
この度、中国越境ECに関するコラムを担当させていただくことになりました、株式会社オーエスの高橋と申します。これから中国越境ECに取り組む企業様、既に取り組んでいるが、なかなか思うような結果が出ていない企業様にとって、少しでも役に立つ情報を発信できればと思っております。
記念すべき第一回目のコラムは「中国越境ECで挙げられるリスクと撤退企業」に関してです。中国越境EC事業を始めるにあたり、さまざまなリスクが考えられますが、その中でも日本企業が押さえておかなくてはいけない代表的なリスクがいくつかありますのでご参考にしていただければと思います。
また中国越境EC事業から撤退した実例も記載させていただきます。私個人としては「撤退=失敗」とは思っておりません。ときには撤退という判断は正解ということもあります。その辺りもご参考にしていただければと思います。
この記事の目次
【中国越境ECで挙げられるリスクについて】
①競争市場や文化の違いに関するリスク
中国の越境EC市場は、世界各国から市場を狙って参入してきており、競争が非常に激しいため、新規参入企業は市場シェアの認知獲得に苦労する場合がほとんどです。
文化や言語も異なるため、中国に合った適切なマーケティングプランやコミュニケーション戦略を展開していかないと、「広告費ばかりかかり、商品が全く売れない!」なんて話はよくある話です。
日本の代表的な検索エンジンやランディングページを使ったマーケティング手法は、基本中国のECには通用しないことを認識して戦略を考える必要があります。
また、中国の決済システムに関しても独自のルールとプラットフォームを持っておりQRコード決済が基本です。日本で当たり前のクレジットカード決済などは基本使われていないことを認識する必要もあります。
更に最近では中国国内ブランドや新興企業の台頭により、市場環境が急速に変化してきています。
日本企業は国内のEC事業の延長線上ではなく、「中国越境EC事業=新規事業」という認識を持ち市場を分析し、年間計画を立て、ある程度のマーケティング予算を確保して始めることが重要になると思います。

②ブランド価値侵害のリスクや知的財産権の侵害
中国の越境EC市場では、ブランド価値侵害のリスクや知的財産権侵害などのリスクがあることにも注意が必要です。
ブランド価値に関して日本企業からは、価格統制の相談が多々あります。よくある事例を一つあげます。
あるメーカー様が中国向けの越境EC事業で商品を販売するにあたり、認知獲得のためのPRをオフラインの展示会やオンラインのSNS、インフルエンサーなどを活用し行っていました。
順調に商品が売れるようになってくると、中国バイヤー様から「売らせてください」という問い合わせが直接メーカー様に来るようになります。その中には最初から大量の商品を仕入れたいというような話もあり、メーカー様も売上になるということで全て対応していると、ある日突然プラットフォーム上で日本販売価格よりかなり安い金額で商品が売られていることに気づきました。
ここで問題だったのは、中国での販売ルールと管理に関して「どのようなルールで」「誰が」「どのように」「どうやって」ということを決めることなく、商品を大量に、そして多数の人に卸した結果になります。
その他、偽造品やコピー商品の販売もプラットフォームによってはまだ行われている現状もあるので、企業の商標や特許が侵害される可能性があることに注意し、最初から対策を練ることが重要になります。

③為替レートの変動に関するリスク
中国の通貨である人民元(CNY)と日本円(JPY)との為替レートが変動することにより、中国での商品販売価格や利益が影響を受ける可能性があることを認識しておきましょう。
特に中国側の代理店と長期の契約を結ぶ場合や中国での商品販売価格(定価)の設定を行う際に、為替リスクを考慮しておいたほうが良いと思います。
ただし、為替市場は予測不能な要因によっても影響を受けるため、将来の為替レートの変動を正確に予測することはできません。為替変動に関連するリスクは、十分なリスク管理戦略と市場の動向を常に監視することによって、最小限に抑えることができます。
外国為替リスクを理解し、適切な対策を講じることが、事業の安定性と成長の鍵となると言えるでしょう。

④政治的・地政学的に関するリスク
昨年の原発処理水の問題や、中国と主要な貿易パートナーでもある米国との関係がこれまで以上に悪化すると、両国間の貿易摩擦や対立がエスカレートする可能性があります。
上記などの理由により、中国への越境EC事業においても貿易障壁や関税の増加、日本製商品に対する不買運動などのリスクが生じる可能性は常に含んでいることを認識しておくことも重要です。
また中国政府は短期間で政策や規制を変更することもあります。特に技術やインターネット関連の規制は急速に変化する傾向もあり、新しい法律や規制が導入された場合、事業に対する影響が生じる可能性もあります。

【撤退企業例】
- 業種 :某D2Cブランド
- 商品 :スキンケア商品(美容液)
- 国内販売方法:EC販売中心(PR目的にポップアップ店舗販売)
- 中国販売期間:6か月
こちらのメーカー様は6か月間のテスト販売の結果、最終的に中国市場は撤退という結論に至りました。理由はいくつかありますが、私個人としては「少しもったいなかった」という所感になります。
まずこちらの企業様はブランドをいくつか持っており、全ての商品をプラットフォーム(天猫国際、小紅書)に掲載して販売を行いました。KOLを使ったプロモーションを中心に認知を広げた結果、3~4か月後、一つのブランドの商品がそれなりに売れるようになってきました。にも関わらず撤退という結果になりました。原因は何点かあります。
①事前の計画不足・・・事前の市場調査や事業計画、販売戦略があいまい(1~3年くらいの計画が必要)
②期待値の乖離・・・マーケティングコストをどれくらいかけて、どの程度の販売を見込むのか?またそれは妥当なのか?
③原価コストが高い・・・中国で商品を販売する際にバイヤーを使った販路構築は非常に重要。(卸し条件が高くて取り扱ってもらえない)
などでした。今回上記のような理由もあり、「撤退」という結果になりましたが、決して商品が悪かったわけではありません。
早い段階でこの商品に見切りをつけたことは決して悪いことではなく、再度チャレンジする際は上記内容をしっかり考えスタートすることによって、違う結果になるのではと思います。
次回コラムでは今回お話したようなリスクを考え、「中国越境ECを順調に進めるために必要なポイントや解決策」をお伝えできればと思います。
それでは次回のコラムをお楽しみに!
株式会社オーエス 会社概要
https://oscorporation.com/
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