
こんにちは。お問い合わせ対応AI導入支援サービス『GMO即レスAI』でカスタマーサクセスを担当している秦 智也です。
本コラムでは、『GMO即レスAI』を運営するGMOペパボ株式会社が全サービスの問い合わせ対応にAIを導入した取り組みと、その成果について紹介します。
秦 智也
GMOペパボ株式会社
2023年、GMOペパボ株式会社に入社。ECサイト構築サービス「カラーミーショップ byGMOペパボ」のカスタマーサポート担当として、簡単なSEO設定やマーケティング施策、ECサイトの設計に関する提案まで幅広く対応。2024年からはカスタマーサポートの品質管理を行うとともに、GMOペパボの全11サービスにAIチャットボットを導入する大規模プロジェクトのリーダーを務めた。現在は「GMO即レスAI」を通じ中小企業のDX支援や、クリエイターの生産性向上の支援を行っている。
GMO即レスAI
https://sokuresu.ai/
この記事の目次
AI導入プロジェクトについて
2023年11月、GMOペパボでは全社的にAIを活用した問い合わせ対応の効率化を進めるプロジェクトを開始しました。このプロジェクトでは、以下の2つの目標を掲げました。
- 社内(管理部門)の問い合わせ対応へのAI導入
- 社外の問い合わせ対応へのAI導入
これにより、業務効率化と顧客満足度の向上を目指しました。
AI導入プロジェクトの効果
2024年1月に全サービスの問い合わせ対応にAIを導入が完了し、2024年1月から2024年5月までの5か月間で以下の成果を得ることができました。

削減時間 1,620時間
AI導入により、多くの問い合わせが有人対応に至る前に解決されるようになりました。その結果、電話やメールでの対応時間も削減され、2024年1月から5月の間に1,620時間の顧客対応業務時間が削減できました。
有人対応削減件数 9,000件
問い合わせに対して、2.5万件(※1)あった有人対応件数が1.6万件(※2)になりました。有人対応件数が3割減ったことで、効率的な運営が可能になりました。
(※1)2023年4月の「ロリポップ!レンタルサーバー byGMOペパボ」「ヘテムル byGMOペパボ」「ムームードメイン byGMOペパボ」「カラーミーショップ byGMOペパボ」「SUZURI byGMOペパボ」「minne byGMOペパボ」「グーペ byGMOペパボ」の有人対応件数の合計。
(※2)2024年4月の同じく7サービスの有人対応件数の合計。
顧客満足度 88%
顧客満足度はAI導入前の86%(※3)から2ポイント上昇した88%(※4)を維持しており、変わらず高品質なサポートの提供を実現しています。
(※3)2023年6月に回答があったメールによる顧客満足度アンケートの平均値。調査対象は「ロリポップ!レンタルサーバー byGMOペパボ」「ヘテムル byGMOペパボ」「ムームードメイン byGMOペパボ」「カラーミーショップ byGMOペパボ」「SUZURI byGMOペパボ」「minne byGMOペパボ」「グーペ byGMOペパボ」に問い合わせを行った利用者および見込み顧客4,182名。
(※4)2024年6月に回答があったメールによる顧客満足度アンケートの平均値。調査対象は同じく7サービスに問い合わせを行った利用者および見込み顧客2,225名。
新たな役割への配置転換(リスキリング) 11名
AI導入でカスタマーサービス部門のメンバーの時間的な面や、業務面においての負担が軽減され、新たなポジションへの異動が可能となりました。これにより、現在11名のメンバーがカスタマーサービス部門で培ったコミュニケーション力や問題解決力を活かし、ディレクターなどの他の職種で活躍しています。
また、異動前に実施したリスキリングを通じて、プロジェクト管理やリーダーシップスキルを習得したメンバーが、会話型AIで企業の生産性向上を支援する新サービス『GMO即レスAI』の立ち上げにも貢献しました。
50%の問い合わせをAIのみで解決できている部門もあり、間違いなく現場への負担は減っていると考えています。
また、顧客満足度も向上しています。その理由としては、簡単なお問い合わせをAIのみで対応できるようになり、難易度の高いお問い合わせに人的リソースを集中できるようになったことが挙げられます。
続いて、どのように全部門のカスタマーサポートでAI活用を進めたのかを解説します。
サービス全部門のCSでAI活用がどう進んだか
1. スピーディーなプロジェクト立ち上げ
この取り組みは、社長の意思決定と迅速な行動により、短期間でスタートしました。お問い合わせ対応は「お客様とのコミュニケーション」の一環であり、非常に重要な業務領域です。そのため、AIの活用を決定してからわずか2か月で全社導入が実現した背景には「社内調整のスピード感」が大きく寄与していると考えています。
特に、顧客対応部門からの提案が全社導入に発展する場合、一般的には経営層や他部門への説明や合意形成に多くの時間がかかることが少なくありません。
しかし、今回はトップダウンでの迅速な意思決定が行われたことで、プロジェクトをスムーズに進めることができました。この効率的な意思決定プロセスが、短期間での全社導入を可能にした要因の一つと考えています。
2. 導線設計の見直し
お客様対応と一口で言っても、チャネルが複数存在している企業様のほうが多いと思います。弊社も電話対応や画面共有サポート、メールなど複数のチャネルでお客様対応を行っています。
弊社は最初にどのチャネルでAI活用するかを考えましたが、結論から言うと、すべてのお客様窓口の最初の導線をAIチャットボットに変更をしました。

もし、AIチャットボットのみで解決できなかった場合は、電話窓口や問い合わせフォームに遷移するような導線設計に変更しました。
3. RAGの作成
AIが誤った回答をしないというのは非常に重要です。また、最新情報でないものを回答してしまうと機会損失の発生にもつながります。
通常、LLMには以下のようなリスクがあると考えられています。
- 正確な回答が存在しない場合や不十分なトレーニングデータに基づく場合に、信頼性の低い情報や誤った内容を生成してしまう
- トレーニングされたデータが過去のものである場合、ユーザーが期待する最新の情報を提供できず、古い情報や一般的な情報を提示してしまう
- 権限を持たないソースから回答を作成し、関連性が低い、あるいは信頼性が疑わしい情報を回答に含めてしまう
以上のようなリスクの発生を抑えるために、日々データソースの更新や回答のチューニングをおこなっています。
また、画像やPDFを含むマニュアルをデータソースとして扱う場合、テキストに直す作業をしたり、画像を表示させたりするような工夫をおこなっています。
まとめ
本日は、GMOペパボでの事例を参考にAIチャットボットの導入効果や運用について紹介させていただきました。
『GMO即レスAI』では、この経験を活かしてAI関連サービスの導入をサポートしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
消費者のニーズの多様化と労働人口の減少が進行している昨今だと、AI活用を前提として、どう向き合っていくべきかを議論していくことが重要だと考えています。
ぜひ、このコラムが自社でのAI利用や活用方法の検討へのきっかけになったら幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました!
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