オンラインショッピングにおける送料に関するアンケート
この記事の執筆者

株式会社TOKYO GATE

株式会社TOKYOGATEは多くの過去実績を保有するECのプロフェッショナルが集うECマーケティングの専門家集団です。マーケティング戦略の立案から施策の実行、PDCAまでを総合的に支援します。

成功事例に基づいた確実性の高いコンサルティングが特徴で、提案した施策を速やかに実行できる体制を整えています。EC・D2Cに関してお悩みの方はお気軽にご連絡ください。

▼お問い合わせはこちら
https://tokyogate.co.jp

はじめに

オンラインショッピングは、消費者にとって便利な購買手段として広く浸透しています。その一方で、「送料」は追加コストとして認識され、消費者の購買決定に大きな影響を与える要素となっています。

特に、送料無料が一般化しつつある現在、消費者の送料に対する意識は一層厳しくなっており、多くのEC事業者がこの課題に直面しています。

送料が購買行動に与える影響を正しく理解し、適切な施策を講じることは、購入率の向上やカート離脱の防止につながる重要なポイントです。

しかし、送料無料以外の施策や、最適な送料無料ラインを設定できていないと感じているEC事業者も少なくありません。

本調査では、オンラインショッピングにおける送料の影響についてアンケートを実施し、消費者が送料をどのように捉え、どのような状況で購入をためらうのかを分析しました。

適切な送料設定を行う上で、ECサイト責任者やマーケティング担当者にご活用いただける内容となっております。貴社のマーケティング活動にぜひお役立てください。

サマリー

  1. オンラインショップで購入経験のあるユーザーの約96%が、送料を理由に購入をやめた経験があります。
  1. 送料が原因で購入をやめた理由は、「送料の割合が高い」「他のショップより送料が高い」「送料無料条件に達しない」の3つに大きく分類されます。
  1. ファッション、食品、日用品の購入において、送料が理由で購入をやめた経験があるユーザーは、全体の約40%を占めます。
  1. 低価格帯の商品や購入頻度の高い商品では、特に送料の割合が重要視される傾向があります。
  1. 5,000円未満の商品購入時に、送料を気にしないと回答したユーザーはわずか1%にとどまりました。
  1. 10,000円以上の商品では、約40%のユーザーが送料無料を希望しています。
  1. 商品価格が高額になるほど、送料無料を希望するユーザーと、一定の送料を許容するユーザーが二極化する傾向があります。
  1. 男女ともに、送料が高いと感じた際に即購入する割合は非常に低く、購入を再検討するという行動に性別による差は見られません。
  1. 「そのショップでしか取り扱いがない」という限定性は、男女共通で最も強い送料許容要因となっています。

各設問の回答と考察

1. 送料が原因で購入をやめた経験

送料が原因で購入をやめた経験について調査した結果、オンラインショップで購入経験のあるユーザーの約96%が、送料を理由に購入をやめた経験があることが明らかになりました。

また、当社が2024年4月に実施した「オンラインショッピングの改善要望に関する調査」でも、「送料無料条件の緩和」が最も多く挙げられ、消費者の送料に対する厳しい目が、ECでの商品購入に大きな影響を与えていることが示されています。

商品価格に送料が追加されることで、「損をした」と感じ、購入への心理的な抵抗につながる可能性があります。本来、ECでの購入には実店舗での買い物に比べ、移動時間の削減や利便性の向上といったメリットがあります。しかし、送料が具体的な数値として表示されることで心理的な負担が増し、購入を敬遠する要因となっていると考えられます。

さらに、大手モールで「送料無料」が広く浸透し始めていることが、消費者の基準となり、送料の支払いに対する抵抗感を一層強めている可能性があります。

2. 送料が原因で購入をやめた理由

送料が原因で購入をやめた主な理由を調査した結果、「商品の金額に対する送料の割合が高かった」と回答したユーザーが半数を超え、理由は大きく3つに分類されることがわかりました。

ユーザーは商品を購入する際、商品価格と送料を比較し、送料の割合が高いと購入意欲が大きく低下する傾向があります。 特に低価格商品の場合、「送料が高すぎる」と感じやすく、一部のユーザーは送料無料ラインに達するように購入点数を調整することも明らかになりました。

また、「同じ商品なら送料が安いショップで購入したい」という意識が強く、送料が高いと他のショップを探す行動につながることも示唆されています。

さらに、送料が明確に表示されていなかったことが理由で、購入を見送ったユーザーも一部存在しました。 当社が2023年12月に実施した「オンラインショッピングにおけるカゴ落ちに関する調査」によると、商品をカートに入れた後に送料などの追加費用が発生したために購入をやめたユーザーは全体の51%にのぼり、送料の追加はカゴ落ちの大きな要因となっていることが明らかになっています。

