【ECの未来】お客様に求められるInstagramの活用術とは? 文房具をインスタ映えさせた方法を紹介
記事の概要

楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っているサヴァリ株式会社が運営するYouTubeチャンネル『ECの未来』では、ECに関わるさまざまな方をお呼びして、その方たちの得意ジャンルのお話をMCである株式会社柳田織物の柳田敏正さんと対談形式でお届けしています。

今回は、文房具の専門店「文房具の和気文具」を運営する株式会社有限会社ワキの代表取締役である岸井祥司さんに、Instagramの活用術をお話いただく回についてご紹介いたします。

【ゲストスピーカー】
岸井 祥司さん
有限会社ワキ 代表取締役
文房具専門「文房具の和気文具

【チャンネルMC】
柳田 敏正さん
株式会社柳田織物 代表取締役
ワイシャツ専門店「ozie(オジエ)

なるほど!文房具をインスタ映えさせた方法とは?

売り込みではなく情報提供が求められる投稿の鍵

柳田さん:EC、特にファッションジャンルにおいてInstagramは欠かせなくなりました。Instagramをきっかけにメディアに出演されたこともある岸井さんですが、工夫されたことがあるからそこまでに至ったかと思います。今回は、そういった工夫について、視聴者の方にアドバイスできることを教えていただきたいです。

和気文具のInstagramアカウント

岸井さん:どのようにして今の運用に至ったのかをお伝えするために、まずはInstagramを始めた頃の話からさせていただきます。Instagramのアカウントを作ったのは4年前(2015年)です。ECで文房具を売っているので、その集客手段の1つとしてInstagramを始めました。自分たちの商品画像に自信を持っていたので、そのまま載せたらきっと良い反応があるに違いないと思って、最初はウェブサイトの画像をそのまま載せていました。しかし、載せたところ全然反応はなく、こんなもんなのかなぁと感じたのを覚えています。

柳田さん:反応がない状態からどのような転機があって今の状態になっているのでしょうか。

岸井さん:当時はInstagramの運用はEC運営のスタッフが片手間でやっていました。せっかく時間を割いてやっているのに反応がなかったため、スタッフから「Instagramを運用する意味あるんですかね。どうしましょうか」と相談を受けたのです。そこで「自分が好きなこと、楽しいことを商品紹介でしてみたら?」と伝えました。自分が好き、楽しいと思えないような投稿をしていては、その時点でダメだと思ったからです。

その担当者は社内ではwebデザイナーですが、それ以前はイラストレーターをしており、絵を描くことが好きでした。そこで、販売している文房具を使ってイラストを描いて商品を紹介することに。すると、良い反応を得られました。そこが1つのターニングポイントになっています。

その結果を分析し、Instagramを見ている人は情報を見たいのではないかという結論にたどり着きました。自分がこうなりたい、こう使いたいと思えるような投稿を見るんじゃないかと考えたのです。それからは物を売るセールスの投稿ではなく、商品の使い方などハウツーに寄ったコンテンツ重視の投稿に切り替えました。これがInstagram運用の転機ですね。

柳田さん:2015年くらいはInstagramをやっていても商品が売れるという感じではなかったですよね。

岸井さん:そうですね。Instagram自体が流行ってきていたので、見てもらいたい、露出したいという理由から始めています。

柳田さん:その流れで売れたら良いなという気持ちがあったものの、結果的にそれでは上手くいかず、ハウツーに寄った投稿をしたところ注目を浴びたんですね。

岸井さん:はい、こんなに商品のことを知りたい人がたくさんいるんだなと思いました。

お客様が知りたい利用シーンを形に

柳田さん:文房具の使い方は難しいのでしょうか。

岸井さん:難しいですね。私たちの商品は40万SKUぐらいあり、1つの商品でも色やサイズとSKUがたくさんあります。例えば、世の中に蛍光マーカーだけでもかなりの数がありますが、それぞれに特徴があるんですよ。その情報を私たちは知っていますが、お客様は知りません。その商品ごとにできることを提案(紹介)することが必要です。

柳田さん:Instagramに投稿している内容は二次利用していたりするんでしょうか。

岸井さん:はい、コンテンツの横展開はしています。特に、二次利用で重視しているのが自社のウェブマガジンとYouTubeの2つです。YouTubeの運用はInstagramの運用スタッフが兼任しています。Instagramの投稿を作成する様子を定点カメラで撮影するのですが、その手元動画をInstagramに投稿するのと同じタイミングでYouTubeにも掲載しています。

