載の「ユーザー間の交流や情報発信」)を先行導入
  2. ユーザー数が増え、媒体としての広告枠の価値が高まる
  3. 広告枠開放を行い、本格的にマネタイズへ

というステップを踏んでいます。

このパターンはMetaだけにとどまらず、YouTubeやLINE、TikTokなど、あらゆるプラットフォームに共通する“進化”の道筋だといえるでしょう。本記事では、この「オーガニックと広告の関係性」にフォーカスし、特に、Instagram広告での成功事例を交えながら、広告成果を高めるうえでの重要なポイントを紐解いていきます。

オーガニック投稿と広告成果の相関性

オーガニック投稿の反応は、広告の“試金石”になる

オーガニック投稿の“反応の良し悪し”が、広告配信の成果に一定の影響を及ぼすのではないか――。これは、SNSに携わるマーケターであれば一度は考えたことがあるテーマではないでしょうか。

SNSプラットフォームの大前提は、「ユーザーファースト」であること。ユーザーに嫌われる広告が氾濫すると、プラットフォーム自体の人気が落ちてしまいます。そのため、各媒体は審査体制を整えたり、過度に不快感を与えるクリエイティブを排除したりといった手立てを講じているのです。

こうした背景を踏まえると、「オーガニック投稿でユーザーから好反応を得ているコンテンツ」は広告としても高いパフォーマンスを発揮する可能性が高いといえます。広告が嫌われやすい理由の多くは、ユーザー体験を阻害する「押しつけがましさ」にありますが、すでにオーガニックで支持を集めているコンテンツは、その“押しつけ感”を緩和しやすいからです。

Instagram広告のアルゴリズムが示すエンゲージメント重視の流れ

運用型広告の一般的な評価指標:CTR×CVR

運用型広告では、広告クリエイティブやターゲット設定をシステムが自動的に評価し、よりパフォーマンスの高い組み合わせを優先的に配信していきます。その代表的な評価指標が以下の2つです。

  • CTR(Click Through Rate):広告が表示されたときにクリックされる割合
  • CVR(Conversion Rate):クリック後に商品購入や会員登録など、最終的な成果につながる割合

CTRが高い = ユーザーの興味・関心を惹いている
CVRが高い = しっかりと広告の目的を達成している

この2つの指標を掛け合わせて、広告枠での“優先度”や“露出量”が決定されます。

Instagram独自の指標:エンゲージメント

Instagramが他プラットフォームと異なるのは上述したCTRやCVRに加えて、「エンゲージメント」という独自指標を広告配信アルゴリズムに組み込んでいる点です。エンゲージメントには、以下のようなアクションが含まれます。

  • いいね
  • 保存
  • 動画の視聴率
  • コメント
  • プロフィールクリック

CTRやCVRがまだ集まりきらない配信開始直後でも、いいねや動画視聴率、保存数などの反応がよいクリエイティブを「ユーザーから好かれている」とみなし、Instagramのシステムはより多くの露出を与えようとする傾向があります。つまり、「オーガニック要素の評価が高い広告ほど、メディアからも優遇されやすい」仕組みだといえます。

Instagramリールを活用した動画広告PDCA事例

リール面の在庫急増とチャンスの拡大

Instagram広告といえば、フィードとストーリーズが主戦場でした。しかし、2024年に入ってからは、リール面の広告在庫が急増しています。これは、Instagramのアプリ内で動画投稿がリールタブに集約されるようになったアップデートが大きく影響しています。

企業にとっては、リールを用いた動画広告枠が新たな「伸びしろ」となり得ます。実際、リールは縦型動画で没入感が高く、ユーザーがスワイプ操作で次々とコンテンツを消費するため、クリエイティブが刺されば大きな拡散効果やエンゲージメントを得やすいとされています。

再生数の多いオーガニック動画を広告に流用するメリット

ある企業が実践した成功事例を紹介します。その企業はインスタグラムのリールタブに、自社ブランドをアピールする数本の縦型動画をオーガニック投稿としてアップ。すると、そのうちいくつかの動画は早い段階で高い再生数となり、コメントや保存の数も相対的に多い結果となりました。

そこで、その“選ばれる動画”をそのまま広告クリエイティブとしてリール面へ配信を開始したところ、以下のような成果が得られました。

  • 動画視聴率の向上:すでにユーザーから評価が高かった動画は、配信開始直後から高い視聴率を出した
  • クリック率(CTR)の向上:ユーザーが見続けた動画には興味を示しやすく、タップによるリンククリックが増える
  • CVRの改善:クリエイティブで興味が高まった分、商品ページやLPへ遷移後の離脱が減り、最終的な成果につながりやすい

ここでポイントとなるのが、“オーガニック投稿で小さくテストすることで、ユーザーから受け入れられるコンテンツを創出し、大きく育てる”という考え方です。広告クリエイティブのABテストを最初から回すのも大事ですが、Instagramのアルゴリズムを最大限活かすため、オーガニック投稿でユーザーの反応を確認してから広告化するほうが、時間もコストも効率的といえます。

これからのSNS広告運用に求められる姿勢

Threadsをはじめ、今後も各プラットフォームでは「オーガニックファースト → 広告導入」という流れが続くでしょう。そこで重要になるのは、オーガニック投稿と広告配信を“別物”として切り離すのではなく、“一連の流れ”として考える姿勢です。

  1. オーガニック投稿で“ユーザー評価”を可視化
    ユーザーが自然に反応を示したコンテンツをピックアップし、改善点や魅力を分析する

  2. 評価の高い投稿を広告素材に調整
    CTRやCVRを高めるための訴求要素を加えつつ、オリジナルの良さも失わないようにする

  3. 広告配信をスタートし、成果を継続的にモニタリング
    クリックやCVだけでなく、エンゲージメント指標を全体的にチェックし、メディア内評価を高める運用を目指す

  4. 結果を再度オーガニック投稿へフィードバック
    広告での学びを活かして、より強いオーガニック投稿を作り上げ、次の“選ばれるコンテンツ”を生み出す

オーガニック投稿を入り口とした広告展開は、クリエイティブによる広告効果が低減するリスクを軽減し、広告コストのムダを削減するだけでなく、プラットフォームからの評価を得てより広範囲にリーチする効果も期待できます。SNS運用においては、この“オーガニック投稿と広告の相乗効果”を常に意識しながら、柔軟にPDCAを回していきましょう。

株式会社オプト
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