3. 送料が原因で購入をやめた理由(男女別)

男女別に、送料が原因で購入をやめた主な理由を調査した結果、価格に対する送料の割合が高いことを理由に購入を見送ったユーザーは、女性よりも男性のほうが多いことが明らかになりました。 これは、男性のほうが商品価格に対する送料の「割高感」を厳しく判断し、コストパフォーマンスを重視する傾向が強いためと考えられます。

一方で、「他のショップと比較して送料が高かったため購入を見送った」ユーザーは、男性よりも女性のほうが多く、女性のほうが他のショップとの比較を重視し、より安い購入方法を模索する傾向があることがわかりました。 そのため、男性は比較する前に購入を見送る割合が高い可能性があります。

また、送料無料の条件を満たせなかったことを理由に購入を見送ったユーザーの割合も、女性のほうが多い結果となりました。 これは、女性のほうが送料無料条件を満たすために**「ついで買い」を検討する傾向があるためと考えられます。**

総じて、女性は男性に比べ、送料が発生する場合でも他のショップとの比較や送料無料ラインの達成を考慮し、より割安に購入できる方法を模索する傾向があることが示されました。

4. 送料が原因で購入をやめた商品ジャンル

送料が原因で購入をやめた商品ジャンルについて調査した結果、送料の影響を特に受けやすいジャンルと、影響を受けにくいジャンルが明確に分かれることが判明しました。

ファッション、食品、日用品においては、送料を理由に購入を見送った割合が特に高く、全体の約40%を占めます。 これらのジャンルは購入頻度が高く、実店舗での購入が容易であることが影響していると考えられます。さらに、ファッションでは、大手モールや大手メーカーが送料無料で展開しているため、自社ECサイトなどで送料の支払いを求めることが相対的に不利となる可能性があります。

先述の通り、送料の心理的負担は、商品価格に対する送料の割合が大きく影響します。 ファッションや日用品は価格帯が比較的低く、10,000円以上の高額商品になりにくいため、送料の割合が相対的に高くなる傾向があります。一方、パソコンや家具などの高単価商品は、送料が価格に占める割合が小さい、または送料込みの価格設定が可能なため、送料を理由に購入を見送るケースは少ないと考えられます。

5. 送料が原因で購入をやめた商品ジャンル(女性)

女性ユーザーが送料を理由に購入をやめた商品ジャンルについて調査した結果、最も多かったのはファッションで、全体の約半数の女性ユーザーが「送料が理由で購入を見送った経験がある」と回答しました。

化粧品では、送料が理由で購入を見送ったユーザーは全体の31%でした。 一般的に化粧品はサイズが小さく、メール便やネコポスなど、送料を抑えた配送手段が充実しているため、比較的安価な送料が受け入れられている可能性があります。加えて、化粧品はまとめ買いされやすく、送料無料ラインに到達しやすいことも、送料が回避される一因となっていると考えられます。

送料の影響が比較的少ないジャンルとしては、カー・バイク用品やアウトドア用品が挙げられます。 これらのジャンルは、購入頻度や購買層が限られているだけでなく、商品単価が高く、梱包サイズも大きくなりやすいため、送料が比較的許容されやすいと考えられます。

6. 送料が原因で購入をやめた商品ジャンル(男性)

男性ユーザーが送料を理由に購入をやめた商品ジャンルについて調査した結果、34%の男性ユーザーが食料品・日用品において送料を理由に購入を見送った経験があると回答し、上位3つのジャンルは女性と同様に高い割合を示しました。

送料を負担に感じる傾向は男女共通であり、特に低価格帯で購入頻度の高い商品では、送料が割高に感じられやすいと考えられます。

一方で、女性と異なり、ファッションにおいて送料を理由に購入を見送った割合は比較的低い結果となりました。 これは、男性のファッションへの関心や購入頻度が女性に比べて低いことが影響していると考えられます。

購入頻度が低いと、「たまにしか買わないから」といった理由で、送料が許容されやすい可能性があります。

また、男性において割合が高かった「本・ゲーム」などのジャンルは、電子書籍やダウンロード版といった、送料をかけずに商品を入手できる手段があるため、送料への抵抗感が強い可能性があります。

