【2024年版】物販系ECの市場規模と主要カテゴリーの動向
ニュースの概要

経済産業省は、2024年9月25日に「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」を実施し、日本の電子商取引市場の実態などについて取りまとめました。その内容をもとに、物販系BtoC-ECにおける市場規模と主要カテゴリーの動向を解説します。

2023年における物販系分野のBtoC-ECの市場規模

物販系BtoC-EC市場は14兆6,760億円に達し、前年比で4.83%の成長を記録しました。EC化率も9.38%に上昇し、国内EC市場の拡大が続いています。

物販系分野の商品カテゴリーごとにおけるEC市場規模及びEC化率は下記の通りです。市場規模が大きい順に、「食品、飲料、酒類」、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」、「衣類・服装雑貨等」、「生活雑貨、家具、インテリア」、「書籍、映像・音楽ソフト」、「化粧品、医薬品」、「自転車、自動二輪車、パーツ等」となっています。そのうちの上位6つのカテゴリーについて、詳しく見ていきます。

食品、飲料、酒類

「食品、飲料、酒類」分野のBtoC-EC市場は2兆9,299億円に達し、前年比6.52%の増加を示しました。EC化率は4.29%と他カテゴリーと比較して低いものの、特に調理食品や酒類、菓子類、肉類などが市場拡大を牽引しています。

総務省統計局の家計調査によると、2023年の1世帯あたりの「食品、飲料、酒類」の年間平均支出は698,876円で、2019年比で7.7%、2022年比で3.0%の増加を記録しました。これは、新型コロナウイルス感染症拡大以降、家庭での食事回数が増えた消費者のライフスタイルが定着したことや、円安による物価高騰が影響していると考えられます。

ネットスーパー市場は引き続き拡大し、大手GMSやEC専業事業者がサービス強化に取り組んでいます。特に都市部では、クイックコマース(即時配送サービス)の普及によって、消費者の利便性が一層向上している状況です。一方、フルフィルメント業務の負担や物流コストの最適化は依然として大きな課題となっています。店舗出荷型とセンター出荷型を併用した効率的な物流体制の整備が求められています。

生活家電、AV機器、PC・周辺機器など

「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」分野のBtoC-EC市場は2兆6,838億円に達し、前年比5.13%の増加を記録しました。EC化率は42.88%と、物販系ECの中でも特に高い水準を保っています。総務省統計局の家計調査によると、1世帯あたりの年間平均支出は64,020円で、前年に比べて2.8%増加しています。

2023年は、コロナ禍からの社会経済活動の正常化により、人流の活発化が進み、在宅時間が減少しました。その結果、調理家電などの利用機会が減少し、家電製品全般の需要はやや抑えられました。また、物価高騰や実質賃金の低下により、耐久消費財の購入控えが見られる一方、省エネ製品に対するニーズが高まり、高価格帯の省エネ家電が市場を支えています。

リユース・リサイクル市場も引き続き拡大しており、半導体不足や物価高騰の影響でリユース家電の需要が増加しています。物流の強化も進んでおり、短時間での配送を可能にする物流センターの整備や、ショールーミング(実店舗で商品を確認し、オンラインで購入)を促進する施策が継続されています。

衣類、服装雑貨

「衣類、服装雑貨」分野のBtoC-EC市場は、2023年に2兆6,712億円に達し、前年比4.76%の成長を示しました。EC化率は22.88%と高い水準を維持していますが、1世帯あたりの年間平均支出は119,393円で、2019年比では15.7%、2022年比でも1.5%の減少が見られます。

2023年は暖冬の影響でアウターウェアの売上が振るわず、さらに消費者の間でSDGsやサステナビリティに対する意識が高まったことから、短期間での服の買い替えが減少しました。この影響もあり、家庭での支出も減少しています。

一方で、EC市場は成長を続けています。オムニチャネル戦略の進展により、消費者がオンラインで商品を確認し、店舗で試着した後に購入するスタイルが広がっているためです。リアルタイムでのオンライン接客サービスが導入され、消費者の購買行動がECへシフトしています。加えて、メタバースやデジタルファッション市場が台頭し、これらの新技術がファッション業界に影響を与え、EC市場のさらなる拡大に寄与していると考えられます。

