リコマースはグレーディングの信頼と信用がCLVアップに【リコマース・オムニチャネル総論 第4回】

前回のコラムでは、「リコマースでオムニチャネルの収益アップを実現」というテーマでお話しさせていただきました。今回は、「リコマースにおけるグレーディングの信頼と信用の重要性」について解説していきます。

リコマースの在庫管理の考え方のポイント

通常のコマースでの在庫管理は、サプライチェーン・マネジメント(SCM)の上で発注から製造、受入れ、検品、保管、店舗出荷・顧客ダイレクト発送、店舗から返送・顧客からの返品などのフローが企業のオペレーションデザインの上で確立されています。

リコマースでは、いくつかの特徴的な課題があります。新商品であればSKUで管理していますが、リコマースでは元のSKUに対して商品状態(グレーディング)が付加されるため、単一のSKU管理となります。これは、オーダーメイドのジュエリーやアパレルの管理方法と同様です。そのため、商品を識別、条件付け、価値付けするだけでなく、すべての商品データのカタログを構築できるようにデータを維持する必要があります。

意思決定のために、在庫管理(実際は判断処理)システムとして、再販価格と必要なクリーニング・修理費用などを考慮し、販売されたすべてのアイテムがブランドの利益率・ROAを維持できるようにすることが大切です。利益を上げて販売できない場合は、その商品をリサイクルまたは廃棄(日本で寄付ルートはないと思っています)に回す決断が必要になります。

リコマースでは、商品の受け取り、修理・加工、在庫管理からピッキング、梱包、発送に至るまで、すべて一点物の商品に対するあらゆる物流ニーズに対応することがポイントです。

在庫品の品質管理

在庫品は、新品商品に比べて品質・鮮度(ファッションなど)が低い場合がほとんどです。シーズン中の返品で需要期に間に合えばそのまま正規価格で売れるかもしれません(その場合に先だしにするか後だしにするかの運用ポイントはあります)。

そのため、在庫品の品質を適切に管理できる商品管理と、顧客に満足度の高い商品(価格とチャネル)として提供できることが重要です。たとえば、自社サイトでも通常のコマースサイト、セール品(訳あり・お買い得品)への展開や、リコマースサイトへの展開、自社以外では価格重視の新規のアンノウン顧客としてのマーケットプレイスとかへの出品を選択することになります。

店舗への返品(Buy Online, Return In-Store :BORISなど)であれば、店舗から在庫型物流センター(DC)への返送ではなく、店舗出荷(Ship from shop)させるとかで各在庫の回転を上げていけることも隠れたポイントです。

在庫の有効活用

リコマースでは、返品や在庫余剰などの問題が発生した商品を再販することで、在庫の有効活用につなげていくことになります。また、在庫管理システムと連携することで、在庫の状況をリアルタイムで把握して、効率的な在庫管理を行うことが必要になります。

倉庫であろうと店内であろうと、シームレスなフルフィルメントのために各商品がどこに送られるべきか正確に把握しなければなりません。在庫の補充ツールとして、各店舗の現在の在庫と販売履歴を活用し、最適な品揃えの商品をリアル店舗・デジタル店舗にルーティングできることが大切です。

返品・交換品と回収品のプロセスとグレーディング

返品・交換品、そして下取り品の回収の商品価値・評価をスムーズに行う必要があります。返品・交換品では当たり前のグレーディングのプロセスを下取り、回収品に適応していかなければなりません。

選別

各ブランドに合わせて完全にカスタマイズされた基準とワークフローで、ブランドの仕様に従って各商品(衣類・シューズなど)を分類し、返品基準(未着用、タグの有無など)の確認や、再販可否と、アジャイルに販売が可能かどうかのグレード付けをします。再販不可なものは、アップサイクルなどのプロセスに回します。

倉庫到着から商品の識別、クリーニング、修理、サイトへの掲載などのフルフィルメントに至るまで、再販品の詳細なライフサイクルを可視化できるようにしていきます。この可視性により、各アイテムを適切な注意事項(コーションタグ)で管理することができるのです。

たとえば、下取り、回収品であれば、縫い目の修理が必要なダウンジャケット、新しいジッパーが必要なパンツと、新品同様の状態ですぐにクリーニングして出品できるアイテム、またはシミ取りクリーニングが必要なアイテムなどに状態とマーケットバリュー基準によって区別していきます。

グレーディング機能

商品状態の確認機能として、商品の状態を画像や動画で確認できるようにするための、商品の状態を評価・分類する機能です。グレーディングは、商品の状態を客観的に評価することで、顧客に商品の状態を正確に伝え、安心して購入できるようにするためのものです。