お客様は絵がどういう順で描かれたのかわからないと真似ができません。静止画だと使った文房具と描かれた絵しか伝えられず、実際に描いている工程が飛んでしまいますからね。

▼同じタイミングで投稿されたInstagramとYouTube

柳田さん:最初は商品を売りにいっていたInstagramの投稿を、ハウツーに切り替えることに気づけたのはすごいなと思いました。結果を求めるあまり広告を回して本末転倒になったり、いつか売れるからとやり方を変えなかったりすることもあるでしょう。インスタ映えという言葉がある中で、写真ではなくイラストが流行った理由はあるのでしょうか。

岸井さん:文房具はノートやペンなど見た目に大差がないんです。日常的なシーンを作ることはできますが、インスタ映えと言われるほどの投稿にはならないでしょう。また、文房具をファッションアイテムとして使う人は私たちのユーザーにはほぼいません。

柳田さん:どういったユーザー層がいらっしゃるのでしょうか。

岸井さん:低単価で文房具を可愛く使いたい女性の方が多いですかね。男性のビジネスユーザーが買う小物や高い万年筆みたいな層は全体では少ないです。こういったかっちりしたビジネスユーザーはアッパーゾーン。私たちのお客さんはそのちょっと下くらいの印象です。Instagramを介して、その層が増えてきた感じはありますね。Instagramのフォロワーは96%が女性。EC全体で見たらお客様の6割が女性です。

Instagram運用、ネットショップにどう取り組む?ワクワクするSNS投稿でECを育てる

Instagramの投稿がリアルとの接点に

柳田さん:フォロワーに出版社の方がいたことをきっかけにInstagramの投稿を書籍化することになったそうですね。Instagramの活動がリアルにつながっていますが、他にもリアルにつながった事例はありますか?

岸井さん:他にも実はたくさんあります。発売した書籍は非常に売れたのですが、それを読んでいただいたInstagramの担当の方にお声がけいただき、出版から2ヶ月後の2019年6月に開かれた「Insta Shopping Weekend」というイベントに出展しました。アパレルや化粧品のブランドさんが参加する中で、文房具の物販で弊社のようなアカウントは珍しいとのことで、きっとユーザーさんも喜んでくれるだろうと、声をかけていただいたのです。

Insta Shopping Weekend

岸井さん:このイベントが更に次に繋がっています。たまたまこのイベントに足を運んだロフトのバイヤーの方が「PB商品(プライベートブランド)の取り扱いもあるんですね」とお声がけいただきました。

柳田さん:え!PB商品もあるんですか?

岸井さん:そうなんです。Instagramで商品を紹介していると、どういったものに需要があるのか反応がよくわかります。商品への不満やニーズがコメントを拾えば読み取れるのです。投稿が響いたかどうかの反応は極端なので、冷たいか温かいかは投稿して30分くらいでわかります。

そこで反応が良かった商品に付属するアクセサリーを作って販売することを始めたんです。例えば、手帳は規格サイズのもの以外に変形サイズが多々ありますが、それに合った下敷きを欲しい方が一定数いらっしゃいます。メーカーが作らないようなニッチな商品を作って、Instagramに投稿すると喜んでもらえる良いスパイラルを生み出せました。

その商品を「Insta Shopping Weekend」に出展した際に販売したところ、たまたまバイヤーさんの目に留まり、その年の8月にはロフトの銀座店で取り扱いを開始いただくことに。今では関東全体のロフトで取り扱っていただいています。

和気文具のオリジナル下敷き

柳田さん:一般的に見たら手帳といってもスケジュール帳とかメモ帳とかいろいろありますが、スマホで代替できる要素が大きいかと思います。手帳の下敷きのようなニッチな商品が関東全体のロフトで販売されているというのは不思議な気持ちです。

岸井さん:今はGoogleカレンダーやグループウェアでスケジュール管理をする人が増えてきています。その流れを文具店が止めるのは無理な話ですが、文房具の魅力を伝えたり、市場を広げたりする努力はできます。私たちはスモールビジネスなので、身近なお客様に喜んでもらうことを意識しているので、それでいいと思っています。

