【海外ニュース】AmazonのBuy Boxにおける割り当て基準・ファッションECで進む返品の有料化

本記事では最近の海外ニュースをご紹介していきます。今回は、英国Amazonの動向とファッションECで進む返品手数料の有料化の2つのニュースに触れていきます。

【英国】AmazonのBuy Boxを押さえるには?

ニュースの概要

日本ではカート獲得などと言われることが多いAmazonのBuy Box。1商品に対してセラーが複数存在する場合は、Amazon が最も優れたオファーを提供していると判断したセラーにBuy Boxが割り当てられます。価格、配達のリードタイム、セラーの評価など、さまざまな基準に基づいて評価が行われているようです。

赤枠内のボタンを”Buy Box”という

そんなBuy Box の割り当てについて、Amazon UK社は、FBAを利用しているセラーと利用していないセラーを区別しないと発表しました。「primeマークの付与は、Buy Boxの割り当てを決定する際の基準にはなりません」とAmazon UK社は英国の競争・市場庁(CMA)に伝えています。

現在、Buy Boxが割り当てられる要件として、primeマークが付与されていることが重要であると考えられています。セラーが、primeマークを獲得するためには配送に関する特定の条件を守らなければいけません。これは、Amazonが提供するフルフィルメントサービス(FBA)を利用するか、販売者自身が条件を満たす(Seller Fulfilled Prime:日本ではマケプレプライム)ことによって条件を満たすことが可能です。

Amazon UK社は現在の状況について明確な回答はしていませんが、近い将来、primeマークが付与されているかどうかが基準にならないことを公にしています。「当社は、お客様に商品ページで最高のオファーを表示するよう努めるとともに、注目のオファーを決定するために使用される基準が差別的でないことを保証し、セラーとAmazonの直販を平等に扱うよう引き続き尽力していきます」とコメントしました。しかし、更に付け加えて、無料かつ迅速な配送は、Buy Boxが割り当てられるチャンスを高める重要な要素であることに変わりないと、Amazon UK社は述べています。

いずれにせよAmazon UK社は直販をする際に、不当な優位性を得るために競合セラーのマーケットプレイスデータを利用しないことをCMAに保証しました。Amazonの市場優位性はヨーロッパ諸国でも非常に高まっているため、動向が注視されています。

参照:Amazon UK: ‘Prime not a criterion for the Buy Box’

日本においても顧客ニーズを満たす設定がBuy Boxを獲得

日本のAmazonで販売を行う際にもBuy Boxをできるだけ獲得したいところです。今回、primeマークがBuy Boxの割り当て基準にはならないと発表されましたが、とどのつまり顧客ニーズを満たす設計をするにはprimeマークの付与条件とほぼ同等の設定が必要になるでしょう。

Amazonでの販売に力を入れている事業者の多くはprimeマークの取得に力を入れているかと思いますが、コマースピックでも過去にprimeマークやマケプレプライムについてまとめています。メリットや条件など改めて確認してみてはいかがでしょうか。

【英国】ファッションリテーラー(小売店)の79%が返品手数料を有料に

ニュースの概要

英国では、ファッションリテーラーの少なくとも79%が返品時に手数料を設定しています。英国のファッション業界では現在、有料返品が一般的となっていますが、EC市場全体では、依然として半数以上(52%)が無料返品を提供しているとのことです。このデータは、オランダの配送管理システムを提供するSendcloud社によって実施された調査で、英国の小売業者上位 100 社の返品ポリシーを分析したものです。

2022 年以降、H&M社やZARA社などの大手ファッションリテーラーは返品手数料の導入を開始しました(日本では2024年2月現在、両社ともに返品無料)。それ以来、ファッション業界では返品手数料を有料にする波が広がっているのです。

Sendcloud社の調査によると、返品ポリシーをホームページに表示している事業者はわずか23%で、27%の事業者が払い戻し期間を記載していません。また、12%の事業者が返品要件をわかりやすい場所に表示していないのです。返品ポリシーをフッターではなく、サポートページからでないと入手できないようになっています。

特に注目すべきは、返品手数料を課しているEC事業者の64% が事前に金額を開示していないことです。料金は大サイズで平均6.14ユーロ(約990円)、小サイズで平均3.47ユーロ(約560円)となっています。手数料の価格範囲は最小で2.34ユーロ(約377円)、最大で29.37ユーロ(約4,737円)です。このコストについて適切な説明を行わないと、顧客の不満につながる可能性があるでしょう。

「無料での返品が当たり前になっていますが、実際には『無料』ではなく、返品によって多大な経済的および環境的コストがかかっています。少額の返品手数料を導入することで、顧客にこの事実を認識してもらえるでしょう。その際、EC事業者は顧客を長期的に維持するために、簡単かつシンプルな返品フローを整える必要があります」と、Sendcloud社のCEO兼共同創設者であるRob van den Heuvel 氏は述べていました。

この調査では返品のしやすさについても触れられています。EC事業者の大多数 (68%) は、顧客が返品を手配できる返品ポータル(返品対応を行える専用ページ)を備えているのです。しかし、返品プロセスはさらに合理化できる可能性があります。

受け取りサービスを提供しているのは43%のみで、74%は店舗内でのオプションを提供しています。また、オプションとして宅配ロッカーを挙げているのは12%に留まっているのです。返品注文に印刷ラベルを提供しているのは11%のみで、多くの場合、顧客は自宅でラベルを印刷する必要があります。32%はペーパーレスで返品対応をしており、顧客はQRコードを使用して荷物を持ち込むことができます。

参照:UK: 79% fashion retailers have return fees

日本では返品ポリシーとフローの仕組み化が優先か

少ない手間で買い物ができるECにおいて、ファッションアイテムなど身に付けてみないと失敗するリスクのある商品を返品無料であれば購入したい顧客のニーズは高いでしょう。また、無料ではないにしろ、少額の返品手数料で注文ができるなら顧客にとっては喜ばしいはずです。

最近では返品対応やECサイトで購入した商品を自宅で試着できるサービスが展開されるなど、金銭的なやり取りを伴う返品対応を仕組み化しやすい環境が整い始めています。まずはイレギュラー対応として扱われがちだった返品対応の仕組み化を行い、顧客の不安を取り除く体制づくりが必要かもしれませんね。

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