グレーディングは、以下の要素に基づいて行われます。各1つ1つの商品(単一SKU)に情報を登録していきます。これは、返品・交換のサービスのチェックプロセスで実施していることでもあります。

  • 外観
    外観は、商品の汚れや傷などの状態を評価します。
  • 動作
    動作は、商品の動作や機能の状態を評価します。電子機械系などでは必須です(あと、盗聴チェックも)。
  • 付属品
    付属品は、商品に付属しているものの状態を評価します。タグは当然として、日本人が大好きな、箱のありなしなどもそうなります。
  • 欠陥
    欠陥は、商品に不具合や故障などの欠陥があるかどうかを評価します。欠陥がある場合は、修理するか、廃棄リサイクルするかなどへのフローへ引継ぎます。欠陥のフローは、修理サービスにも応用が可能なキーとなるプロセスです。

グレーディングの目的としては、

  • 顧客満足度の向上
    顧客は商品の状態を正確に把握できるようになるため、安心して購入することができます。
  • 価格設定の適正化
    商品の状態に応じた適正な価格を設定することができます。
  • 在庫の最適な販売・活用方法
    商品の状態に応じて適切な販売方法、自社コマースサイト、ZOZOなどのマーケットプレイス、または、買取業者への販売なのか、を検討することができます。

リコマースを導入する際には、グレーディング機能を導入することは必須となってきます。これを、WMSなのか、OMSなのか、コマースシステムの商品登録機能など、どのシステムで実装・運用するかで運用効率が大きく変わってきます。

品質管理とクリーニング

ブランド基準の品質管理により、返品品・中古品が可能な限り最高の状態で第二の顧客に販売されて送られるようにすることです。

スチーム&フィニッシュ処理をするかどうかも重要なポイントです。スチーム処理や詳細な仕上げ作業により、衣類を可能な限り最高の状態に保つための仕上げソリューションを保持するかは判断するべき重要なポイントです。

修理

ボタンやジッパーからステッチやヒートシールの修理など、リペアチームを保持するかはブランド、商品の市場価値によります。基本は衣類がより長く使用できるようにしたい、埋め立て地に行かないようにしたいと思っても商品販売単価を上回る修理費用は現実的な解決策ではありません。

商品の価格設定

在庫品や返品・交換品の価格は、新品商品の価格よりも低く設定するケースがほとんどです(ビンテージでない限り)。

自社のコマースサイトで、あまりにも低価格に設定すると、商品の価値が低く見られてしまう可能性があります。そのため、品質や状態を考慮した適切な価格設定を行うことが重要です。

そこで、ダイナミックプライシングに寄与するデータが必要になります。自社メーカー希望小売価格(アパレルではプロパー価格)、商品の状態、既存の在庫構成、顧客の関心と仮需要、その他の変数などを考慮して、ブランドの最良の販売価格を決定するアルゴリズムをAIなど活用して構築していくことになります。

そのためには、顧客データ情報に基づいたデータドリブンマーケティングが必要です。トラフィックとコンバージョンの最適化、再販メッセージングのベストプラクティス、理想的なマーケティングミックスを構築することになります。

ブランドにとっては潜在的な収益を最大限に高めるために、需要と供給のモデルを構築することが目的です。売れない商品は、再販しても売れることはないでしょう。当然、価格設定は、収益性を損なうことなくセルスルーを最適化していくことが目的になります。

このように、在庫品や返品・交換品を活用することは比較的シンプルにできます。一方で回収・下取りはより深い知見が必要です。

リコマースでは、ブランドイメージの向上や顧客層の拡大、お得感や環境への配慮といったメリットが期待できます。品質管理や価格設定などのポイントを押さえて、チャネル別の顧客に対して、適切に運用することが重要なポイントです。

修理サービスは隠れたロイヤルカスタマー施策

マーケットプレイスを利用して、オムニチャネルサービスを提供している、または、卸や、小売を通じて商品を販売している事業者や、製造メーカーにとっては、このチャネルで顧客が見えないことと、コミュニケーションは事業者側からの一方通行になりがちです。

修理サービスを提供することで、この顧客セグメントとダイレクトタッチポイントを提供することができます。修理までして自社の商品を愛してくれる顧客がロイヤルカスタマーであることは当然です。

ここでのポイントは、自社サイトへのチャネルスイッチを目的とすることではなく、今まで知らなかったロイヤルカスタマーをより知ることでブランドとしての顧客サービスを充実させることです。

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