
経済産業省は2024年9月25日に「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」を発表し、BtoB-EC市場の実態を明らかにしました。この記事では、その結果を踏まえ、2023年の市場動向や今後の展望を主要業種別に解説します。
この記事の目次
BtoB-EC市場が465兆円に到達、前年比10.7%の成長を達成

2023年の日本のBtoB-EC市場は、465兆2,372億円に成長し、前年比10.7%の増加を記録。全体の商取引におけるEC化率も、前年の37.5%から40.0%へと大幅に上昇しました。
コロナ禍を経たリモートワークの定着や、非対面取引の普及が、このEC導入の加速に寄与しています。また、政府が進めるデジタル取引環境の整備や、インボイス制度を含む税制改正も、企業のデジタル化を後押ししました。
本調査では、「EC」「BtoB-EC市場規模」について、次のように定義されています。
- EC:インターネットを利用して、受発注がコンピュータネットワークシステム上で行われること
- BtoB-EC市場規模:企業間または企業と政府(中央官庁及び地方公共団体)間で、ECを利用して受発注を行った財・サービスの取引金額
では、次に主要業種別に2023年の市場動向を見てみましょう。
主要業種別の市場動向
食品製造業の成長 – 外食需要回復が追い風に
2023年における食品製造業のBtoB-EC市場規模は35兆5,307億円に達し、前年比19.9%増加しました。EC化率も前年の70.7%から75.0%に上昇し、EC導入がさらに拡大しています。2022年には外食需要やホテル業界の回復が見られましたが、2023年もその流れを引き継ぎ、業務用食品の需要が一段と増加しました。これに伴い、BtoB取引全体の市場規模も拡大しました。
食品製造業では、サプライチェーンの透明性や在庫管理の効率化が求められるようになり、オンラインプラットフォームを活用した効率的な受発注システムが広く導入されています。EC取引によるデジタル化は、トレーサビリティの向上や在庫管理の精度向上にも寄与しており、今後もこの傾向が続くと予想されます。
製造業の成長 – 産業機器と金属分野のデジタル化
製造業全体におけるBtoB-ECの普及は引き続き進んでおり、特に「産業関連機器・精密機器製造業」においては、2023年の市場規模が22兆1,639億円、前年比6.7%の増加を記録しました。EC化率も2022年の42.0%から44.6%へ上昇し、業界全体でデジタル取引の効率化が進展しています。
鉄・非鉄金属製造業でもBtoB-EC市場規模は30兆9,151億円に達し、前年比7.9%の増加、EC化率は46.2%となりました。2022年の44.1%からの着実な成長を続けており、素材流通の最適化が求められる業界において、EC導入が取引スピードの向上とコスト削減に貢献しています。さらに、AIやIoT、デジタルツインといった技術革新が、EC取引の自動化や効率化を一層推進しており、今後も製造業全体でのデジタル化が進展することが期待されます。
卸売業の変革 – EDI標準化で取引効率が向上
2023年、卸売業のBtoB-EC市場規模は121兆2,499億円、前年比7.4%の増加を記録しました。2022年の112兆8,794億円(前年比12.2%増)に比べると成長率は減少したものの、EC化率は34.9%から37.5%に上昇し、デジタルシフトが進んでいます。特に、大手流通業者によるEDI(電子データ交換)標準化の取り組みが、取引の効率化を促進しています。
EDIの導入は、取引先とのデータ交換のスムーズ化や在庫管理の最適化に大きく貢献しており、流通業界全体でのデジタル化が加速しています。スーパーや大型小売チェーンでは、ECプラットフォームの導入により、サプライチェーンの最適化とコスト削減が進められています。今後もこの流れは続き、卸売業全体でのEC化が進展する見込みです。
IP網への移行でBtoB取引がさらに効率化
INSネット(ディジタル通信モード)のサービス終了が2024年1月に予定されていたため、BtoB取引に使用されるEDIシステムがインターネットEDIへと移行します。IP網への移行は、2022年にも議論されていましたが、2023年にはより具体的な対応が進み、企業の取引コストの削減や取引スピードの向上を実現しました。
従来の電話回線からインターネットを介したデジタルインフラへの移行が、取引の効率化に大きく寄与しています。これにより、企業間の取引はより迅速で柔軟性の高いものとなり、特に中小企業にとっては大きな利点となるでしょう。また、セキュリティ強化や新しいサービスの導入も進み、クラウドサービスや電子インボイスを活用したバックオフィス業務のデジタル化が加速しています。
まとめ:未来に広がるBtoB-ECのさらなる成長可能性
2023年の日本のBtoB-EC市場は、465兆円を超える規模に達し、EC化率も40%に上昇しました。食品製造業や卸売業、鉄・非鉄金属業などの主要業種でのデジタル取引の推進が市場拡大を支えており、特にEDI標準化やIP網への移行が取引効率の向上に寄与しています。
今後もEC化の波はさらに多くの業種に広がり、企業間取引の迅速化やコスト削減が進むことで、日本のBtoB市場の競争力向上が期待されています。デジタル化の進展により、企業は新たなビジネスチャンスを獲得し、さらなる成長が見込まれるでしょう。
あわせて読みたい