生活雑貨、家具、インテリア

「生活雑貨、家具、インテリア」分野のBtoC-EC市場は2兆4,721億円に達し、前年比5.01%増加しました。EC化率は31.54%と高い水準にありますが、総務省統計局の家計調査によると、1世帯あたりの年間平均支出は80,178円で、2019年比では4.3%増加したものの、2022年比では1.7%減少しています。

家庭の消費が減少している要因として、コロナ禍でのストック需要が一巡したことや、物価高騰による実質賃金の低下が挙げられます。それにもかかわらず、EC市場は拡大を続けているのは、低価格商品のまとめ買いやサブスクリプションサービス、クイックコマースの普及が需要を支えているからです。

また、家具やインテリア商品では、AR技術を使って商品の配置イメージを確認できるサービスが普及し、ECでの購入が一層便利になっていることも理由として挙げられます。

書籍、映像・音楽ソフト

書籍、映像・音楽ソフト(オンラインコンテンツを除く)分野におけるBtoC-EC市場は、1兆8,867億円に達し、前年比3.54%の増加を記録しました。EC化率は53.45%と引き続き高い水準です。

公益社団法人全国出版協会の報告によれば、紙の出版物市場は縮小を続けていますが、電子書籍やコミックの市場が拡大しています。特に電子コミックの需要が増加しており、紙媒体から電子媒体への移行が進んでいます。

映像や音楽ソフトの分野でも、物理メディアの売上が減少する一方で、動画配信サービスや音楽ストリーミングサービスの利用が拡大しており、この流れは今後も続くでしょう。

化粧品、医薬品

「化粧品、医薬品」分野のBtoC-EC市場は9,709億円に達し、前年比5.64%の成長を見せました。EC化率は8.57%と比較的低いものの、オンライン販売の拡大が続いています。

総務省の家計調査によると、1世帯あたりの「化粧品等」の年間平均支出は49,590円で、2019年比1.7%、2022年比で4.8%増加しています。一方、「医薬品等」の年間支出は66,350円で、2019年比2.8%増加しましたが、2022年比では1.0%減少しました。

化粧品分野では、マスク規制の緩和や外出機会の増加に伴い、メイクアップ用品の需要が回復しています。特に、AR技術を活用したバーチャルメイクシミュレーションや、LINEやチャットを通じたオンライン接客の普及により、消費者が自宅でも化粧品を試せる環境が整い、オンラインでの購買体験が向上しています。

一方、医薬品分野では、新型コロナウイルス感染症の影響でマスクや消毒液といった衛生商品の需要が急増しました。しかし、2023年にはマスク規制の緩和により需要が落ち着き、支出は前年から減少しています。

それでも、オンライン服薬指導や電子処方箋の導入が進展しており、医薬品のネット販売は引き続き成長を続けています。コロナ禍で急速に普及したオンライン診療サービスの発展とともに、今後も医薬品分野のEC市場はさらに拡大する見込みです。

まとめ:今後の展望と課題

2023年の物販系BtoC-EC市場は、食品、生活家電、衣類、書籍、化粧品など、多岐にわたるカテゴリーで成長を遂げました。消費者のライフスタイルや購買行動がオンラインシフトし続ける中、特にネットスーパーやクイックコマースなどの新たなサービスは、利便性を高め、今後の市場拡大を牽引すると期待されています。さらに、ARやAIを駆使した技術革新も、購買体験の向上に寄与しています。

しかしながら、各カテゴリーには課題も残されています。物流コストの増加やフルフィルメント業務の効率化に向けた取り組みが重要です。特に、ECと実店舗を組み合わせたオムニチャネル戦略を拡充し、消費者一人ひとりにパーソナライズされた体験を提供することが求められています。また、サステナビリティへの関心が高まる中で、環境に配慮したビジネスモデルへのシフトも企業にとって避けられない課題です。

EC市場の成長が今後も続く中、競争は一層激化することが予想されます。企業は差別化を図り、いかに顧客に価値を提供できるかが今後の成功を左右する鍵となるでしょう。

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