7. 送料に不満を感じたショップの再利用意向

送料に不満を感じたユーザーの再利用意向を調査した結果、送料が不満の要因となった場合、ショップの再利用意向は大幅に低下することが明らかになりました。

競争の激しいEC市場において、送料が購入の障壁となり、他のショップへの流出を招く可能性が高いことが示されています。

ユーザーは商品価格単体ではなく、送料を含めた最終的な支払額を基に購入を判断しており、送料無料の競合サイトがある場合、送料がかかるショップはリピートされにくいと考えられます。

一方で、送料の有無が再利用意向に影響しないと回答したユーザーも一定数存在しました。

こうしたユーザーは、ショップのブランドや商品の品質、または送料を含めても最安値であることに満足している可能性が高く、送料に対するネガティブな印象が軽減されていると考えられます。

8. 送料に不満を感じたショップの再利用意向(男女別)

送料に不満を感じたショップの再利用意向について男女別に集計した結果、男女間で大きな差は見られませんでした。

わずかに差が見られたのは、「送料に不満を感じた経験がない」と回答したユーザーの割合で、男性のほうが女性を上回る結果となりました。一部のユーザーは、送料を必要経費として合理的に受け入れる傾向がある可能性があり、その割合は女性よりも男性のほうがやや高い可能性があります。

また、当社が2024年4月に実施した「オンラインショッピングにおけるリピート購入に関する調査」では、リピート購入をする最大の理由として男女ともに「送料無料」が挙げられており、送料負担を軽減する施策がリピーター獲得の鍵となることが示唆されています。

9. 5,000円未満の商品における許容送料

購入予定の商品が5,000円未満の場合、どの程度の送料で購入をためらうかを分析した結果、大半のユーザーは送料の割合を10%以下に抑えることを希望していることがわかりました。

5,000円の購入金額はそれほど高額ではないため、送料の割合が相対的に大きく感じられ、心理的な負担が一層強まると考えられます。

また、500円以上の送料が発生すると、「送料分で他の商品が買える」と感じ、購入をためらう可能性があります。

さらに、5,000円未満の商品において、送料を気にしないユーザーはほぼ存在せず、送料は明確な購入の障害となっていることが示唆されます。

そのため、高い送料負担が発生するEC事業者は、送料の見直しを検討する必要があるかもしれません。

10. 10,000円未満の商品における許容送料

購入予定の商品が5,000円〜10,000円の場合、どの程度の送料で購入をためらうかを分析した結果、送料無料でなければ購入を再検討するユーザーは全体の約34%に上り、5,000円未満の商品と比較して送料無料を求める割合が増加していることが明らかになりました。商品価格が上がるほど、送料無料を期待するユーザーが増える傾向があると考えられます。また、5,000円未満の商品と比べ、500円以内の送料を許容できるユーザーは約28%と増加しており、より高い送料でも受け入れられる傾向が見られます。

しかし、1,000円以上の送料で購入をためらうユーザーは約24%に上り、一定額以上であれば送料無料になるという業界の慣習が、消費者の期待値を高めている可能性が示されました。商品価格が上がるほど送料許容額も上昇しますが、同時に「送料無料が当然」と考えるユーザーの割合も増えることが示唆されています。

11. 10,000円以上の商品における許容送料

購入予定の商品が10,000円以上の場合、どの程度の送料で購入をためらうかを分析した結果、送料無料でなければ購入を再検討するユーザーは約41%に達し、商品価格が高くなるほど送料無料を求める傾向が強まることが明らかになりました。一方で、1,000円程度の送料を許容できるユーザーは約28%となり、送料無料を希望する層と、一定額の送料を受け入れる層が二極化していることも示されました。

また、「送料を気にしない」と回答したユーザーは4.7%と、10,000円未満の商品に関する調査結果と比較すると増加しており、高額商品の購入では送料を許容する消費者が増える傾向が見られます。

より高額な商品になるほど、「送料がかかるのは当然」と考える層と、「高額商品なら送料無料が当然」と考える層に分かれることが調査によって明らかになりました。

12. 高い送料を感じた際の消費者行動

送料が高いと感じた際にどのような行動を取るのかを分析した結果、予定通り即購入するユーザーはほとんどおらず、ほぼすべてのユーザーが購入をためらい、予定していた行動を変更することが明らかになりました。

送料が高いと感じた場合、最も多い行動は「他のショップや別の商品を調べる」で、全体の約80%を占めています。完全に購入を取りやめるユーザーも多く、許容しづらい送料を設定しているショップでは、送料の高さが原因で、最大80%の機会損失が発生していると考えられます。

