【2023年最新版】BtoB-ECの市場規模と成長率は?経産省発表データから読み解く
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日本のEC市場を知るためにチェックしておきたいのが、経済産業省が平成10年度から毎年発表している「電子商取引に関する市場調査」です。25回目の実施となる「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」の結果が、2023年8月31日に発表されました。本記事ではこの調査結果より、BtoB-ECに関する内容を取り上げ、事業者が押さえておくべき点を紹介します。

EC化率は37.5%へ、BtoB-EC市場はBtoC以上に成長している

令和4年度電子商取引に関する市場調査によると、2022年のBtoB-EC 市場規模は、前年比12.8%増の420兆2,354億円となりました。また、「その他」(※)を除いたEC化率は、前年比1.9 ポイント増の37.5%となっています。

※「建設」「製造」「情報通信」「運輸」「卸売」「金融」「サービス」以外の業種。「小売」「その他サービス業」が含まれる。

2018年~2022年の5年間のBtoB-EC 市場を振り返ると、市場規模は2020年のみ前年比減となったものの、その他の年は前年に比べて成長しています。EC化率に関しては毎年伸長し続けています。

一方、2022年のBtoC-EC 市場規模は22.7兆円で前年比9.91%増、EC化率は前年比0.35ポイント増の9.13%です。イチ消費者としては、ECというとBtoC-ECの印象が強いですが、BtoB-ECも市場規模、EC化率ともに大きく成長を続けていることがわかります。ただし、この数値にはEDI(電子データ交換)が含まれています。EDIはECサイトを介して都度決済が行われるBtoC-ECとは異なり、紙の伝票やFAX、電話などのアナログな取引をオンラインによって自動化した仕組みということは把握しておくと良いでしょう。

なお本調査では、「EC」「BtoB-EC 市場規模」について、以下のように定義しています。

  • EC:インターネットを利用して、受発注がコンピュータネットワークシステム上で行われること
  • BtoB-EC 市場規模:企業間または企業と政府(中央官庁及び地方公共団体)間で、EC を利用して受発注を行った財・サービスの取引金額

業種別に見ると、製造業の市場規模・EC化率が大きい

BtoB-EC 市場規模の業種別内訳

BtoB-EC市場でもEC化率が高い業種が製造業で、いずれのカテゴリーでもEC化率が40%を超えています。製造業のなかでは特に、輸送機械(76.7%)、食品(70.7%)、電気・情報関連機器(66.3%)などのEC化率が高くなっています。

逆にBtoB-EC市場においてEC化率が低めの業種は、建設(15.3%)、サービス(15.9%)です。

調査結果において考察されている業種

令和4年度電子商取引に関する市場調査では、BtoB-EC市場のなかでも、「製造:食品」「製造:産業関連機器・精密機器」「製造:鉄・非鉄金属」「情報通信」「卸売」について、考察が述べられています。

これらの業種・カテゴリーでは、BtoB-ECに限らず業界全体で売上高が伸びており、それに伴いEC化率が伸び、BtoB-EC市場規模の拡大にもつながっています。

「製造:食品」は、食品製造業全体で2020年、2021年にかけてコロナ禍の影響を大きく受けました。しかし2022年は消費者の外出機会が増え、外食やホテル需要が増加した結果、業務用食品市場規模などが拡大、業界全体の市場規模が伸び、EC化率の成長につながったとされています。

また「卸売」では、大手総合スーパー、大手スーパーマーケットを中心としてEDIの仕様の標準化が進んでおり、EC化率の成長要因と考えられています。

BtoB-ECの注目トピック

令和4年度電子商取引に関する市場調査では、「国内BtoB-ECにかかるトピック」として、「IP網化に伴うINSネットの廃止」と「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の対応」があげられています。この2つのトピックについても、要点を紹介します。

IP 網化に伴うINSネットの廃止とEDIの更新

2024年1月に予定されているINSネット(デジタル通信モード)サービス終了に伴い、BtoB-ECにおいて同サービスをインフラとしているEDIの仕組みを更新していく必要があります。

NTTでは、INSネット(デジタル通信モード)の11の利用用途(「クレジットカード端末」、「POS」、「レセプトオンライン」、「電子バンキング」、「電子商取引(EDI)」等)ごとに、各関係団体との連携や個別対応、顧客への通知を行ってきました。これらは2022年5月時点でほぼ完了しているとのことです。不明点があれば、利用しているサービスの提供業者などに確認しましょう。

全国の固定電話をつないでいるNTTの固定電話網は、2025年1月までにIP網に移行することが発表されています。これに伴い、2021年1月から「設備移行」(事業者のIP網同士を段階的に接続)が開始され、2025年1月までにIP 網への設備移行の完了が予定されているのです。また、メタル電話(NTT 東日本・西日本が提供する加入電話およびISDN 電話)からメタルIP電話へのサービス移行は 2024年1月に一斉に実施が計画されています。

適格請求書等保存方式(インボイス制度)の対応とBtoB-EC

2023年10月1日より、消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式(インボイス制度)が開始されます。

インボイス制度に対応する適格請求書発行事業者の登録申請は、2021年10月1日から始まっています。2023年10月1日から登録を受けるためには原則として2023年3月31日までに登録申請手続を行っている必要があります。登録を予定していて申請手続きがまだの場合は、できるだけ早く申請手続きを進めましょう。

インボイス制度の詳細は、国税庁のWebサイトや特集サイトにまとまっています。不明な点がある場合はチェックしてみてください。また会計ソフトを利用している場合、ソフトウェア提供会社でもさまざまな情報発信を行っているので調べてみると良いでしょう。税理士と契約している場合は、まずは税理士に必要な対応を確認するのがおすすめです。

インボイス制度開始に向けて、課税事業者の業務効率化に役立つポイントとして、適格請求書の内容を電磁的記録で提供すること(電子インボイス)が可能とされている点があります。これにより、請求書の保存・管理を効率化できるでしょう。

電子インボイスについては、2020年12月に、電子インボイス推進協議会が、日本国内における電子インボイスの標準仕様を国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定する方針を発表しました。そして、「Peppol」をベースとした日本標準仕様(日本版Peppol)の策定が進められ、2022年10月28日、デジタル庁から「Peppol BIS Standard Invoice JP PINT Version 1.0(略称「JP PINT」)」として正式公表されました。

電子インボイスは、BtoB-ECの取引とも相性が良いと考えられており、このタイミングでBtoB-ECを検討される事業者が増えています。

まとめ:業種ごとのEC化の違いを押さえつつ、BtoB-EC市場全体の動きに対応

BtoBの場合、業種によってはEC化率が50%を超えているカテゴリーもいくつかあり、そういった業種・カテゴリーではEC化していない事業者のほうが少数派となります。そのなかではEC化は当たり前のことで、そこから、取引をする企業双方にとっていかに使いやすい仕組みに改善していくかが重要になっていくでしょう。

一方で、EC化率がまだ低い業種では、今後、EC化を進めることで、業務の効率化や新規開拓などの新たな可能性が開けるかもしれません。

同時に、注目トピックとしてあげられていた、「IP網化に伴うINSネットの廃止」と「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の対応」のような、BtoB-EC市場全体に影響する動きも押さえておきたいところです。すでに対応が済んでいる場合は問題ありませんが、対応がまだの場合や、不明点がある場合は、関係各所に確認を行いましょう。

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