柳田さん:誰が聞いても超ニッチだと思いますが、それでもいろいろなお店で扱ってもらえるのは、ある意味ニッチではなくなってきているのではないかと思うのですが……。

岸井さん:こういったニッチな商品を取り扱うことについては量販店の悩みなんですが、大量に商品を棚に並べても売れなくなってきているようです。大量の商品が所狭しと並んでいると、お客様はどれを選んでよいかわかりません。特に手帳のシーズンになると、同じ商品の色・サイズ展開がズラーっと並び、お客様は1つずつ見るのが大変です。

これはロフトさんに限らずどこの量販店でも同じ悩みを抱えています。売り場は参考にする情報やレビューがないんです。ロフトさんには商品を販売することから始まりましたが、実は今では私たちが得意な商品の提案を活かして、ロフトさんの売り場のプロデュースをしています。そこで、どの商品を選ぶのか、どこに注目を持っていくのかという役割を私たちが担っています。

高い質を保つ工夫が信頼あるメディアを生む

柳田さん:自分が接客していて、リアルから拾う声は私自身結構大きいと思っています。量販店でも直接お客様の声を拾えますが、たしかにウェブだと見れる商品のレビューや、インスタのコメントは店頭では見れません。

岸井さん:私たちのアカウントは信頼できるメディアみたいになっています。「この人たちは良い書き方を知っている」と。若い人たちはそれを真似したいので、Instagramを見ながらお店で選ぶようになっています。

柳田さん:信頼できる情報源かどうかというのはとても納得できます。でも最初は商品を売りに行きたかったんですもんね。

岸井さん:SNSから直接カートに誘導するのは大変なことだと思います。

柳田さん:それが結果的に、方向転換してハウツーをやり続けたことで、手帳を筆頭に文房具を紹介するメディアとして皆様の信用を得られるようになったのですね。今はどれくらいの更新頻度なんですか?

岸井さん:更新頻度は当時毎日でしたが、現在では週2回です。できるなら毎日したいですが、ネタ出しや編集などの負荷を考えると今のペースがちょうどいいと思います。質を保って、お客様にとっていい情報を出し続けるほうが大切だからです。

柳田さん:コンテンツはストックされるため、頻繁に更新しなくても良くなりますね。

岸井さん:情報を作るのも人間なので、更新に追われてしまうと楽しくなくなってしまいます。それがコンテンツの質にも出てくるため、コンテンツを作る上で気を使わないといけない点だといえるでしょう。

柳田さん:みんなどんどん更新したほうがいいと考えているので、ここはとても参考になると思います。最後にまとめとして、Instagramを通じて、今後やりたいこと、こんなふうになりたいということがあれば一言でいただけますか。

岸井さん:最初に言ったようにECで売上を伸ばしたい、利益を出したいというところから何か施策を始めると思います。僕らの場合はひょんなことから、それが少し脱線して人を集めることが得意になったわけです。

今は売上に直結していないけれども、元のECに影響を及ぼして、売上や利益がついてくることもあります。ショップの規模や性質にもよりますが、好きなことをSNS、特にInstagramでは発信するべきでしょう。売り上げを上げるために疲れていたら、何をしているのかわからなくなってしまいますので。

柳田さん:それが長続きさせるコツでもあり、無理せず質のいい情報発信をするコツですね。結果、ファンがつき、リアルからも注目される良い流れになりました。

おわりに:お客様が欲しい情報を届けることがショップのブランド化に

商品を売ることを目的にInstagramのアカウントを開設される事業者さんは多いと思います。商品画像をアップすれば、ECサイトへのアクセスが増えて売上が伸びるのではと。しかし実際は、アカウント運用をする中で、成果が出るまで継続的に更新を続けるには辛抱強さだけではなく、やはり好きを発信する気持ちが大切だということが今回の記事からわかりました。

まずは、お客様に提供する商品について詳しく好きになること。そして、好きな商品の使い方や関連情報を知ってもらうコミュニケーションが求められていることかもしれません。自社のアカウント運用に本記事が役立てば幸いです。

EC市場の真の発展に貢献をという想いで、「ECの未来」を運営しているサヴァリ株式会社は楽天市場・Amazonなどネットショップ運営代行をはじめ、モール通販を中心にECサポート・ECコンサルティングを行っています。EC運営に不安を抱えている事業者様は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

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