一方で、70%のユーザーが、送料無料ラインに到達するために追加購入を検討したり、次回まとめて購入する選択を考えたりすることがわかりました。このことから、送料無料ラインを適切に設計することで、購入頻度の向上や客単価アップにつながる可能性があります。

13. 高い送料を感じた際の消費者行動(男女別)

送料が高いと感じた際の行動について男女別に分析した結果、購入を取りやめる割合に男女差はほとんどないことがわかりました。

しかし、女性は送料無料条件を満たすために追加購入を検討したり、キャンペーンやクーポンを活用したりするなど、送料の割合を下げるための行動をとる傾向が、男性よりも高いことが明らかになりました。

また、「お気に入り」や「カート」に商品を保存し、様子を見る割合も女性のほうが高く、即決せずに一定期間検討する傾向があることが示唆されています。

女性は購入を前提としており、送料が障壁になった場合でも、追加購入や割引を活用して「お得に買う」ことを優先する傾向が見られます。

一方、男性は送料の安い他の選択肢を探すか、購入を諦めるといったシンプルな判断を下す傾向が強いことも示されています。

14. 高い送料を許容する理由

高い送料を許容して購入した理由について分析した結果、「そのショップでしか取り扱いがない」と回答したユーザーは約76%に上り、圧倒的多数を占めました。他のショップで代替ができない場合、送料の高さは受け入れられやすいことがわかります。一方で、競合が多い商品カテゴリーやオリジナル品でない場合、送料の高さは購入を見送る大きな要因となると考えられます。

また、「公式ショップでの購入」や「正規品であること」を理由に挙げたユーザーも一定数存在し、高価格帯の商品やブランド品、健康食品など、安全性や信頼性が重視されるジャンルでは、送料が発生しても購入されやすいと考えられます。

一方で、配送スピードの影響は限定的であり、自社ECにおいて配送の早さは必ずしも大きな強みにならないと考えられます。これは、多くのユーザーが「今すぐ必要なもの」ではなく、計画的な購買行動としてECを利用しているためと考えられます。

15. 高い送料を許容する理由(男女別)

高い送料を許容して購入した理由について男女別に分析した結果、「メーカー公式ショップ・正規品であること」は特に女性にとって送料を許容する理由となることがわかりました。女性は公式ショップや正規品であることを重視し、送料が発生しても安心感や安全性を優先する傾向がある一方、男性は公式ショップへのこだわりが比較的低く、価格を重視し、合理的に判断する傾向が見られました。

また、セールやキャンペーンの対象であることは、女性にとって高い送料を許容する理由になりやすく、これまでの調査結果からも、女性はお得感や割引に対する感度が高いことが示唆されています。女性は送料負担額や割合よりも、「どれだけお得に購入できるか」を重視し、購入を決定する傾向が強いと考えられます。

さらに、ショップ限定の特典やサービス、ブランドへのファン意識といった要素は、送料負担を補うほどの影響力は持たないことも明らかになり、ECサイトでは安価な送料や限定性などの直接的なメリットが重視される傾向があると考えられます。

おわりに

本調査により、送料は単なる追加コストではなく、消費者の購買決定に直接影響を及ぼす極めて重要な要素であることが明らかになりました。

送料が加算されることで、消費者は「損をした」と感じやすく、購入意欲の低下や離脱、競合他社にシェアを奪われる要因となることが示されています。

送料の影響を左右する最大の要因は、商品価格に対する送料の割合であり、低価格帯の商品ほど送料負担に敏感である一方、高価格帯の商品では比較的許容されやすい傾向があり、商品価格に応じた最適な送料設定を行うことが重要です。

送料の割合が高いと感じた約32%の消費者は、送料無料条件を満たすために追加で購入すると回答しており、適切な送料無料ラインを設計することでクロスセルを促進し、購入単価の向上につなげることができます。

本資料をECサイトの収益拡大と顧客満足度の向上にお役立ていただければ幸いです。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

株式会社TOKYO GATEは多くの過去実績を保有するECのプロフェッショナルが集うECマーケティングの専門家集団です。マーケティング戦略の立案から施策の実行、PDCAまでを総合的に支援します。

成功事例に基づいた確実性の高いコンサルティングが特徴で、提案した施策を速やかに実行できる体制を整えています。EC・D2Cに関してお悩みの方はお気軽にご連絡ください。

弊社サービス資料はこちらからダウンロードください。
https://tokyogate.co.jp/

あわせて読みたい

コマースピックLINE公式アカウント

コマースピックメルマガ